5月13日、無償資金協力実施適正会議(5月の無償一括閣議請議案件の事前説明等)が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
(外務省)
(委員)
テロ対策等治安無償で保安機材整備を行うとのことだが、本件は各国の領域をまたぐ問題であるところ、ASEAN諸国との間で知識共有や共通ルールの構築等保安関係者同士の協力はあるのか。
(委員)
自国の安全保障問題に他国が介入することへのフリクションは生じていないのか。適切なデマケを行うべき。
(外務省)
2006年9月には「アジア海賊対策地域協定(ReCAAP)」が発効し、2007年には沿岸国、海峡利用国、海運業界等利害関係者との対話と協力を促進するための「シンガポール声明」が採択されるなど海賊取り締まりネットワークは進んでいると思われる。これらの枠組みとも協力しながら、効果的な無償資金協力を実施していきたいと考える。
(委員)
直接今回の5月閣議請議案件とは関係しないが、文化無償に関し、どうして国協局が担当せず、広報文化交流部に切り離されているのか。
(外務省)
文化無償を、無償資金協力の一つのツールとして考えれば国協局の担当となるが、文化交流の一つと捉えて、広報文化交流部が担当している。。
(委員)
実務上支障がないのであればそれでいいが、文化案件は実施効果が大きいと考えているので、最大限の効果が出るように実施していただきたい。
(JICA)
JICAは文化無償の中では、博物館やサッカー場の整備のような大型施設案件の調査に関わっている。
(外務省)
地域局は、相手国との外交関係に鑑みて無償ツールと文化ツールを束ねて活用することとしている。但し、スキーム担当課同士も適切にコミュニケーションを取っていかなければならないと考える。
(委員)
水産無償案件に関し、案件採択の際に特別な考慮要因はあるか。
(外務省)
水産分野における2国間関係をも考慮した上で案件を形成・採択している。
(外務省)
(委員)
ミャンマーに関し、NGO関係者からは現地入りを拒否されることを心配する声があがっている。
(外務省)
いくつかのNGOから政府に対し、ミャンマー入国を求める申請がなされている。現地では国際機関も、アジア系職員の派遣に努めているとの情報あり。
(外務省)
今次の緊急無償実施決定は、比較的機動性を持って実施できたと考えるが、人の受け入れに関しては、救援活動に携わりたい日本国民が多くいるなかで、ハイレベルでもミャンマー政府に対し要求をしているところである。
(外務省)
緊急無償関連では、昨夜発生した中国の地震に関し、現在支援の方法も含め検討中である。(その後5月13日に総額5億円の支援を、29日に改めて5億円を上限とする追加支援の実施を決定。)
(JICA)
前回報告時から変化は殆ど無し。不落随契については、現在対応を検討中。平均入札参加企業数に関しては、施設案件はほぼ一社入札である。他方、入札しようと興味を持つ会社も増えている。工期の厳格化を緩めること、追加経費のようなリスク不安に対する資金手当てが進むことの2つが改善要因になると予想している。
(外務省)
点検と改善2007の構成は前回と同じ章立てを使って、フォローアップを行っている。今後の取組のポイントは以下のとおり。
(委員)
第一・二・三弾と進捗していることは評価できる。他方数値で計測することが難しい支援も評価の対象とすべきであり、例えば戦略的ODAが実施されているか否かも評価対象としていくべきではないか。
(委員)
国別評価においては、そういった外交的な部分も評価していこうという動きがある。
(委員)
ODAは開発のために行うものであり、外交の手段としての意義を認めない議論もあることから、「戦略性」を評価の対象としていないのではないか。
(委員)
この「点検と改善」は毎年フォローアップを行っていくべきと考える。
(委員)
国別援助計画と外交的ニーズのバランスを新JICAにおいてどう確保していくのかは課題である。国別援助計画は、その国のニーズに合った分野を対象に恒常的に議論を続ける中で作成されるものであるが、時に外交情勢にそぐわないこともあろう。特に国際会議が開催される度に打ち出される「イニシアティブ」については、各途上国の現場で政策的事項に合う案件をすぐに発掘・形成できないこともあり、「イニシアティブ」と現場のニーズをいかにつなげるかは課題。
(外務省)
外交的には機動性を重視する一方で、開発に携わる現地では現場のニーズを重視するゆえに双方向の調整が必要である。
(委員)
現場では様々な視点があるだろうがやはり経済協力は外交政策の一環である。
(委員)
被援助国の開発に貢献してこそODAである。外交判断で単発的に支援を行うことは長期的には適切でない。但し、どこの国又はどの分野を重点的に支援していくかという部分は、外交で判断すべき事項である。外務省が作成する国別援助計画は、当該国援助の外交的位置づけや支援重点分野といった基本方針の記述にとどめ、新JICAが作成する被援助国への援助方針において支援内容等をより詳しく記して、定期的に更新していくのも一案か。新JICAと外務省の間でどのように柔軟性を持って両者の連携を図りつつ支援を行っていくのかが重要である。
(外務省)
明らかに外交的判断が求められる部分と、明らかにJICAの知見が上である部分があり、そこの繋ぎ目を両者でどう調整するかしっかり行う必要がある。
(委員)
基本的には、現場と外交は乖離するものではなく、現場の知識を活用し良い案件を実施することによって良い外交ができる。
(委員)
更に別の論点ではあるが、今次の閣議請議案件はアフリカが多い。これはTICAD IVが開催されることや、世間のイメージが「援助=アフリカ」になっていることが原因と考えられるが、援助の軸は中央アジア及び南アジアを含めたアジア地域に置くべきと考える。やはり我々は、国際社会の援助の流れがアフリカに向きつつあっても基本はアジアを重視し、足場を固めるべきではないか。
(委員)
サミットに先駆け、アジアのインドを中心とするNGOらは、国際社会での援助の流れがアフリカへ移りつつあるのを受け、G8で唯一のアジアの国である日本に、援助の流れをアジアへ引き戻してほしいという意見が聞かれる。
(委員)
日本の援助総額における対アフリカ援助の比率は、ずっと1割程度。確かに、無償資金協力におけるアフリカ地域の比率は高いかもしれないが、円借款を含めた全体をみると、一カ国に一千億円単位で供与されているアジアに比べれば微々たるものである。
(委員)
現在のJICAもアフリカ重視を謳っている。
(JICA)
去年のJICA予算1600億のうちアフリカに対する支援は前年の15%から約23%に増えた。地域の大きさに鑑みても適正な水準になったと言えるのではないか。但しこのことは、ASEAN等アジアを軽視しているというわけではない。
(委員)
今後、無償資金協力を含めたアフリカ援助を拡充していくためには、なぜアフリカに協力するのかについて更に深く議論し、幅広い理解を得る必要がある。
別添1
別添2
日時:平成20年5月13日(火曜日)12時00分~14時00分
場所:外務省南289会議室
以上