5月8日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
(外務省)
(1) 本年、保健タスクフォースを立ち上げた。その背景は、保健分野の協力が複数の課にまたがっていたことがあげられる。二国間のプロジェクト実施は無償資金・技術協力課、WHOなどの国際機関との協力は専門機関課が担当しており、それぞればらつきがあった。ODAにかかる予算が削減される中、バイとマルチを含めて戦略的に実施することを目的として、タスクを設置することとした。必要に応じてタスクメンバー以外を招聘し議論を行っているところである。
検討の現状としては、大きく分けて以下の4点である。
(イ)ポリオ撲滅に向けた支援として、アフリカ、特にナイジェリアに対して支援を実施すべく検討を行っている、
(ロ)平成19年度のユニセフ経由の一般プロジェクト無償の更なる効果的実施を目指して、実施方針に関する検討を行っている、
(ハ)鳥・新型インフルエンザ対策支援のあり方について検討を行っている、
(ニ)TICAD IVをにらんだ保健分野の戦略を検討している。
(2) 今後の検討すべき課題としては、「保健と開発」イニシアティブの資金的コミットメントを着実に実施していくことや、予算が削減される中で重点地域・分野を絞り込んでいくべきと考えている。例えば、アフリカにおいては、プライマリーヘルスケア、エイズ、ポリオ対策に特化し、アジアにおいては鳥インフルエンザに特化することなど。また、分野においては、三大感染症対策支援、ポリオ、新興感染症に特化していくことを考えている。
(3) ポリオは天然痘に告ぐ撲滅可能なものである。2000年までに撲滅できる予定であったが実際は達成できていない。我が国においても、他機関と協調しつつ、協力を実施してきており、再度撲滅目標年を2005年に再設定したが、残念ながら撲滅にいたっていない。現在、原生株があるのは4カ国のみであり、輸入株の大部分はナイジェリアに起因しているといわれている。そのため、世界的にナイジェリアに対する対策が必要不可欠といわれている。
(委員)
今年から分野別のタスクを作っているということで、それは外務省においては画期的だと思う。外務省として戦略的に実施することはきわめて重要である。保健タスク以外でもタスクができているのか。タスクのJICAを始めとした他機関との連携の可能性やその現状は如何。
(外務省)
気候変動分野やNGO支援においてもタスクが発足している。また、他機関との連携について、JICAにも分野別のタスクがあり、協議には毎度参加してもらっている。また、ユニセフやJBICにも参加してもらっている。
(委員)
国別の予算戦略とともに、セクターに対しての予算戦略についても検討するべきではないか。
(外務省)
当課でも国別課や多国間協力課との協議をしながら実施している。今回はナイジェリアのポリオ対策に11億円の支援を行うこととしたが、予算削減の中、メリハリをつける必要があると考えている。
(JICA)
(1)水産無償に関する研究について、
(イ)本研究においては「漁村に生活基盤を置く人々の多様なニーズに応えるためのアプローチを提言すること」を目的としている。これまでの水産無償による協力は、水産業振興や安定した食糧供給が主目的であったが、本研究の結論においては、人間の安全保障の観点から、漁村地域の振興もまた水産無償の目的として捉えている。つまり、これまでの、水産センターや水揚げ場の建設だけではなく、漁村振興に資する協力として、村内インフラや道路建設なども含めて検討を行っている。なお、水産無償の実施にあたっては、プログラム化を推進することが重要である。
(ロ)報告書をまとめるにあたっては、JICAや外務省に加えて外部有識者にも参加いただいている。また、セネガルやマーシャルにて現地調査を行っている。
(2)貧困農民支援に関する研究ついて
(イ)本研究においては「貧困農民に一層効果的に裨益するものとなるよう、貧困農民支援の制度、実施方法を改善するための具体策を提供し、報告書に取りまとめること」を目的としている。
(ロ)本研究の結論は、持続的な食糧生産を目指すとともに、貧困農民の自立支援も目指すというデュアル・アプローチが重要と提言している。また、総予算が限られている中での継続的な援助実施を可能にするために対象国を絞込むことや、資機材を確実に貧困農民に届かせるために、必要に応じた技術協力との連携なども提言として盛り込んでいる。
(ハ)一部は制度改善を含むものではあり、本提言は外務省に提出するものであるが、JICA自身で取り組めることは取り組んでいく所存である。
(委員)
貧困農民の定義は。
(JICA)
JICAにおいては、貧困の定義を「人間が人間としての基礎的生活を送るための潜在能力を発揮する機会が剥奪されており、あわせて社会や開発プロセスから除外されている状態」と定めている。貧困農民支援は、1983年には300億円強の予算規模であったが、現在は50億円程度である。
(委員)
そうであると、どこを優先的に行うのかを定めるのが難しいと思われる。一定の基準がないと実施のときにもめる可能性がある。
(JICA)
確かにそのとおりである。例えば見返り資金の積み立てについて、貧困農民が多くいるところに対して2KRを実施すると、見返り資金が期待できなくなることも考えられるため、一定量は無償で対応してもいいのではないかと思う。
(委員)
水産無償については、政策的なものであり、問題案件も多いのではないかと思われる。その中で、今回の提言のある漁村振興も含めていくと、また予算的に拡大が図られる結果となり、押さえ込みが効かなくなるのではないか。
(外務省)
かつて100億程度あり、10億円以上の施設案件を6,7案件実施することができたが、現在は50億円規模で3,4案件しか実施できない。予算の削減に対して、水産庁は当初予算の拡大を求めてきていたが、それが困難であることを理解すると、漁場の建設などではなく、3~4億円程度の漁村振興的な案件形成にシフトしてきている。今回は水産庁と外務省JICAとの考え方が公約数的に共鳴したものである。
(委員)
水産無償の支援内容に関する提言に関して、この提言には漁法などの技術協力も含まれているのか。
(JICA)
今回の研究においては、技術協力も含めてニーズを聴取しているものであり、漁法に関する技術協力の活用も含まれている。
(外務省)
(1)フィリピンへの無償資金協力については、これまで付加価値税(VAT)の免税の問題があり決定を見送ってきたが、今回から再開するもの。また、一般プロジェクト無償27件の他、水産無償が3件、ユニセフ経由の無償資金協力が4件ある。
(2)特徴的なものとして、タジキスタンやタンザニアにおける道路整備計画案件。これらは中央アジアやアフリカの広域的なインフラ整備の一環として位置づけられるものである。
(3)文化無償については以下のとおりである。
(イ)文化無償には、一般文化無償と草の根文化無償がある。一般文化無償では5000万円程度の機材、3億円以下の施設建設があり、草の根文化無償では1000万円以下の機材供与がある。一般無償はBHNを対象にしているが、文化無償においては高等教育振興、文化・スポーツ・高等教育振興を主な対象としている。
(ロ)予算が削減傾向にある中で、実施にあたっては供与した機材などが有効活用されうるかどうかを主眼において考えている。また、文化無償の別の側面として、事業実施を通じて二国間の風通しをよくすることを目的にしている面がある。また、文化無償を復興過程にある国に対する精神的なケアとしても活用している。
(委員)
国際交流基金と文化無償の関連如何。
(外務省)
基金も文化無償も文化交流課が主管しているので、双方が協力をするよう心がけている。具体的には、基金は機材の供与は行っておらず、人の派遣など技術協力を実施しており、他方文化無償は供与となる。
(1)競争性向上について
(外務省)
競争性を向上させるための様々な取り組みをJICAは実施しているが、平均落札率は下がる傾向にあるのか。
(JICA)
具体的な策を講じているが、落札率はあくまで結果である。JICAとしては、策を講じることにより、平均入札社数の数を増やすよう努力しているところである。
(2)債務救済無償に関する報道について
(外務省)
債務救済無償の主目的は、重債務に苦しんでいる国に対して債務を免除することである。日本は他のドナーが無条件で債務を免除している中、まずはとにかく返させ、返したらそれと同額の金額を供与するという形式をとっていた。しかも、供与された資金に関しては、使途に関する報告書をだせという他ドナーに比較すると厳しいクライテリアにより実施してきたものである。現在は債権帳消しという形をとっている。
別添1
別添2
時間:5月08日 12時00分~14時00分
場所:外務省(南庁舎396会議室)
以上