ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成19年度第5回会合)議事録

 12月7日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1議題別添2)。

1. 12月閣議請議案件についての説明

  • 今次請議案件は、54件のうち13件は詳細設計案件である。詳細設計案件とは、本体案件の決定を想定して相手先政府に案件の設計図を書いてもらうことである。これらの詳細設計案件の本体については、基本的には4月閣議で請議する予定である。
  • 請議案件の内訳は、一般プロジェクト18件、コミュニティ開発支援無償1件、食糧援助16件(うち9件がマルチ、7件がバイ)、貧困農民支援7件、ノン・プロジェクト無償5件、紛争予防・平和構築無償5件、貧困削減戦略支援無償2件である。貧困削減戦略支援無償は、新たなスキームであり、後ほど説明予定。主な案件について説明すれば以下のとおり。
  • タジキスタンの「クルガンチュベードゥスティ間道路改修計画」は、米国及びADBとの協調案件であり、中央アジアからアフガニスタンを経由する南方ルートの整備は中央アジア全体の発展・繁栄に重要である。
  • アンゴラの「緊急港湾改修計画」は40億円近くの案件である。
  • マリの「マリーセネガル南回廊道路橋梁建設計画」に関し、南回廊道路の一部は、国際協力銀行(JBIC)がアフリカ開発銀行と初めて協調融資を行うことにより実施されるため、更に我が国無償資金協力により同国回廊上の橋梁建設を行うことは、有償資金協力と無償資金協力との連携の観点からも注目される。
  • フィジーの「南太平洋大学情報通信技術センター整備計画」は、同大学に対し1998年に無償資金協力「南太平洋大学通信体系改善計画」を、2002年から2005年にかけては技術協力プロジェクト「南太平洋大学遠隔教育・情報通信技術強化プロジェクト」を実施しており、無償資金協力と技術協力との連携の観点からも注目される。
  • 平和構築無償のECOWAS対象の案件は、ECOWASがUNDPと協力し、加盟国に小型武器拡散対策委員会を設置し、小型武器規制の法的整備、収集・廃棄等の実施を行うプログラムに対し、我が国が支援をするものである。

(委員)

 アンゴラへの支援は、一般無償本体と、コミュニティ開発支援無償を合わせると約50億円になる。アンゴラでは他政府や国際機関等からも多くの支援が行われていると思うが、ドナー全体の協調性の観点からも、日本のODAはどのような仕切りで計画・実施されているのか。また、紛争後の現場にすぐ人が入っていくことは困難と承知しているが、支援の全体をしっかりモニタリングできる体制はあるのか。

(外務省)

 バイで実施可能な案件は出来るだけバイで行い、マルチの方が国際機関の知見を利用して効果が上がる案件については、国際機関経由で行うのが原則。国際機関経由の支援の場合、我が国の援助が適切に行われているか常にモニタリングしている。

(外務省)

 大使館の実施体制が弱い国や治安が悪い国に対して、国際機関経由の支援を行うことが多く、大使館がモニタリングに行けることは少ない。その代わり、国際機関には報告書の提出を義務付けている。平和構築支援無償とコミュニティ開発支援無償は似ているところもあるので補足すると、コミュニティ開発支援無償は平成18年度から開始され、国際機関経由の案件についてはこれまでに1件が実施中であり、5件が検討段階にある。そのうち5件は、現地事務所に日本人職員がいるため、日本の顔が見えるというメリットに加え、モニタリング等の観点からも、望ましい体制である。

(委員)

 選択と集中という観点から、アンゴラに支援を行っていると思われるが、「緊急港湾改修計画」案件に関し、なぜロビト港、ナミベ港の2港を対象として選んだのか、という点に関して伺いたい。

(JICA)

 本件はもともと開発調査から始まった案件である。アンゴラは長年にわたる内戦の影響により運輸・港湾分野は極めて劣悪な状況にあり、穀物や建築資材の多くを輸入に頼っている中で、主要港湾等の交通インフラ整備は不可欠であった。当案件は、緊急港湾復興計画調査を実施し、その中から優先順位の港への支援を行うこととしたもので、この2港を選んだ理由としては、アンゴラにおける最大規模の港であるルアンダ港は、他のドナーが支援を行っており、加えて中国等が鉄道の改修支援を行っており、ドナー間で協調・連携し、役割分担する中で本案件の2港がふさわしいとされたものである。

(委員)

 「選択と集中」の観点から、日本のアフリカ支援の中でアンゴラを今後、重点的に位置づけて取り組んでいくのか。

(外務省)

 限られたODAを戦略的に活用するためには、「選択と集中」が重要である。 アンゴラは、ポスト・コンフリクトという観点からも、豊富な天然資源を有しているという観点からも我が国として重視している国の1つである。

(委員)

 最近、中国のアフリカ支援への進出が顕著であると聞くが現状如何。

(外務省)

 中国はアフリカ支援にあたり、スーダンやアンゴラ等を資源獲得に直結した援助を行っており、基礎生活分野等を重視した我が国の援助とは性質が異なると言える。

(委員)

 中国は資金のみならず、人的資源も豊富。日本は、あえて中国と対立姿勢で臨むことは避けた方がいいのではないかとも思う。

(外務省)

 我が国は、中国等が新興ドナーとして資金その他の形態によりアフリカ開発に積極的に関与する姿勢を示していることは歓迎。他方、その関与は、透明性が確保される等国際的な規範に則って行われなければならないとの立場。

(委員)

 日本と中国が競合してしまうことはしょうがないことだと考える。国際政治のパワーバランスの観点からも、中国が行く場所を避けるのではなく、日本も行くべきではないか。中国のように資源を目的とした支援は一過性のものであるのに対し、日本の支援のように何年も続けていく中で味が出てくる支援は価値がある。今後も継続し、日本に望ましい環境を作っていくべきである。

(外務省)

 日本の援助は相手国の人権・統治状況等に注意を払いつつ政策協議も行ってきている。DACでは、DAC側と中国等BRICSとの間の対話を深める取組みを日本が中心となって2年前から進めている。対話や透明性は必要であり、引き続きマルチ、バイ両方での働きかけが必要である。

(委員)

 タジキスタンに対する「クルガンチュベードゥスティ間道路改修計画」についてだが、アフガニスタンのどこまでつながるのか。また、アフガンの安定に繋がるメリットとは何か。

(外務省)

 アフガン全土を広くカバーするハイウェイ網(リングロード)につながる。この計画により、物流と治安の両方に効果があると考えている。

(JICA)

 本案件は、アジアハイウェイ構想の一部であり、アフガニスタンのみならずアジア地域全体に裨益することを目的としている。

(委員)

 バヌアツに対する「ポートビラ港埠頭改善計画」に関し、限られた財政の中で当案件は高価すぎるのではないか。費用対効果の観点からどうなのか。

(外務省)

 国、人口の大小に関わらず、港や空港などの設備は目的達成のためにある程度の資金投入が必要となる。本件も、バヌアツの安全基準や、定期的に来る船舶の大きさ、頻度など様々な点を考慮せねばならない。小国のインフラ案件は概して対人口比で大きくなる傾向があるが、案件の目的、物理的効果のみならず、外交的観点をも加え、総合的に判断している。

(外務省)

 漁港港湾への協力を小規模化することも検討はしたが、余り小規模化すると人件費や管理費等の占める部分が半分になるなど、案件規模として適正なバランスが取れなくなることもある。空港や港等は、ある程度の投資をしないとかえって非効率な使いづらいものとなるので然るべき水準の確保は必要と思われる。

2. 無償資金協力事業実施のJICAへの移管(検討状況)

(外務省)

  • 2006年11月に成立した「独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律」に基づき、2008年10月より新JICAの下で実施されることとなる無償業務フローの新制度設計上のポイントとしては以下の通り。

    (1)案件形成段階において、JICAの開発援助に関する知見を最大限活かす。外務省が案件の決定を行った後、実施はJICAが行うという流れである。

    (2)援助と外交は密接に関連しているため、外務省・JICAの相互連携は不可欠だが、JICAと外務省の役割分担をこれまで以上に明確にする、また、両者の折衝回数を減らし、シンプルな意思決定の実現を図る。

  • 新制度においては、案件形成の段階から3スキームの連携が可能となり、フレキシブルなプログラム構成が可能となる。また、これまでは円借款と技術協力は補い合う関係が必ずしも十分ではなかったが、これも改善する。
  • 工期の単年度制約が外れることにより、柔軟な工期・納期を確保することが可能となる。また、プロジェクト開始時期を調整する必要がなくなり、これまでより迅速に案件実施の決定が可能となる。
  • 従来、供与限度額と契約額との差が不用額として生じていたが、新制度においては、財務省との協議は必要ではあるが、翌年のプロジェクトの財源として活用が可能となる。

(委員)

 案件採択は外務省が行うという認識でいいのか。外務省の無償資金・技術協力課と新JICAの関係は、現在の有償資金協力課とJBICのような関係になるのか。

(外務省)

 案件採択は引き続き外務省が行うが、案件形成についてはJICAの知見等に最大限委ねたい。また外務省は、閣議請議へ向けて、直前でなく、より前の段階で、外交要請、国際情勢に照らし、適切な供与タイミング、予算状況を考慮した案件規模等について確認を行う。

(委員)

 技術協力と無償資金協力を連携させることを初めから意識した上での案件形成ができるようになるのか。

(JICA)

 現地ODAタスクにおいて3スキームの一元的プログラム化を進めることで、シナジー効果が期待される。また、評価に関しては、個別のプログラムのベンチマークをある程度設定したうえでモニタリングをし、プログラム全体及び個々のプロジェクトを検査するという二層構造が可能になると考えている。

3. 平成19年次会計検査の概要報告

(外務省)

 参議院決算委員会の検査要請に基づき会計検査院が行った検査及び会計検査院が毎年行っている特定検査事項として無償資金協力に関し行われた検査状況の2つに関し報告する。

(1)参議院決算委員会の検査要請に基づき会計検査院が行った検査状況

  • スマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について、検査を行った結果、契約締結率はモルディブ、スリランカでは90%以上となっており、インドネシアでは昨年度の58%から89%へ上昇した。
  • 我が国政府開発援助における無償資金協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約(落札率)に関する会計検査の結果(来年度は技術協力に関して実施予定)については、現在の入札参加者は必ずしも少ないとは言い切れないものの、1者だけが参加した入札では競争性が確保されているとは言えないため、より一層の努力を引き続き行っていく。落札率についても、引き続きホームページ上で公表するなどの努力を行っていくことが望まれる。
  • ベトナムにおけるベトナム交通運輸局第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助については、無償資金協力の供与にあたり、正規の手続きに則っていて、PMU18が我が国の資金を直接受領する仕組みとはなっていない。他方、JICAにおいては、個別の橋梁ごとの建設費及びその推移を的確に把握するための資料の準備や完了報告時の出来型の確認の徹底をより一層図る必要があると認められる。

(2)会計検査院の特定検査事項として、外務省を対象に行われた無償資金協力に関する検査状況

  • 11ヶ国における無償資金協力58事業(贈与総額358億5760万余円)。うち、17事業は草の根・人間の安全保障無償資金協力。
  • 3ヶ国3案件について、援助効果の発現が不十分として掲起された。

4. 貧困削減戦略支援無償の紹介

(外務省)

  • 今年度新たに設けられたスキームで、2案件総額10億円程度を請議する。背景としては、99年に世銀及びIMFが債務削減及び融資供与の条件として導入を要請した、貧困削減戦略文書の作成進行に伴い、我が国としてはこれまでのプロジェクト型支援に加え、財政支援型支援を行い、異なる援助手法を相互補完的に組み合わせた支援効果の拡大を狙うものである。
  • 支援対象国は、相手国の情勢・PRSPの進捗状況・財政支援枠組み・我が国プロジェクト型支援との補完の観点・我が国現地タスクフォースの体制・相手国における援助協調に対する考え方等を総合的に勘案して決定してきた。
  • 実施方法としては、一般財政支援(今次閣議請議ガーナ案件が該当)・セクター財政支援・コモンファンド型財政支援(今次閣議請議タンザニア案件が該当)の3形態から被援助国における上記の観点等を踏まえ、決定する。

(委員)

 タンザニアを選定した理由としては、ノン・プロジェクト無償等を活用しての実績があったためか。また、農業セクターへのコモンファンド型支援ということであるが、円借款で一般財政支援、無償でセクター支援という役割分担を想定しているのか。ガーナへの一般財政支援については、現行の国別援助計画改訂時にも議論した点であり、現地の要望をふまえて実現したことは喜ばしい。政策インプット・モニタリング等の点で現場の体制が重要になるが、現在でも、ガーナ財務省に専門家を派遣しているのか。

(外務省)

 タンザニアについては、委員のご理解で間違いない。ガーナ財務省への専門家については、現在は派遣していない。

5. コンサルタント契約状況・入札実施状況

(JICA)

  • 本体契約認証がされていない案件もあるが、これは被援助国の治安状況、入札不調等の理由からである。
  • 落札率が高い状況を検査院に指摘されたことに対し、様々な取り組みが行われており、少しずつ改善する傾向にある。


別添1

出席者

  1. 無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
    1. 大野 泉 政策研究院大学教授
    2. 小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
    3. 敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長
    4. 杉下 恒夫 茨城大学人文学部教授
    5. 西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
    6. 星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
  2. 外務省
    7. 柴田 裕憲 国際協力局無償資金・技術協力課長
    8. 阿部 康次 国際協力局国別開発協力第二課長
    9. 松浦 純也 国際協力局無償資金・技術協力課企画官
    10. 板垣 克巳 国際協力局無償資金・技術協力課アジア・大洋州班長
    11. 近藤 茂 国際協力局無償資金・技術協力課ノンプロ・食糧援助班長
    12. 松井 敬一 国際協力局無償資金・技術協力課業務班長
  3. 国際協力機構
    13. 中川 和夫 無償資金協力部長
    14. 正木 寿一 無償資金協力部管理・調整グループ管理チーム長


別添2

無償資金協力実施適正会議(平成19年度第5回会合)

日時:平成19年12月7日(金曜日)12時00分~14時00分
場所:外務省南396会議室

議題:
  1. 12月閣議請議案件についての説明
  2. 無償資金協力事業実施のJICAへの移管(検討状況)
  3. 平成19年次会計検査の概要報告
  4. 貧困削減戦略支援無償の紹介
  5. コンサルタント契約状況、入札実施状況

以上

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