ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議の活動について
第一回報告

平成16年3月29日

1.出席者

(1) 無償資金協力実施適正会議委員

大野 泉 政策研究大学院大学教授
小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
敷田 稔 アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長(座長)
星野 昌子 日本NPOセンター代表理事
脊戸 明子 日本外国語専門学校副校長


(2) 外務省・国際協力機構

外務省 経済協力局長
無償資金協力課長
無償資金協力課課長補佐
無償資金協力課員
国際協力機構 無償資金協力部長
無償資金協力部計画課代理


2.会議開催時期と主な論点

第一回 平成15年2月4日 (無償資金協力実施適正会議の発足、他)
第二回 3月4日 (技術協力との連携、援助の手法、他)
第三回 4月11日 (現地化、顔の見える援助、他)
第四回 5月9日 (事前の調査、国益、他)
第五回 7月28日 (上位計画、コスト問題、他)
第六回 9月29日 (予算要求、無償資金協力の実施過程、他)
第七回 10月16日 (対イラク支援、現地ODAタスクフォース、他)
第八回 12月11日 (コスト問題、小さな国への支援、他)
第九回 平成16年2月12日 (対イラク支援、無償資金協力の審査基準、他)


3.各会合の概要

 外務省ODAホームページにて公開中。

4.総括

(1) 無償資金協力実施適正会議の運営

 無償資金協力実施適正会議は、無償資金協力の案件選定に係るプロセスに第三者の視点を加え、専門家として、或いは納税者としての意見や疑問などを足がかりとして、無償資金協力実施のプロセス全体について様々な観点から議論し、以て制度の改善に資することを目的とする。

 このような観点から、各会合に於いては、閣議決定を間近に控えた各案件について個別に議論すると共に、制度全般に係る事項などについて、時にはゲスト・スピーカーも交えながら議論を進めることとする。

 各会合の議論の概要は、外務省ホームページ等にて公開する。

(2) 全体を通しての主要な論点と外務省の見解

(イ) 他スキームとの有機的連携の重視:

(委員からの意見) 技術協力を含む他の制度(スキーム)との連携を重視すべきである。
(外務省) 無償資金協力と他の制度スキーム)との連携には配慮してきているが、更に改善の余地があり、無償資金協力の各段階において引き続き重視する。


(ロ) 現地機能の強化・権限委譲の推進:

(委員からの意見) 現地機能を強化し、経済協力関係者(機関)との連携によるオール・ジャパン体制の構築が重要である。現地ODAタスクフォースが更に実質的に強化されることを期待する。
(外務省) 現地ODAタスクフォース等を通じて、現地機能の強化に引き続き取り組む。現地ODAタスクフォースの活動の状況は途上国によって異なるので、進んでいる国の例を紹介することなどにより成功例を広めるなどして、各国における現地ODAタスクフォースの活動強化に努める。


(ハ) 上位計画や分野別の政策との整合性・上流段階からの援助協調の重視:

(委員からの意見) 個別案件を検討する際に、開発に関する基本的な計画(マスター・プラン)や分野別の政策(セクター・プログラム)などの上位計画との整合性にも留意すべきである。また、上位計画や分野別の政策レベルで相手国政府や他ドナーとの対話・調整を行うことが望ましい。個別案件を選定して絞り込みを始める最初の頃から、多様な制度(スキーム)や援助の手法に留意し、我が国として最も効果的・効率的な方法で案件形成・選定を行っていく必要がある。
(外務省) 途上国の開発政策を踏まえること、他ドナーと協調して取り組んでいくこと、各援助手法の特性を生かしつつ有機的な連携を図るべきこと、更に、そのために現地機能の強化を図ること等の重要性については、改定されたODA大綱にも示されているところである。今後は、途上国との政策協議や他ドナーとの協調等を更に活発に行うとともに、現地の意見を重視しつつ、国別援助計画を策定・改定すること等を通じて途上国の開発政策等との更なる整合性を図っていく。また、援助の手法についても、不断の見直しを行い、改善に努め、より効率的・効果的な支援を図っていく。


(ニ) コスト審査の適切性・コストと質の関係等、コスト面への配慮:

(委員からの意見) 特に教育や保健衛生分野では、援助協調の視点からも新しい援助手法への対応も柔軟に考える必要がある。
(外務省) 無償資金協力課内でコスト・タスクフォースを立ち上げて議論し、具体的な方向性を提示している(第8回会合の資料参照)。今後ともコストの問題については、途上国の意見を十分踏まえつつ、改善に取り組む。


(ホ) 顔の見える援助:

(委員からの意見) 顔の見える援助のあり方については、日本人が全部に関らなくても、日本としての開発哲学を相手国に明確に打ち出していくことが重要ではないか。
(外務省) 援助を通じて日本に対する信頼を醸成することは極めて重要であり、外務省としても、援助の各案件でビジビリティの確保に取り組むと同時に、開発に関する日本の政策を発信出来るように努める。


(ヘ) ODAと国益:

(委員からの意見) 国益をいかに捉え、確保すべきかについて議論する必要がある。
(外務省) 何をもって国益と考えるかは議論があるが、新ODA大綱に示されている考え方は、『我が国ODAの目的は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである。(中略)我が国は、世界の主要国の一つとして、ODAを積極的に活用し、これらの問題に率先して取り組む決意である。こうした取組は、ひいては各国との友好関係や人の交流の増進、国際場裡における我が国の立場の強化など、我が国自身にも様々な形で利益をもたらすものである。さらに、相互依存関係が深まる中で、国際貿易の恩恵を享受し、資源・エネルギー、食料などを海外に大きく依存する我が国としては、ODAを通じて開発途上国の安定と発展に積極的に貢献する。このことは、我が国の安全と繁栄を確保し、国民の利益を増進することに深く結びついている。』というものであり、自国のことのみを考えた狭い国益を追求しようとしているものではない。外務省としてはこうした考え方を踏まえつつ、国益についての議論を深めていく考えである。無償資金協力の実施においては、相手国の開発に真に役立つ援助を行うことが、結果として我が国の国益とも関連すると考える。


以上
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