2月14日、無償資金協力実施適正会議(2月及び3月の無償一括閣議請議案件の事前説明等)が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
(外務省)
(委員)
ベトナムの案件に関連して申し上げるが、一般的に言えば、地元民の生活基盤が安定することと、現地の地方政府が裨益し、産業関係者の経営が安定することとは、必ずしも一致しないものではないのか。同国への自分の経験上、森林地帯で生活している農民は、現金収入に頼らない生活を送っている。この案件についても、商業としての林業を発展させるよりも、火災で消滅した自然の森林をできるだけ復元させることを目指すとのアプローチもなかったか。このような案件を進めてゆく中で地元の人々の意見は聞いたか。
(外務省)
コミュニティ開発支援無償では、現地でコミッティを作り、住民らの意見を吸い上げながら案件を実施することとしている。本件についても、そうであった。
(JICA)
本件の実施地域には、ベトナム政府の政策によって新たにこの地に入植した人々が居住している。本件無償事業に先だって、我が国の技術協力により、植物が育ちにくい酸性の土壌にも適応性のある樹種を選抜し、育成方法の確立を行っている。技術協力の成果を活かし、森林業者(公社的性格を有する)が入植者に指導を行っており、住民にも産業関係者にも裨益効果があると考えられる。
(委員)
コミ開案件のコストが下がった理由としては、原材料費の低下、人件費の削減等があると考えられるが、主に何が理由となっているのか。(外務省)
大きく分けて、仕様の問題と業者の問題とがある。現地の仕様を積極的に活用し、現地業者を使用することによりコストが下がっている。
(委員)
コミュニティ開発支援無償は、どのようにして二国間援助案件か国際機関経由案件かを判断して案件形成を行っていくのか。また、今回の対ベトナム案件のような二国間での複合的な案件を可能にするには、コミュニティが元々しっかりしていることや、先方政府に提案力がある等の条件が前提となると考えるが如何か。
(外務省)
前者のご質問に関しては、案件実施が可能であれば二国間で行うことを原則とするも、国際機関の方が現地を熟知しており、実施に適している場合は国際機関経由で行うこととしている。後者に関しては、御指摘の通りであることに加え、先に日本の専門家が入っており、情報が十分にある等基本的な条件がそろっている場合は、やりやすいと言える。
(外務省)
本格的な二国間支援が開始されるまで時間を要する国や地域に対し、国際機関を活用し、二国間プロジェクトを行うような意図を持って支援を行っている。複合案件形成の条件としては、通常一般プロジェクト無償が、1つの分野(例:保健)に関し、1つのカウンターパート(例:相手国保健省)であるのに対し、複合コンポーネントのコミュニティ開発支援無償では地方公共団体のような団体がカウンターパートとなり、多岐の分野を調整する能力が条件となるのではないかと考える。
(JICA)
複数コンポーネントのコミュニティ開発支援無償では、相手側機関において、青写真が描けているかという点も重要になる。コミュニティ開発支援無償は、ただ病院を建設したいというものではなく、当該コミュニティ全体の底上げを図るためにはどのような協力をするか、という考え方を必要としている。
(外務省)
(委員)
マダガスカル、セネガル、ガイアナの3ヶ国に対する今次のノン・プロジェクト無償では、気候変動対策のための事業に資金を使用したということを、日本政府に事後報告させることになるのか。
(外務省)
現行のノン・プロジェクト無償は、経済社会改革努力支援を目的としており、今次の支援の交換公文(E/N)の内容については検討中である。
(委員)
ダボス会議での福田総理の新たな資金メカニズム構想では、ODAに加え、OOFや民間資金も考慮に入れたイニシアティブなのか。また、今回のノン・プロジェクト無償は、追加的に認められた資金なのか。
(外務省)
今回のクールアース・パートナーシップでは、民間資金も含めた上で、5年間で約1兆円を目標としている。
(委員)
気候変動対策支援を行うに際しては、何らかの基準があるのか。
(外務省)
全世界にとって重要課題である気候変動問題に対し、各国が協力して対応して行く必要がある。昨年12月のCOP13において次期枠組交渉のプロセスが始まったばかりであり、今後重点的に手当していく国等を見極めていくこととなると思う。
(委員)
今回の新たな取り組みの中で、我が国と途上国との政策協議について説明があったが、この協議は外交政策にかかる協議なのか、それとも、援助方針の支援案件に関する協議なのか。
(外務省)
気候変動に係る政策面での対話を深めつつ、我が国の立場に前向きな姿勢を示す国については、具体的な支援の方向性を探っていくこととなろうか。
(委員)
今回の新しいノン・プロジェクト無償を行った3ヶ国に関しては、今後、環境分野が援助計画の重点分野となるのか。途上国が重視する他の分野との兼ね合いはどうなるのか。
(外務省)
気候変動はグローバルな問題であり、途上国にとっても深刻問題であるので、ベーシックヒューマンニーズにも対応しつつ、その中で気候変動対策も重点的に実施していくことかと思う。政策協議に関するご指摘の点に関しては、相手国の政策を一新するのではなく、少しでも気候変動対策に配慮したものに変えるよう影響を与えるという意味である。
(外務省)
(委員)
緊急無償が前年度比で大きく減少しているが、大規模な自然災害等が発生した場合、この額で対応できるのか。今後更に無償予算全体が減らされた場合、これ以上緊急無償は減らせないと判断することになるのか。
(委員)
政府全体で財政改革を推進するとはいえ、ODA予算の削減には限度があり、政策的な観点からも問題であると考える。ODA予算は政府の一般会計予算のわずか1%強程度であることを、政治家は認識しているのか。また、対外的に公約している、気候変動対策のための資金メカニズムによる100億ドル支援のように、実際は新規の追加的予算が計上されていないにも拘わらず、政府がニューマネーを拠出するかのような錯覚を国民に与えてしまってはいないか。前向きなメッセージを世界に送りたい一方で、政治家と国民の感覚に矛盾が生じてしまうことは問題ではないかと考える。
(外務省)
日本社会全体で、委員の御指摘の点に関する認識が現れ始めているかもしれない。注意深く見ると、ODAの4割削減、世界第3位から5位と下落していくことは問題であるという論調が新聞等にも徐々に出始めてはいる。
(外務省)
(委員)
団体の申し入れに関し、業者は基本的に多数のプロジェクトを請け負うことで、個々のリスクの監理をしているはずである。将来的に、コスト削減の影響で、プロジェクトの平均的な単価が落ち、業者が対応できなくなるということはあり得るが、指摘のような構図は昔から存在しており、今回のような申し入れに、政府が応える必要はないと考える。
(委員)
15%程度のコスト縮減を求めるとのことだが、少ないODA予算において、なぜこのような厳しい要求がなされなければならないのか。
(外務省)
ODAでの建設事業に対する15%程度の数値目標は、総合コスト縮減率という考え方であり、同じ工事を以前と同じ基準で行った場合の仮想コストと、新しく見直した場合の仮想コストを比べることが基本的な考えである。
(委員)
コスト削減要請は理解するが、ODA事業の極度な削減に関しては、政治的な観点から見ても、弊害があるはずである。このような財政面からの要求と政治的な観点を勘案して総合的に判断すべきである。また、コスト削減への対応の一環として、プロジェクトの交換公文(E/N)を、各国毎に何年間でいくらくらいと包括的に結ぶことはできないか。ひとつひとつのプロジェクトをコスト削減の対象として切りつめるのではなく、より大きな枠組みで決定・合意することで、より柔軟に対応できるのではないか。
(外務省)
予算単年度主義を前提とした上、全体額が適正な積み上げとなっているか、如何に実行協議をクリアするか、如何に説明責任を果たすか、また、外交上複数回にわけて供与した方が望ましいという面もあり、年度間に一回だけ包括的E/Nを締結することは様々な論点がある。包括化は技術的には不可能ではないが、色々な点で整理が必要である。
(外務省)
(委員)
3点質問させて頂きたい。はじめに、政府は2005年に3年間で対アフリカODA倍増を表明しているが、今後の対アフリカODAに関する新たな目標如何?次に、貿易・投資分野における協力で、ODAとCSRとの連携強化とあるが、具体的にどのような取組が想定されているのか。最後に、昨今中国に加え、EUやインドもアフリカとの関係を重要視してきているが、TICADは他ドナー諸国が開催するフォーラムと比べ、どこが特徴と考えるか。
(外務省)
新たな目標については、現在検討中であるが、例えば無償資金協力のうち対アフリカ向けが約4割を占める中、ODA全体の予算を増やさない限り、大きな目標を掲げることは困難。今後も検討を続ける方向だが、現地ODAタスクフォースを拡大し民間に入ってもらう、情報交換・共有等が考えられる。また、TICADの特徴として、他のアフリカ開発支援を目的としたフォーラムと比べ、他ドナー諸国及び国際機関等への開放性が高いという点が挙げられる。
(JICA)
別添1
別添2
日時:平成20年2月14日(木曜日)12時00分~14時00分
場所:外務省南396会議室
以上