10月12日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
(委員)
既存のスキームの中で、新JICAに移管されるものは一般プロジェクト無償のみか。
(外務省)
外務省に引き続き残るスキームは、ノン・プロジェクト無償、草の根・人間の安全保障無償、日本NGO連携無償、テロ対策等治安無償、緊急無償、草の根文化無償の各スキームであり、それ以外はJICAに移管する方向で調整中。
(委員)
環境プログラム無償の新設は、気候変動問題等を意識してのことだと思うが、これと「新たな資金メカニズム」の構想は関連性があるのか。
(外務省)
環境プログラム無償は、気候変動等を念頭に置いた試みである。
(委員)
「環境プログラム無償」の「プログラム」とは何を指すのか。
(外務省)
機材供与や人材育成など、複数のコンポーネントを組み合わせるということである。
(外務省)
第33回会合において、コスト削減・効率化への包括的な検討について御議論頂いたが、その後も当課とJICA無償部とで検討を進めてきたところ。本日は中間報告をしたく、委員の皆様のご意見、お気づきの点などをできるだけ取り入れて、今後の作業を進めていきたい。
(外務省)
タスクフォースによる意見・提言の聴取と議論の結果、うかび上がってきた論点を以下のとおりに中間報告したい。
(1) 案件形成段階の調査における検討課題
統合JICAにおいては、3スキームを一体化させた調査を行うこととなっているが、3スキーム(技協・有償・無償)のそれぞれの長所が活きるような連携を心がけたい。無償においても、より良い案件形成のために調査を充実させることが重要である。他方で、調査に要する期間や費用とのバランスが課題である。
(2) 案件の基本設計段階における課題
案件の基本設計の段階においては、適切な計画を綿密に立てる必要がある一方、実施の段階で臨機応変な対応が可能であるような制度とすることとのバランスを考える必要がある。また新JICAにおいては、国の予算制度にしばられない柔軟な工期が可能となるが、不必要に工期が長くなることは避け、予算制約の範囲内で、効率的・効果的な案件規模を選択すべきである。
(3) 「日本らしい」案件の形成
「日本らしい」案件を形成することを心がけるべきで、むやみにアンタイド化を進めるべきではないとの指摘もある。日本の顔を見せる必要性と、コスト削減、事業が効率的に進められるか等の諸要素のバランスが課題である。
(4) 予備費の導入
想定外の要因(自然災害、治安、物価・為替変動等)による追加的支出の要請にどのように応えるかとの課題がある。必要に応じて、柔軟・効果的な対応をすべく予備的な費用導入の必要性について議論を深めることも重要。
(5) 入札における競争性の向上
より多くの者が入札しやすい環境整備のため、引き続き現在の努力を継続し、新規業者の参入を促す働きかけを継続する。
(6) 施工段階における管理体制
JICAと海外コンサルティング企業協会との間で行われている、設計変更の手続き見直しの議論を進めてゆく。
(7) より広範な国民参加
より多くの事業者、より多くの国民の無償事業への参加を広げることが重要との指摘を踏まえつつ、(5)と同様の措置をすすめ事業者の拡大を図りつつ、知見のあるNGOが、案件形成段階から主体的に関与できるよう環境を整える具体的施策の検討を行う。
(委員)
冒頭に「"無償に関する"コスト削減」とあるが、JICAの開発調査の検討を始め、コスト削減は、3つのスキーム全体に関わることである。無償のコスト削減は、3スキーム全体のコスト削減の中で検討した方が良いのではないか。先日報告を受けた有償資金協力の話と重なる部分がある。
(外務省)
上流部分の調査(報告案の(1)(2))に関しては、3スキーム共通の課題であり、どちらかと言えば残りの論点((3)から(9))に関しては無償に特に焦点を当てた論点と捉えている。
(委員)
一時期、無償資金協力の不透明性に焦点を当てた新聞論調が見られた。それを踏まえた上での、今回の報告案だと理解している。
(委員)
互いのスキーム同士が調整しながら検討してもらいたい。
(委員)
今回の検討を、点検と改善の一部に含めるのと並行して、無償について別途の報告書を出していくのか。
(外務省)
「点検と改善」は、ODA全体の取り組みである。本件は、そのうちの一部である無償のコスト縮減について焦点を当てて議論頂いているものであり、ODA改革の流れの中に位置付けつつ、然るべく公表したい。
(委員)
イギリスやアメリカでは無償は基本的にはタイドである。日本が敢えてアンタイドにしなくてはならないという外からの圧力はあるのか。
(外務省)
一般無償を全てタイドからアンタイドにすべきとの圧力があるわけではない。他方で、コスト削減は重要であり、その一環として昨年度から、コミュニティ開発支援無償を導入した。この制度においては、現地調査や現地コンサルタントの活用を可能にすることによって、コスト削減を目指している。
(委員)
アメリカはほとんどがタイド案件であるのに対し、ヨーロッパは一定の限度でアンタイドを進めてきている。様々な意見があるも、国際的な流れはアンタイドが主流になりつつあると言える。日本としても、有償資金協力ではアンタイドが進んでいるが、無償はどこまで進めるべきか議論のあるところである。
(委員)
経団連は「日本らしさ」を示す必要性を主張しており、何も日本政府自らがアンタイド化を推し進める必要はないのではないか。
(外務省)
DAC統計上、我が国ODAは調達先アンタイドなのでアンタイドと区分されており、日本もヨーロッパ諸国とほぼ同等のアンタイド率である。
(委員)
国際社会の流れに乗らずに、日本らしさを残した方が良いのではないか。
(JICA)
我が国一般無償は、契約者タイド、調達先アンタイドであるが、結果として、世銀や他ドナーが行う案件と比べて、日本のコストが高すぎるとの指摘がある。
(委員)
予備費の導入の議論については、予備費ありきとの考え方を前提に導入を考えるのではなく、想定外の事態には、まず設計変更や、契約変更等の種々の工夫をした上で、どうしても追加費用が必要な場合に対処するとの考え方とすべき。
(JICA)
予備費導入は、業者のリスクを軽減し、参入業者を増やすという効果もある。
(外務省)
想定外の自体に備えるオプションの1つとしての予備費と捉えていきたい。
(委員)
案件実施のため、立退かざるを得ない住民への補償金は、基本的には相手国政府の負担であるが、工夫できないものか。住民への補償金のような問題で、日本の援助全体のイメージが悪くなるのは良くないと考える。
(JICA)
日本の援助には、自助努力支援というのが基本理念にある。住民への補償も含めて全てを日本が援助することは、この理念と合わない。
(委員)
現地に赴くと、補償金程度であれば日本政府が出せばいいのではないかと感じるが、霞ヶ関から見ると自助努力を促すという考え方も一理あり、難しい問題である。
(外務省)
無償とは、まる抱えで援助という意味ではない。自助努力の支援の観点は重要であり、本件は、公務員等の育成も視野に入れたキャパシティビルディングを一般プロジェクト無償の実施を通じて行っているという意味もある。
(外務省)
10月閣議では、計42件194億円強を予定している。
(委員)
アチェに関し平和構築が重要になってくると考えるが、インドネシア政府に拠出するのではなく、IOMが実施するプログラムに資金をつけるのか。治安の問題もある中で、どういう体制で行うのか。
(外務省)
本案件は、IOMに対して行うもの。アチェは、津波災害の際もそうであったように、国連機関がほとんど活動できていない地域である。その点IOMはアチェにおいて地道な活動を続けており、インドネシア当局からの信頼もある。今回、政情を落ち着かせることを目的に、IOMが元政治犯や戦闘員を含めた社会復帰プログラムをインドネシア当局と協力して作ったものである。JICA職員はアチェには入っていない。ただ、IOMも日本に配慮し、日章旗をつけた広報、邦人職員の活用等で日本の支援をアピールしている。安倍前総理のインドネシア訪問の際には、ユドヨノ大統領が日本の支援に対する感謝を述べた。今後も、国際機関経由で支援を行う場合、邦人職員をできるだけ活用してほしいと要請していきたいと考えている。アチェにおいては、草の根・人間の安全保障無償は行っているが、大々的なものはまだない。国際機関経由の支援をうまく使いながら、バイにも繋げていきたいと考えている。コンゴ民、南部スーダン、リベリアでも同じような試みをしている。JICAの技術協力と組み合わせられれば、より好ましい。
(委員)
確かに、平和構築の場合だとどうしても国際機関経由の支援が必要になってくると思われる。
(委員)
供与する資金はIOMからインドネシア政府に渡ることになるのか。末端の現場では、独立アチェ運動(GAM)勢力が強いと思われるが、透明性の問題や実施後の検証などはどうなっているのか。日本に限らず、国際的に問題となっている事項だとは思うが、日本も考えていかなければならない。
(外務省)
プログラムの実施はIOM職員とアチェの社会復興省が行う。GAMの動きがドナー国の意向に沿ったものなのか、政治的に使われないかどうかということは、IOMと共にチェックしていくことになる。
(外務省)
IOMと協議する、アチェの社会復興省は優良な機関であり、同省からの情報をしっかりと取って検証していく。
(JICA)
(外務省)
(委員)
ミャンマーに対し、余り厳しい姿勢をとるとミャンマーは一層中国の方へ行ってしまうため、外務省としては現政権に対し余り厳しい姿勢で臨みたくないという面があるのではないか。
(外務省)
政府としては、ミャンマー情勢を注意深く見守りつつ、案件内容を個別に慎重に吟味していく考えである。
(委員)
中国のミャンマーに対する援助の額は日本の額をはるかに越えており、ミャンマーは事実上、既に中国に相当近いと思う。そうすると、日本がミャンマー支援を積極的に行っていく必要が果たしてあるのか疑問であり、日本はもう少し抜本的な考えを立てる時期にきていると言える。
(委員)
「日本・ミャンマー人材開発センター建設計画」の取り止めの決定はいつされるのか。忘れた頃に取り止めするのでは効果がないから、実施しないとするならできるだけ早くした方が良い。
(外務省)
できるだけ早期に方針を確定したい。
(その後、10月16日高村大臣より取り止めを発表)
別添1
別添2
日時:平成19年10月12日(金曜日)12時00分~14時00分
場所:外務省中央153会議室
以上