10月14日、無償資金協力実施適正会議(次回の無償一括閣議請議案件の事前説明等)が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
1. 国際協力局長・同局参事官より冒頭挨拶
<全体説明>
(国際協力局長)
- 昨年から本年7月まで、アフリカ審議官を務めTICAD IV・洞爺湖サミットの開催に携わった。1993年から1995年まで無償資金協力課長を務めており、久しぶりに国際協力局へ戻ってきたが、当時2500億円以上あった無償資金協力予算が1600億円弱にまで減ってしまっている。
- 日本政府も企業もNGOも一つの日の丸の下にある。特に官民連携については、昨今アフリカに投資したいという日本企業が多い中で、積極的に取り組んでいきたいと考えている。
- 今後は無償資金協力の手続に要する時間をより短くし、迅速化に向けた制度改善に努めていきたい。
- 以前自分が無償資金協力課長だった時に、閣議請議にかける案件を経済協力局長にしっかりと説明するというのが重要な仕事であったが、現在は局長のみならず、本会議の委員の皆様にもご説明していることは評価できると思われる。本会議は無償資金協力の改善に資する会議であり、新JICA発足後も引き続き行って頂きたいと考えており、委員の皆様からの貴重な御意見を頂きたい。
(国際協力局参事官)
- 2003年の4月から無償資金協力課長を務めており、本会議の発足直後から1年半程出席していた経験がある。会議が発足した当初は、どのように運営していくか手探りであったが、現在は議論の中で、委員の方々から新しい視点、貴重なご示唆を頂き、その後の無償資金協力の改善に少なからずご協力頂いていると承知している。
- 今後一部の無償資金協力案件について新JICAに実施業務が全面的に移管されることになる。これまでも、JICAは実施促進を担い、外務省と二人三脚で支援を行ってきたが、今後は更に責任を持って業務を行ってほしいと思っている。委員の皆様におかれては、今後とも、無償資金協力の更なる改善のためにご協力頂ければ幸いである。
2. 新JICA発足(統合に当たって、新JICAの業務等)
(JICA)
- 今回の統合は、昨年11月8日に改正JICA法が成立し、本年10月1日より施行となったもの。改正JICA法の主なポイントは、1)新JICAはJBICの海外経済協力業務(円借款等)を承継。2)新JICAは外務省より無償資金協力の実施業務の一部を承継(外交政策上の必要から外務省が引き続き実施するものを除く)等がある。この立法の趣旨は、日本のODAをより良くするという点にある。
- 業務面では、3つの援助手法(技術協力・有償資金協力・無償資金協力)の特性を十分に活かしつつ、それらを有機的に組み合わせて実施するための新たな組織・業務の流れを構築していく。予算から新JICAの業務を考えると、改正法第13条(業務の範囲)第1項1号「技術協力」に約800億、同項第2号「有償資金協力」に約7700億、同項第3号「無償資金協力」に約1000億となり、全体予算約1兆のうち、有償資金協力及び無償資金協力で約9割弱を占め、従来技術協力を担う機関であったJICAの組織としての性質が変わることを示している。
- 今後は、各部門の詳細業務や新しく導入される協力準備調査、G/A(贈与契約)等につき詰めていくとともに、本会議のような場を通じて、無償資金協力の改善を図り、政策に基づいた迅速な実施を心がけていきたいと考えている。
3. 新JICA発足に伴う無償資金協力制度変更(役割分担、工期の柔軟化、資金交付)
(外務省)
- 平成20年9月にJICA主催で行われた「無償資金協力関係企業説明会」にて、企業・コンサルに対し外務省より説明を行った。基本となる考えは、1)時代のニーズに則す、今後10年~15年を見据えた制度構築を図る、2)一方の側からコスト縮減に対する要請がある中で制約はあるが、これまでも契約書式の見直し、追加的経費のあり方等を検討してきている、3)ODA全体のスピードアップを図ることである。
- 新JICA発足に伴う制度変更はJICAから先に述べたとおりである。今まで以上にJICAの専門性・知見を活用するとともに、外交側と開発側に齟齬が生じないよう節目々々で確認を取る制度設計としている。また、JICAへの資金交付により、工期の柔軟化が可能となる。
<質疑応答>
(委員)
3.につき、ゼネコンや商社との官民連携に無償資金協力を絡ませようとする意図はあるのか。今後の官民連携の見通し如何。
(外務省)
官民連携については、その重要性に鑑み、無償資金協力についても、昨年度より在外に官民連携案件があれば積極的に提示願いたい旨随時伝えてきている。ただ、案件はなかなか挙がってこない。また、企業のCSRと協力する観点から、草の根無償資金協力により積極的に対応することを考えているところである。
(委員)
今後官民連携における無償資金協力の役割の重要性は上がってくると思われる。規模が小さくても、被援助国に資する官民連携の案件を行っていってほしい。
(委員)
説明頂いた制度変更はいつ閣議請議された案件に適用されるのか。
(外務省)
次回閣議へ請議する案件から適用される。E/N署名は12月までに大半の案件が新JICAの下に実施される予定である。
(委員)
新JICAの発足で3スキームの連携が可能とのことだが、縦割り行政の影響は無いのか、市民社会の支持はどの程度得られているのか。
(JICA)
御指摘のとおり、今後は全てのスキームをJICAが実施していくことにつき、市民社会の理解と支持を得ていく必要がある。
(委員)
JICA研究所を設置する必要性は何か。なぜ外務省の中に作らないのか。
(外務省)
従来のJICAの調査研究事業は内部向けの実践的なシンクタンクだったのに対し、JICA研究所は所長を恒川政策研究大学院大学教授にお願いし、日本から世界へ援助潮流を発信していこうという意図を持った研究所である。現にJICAが持っているリソース・アセットを考えると、JICAに当該研究所ができるのは自然なことである。今後は2国間支援に加え、マルチ機関のドナーとも協議し、よりマクロな視野で研究を行っていくことが期待され、その際には外務省から、マルチの場でどのような議論が行われているかを適宜インプットしていくつもりである。
4. 次回閣議請議案件についての説明
<全体説明>
(外務省)
- 恐らく11月に請議を行う予定。全体では44ヶ国1地域、約291億円を予定している。
- TICAD IV、FAOサミット及びG8サミットに際し食料価格高騰問題に関し行った支援表明の具体化として、既に121.9億円が前回閣議請議までで決定されている。今回の閣議で8ヶ国計48.1億円の実施を決定し、本件コミットメント(計170億円)は達成されることになる。
- 環境プログラム無償を初めてバングラデシュに対し行う。ノン・プロジェクト無償資金協力については、来年の大洋州島サミットも見据え今次請議する。また、グルジアについても支援国会合が開催予定である。
<個別の案件>
外務省より、適宜説明。
<質疑応答>
(委員)
バングラデシュに対し、初めて環境プログラム無償を行うとのことだが、車両100台を供与することが環境にどれだけ効果をもたらすのか。また、地球環境税として集めた資金の使い道につき、無償で使うことは可能か。省庁間で協議しているのか。
(外務省)
燃費のよい収集車輌の導入により、温室効果ガス45.2キログラム/台から16.9キログラム/台へ削減され、気候変動緩和に資すると考える。
(外務省)
本件は元々一般プロジェクト無償案件として要請があったものである。ダッカ市ではゴミ収集車にもバスにもかなり古いタイプのエンジンを使っており、これをLNG車及び効率の良いディーゼル車に変える案件である。本件実施の効果として、温室効果ガスを3分の1強に減らすことが見込まれているが、他方ダッカは大都市であるため、引き続きモニタリングをしていく必要がある。ダッカ市清掃局への意識改革の啓蒙活動を含む。
(外務省)
地球環境税が無償資金協力の財源になるといった話は聞いていない。
5. コンサルタント契約状況、入札実施状況
(JICA)
入札については、従来から様々な制度改善を行っているが、依然取り組みが必要。工期の柔軟化、標準契約書式の変更等の取り組みを通じ、今後の入札参加者数等について十分にウオッチしていきたい。
別添1
出席者
- 無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
1. 小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
2. 片山 信彦 ワールド・ビジョン・ジャパン常務理事・事務局長
3. 杉下 恒夫 国際協力機構客員国際協力専門員
4. 西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
- 外務省
5. 木寺 昌人 国際協力局長
6. 山田 彰 国際協力局参事官
7. 柴田 裕憲 国際協力局無償資金・技術協力課長
8. 松浦 純也 国際協力局無償資金・技術協力課企画官
9. 新井 和久 国際協力局無償資金・技術協力課審査役
10. 板垣 克巳 国際協力局無償資金・技術協力課アジア・大洋州班長
11. 近藤 茂 国際協力局無償資金・技術協力課ノンプロ・KR班長
12. 高橋 了 国際協力局無償資金・技術協力課アフリカ班長
13. 村樫 真奈美 広報文化交流部文化交流課文化無償班長
- 国際協力機構
14. 黒柳 俊之 経済基盤開発部長
15. 古賀 重成 資金協力支援部長
16. 植嶋 卓巳 企画部次長
17. 上垣 素行 資金協力支援部計画課長
別添2
無償資金協力実施適正会議(平成20年度第4回会合)
日時:平成20年10月14日(火曜日)12時00分~14時00分
場所:外務省中央669会議室
議題:
- 国際協力局長・参事官より冒頭挨拶
- 新JICA発足(統合に当たって、新JICAの業務等)
- 新JICA発足に伴う無償資金協力制度変更(役割分担、工期の柔軟化、資金交付)
- 11月閣議請議案件についての説明
- コンサルタント契約状況、入札実施状況
以上