5月18日,平成22年度第二回無償資金協力実施適正会議が開催されたところ,概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
(委員)
各案件のセクター,規模等によってカテゴリー分けされるとの説明があったが,カテゴリーAについては環境社会に対して重大で望ましくない影響を与えるものと定義されている。そもそもそのような案件を候補案件とすべきではないのではないか。
(JICA)
仮に適切な環境社会配慮を施さずに実施した場合に重大で望ましくない影響の可能性を有するという趣旨であり,カテゴリーAに分類される案件についてはかかる影響を最小限にとどめるべく,環境影響評価結果に基づき,十分な緩和策を講じるなど特に適切な実施に努めることとしており,このために必要となる具体的な手続き及び要件をガイドラインで定めている。
(委員)
今般の新ガイドライン作成により,無償資金協力と有償資金協力における環境社会配慮の審査は整合性があるようになっているのか。例えば,カテゴリAやBの案件において,EIAの提出を相手国政府に求める義務やタイミングなど,両者で同じ基準を使うようになったのか。また,環境社会配慮助言委員会は,どの程度の頻度で行われるのか。
(JICA)
新ガイドラインでは,有償資金協力と無償資金協力の環境レビュー手続きを共通化しており,環境カテゴリーが同じ場合,EIA提出等に関する手続きや基準も共通となる。環境社会配慮助言委員会については,全体会合を原則月例で開催すると共に,委員をいくつかのグループに分けてワーキンググループを開催する形態とする予定。個別案件の検討はワーキンググループにて行い,その結果を全体会合で確認する方法を想定している。
(委員)
カンボジア「ネアックルン橋梁建設計画」は,無償資金協力としては大規模な案件だが,このような計画の検討に際し,有償資金協力を適用する妥当性についても検討を行ったのか。
(外務省)
基礎的インフラが未整備の途上国においては,インフラ整備による国造りも重要であると考えている。円借款か無償資金協力かという資金協力形態は,採算性や事業の規模に加え,国の経済規模,債務負担能力,外交的観点等を総合的に勘案して判断してきている。本件においても被援助国政府の債務負担能力に加え,本橋梁が周辺国にまたがる幹線道路の要衝に位置し,その裨益効果が被援助国のみならず周辺各国に及ぶことから,円借款として被援助国一国が建設費用を負担するのは必ずしも適切とはいえないと考えている。
(委員)
事業仕分けの評価結果も,適切なハコモノ無償の実施を排除するものではなく,経済的及び外交的な効果の高い案件は無償資金協力で支援すべきと考える。
(委員)
ベトナムにおけるカント-橋崩落事故の経験は,本計画の実施に活かされるのか。
(外務省)
カント-橋建設計画は円借款で進めているものであり,主契約者が本邦企業に限定される無償資金協力による事業とは事業形態が異なるが,カント-橋建設も日系企業が主契約者であった事業であり,安全対策の徹底,現地との連絡体制の強化等の措置は然るべく教訓としている。
(委員)
新政権におけるODAの重点分野の1つに貧困削減,国連ミレニアム開発目標(MDGs)に対する貢献が挙げられていると承知している。今次閣議請議においては貧困削減に特化した案件が大宗を占めていないようだが,今後,かかる分野の案件に対し予め予算枠を設定するといった方針はないのか。
(外務省)
貧困削減に貢献する事業としては,今回の閣議請議ではその大部分を占めているものではないが,無償資金協力事業では大きなウエイトを占めている。各事業については,個別にその妥当性等を検討しており,予め予算枠を設定するのは現状では困難だが,ODA見直しのプロセスの一環として議論しているところである。
(委員)
コミュニティ開発支援無償資金協力は,現地スペックを適用して,一般プロジェクト無償資金協力による事業コストと比べ低くすることも目的に制度設計されたと理解しているが,かかる目的を果たせているのか。
(外務省)
現地業者を活用することにより工期が長期化し,結果として費用がかさむこともあり,必ずしも全ての案件でコスト削減効果が十分に発揮されているわけではない。また,対象コミュニティを総合的に支援することを目的としていることからソフト面での支援の充実を図るべきとの指摘もある。同協力の長所を活かしつつ,引き続き制度改善を図っていく。
(委員)
アフリカ地域でのリスクの高い案件への対応策として,予備的経費の導入を試行的に行っているが,業界からの反応はどうか。
(JICA)
施工業者には比較的に歓迎されているが,コンサルタントからは業務の増大との評価もある。
別添1
別添2
日時:平成22年5月18日(火曜日)14時00分~16時00分
場所:外務省 南886会議室
以上