11月28日、無償資金協力実施適正会議(次回の無償一括閣議請議案件の事前説明等)が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
(委員)
コスト縮減への要請が厳しいことは承知している。他方、ODAは日本のソフトパワーの強化につながる重要なツールであることも認識すべきである。その点、総理のご発言は心強い。金融危機について、アジアは二次的に影響を受けると考えられ、中長期スパンで体力強化を図ろうとする日本の姿勢は評価できる。来年以降オバマ政権の発足により、ODAを含むアメリカの外交政策は変わってくると考えられる。
(委員)
今回の金融危機を受け、世界の主要な援助国はODAを減らす動きを見せているが、外務省としても情報収集を行っているのか。他国が減らすからと言って、日本も追随するのは反対である。
(委員)
同感である。金融危機に対する支援という理屈はわかりやすく、国内にも通じる。なぜ今の時期にODAが対外的に効果的なのかをこの機会に示していくべき。
(外務省)
他ドナーの動向につきDAC等で特に情報の取りまとめは行っていないが、今後の他ドナー国の動きを注視していきたい。また、8月の時点では気候変動対策、アフリカ支援及び食料危機を軸に概算要求を行ったが、最近は報道等の関心も薄れてきた印象がある。来年に向けたODA予算確保のためのアピールポイントにつき検討していく。
(委員)
金融危機に関しては、経済危機に陥った国への支援ということではなく、影響を被った末端の人々に対する支援として説明していくべき。従来からコミットを表明しているアフリカをきっちり押さえた上で経済危機に対する対応も行うと説明し、両者のつながりを強調すべきである。
(委員)
先日もゴア元副大統領が訪日したが、気候変動対策への対応やTICAD IVで約束した事項の着実な実施も中長期的に見て重要である。金融危機への対応は、追加枠のイメージであり、実際は官に限らず経済界からも支援が出るのではないかと考えられる。いずれにせよ国民の「雰囲気」を創り出す努力が必要である。
(委員)
国民の感覚では、最も重要なのは気候変動でもアフリカでもなく明日の食事であり、その意味では金融危機への経済対策の方が説得力を持つ可能性もある。他方説明にあたっては両者をリンクさせる必要がある。アフリカの40億人の貧困者を支援することと金融危機への対応は連動しており、右を無視した経済開発はできないということを明確に示すべき。
(外務省)
冒頭の御指摘のとおり、金融危機の影響を受けた今後の世界全体のODAの変容はフォローする必要がある。
(委員)
現状の国内経済対策を見るに、今後、政府がODAを減らさない若しくは増やす政策を取ることは、他国の動向とも逆行し、かなりハイリスクである。プレゼンテーションの仕方を工夫していく必要がある。
(委員)
同感である。途上国が他国に迷惑をかけずに発展することを支えることがいかに重要であるか、政府がPRの仕方を考え説明していかなくてはいけない。
(外務省)
全体で28ヶ国1地域に対する計45件、総計約162億円を請議予定。例年より早いペースで予算執行を行っている。本年度閣議請議済み及び検討中の案件総額の内訳は、対アフリカ4割強、対アジア3割弱程度。年度末に向け、アジア向けの案件を増やす予定。
(委員)
新JICAが発足してからどのような事務的問題があるのか。
(委員)
従来通り閣議決定は政府の責任で行うが、案件発掘・形成のための協力準備調査は外務省からJICAに要請し派遣するものに加え、JICAのイニシアティブでも出せることになった。
(委員)
JICAは無償資金協力の予算編成にどの程度縛られるのか。JICA実施分のスキーム予算については、全体としてJICAが使えるようになるのか。
(外務省)
新JICA法の施行により予算上変更された点は、政府が閣議決定した案件の資金がJICAに交付される点である。各スキーム予算については、対外説明と実態に乖離が無いように努めている。
(委員)
例えばタンザニアで、日本が得意とするセクターに一般財政支援の形で積み増すことはできないのか。
(外務省)
アフリカではセクターの財政支援を行わないと議論の場にも参加できない可能性もある。他方、財政支援は、他のドナーの支援とブレンドされることになるので、対外的な説明責任を明確にし、且つ資金の使途等よく注意して行わなければならない。
(委員)
感染症対策機材供与案件について、供与後然るべく機材が使用されるよう、技プロとの連携や現地のNGOとの連携を含め総合的にフォローし効果を図るべきである。新JICA発足に伴い、現地やJICAの判断が柔軟に予算執行に反映できる体制を望む。
(JICA)
開発効果の高い援助を実施していくために、日本政府が設定する開発課題ごとに3つのスキームをどう運用すべきか検討し、案件を固めている。委員御指摘のとおり、単体のプロジェクトで効果を上げるのは難しいため様々に組み合わせながら長期プランでの支援を考えている。
(委員)
企画立案を外務省が担い実施をJICAが担う体制は援助の二元化を招くとの批判もある。加えて、「戦略」は海外経済協力会議も行い、「実施」はJICAが行うのであれば、外務省の「企画・立案」とは何を指すのか曖昧である。
(委員)
国ごとの重点支援分野や継続的な目標額は外務省が決め、案件ベースの話はJICAが行っていくという理解。
(JICA)
開発と外交という立場の違いを踏まえ、JICAと外務省でしっかりと話し合っていきたい。案件実施の採択を外務省が行うことは法律的にも決まっているため、政府が了承するような案件形成を行っていく所存である。
(外務省)
本年5月に行われたTICAD IVでの総理スピーチ、横浜行動計画に示された各分野の支援策につき、フォローアップを実施している。
例えば農業分野では、アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)が設立され、無償・技協ともに案件を増やしている。食糧援助についてはこれまでに相当分をアフリカに対し行ってきている。今後とも多岐の分野にわたって支援を続けていく。
(委員)
フォローアップのメカニズムについて具体的に教えてほしい。
(外務省)
在京のアフリカ大使とも相談して、来年早期にフォローアップのための会議を開催予定。省内ではアフリカ審議官組織を中心とした体制を作っている。
(委員)
アフリカ審議官組織、国別開発協力課、JICAでチームを組み、しっかりとした体制を作る必要がある。官民連携、クールアース構想など現在の国別援助計画に反映されてない事項も踏まえた追加的なイニシアティブが必要である。
(外務省)
多くのプロジェクト調査団が派遣され、横浜行動計画を念頭に置いた案件形成がなされていると承知している。
(JICA)
前回説明した時点と比べ、入札件数は増えている。資機材価格の高騰を受け入札不調の案件が若干数存在し、外務省と協議を行っている。それ以外は概ね順調に実施している、
別添1
別添2
日時:平成20年11月28日(金曜日)12時00分~14時00分
場所:外務省南396会議室
以上