ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成15年度第7回会合)議事録

 2月12日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下の通り(出席者別添1議題別添2)。

1.無償資金協力課からの説明と質疑応答

(1) イラクに対する支援について

 無償資金協力課より、1月9日に開催したイラク復興支援のための無償資金協力に関する説明会の模様等、我が国の対イラク支援の最新状況を説明すると共に、イラク支援においては、イラク国民のニーズに迅速に応えるべく「柔軟性・スピード」が重要であるとともに、予算の規模も大きいこともありイラク支援に対する評価が日本のODA全体の評価に直結することから「透明性・公平性」が確保されることが重要であると述べた。また、無償資金協力課より、日本人がイラク国内に入れないという制約がある中の援助の進め方、及び、無償資金協力の資金管理についても併せて説明がなされた後、以下のようなやりとりがなされた。

(委員) イラク全土を駆けめぐられていた奥大使や井ノ上書記官が亡くなられてからの現地での情報収集体制はどうなっているのか。
(無償資金協力課) バグダッドの大使館には数名、サマーワの事務所には5名の外務省職員が駐在している。サマーワでは自衛隊とも協力しつつ情報収集を行っている。バグダッドの大使館については、東京の外務本省からイラク側関係者と直接連絡をとること等により、可能な限り負担がかからないようにしている。その他には、現在、隣国ヨルダンにJICAの調査団が派遣され、現地コンサルタントを活用しつつ、イラク復興支援に関する各種調査・意見交換を行っている。このような一種の遠隔操作で、イラク側に対して直接支援を行うことは十分可能であると考えている。もちろん、将来的には治安が改善し日本人(専門家やNGO)がイラクに入れることを期待している。


(2) 無償資金協力審査ガイドライン

 無償資金協力課より、以下のとおり説明した。

(イ) ODAを実施するに当たっては、環境に対する配慮を強めるべきであるとの意見を背景に、JICAが中心となって、NGOや専門家等を幅広く結集しつつ、環境社会配慮ガイドラインの改定について議論が重ねられてきた。その成果が同ガイドライン改定のための提言となり、現在同改定ガイドライン案がパブリック・コメントに付されているところである。
(ロ) こうした流れとともに、無償資金協力に関するガイドラインを外務省は策定すべきであるという議論が出てきており、現在無償資金協力課で一案を作成中である。環境社会配慮部分についてはJICAのガイドラインを取り込む形とし、それ以外の部分、すなわち無償資金協力の手続、審査基準等を含めてガイドラインを策定することとしている。対象としては、まず特に必要性が高いと思われる一般プロジェクト無償及び水産無償を想定している。

(3) ユニセフ案件における連携について
 無償資金協力課より、保健・医療分野においては、二国間の支援の他、ユニセフを経由しても支援を行っている、こうしたユニセフとの連携については世界中で例があるが、二国間で支援するかユニセフ経由で支援するかについては、被援助国の状況や案件の性質等に留意しつつ決定されると述べた。

(3) コスト問題

 無償資金協力課より、国際開発ジャーナル(2月号)で学校建設に関する特集が組まれており、学校建設のコスト問題に関する外務省の考え方を説明した旨述べた。

2.JICAからの説明

 JICAより、コンサルタント契約の締結状況等について説明があった。

3.2月閣議請議予定案件に係る説明と質疑応答

 無償資金協力課より、2月閣議請議案件の説明がなされた。主なやりとりは以下の通り。

(委員) 食糧増産援助については、一連のODA改革の中でそのあり方についても大幅に見直されることとなった。それぞれの途上国において様々な現実があり、国によっては中央と地方との間の格差が放置されているところもあるのは事実である。外務省が食糧増産援助の削減を打ち出したのは外交的には失敗であったと考えている。一方、外交手段としての援助という側面にどこまで力点を置くのかについて、外務省とNGOとの間では必然的に考えが違うものなのかもしれないと考えている。食糧増産援助について、来年度に向けての方針をお伺いしたい。
(無償資金協力課) 食糧増産援助については、外務省の中にも廃止すべきという意見はある。しかしながら、途上国では農業支援、食糧増産に対する支援の必要性は大きく、また、食糧増産援助に対するニーズも非常に高い。食糧増産援助は引き続き実施していく、あるいは場合によっては今後増やすぐらいのつもりで検討していきたいと考えている。もちろん、食糧増産援助の内容について、農薬や未使用機材の問題など、改善すべきところはしっかりと改善していくべきである。また、いわゆるソフト・コンポーネント(途上国への技術移転)という考え方も、今後より積極的に導入していく方向で検討したい。
 相対的に見た場合、食糧増産援助について優れた成果を示しているのは中南米地域である。しかしながら、食糧増産援助に対するニーズがより高いのはアフリカである。いずれにせよ、見直しは一度やればそれで終わりというものではなく、食糧増産援助がより望ましい形になるよう、今後も引き続き皆様とも議論していきたい。

(委員) 今回の閣議請議案件の中には道路案件があるが、無償資金協力においては、道路建設を行うことが一般的なのか、それとも道路建設に必要な機材の供与を行うことが多いのか。また被援助国政府側に受け入れ能力の問題はないのか。

(無償資金協力課) 建設も機材供与も共に実施している例がある。機材案件については、「いつまで援助するのか、また、スペアパーツの問題は?」といった疑問が呈されることがある。スペアパーツについては非常に難しいところで、支援をしなければ機材が動かなくなって批判されるし、支援をすれば「丸抱え」と批判される。当方としては、被援助国政府の自立を促しつつも、一定限度のフォローアップは必要であると考えている。また、橋梁等、高いレベルの技術が必要とされるものについては、日本が全て実施することが多い。被援助国政府の受け入れ能力の問題については、専門家、青年海外協力隊やシニア・ボランティアによる技術移転で手当をしている。

(委員) 国際機関を経由して行う無償資金協力については、どのようにしてフォローアップをしているのか。

(無償資金協力課) 国際機関経由の支援についても、二国間支援と同様、報告書を取り付けるなど事後のフォローアップに努めている。ただ、二国間支援の場合とくらべて、日本の顔がどれだけ見えているのかといった問題はあるが、日の丸やODAマークを供与物資に添付するなどの工夫を行っている。外務本省としては、在外公館の意見を聞きつつ、どのように援助を実施するのが最適かを考えて案件を実施している。

4.会議の報告のとりまとめについて

 無償資金協力実施適正会議の活動についての報告について議論し、それを踏まえた報告書案を作成することとなった。
 最後に、第10回会合は平成16年3月10日(水)に霞ヶ関庁舎にて行うこととした。




別添1


出席者

I.無償資金協力実施適正会議委員
1.小川 英治 一橋大学院商学研究科教授
2.敷田 稔 アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
3.西川 和行 財団法人 公会計研究会会長・元会計検査院事務総長
4.星野 昌子 日本NPOセンター代表理事
5.脊戸 明子 日本外国語専門学校


II.外務省
6.山田 彰 経済協力局無償資金協力課長
7.松井 正人 経済協力局無償資金協力課地域第一班長
8.田村 良作 経済協力局無償資金協力課業務班長


III.国際協力機構
9.松浦 正三 無償資金協力部長
10.武  徹 無償資金協力部計画課代理




別添2


無償資金協力実施適正会議
(2月12日12:00~14:00)議題)議題


場所:霞ヶ関(南庁舎)3階396号室


  1. 報告事項(外務省)

    (1)イラクに対する支援について
     →最新状況
     →イラク復興支援に係る無償資金協力説明会
     →緊急無償資金協力の実施

    (2)無償資金協力審査ガイドライン

    (3)ユニセフ案件における連携について

    (4)コスト問題

  2. コンサルタント契約状況、入札実施状況()

  3. 一般プロジェクト無償実施予定案件の説明及び質疑応答(外務省)

  4. 会議の報告の取りまとめについて(外務省)

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る目次へ戻る