ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成19年度第3回会合)議事録

 7月13日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1議題別添2)。

1.無償事業に関するコスト削減・効率化の検討状況

(外務省)

 従来より、無償資金協力の諸手法の活用を通じ、コスト削減のための取り組みを推進しているが、本年3月に発表した「点検と改善2006」では、無償資金協力について、“外部の知見を積極的に活用しつつ、事業の質の確保を前提とした新たなコスト縮減への考え方、基本設計の審査体制、施行段階における管理体制、全体行程の期間短縮等について包括的な検討を行い、平成19年10月を目処に提言を取りまとめる”ことを意思表明している。これに従い、JICAと外務省無償技協課でタスクフォースを立ち上げた。これまで、関係の諸団体からヒアリング等を行ってきている。
 現時点でまとめると、主要論点として
 1) 基本設計の審査体制
 2) 施工段階における管理体制
 3) 予備費の導入
 4) 入札における競争性の向上
 5) NGOの関与
 6) 新たなコスト縮減の考え方
 が挙げられる。
 これらに関しては、改善の方向で検討が進んでいる論点もあれば、具体的政策につなげることが必ずしも容易ではない論点もある。

(委員)

 「調達」に関しては1)か2)のどちらに分類されるのか。以前日本には「調達」のプロがいないことが問題であったが最近は改善されている。「調達」のやり方の改善によって、良いものを安く購入することができ、ひいては事業の質の向上につながるのではないか。

(外務省)

 コスト削減の観点から、重要な御指摘。6)にある考え方は、内容の質とコストとのベストバランスを考慮していくということ。悪かろう安かろうでは意味がない。

(JICA)

 JICAでは1)設計段階(機材・施設もの)2)入札時3)入札会の適正さ4)施工管理(コンサルタントの精度)に重点を置いており、これらを総合的にチェックしていくことで質の向上につながると考えている。

(委員)

 「コスト削減」と「日本の旗」を示すこととの両立はどのように考えているか。

(外務省)

 「コスト削減」と、日本の旗を示すことのバランスが必要と考えている。5)に関しては、NGO連携無償はNGOからの提案型である。一般無償を含めて、先方政府から出てきた案件を実施する場合には委託型になり、提案型ではない。「参加型」などの言葉を使用することにより、幅広くカバーできるのではないか。

(委員)

 業者は果たしてコストダウンに応じるのか。「旗」=「タイド」にしてくれということにはならないのか。

(JICA)

 JICAとしては、無償の制度自体が改善され、業者にとって、魅力のある参加ができるようになるためには何が必要であるかを聞くなどして、努力している。

(委員)

 ミクロレベルでの改善も大事だが、予算制度全体の話として、財務省などを巻き込んで大きい視野でとらえないといけないのではないか。

(外務省)

 指摘された経済協力の根本的な見直しについては、別の然るべき場で議論することである。我々はまず無償事業について、コスト削減をやらなくてはいけないと認識している。又、個々の事業におけるコスト削減とは別に、コミュニティ開発支援や草の根無償などと、日本企業と組んで行う一般プロジェクト無償とのバランスをどうするかなどといった、より大きな議論に関しては、「日本の顔が見える」支援という観点もあり、また官民連携の必要性が指摘されている現状で、一般プロジェクト無償を大幅に減らすという可能性はないと思っている。一般無償が続いていくという前提のもとで、コスト削減を考えていく必要がある。

(委員)

 本課題に対しては、ミクロマクロレベルでたくさんの切り口がある。

2.NGO連携無償、JPF等

(外務省)

  • NGOは、現地の状況に応じたきめ細かい援助、迅速・柔軟な緊急人道支援、顔の見える援助、政府では届かない地域への援助が可能となるといったメリットがある。
  • 昨年の骨太や自民党外交力強化特命委員会でも触れられたように、昨今NGOとの連携が話題になっている。自民党の特別委員会の趣旨は、外務省を強化するという意味ではなく、NGOも含めた様々なプレーヤーを活用し、外交力強化のためのオールジャパン体制を構築するとし、NGOを外交活動のパートナーにするという考えである。
  • 日本のNGOは欧米と比べて財政基盤や組織力が脆弱であるが、成長の過程にあることは事実である。人材育成=能力開発、NGOが参加できるODA事業の拡充、国際機関との事業連携を通じて、日本のNGOの能力強化を図るとの観点から、NGOと連携に向けた5カ年計画を策定した。この目的としては、日本のNGOが国際競争力を持った国際NGOに成長して頂くことにある。

(委員)

 89年より外務省からのNGO支援が始まったと記憶しているが、NGOの役割として、政策自体に提言していくという利点があると思う。先のG8サミットでも明らかなように、NGOは世界に提言していくという力がある。特に環境・貧困開発・人権平和を担うべきである。NGOの提言に対する窓口となるのはどこになるのか。

(外務省)

 日本のNGOの形態にはアドヴォカシー型、ネットワーク型、開発協力型、緊急人道支援型がある。アドヴォカシー型のNGOとの定期協議の場であるODA政策協議でNGOより様々な提言がなされている。例えば、フィリピンの政治的殺害に関するNGO側の提言を政府も取り上げ、フィリピン政府に申し入れた経緯がある。G8サミットやTICAD IVに関するNGOとの協議については、基本的には経済局やアフリカ審議官組織が対応しているが、ODA政策協議で議論することも可能である。

(委員)

 NGOのキャパシティビルディングまで担ってしまうと、NGOの「N」がなくなってしまうのではないか。どこでラインを引くのか担保するべき。キャパシティビルディングに対し、NGO側からの抵抗はないのか。

(外務省)

 我々の目指すところは、日本のNGOが国際NGOに成長してもらうことにある。今後5年間で能力向上に努め、資金の調達も民間や国際機関より行われることが望ましい。最近、企業のCSRを背景として徐々にではあるが、企業とNGOの連携が進んでいる。

3.7月閣議請議案件についての説明

(1)7月閣議について以下の通り説明がなされた。

(外務省)

 パレスチナノンプロ無償に関しては、7月閣議ではなく個別閣議での請議予定である。

(イ)ミャンマー「日本・ミャンマー人材開発センター建設計画」は、18年度に物価の上昇により入札が二回も不調になったセンターの建設プロジェクトである。

(ロ)インドネシア「鳥インフルエンザ等重要家畜疾病診断施設整備計画」は、これまでも技プロや専門家派遣がされてきたプロジェクトであり、バイオセイフティレベルを上げるための施設や機材供与のプロジェクトである。

(ハ)カンボジア「第二次地雷除去活動支援機材開発研究計画」は、「研究支援無償」スキーム自体の目的は、研究者への支援だが、当計画では我が国で作られた地雷除去機の実施試験を行う経費を支援するもの。地雷分野はオタワ条約の頃から重点的に取り組んできたものである。地雷関連の我が国の支援は全世界で現在まで160~170億円ほどとなっており、その50億円強がカンボジアへの支援である。

(ニ)パレスチナ支援は食糧援助、貧困農民支援とノンプロ無償を含め合計約20億円の無償支援を行う。

(ホ)7月閣議分の文化無償は、機材3件、機材・施設1件である。

(2)閣議案件に関する質疑応答は以下の通り

(委員)

 ミャンマーの日本・ミャンマー人材開発センターに関し、出来上がった施設の所有権はミャンマーに帰属するのか。所有権が相手国政府に属することにより、日本側の意図が伝わらないということはないのか。ベトナムでは、同様の案件につき、ベトナム政府側がアカデミックな視点で使っていきたいという意見であるのに対して、外務省は両国の今後の経済関係も含めプラクティカルな視点を持っている。相手政府のやる気があればあるほど日本の意図と違った方向に行くという齟齬が生じてしまう。むしろ日本の方が譲歩して、相手国にあわせ、運用に関し寛容になるべきではないか。

(外務省)

 日本センターなど、日本との協力が援助の名称になっているものがいろいろあるが、中国の日中青年交流センターを始め、供与した後の継続的な活用において、概して同様な問題がある。日本の支援の前提は自助努力支援であり、相手国政府がきちんとやっていくことを前提に供与するものである。従って、ミャンマーのセンターであれベトナムのセンターであれ、施設の運営主体は相手国政府ということになる。他方、相手側が全く自由に使える訳ではなく、当初の約束と違った使われ方はやはり困る。このようなプロジェクトにおいては単に施設を供与するだけでなく、大抵専門家派遣等の技術協力と組み合わせて行うことが多いが、技術協力も最後は相手国政府に任せることを前提としているので、未来永劫に協力し続ける訳にはいかない。日本との関わりが薄くなってからも、日本との関係を大事にしていってほしいが難しい問題である。ベトナムも、当初日本と合意した範囲内で活用するのは適切だが、あまりにもかけ離れたことを実施することは困る。日本としても供与後も関与し続けることが大事である。

(委員)

 ラオスのノンプロ案件に関し、最近タンザニアを始めとするいくつかの国では無償と借款が並行して進んでいるケースがあると聞いている。同じ財政支援内での円借と無償のすみ分けはどう行われているのか。

(外務省)

 ラオスに対する財政支援についても円借がいいのか無償がいいのかという議論があったが、効果的に見て両者の間に違いはないと思う。詳しくは国別二課の見解を聞いてもらいたいが、基本的には相手国の債務負担能力の問題だと理解している。なお、今回のラオスのノンプロ無償は機材購入のための資金援助であり、直接財政支援とは別のもの。

(委員)

 フィリピンの地方電化計画に関し、トレードオフなのかもしれないが、経常的赤字が地域を圧迫することはないのか。貧困地域に、これから継続してコストがかかるものを作って大丈夫なのか。

(外務省)

 こうした協力を考える際には、事前に住民の料金負担と実施機関のエネルギー省の実施能力、維持管理能力を確認している。うまく運営されるかどうかの確認を随時行っていき、フォローアップを技術協力とセットで行っていくのも一策。

(委員)

 マクロ的な外交政策に関わるため、無償資金協力実施適正会議において論点とすべきか分かりかねるが、分断国家に対して支援を実施するにあたり、パレスチナのみに集中して支援することは妥当なのか。対立を助長するのではないか。

(外務省)

 ガザへの支援をするのかは国際社会全体で今後も議論すべき議題。ただ、援助を必要としている人々がいるのは確かであり、例えば、国際機関が中心となることも一策。一方、我が国政府としては、PAを支援するという政治的なメッセージはクリアにしている。支援は民主主義を実効化するためであり、対立を助長するということにはならないと考える。

4.コンサルタント契約状況、入札実施状況

(JICA)

 年度で見ると、施設案件については、徐々にではあるが落札率が低下している傾向が見られる。今後とも注視していく。

5.19年度無償資金協力におけるプロジェクト・レベル事後評価の実施

(外務省)

 平成17、18年に続き、3年目の評価であり、供与限度額10億円以下の案件を含めて約120件を予定。平成18年と同様、内部評価、二次評価、外部評価を行い、取りまとめた上で、本会議にも報告する予定。


別添1

出席者

  1. 無償資金協力実施適正会議委員(50音順音順)
    1.大野 泉 政策研究院大学教授
    2.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
    3.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
    4.杉下 恒夫 茨城大学人文学部教授
    5.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
    6.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
  2. 外務省
    7.和田 充広 国際協力局無償資金・技術協力課長
    8.松浦 純也 国際協力局無償資金・技術協力課企画官
    9.板垣 克巳 国際協力局無償資金・技術協力課アジア・大洋州班長
    10.近藤 茂 国際協力局無償資金・技術協力課ノンプロ・食糧援助等班長
    11.松井 敬一 国際協力局無償資金・技術協力課業務班長
    12.寒川 富士夫 国際協力局民間援助連携室長
    13.佐藤 啓子 広報文化交流部文化交流課文化無償班長
  3. 国際協力機構
    14.中川 和夫 無償資金協力部長
    15.正木 寿一 無償資金協力部管理・調整グループ管理チーム長


別添2

無償資金協力実施適正会議(平成19年度第3回会合)

時間:7月13日12時00分~14時00分
場所:外務省(南庁舎396会議室)

  1. 無償事業に関するコスト削減・効率化の検討状況
  2. NGO連携無償、JPF等
  3. 7月閣議請議案件についての説明
  4. コンサルタント契約状況、入札実施状況
  5. プロジェクト・レベル事後評価の実施

以上

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