ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成19年度第1回会合)議事録

 4月13日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1議題別添2)。

1.平成18年度無償資金協力予算執行総括

(外務省)

(1)平成18年度の無償資金協力にかかる予算は1,682億円であった。そのうち一般無償は1,000億円強であったが、実績は1,220億円である。テロ対策等治安無償、防災・災害復興支援無償、コミュニティ開発支援無償は新スキームであり、予算額に満たない執行であった。緊急無償に関しては災害も少なく他の予算で活用した。平成19年度も計画に従い執行していく所存である。

(2)限られた予算を有効に戦略的に活用するため、関係各課と協議しつつ、実施していきたい。なお、平成20年度のTICAD IVに向け、平成19年度はアフリカ支援に集中していくことを考えている。

(3)無償資金協力にかかる予算が大幅に減る中で、実施できる案件も減っている。特に、1件あたりの平均供与額が減っている。基本設計調査時にコストを絞り込んでいるため、供与限度額を決定した後に、物価の上昇などで契約できない例が増えている。

(4)ノンプロについては、特に18年度について、アフガン支援において、道路建設案件やその管理能力向上のための研修をノンプロ無償にて実施している。これらは従来のノンプロとは異なっているが、アフガンの治安情勢という特殊な状況に鑑みて実施したものである。

(5)日本のODA実績額が英国に抜かれ3位になった。厳しい予算事情の中で、一つ一つの案件について成果の高く上がるものを実施していきたい。

2.平成18年度無償資金協力におけるプロジェクトレベルの事後評価報告

(外務省)

(1)無償資金協力プロジェクトレベルの事後評価は昨年度に引き続き実施しているものである。昨年度と今年度の違いは、2次評価を導入したことである。1次評価は各大使館による各案件の評価であり、2次評価は、各大使館による評価を客観的立場から日本評価学会が事実に基づいているか、評価基準が適切か等の観点から実施しているものである。平成18年度においては、最終的に69件の評価を実施した。17,18年度の評価を通じて、完了後約4年を経過した案件については、ほぼすべてについて実施している。

(2)評価は、妥当性、施設機材の適切性・効率性、効果の発現状況、インパクト(案件の実施によって上位目標につながっているかどうか)、自立発展性、広報効果等の項目毎に評価している。また、これとは別途に一次評価の段階から外部評価者の手による評価も実施しており、内訳は、セクター関連、ガーナ、大洋州についてそれぞれ4案件ずつ計12件を実施している。

(委員)

 JICAと比較して評価を実施する動きが遅れていると思われる。加えて、「妥当性」についての評価手法をもっと検討すべきである。無償は外交面で活用されることが多いため、わが国との外交政策上の妥当性も検証すべきである。JICAとは異なる外務省の評価であるのであれば、その外交的視点を評価に取り入れるべきである。逆に、それを入れないと外務賞の評価とは言えないのではないか。2次評価、外部評価の実施の際には、外交的視点を鑑みた評価を第3者はしないことが多いと思われるため、その点を検討しつつ実施すべきである。

(委員)

 外交的視点で評価すべき視点と、開発の視点で評価する視点は異なると思われる。アフガニスタンやイラクなどに対する支援などは外交的視点の評価は必要であるが、プロジェクトレベルの事後評価を実施する際は、プロジェクト単位での評価に重点を置くべき。ソフトコンポーネントや技術協力との組み合わせたプロジェクトをどのように評価していくかを考える必要がある。新JICAとなる2008年度以降の評価の実施手法を早急に検討すべきである。

(委員)

 JICAの評価において、外交面についてはJICAは評価していないし、できないと思われる。どこかで外交面について評価するべきだ。

(委員)

 それはプロジェクトレベルではなく、国別評価の中でやっていくべきで、ひとつひとつの案件レベルでやるべきでない。

(外務省)

 無償の評価はまだ改善の余地があると考えている。2008年度以降については、新JICA設立に向けて、検討しているところである。方向性として、外務省は政策レベルの評価を行う、JICAにおいてはプロジェクトレベルの評価をしていくことを考えているが、役割分担を明確にしていきたい。評価結果の反映も今後考えていきたい。

(JICA)

 ソフトコンポーネント、技術協力を含めたトータルの評価について、JICAにおいてはプログラム化を推進しており、プログラムとしての評価のための予算が平成18年度に承認されたため、それを実施しつつある。プロジェクト単位の評価をしつつ、プログラムとしての評価も取り組んでいる。

3.平成18年度契約認証監査報告

(外務省)

(1)平成18年度で3回目の実施である。今回は平成17年10月から平成18年9月末までに契約認証業務を行った617件を監査の対象とし、認証業務の適正性を監査している。監査結果の報告とあわせて、監査人から改善案として指摘された事項としては、以下の事項があげられる。

(イ)一部の案件において、決裁権限者が不在の場合に当該案件の担当者が決裁を代行している例があり、ダブルチェックを実施すべき、

(ロ)契約先が日本人または日本法人の実質的支配化にあることのチェック体制を検討すべき、

(ハ)案件管理カードの記入事項の正確性をチェックすべき。

(2)契約認証業務に関しても、新JICAへ移行される予定であり、これら監査結果を踏まえつつ引き継いでいきたい。今年度以降もこの監査業務を実施するか否かについては、引き続き検討していく。

4.日・ユニセフ協議報告

(外務省)

 昨年8月の再編により、国際協力局となってから仕事の仕方が変わってきている。これまでは2国間のことを中心に考えてきているが、新体制となり、国際機関との連携などダイナミックに動きはじめている。

(1)日本とユニセフの間による政策協議は、これまで「年次協議」の名で実施してきたが、現在は「日・ユニセフ政策協議」として形を変えて実施している。現在の最大の主題は、マルチとバイの連携をどのようにして強化していくか、である。これまでも連携はしてきていたが、プログラムレベル、また政策レベルでのすりあわせがうまくできていなかった。2月に実施された政策協議における主な合意事項は、主に以下のとおり。

(イ)政策理念レベル、プログラムレベル、プロジェクトレベルの3段階で連携を強化すること、

(ロ)ユニセフを通じた我が国支援に関し、さらに日本の顔が見える形で協力していくこと、

(ハ)連携のパイロット事業として、南スーダン支援事業、コンゴ民支援事業、鳥・新型インフルエンザ対策、案件について検討を進めていくこと。

(2)また、TICAD4、G8を念頭に置きつつ、ユニセフとの協力の可能性を検討していく。懸案としては、予算削減の中、いかにして効率的に実施していくか、また、ユニセフの名前は知られているが、フィールドレベルの活動は知られていないことが多い。ユニセフは多くの場所に根付いており、大使館のないところにおいても活動を実施していることが多い。そのため、それらと協調しつつ実施していくことを検討していくことが必要である。また、今後より議論が活発化していくと思われ、予算削減の中効果的に実施していくことを目指していきたい。

(委員)

 ガーナではユニセフが貧しい地域に入って活動しており、そのような機関と協力していくことは賛成。平和構築支援はひとつのユニセフの活動とあるが具体的には何を指しているのか。

(外務省)

 例えばアフガンの児童福祉支援。単に教育、水、保健ではなく、子供や子供の権利などの保護を対象として実施している。コンゴ民においては、コミュニティ開発支援無償で実施しており、その中で、ユニセフはコンサルタントとして活動している。また、本案件においては、人間の安全保障基金との連携もある。

(委員)

 日本ユニセフ協会においては、募金を集め、それをNGOに渡して活用できるような仕組みがあるが。

(外務省)

 確かに、ユニセフ協会の集金能力は長けており、毎年約1億ドルが集まっている。それを各国の協会の内規に基づいて75%をユニセフ本部に送ることになっている。ユニセフ東京事務所、ユニセフ協会、外務省で毎月3者協議を行っており、今後も意見交換しながら、政策的に募金を活用できることを検討していきたい。ユニセフと日本のNGO間での協議も、インフォーマルで実施しており、政府としてもNGO支援を重要視し、ジャパンプラットフォームや、またそれ以外においても連携をするよう心がけている。国際機関に対しても日本のNGOを活用するよう働きかけている。

5.コンサルタント契約状況、入札実施状況

(JICA)

 来年10月以降の新JICA発足後の案件は、単年度主義の枠がはずれることにより、事故繰越など工期の制約は改善されると思われる。また、競争性の向上については、外務省と協力しながら具体的な方策を打ち出しているところである。

(委員)

 新JICAとなり、工期のしばりがなくなるのは好ましいが、使うといった予算を使わなくなることについては問題が生じないのか?

(JICA)

 2,3回の入札で落ちなかったケースにおいて、工期の遅れを少なくするために、タイドの枠をはずす事は検討としてはありうる。

6.4月閣議請議案件についての説明

(外務省)

(1)4月閣議請議案件は、一般プロジェクト無償に関して、国債は18件、単年度は8件。防災・災害復興支援無償に関しては、国債1件、単年度2件。人材育成支援無償に関しては10件を計画している。

(2)主な案件としては国境をまたぐ橋梁案件が2件ある。エルサルバドルとホンジュラスをつなぐ「日本・中米友好橋建設計画」、ペルーとエクアドルをつなぐ「新マカラ国際橋建設計画」。

(3)また、昨年までは留学生支援無償であったが、今年度から「人材育成支援無償」とした。対象は修士レベルの行政官の人材育成であり、2年間大学にて勉強をするための費用負担を行うもの。このスキームは文部科学省の国費留学生と混同されがちであるが、前者はだれもが応募できるが、本無償は各国政府から選抜された人材である。今年度は268名の受け入れを計画している。

(委員)

 人材育成支援について、これは学生に対して旅費などを支払うものなのか。受け入れる側への経費は含まれるのか。

(外務省)

 授業料、入学金、支度料、移動経費、募集費用などが含まれる。

(委員)

 応募したいと思ったらどうしたらいいのか。

(外務省)

 先方政府の無償の窓口政府機関あるいは、教育省などの機関に話をする必要がある。国費留学生は個人で応募し、長ければ6年間や8年間も滞在できるもので問題も多いと聞いている。本無償は2年間限定であり、帰国後に国のために働く行政官に限定している。

(委員)

 中南米における広域橋梁案件に関して、これは契約書は2本にしているのか。

(外務省)

 交換公文は2本であるが、コンサルタント契約、業者契約ともに1本にし、3者契約として整理している。

(委員)

 アフガニスタンのPRTを草の根でやるとの話を聞いたが、総理が約束してきているためやらなくてはならない。しかし、草の根無償だけだと顔があまり見えないのでは。

(外務省)

 PRTとNATOで連携してアフガン支援を行うもの。案件の形成やモニタリングをPRTに手伝ってもらうのが趣旨であって、日本ができるところでは日本が実施しており、PRTは日本が入れないところをやってもらうよう役割分担をしている。


別添1

出席者

  1. 無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
    1.大野 泉 政策研究院大学教授
    2.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
    3.杉下 恒夫 茨城大学人文学部教授
    4.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
    5.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
    6.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
  2. 外務省
    7.和田 充広 国際協力局無償資金・技術協力課長
    8.松浦 純也 国際協力局無償資金・技術協力課企画官
    9.河原 一貴 国際協力局無償資金・技術協力課総務班長
    10.板垣 克巳 国際協力局無償資金・技術協力課アジア・大洋州班長
    11.松井 敬一 国際協力局無償資金・技術協力課業務班長
    12.望月 寿信 国際協力局人道支援室首席事務官
    13.町田 秀明 国際協力局人道支援室国際協力第三班長
  3. 国際協力機構
    14.中川 和夫 無償資金協力部長
    15.正木 寿一 無償資金協力部管理・調整グループ管理チーム長


別添2

無償資金協力実施適正会議(平成19年度第1回会合)議事録

時間:4月13日12時00分~14時00分
場所:外務省(南庁舎396会議室)

  1. 平成18年度無償資金協力予算執行総括
  2. 平成18年度プロジェクトレベルの事後評価報告
  3. 平成18年度契約認証監査報告
  4. 日・ユニセフ協議報告
  5. コンサルタント契約状況、入札実施状況
  6. 4月閣議請議案件についての説明

以上

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