2月13日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
1.報告事項(外務省)
(1) |
平成19年度無償資金協力予算について
(外務省) |
厳しい行財政事情を反映し、「骨太の方針2006」において、ODA予算につき今後5年間にわたり▲2%~▲4%の減となった。外務省の平成19年度ODA予算は対前年度比▲4%となり、平成18年度の4733億円から▲189億円となった。最終的にJBICへの交付金を▲33%、JICAへの交付金については▲1.2%、無償資金協力予算については▲2.7%の減となった。無償資金協力予算の概要は以下の通り。
(イ) テロ対策等治安無償、防災・災害復興支援無償、コミュニティ開発支援無償の平成18年度に新設した新3スキームについては前年度比増額。
(ロ) ノン・プロジェクト無償の内枠として、直接財政支援を行う貧困削減戦略支援無償スキームを創設。
(ハ) 一般プロジェクト無償については、数年先までの実施計画を立てているため、なるべく削減をしない方向で調整。
(ニ) 緊急無償は緊急アピールに対するコミットメント等において外交的に非常に有効であるが、やむを得ず削減。
また、平成18年度補正予算にてODA事業量100億ドル積み増しの公約を達成出来るよう出来るだけ配慮した。 |
(委員) |
貧困削減戦略支援はどういった方式になるのか。イギリスが行うように現金を相手国の予算に組み入れることになるのか。 |
(外務省) |
形態としては相手国政府の予算に日本のODA資金を直接投入することになる。その意味で従来の日本のプロジェクト型の援助手法とは異なるもの。援助協調の流れの中、アフリカ諸国の中にはこうした形の援助以外、原則として受け付けないとする国も出てきている。また、対象国の選定にあたっては相手国の状況と我が国のフォローアップ体制などを総合的に判断し、国を決めていく。財政支援の具体的方法については相手国の国庫に直接資金を投入する一般財政支援、相手国の指定する特定セクターに対する支援に目的を限定する方法、特別の口座(プールファンド)を開設し、そこで資金を管理する方法などがある。 |
(委員) |
日経新聞においてタンザニア大統領が日本の無償資金協力はもう不要であるとの発言をしたようだが、こちらについて確認はしたのか。 |
(外務省) |
駐日大使によると大統領はそのような発言はしていないとのことであり、外務省においても然るべき手段にて確認を行い、日経新聞にもその旨申し入れた。 |
(委員) |
イギリスは人を送り込むことによって、顔の見える援助を体現しているが、日本は顔の見える援助についてどのような努力を行っているか。 |
(外務省) |
日本も決してお金だけ出しているわけではなく、多くの国でインパクトのある支援を行っており、評価もされている。
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(2) |
「点検と改善2006」について
(外務省) |
ODAの仕事の仕方について外務省としても随時見直しを行っているところであるが、「点検と改善2006」が今週中にも発表される予定である。「点検と改善2006」では、05年の「点検と改善」発表後の過去1年における取り組み等について取り上げられるとともに、「戦略的なODAの実施のための援助政策の企画・立案」、「コスト縮減を通じた事業の効率化」、「チェック体制の拡充」について今後の取り組みをまとめている。
(イ) 「戦略的なODAの実施のための援助政策の企画・立案」については、かつてのODA総合戦略会議のような、有識者を交えた会議の場を設立すること、国別援助計画の拡充、官民連携の促進等を課題としている。
(ロ) 「コスト縮減を通じた事業の効率化」については、JICAによる新しい効率化目標の設定、新しい無償資金協力の制度設計、コミュニティ開発無償の積極的活用等を課題としている。学校建設については、アフリカに限らず、同スキームにより現地リソースを活用した支援を実施していくつもりである。更に今後は給水や道路建設といった分野でも活用していくことを検討している。新JICAの発足に伴い工期の制約が緩和されることからコストの削減も期待出来る。また、国土交通省やコンサルタント、建築業界等からも意見を伺い、今年10月あたりを目処に、外務省としてのコストの効率化に関する考えをまとめていきたい。この無償資金協力実施適正会議においても、いずれかの機会で効率化についての考え方をご説明させていただいた上、ご意見をいただきたいと思う。
コミュニティ開発支援無償については、プロジェクトの質・内容からも一般プロジェクト無償と単純にコスト比較することは必ずしも適当ではないが、コストの縮減への取り組みとして一定の成果を上げている。平成19年度にはアフリカだけではなく、他の地域も含め合計10件以上の案件の実施決定を目指すつもりである。また、競争性の向上については、入札公示期間の延長、契約の細分化、入札関連情報の提供拡充、入札事前審査基準の緩和、企業向け説明会の実施等の努力を行ってきている。
(ハ) 「チェック体制の拡充」について、無償資金協力案件については、平成18年度には完成後3~5年を経た10億円以上の約80案件につき、プロジェクトレベルの事後評価を行ってきたが、これをさらに徹底させ、最終的には完了後4年を経過した一般プロジェクト無償及び水産無償の全案件について事後評価を行うということを考えている。
(ニ) 「点検と改善2006」では関係省庁とも連携してとりまとめを行っており、コスト縮減、効率化についての工程表をつくって進めていこうとしている。 |
(委員) |
コスト縮減も重要だが、ミャンマーではJICAの実施する麻薬対策・貧困削減プロジェクトの実施サイトのひとつで給水タンクが壊れ、子供3人が死亡する事故が起きたばかりである。日本によって建設されたものではないが、コスト縮減を追及しすぎるとこのような大変な事故を起こす可能性もある。質の確保を担保する文言についてもっと入れるべきではないか。 |
(外務省) |
まさにその通りであり、質の確保については十分注意している。「点検と改善2006」に書かれているように質の確保に加えてコストの縮減を達成することが重要である。案件決定段階のみでなく、実施においてもモニタリングを徹底的に行い、質の管理を行っていく。 |
(委員) |
給水用の井戸の掘削の他にも、水に関わる全体的なプログラムを作るのは日本が得意とする方法ではないか。単発的なプログラムが多いように感じられる。 |
(外務省) |
最近水分野の関係業界からは、政府はコスト縮減、現地リソースの活用といっているが、本当に出来るのか疑問の声があがっている。調査により、本当に現地リソースに頼ることで実現可能かどうかは事前に確認しなければならないし、実際確認しながら進めている。また、NGOの活用という点も重視される傾向にある。大規模な橋や道路の建設など、何でもNGOにお願いすることができる訳ではないと思うが、一方、村落開発等NGOがその能力を発揮出来る分野においては積極的に活用していくべきであろう。アフガニスタンのカブール北部においても日本のNGOが現地の業者を利用して井戸の掘削を行っているが、こうしたNGOが段々と経験を積み、例えば村落全体の井戸建設を請け負えるようになるなど、NGOが力をつけていけば支援の可能性は広がる。
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(3) |
我が国援助方針についての最近の主な動き
(外務省) |
(イ) 麻生大臣の演説「自由と繁栄の弧」では、民主化・市場経済化などを進めるユーラシア大陸外縁への支援をうたっており、ODAにおいても今後こうした視点に立って支援を進めていく必要がある。
(ロ) NATO事務総長との会談において、総理は特にアフガニスタンについて、人道・開発支援分野でNATOとの連携を強化していきたいと発言している。アフガニスタンはタリバンの勢力によりなかなか国の安定が得られていないが、治安が悪く、日本人業者が大使館員も含めてなかなか地方のプロジェクトサイトに入れないという状況が続いている中、NATOはPRT(地方復興チーム)を展開しており、これらと連携して支援を行うことを考えている。
(ハ) 東アジアサミットにおいて、総理は日本のエネルギー協力イニシアティブを表明した。また同時に、メコン地域に対するODAの拡充、鳥インフルエンザ対策への更なる支援、防災分野での支援などについて発言がなされた。
(ニ) カンボジア、ラオス、ベトナムとの間では外相会談が開かれ、日本からは浅野外務副大臣が出席した。日CLV協力の強化、また来年度CLVを含むメコン地域5ヵ国の閣僚が参加する日本メコン地域閣僚会合を日本で開催することなどについて、話し合いがなされた。
(ホ) 第166回国会における麻生大臣の外交演説においては、ODA事業量の100億ドルの積み増しや対アフリカODAの倍増などの対外公約を達成すべく努力する旨改めて表明された。
(ヘ) 1月24日に第6回海外経済協力会議が開かれた。ODAの量についての議論がなされ、国際公約の達成の他、援助の質の向上、NGOの活用等によるコスト削減の徹底、顔の見える援助の積極的展開についての重要性につき確認がなされた。
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2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
(JICA) |
前回の会議で、平均入札参加者数について地域的な傾向があるのでは、というご意見をいただき調査したところ、アジアでは2.4、アフリカは2.3であり、幅は2.0~2.9と大きな傾向は見られなかった。入札者数の増加には様々な手段で取り組んでいるが、まだ具体的な成果を示せていない状況である。
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3.2月閣議及び3月閣議請議案件について説明及び質疑応答
(外務省) |
2月閣議は50件、178億円の案件を閣議にかける予定である。2007年はアフリカ向けODA倍増実現の年であること、また2008年はTICAD
IVを行う予定でもあり、アフリカ地域に対する支援の重視が表れている。今年1年間でいかに多くの支援を実現できるかが重要である。 |
(1) |
2月閣議について以下の通り説明がなされた。
(外務省) |
(イ) コミュニティ開発支援無償の3件目の案件であるマダガスカルの小学校建設計画の閣議請議を予定している。これまでは一般プロジェクト無償により行ってきたような案件ではあるが、先方政府も了解の上、同スキームでの実施を決めた。学校案件については今後もコミュニティ開発支援スキームを前向きに活用していく。
(ロ) 食糧援助もアフリカ地域向けが中心となっており、25件を予定している。二国間支援のものと、WFP経由の支援があるが、前者は外交的な効果が大きく、また食糧の売却から得られた収益を見返り資金として活用出来るなどの効果がある。一方後者は、国際機関独自のネットワークを活用することができ、第三者的な監視を行いやすい。例えば難民キャンプにおける支援のような二国間支援では難しい案件も実施することが出来る。但し、国際機関経由の食糧援助では見返り資金は発生しない。それぞれの利点を考慮しつつ、支援を行っていく。2月閣議では政府米の支援が殆どであるが、食糧援助は相手国の要請により、トウモロコシや大豆を支援することもある。米は農林水産省の管理する政府米を国際価格で購入している。
(ハ) 貧困農民支援は12件を予定している。ハイチにおいては治安の問題等によりFAO経由で支援を行うことになった。もともと食糧増産援助として食糧の増産に必要な器具、農薬を支援するものであったが、貧困層への支援に重点を置き、平成17年度にスキームの名称及びその内容を改めた経緯がある。農業器具や肥料などを供与するという形で貧困層の受益に配慮しつつ支援を行い、それらの売却金は見返り資金として活用する。
(ニ) ノン・プロジェクト無償は11案件を予定している。これは相手国政府に開設した口座に支援金を入金し、JICS等の調達代理機関が管理している。これらは外国からの物品の購入に当てられ、また先方政府には見返り資金を積み立てる義務を課している。例えばアフガニスタンでは外国から燃料を購入し、その売却益により警察組織の強化を行う、といった活用をしている。
(ホ) コンゴ共和国に対しては、紛争予防・平和構築無償を実施する予定である。紛争後の元兵士から武器を回収を行うものであり、国際機関であるUNDPが計画したプログラムに対し支援するものである。
(ヘ) 2月閣議案件50件中、33件はアフリカ向けの案件となっている。予算の年度内執行という工期の制約のため、2月閣議では殆どが食糧援助など、短期間で実施を行うことが出来る案件となっている。
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(2) |
3月閣議案件について以下の通り説明がなされた。
(外務省) |
(イ) 3月閣議案件については未だ準備の過程にあり十分な説明はできないが、一般プロジェクト無償では、UNICEFを通じ、コンゴ共和国に対し蚊帳の供与を行うことを検討中。
(ロ) また、南アジア地域においては、南アジア地域協力連合(SAARC)加盟国5ヶ国に対し、防災・災害復興支援無償を計画している。UNDP経由の支援であるが、国際機関経由で広域的な地域を対象とした防災・災害復興支援無償案件は初めての試みである。南アジア地域のインド、パキスタン、ネパール、ブータン、バングラデシュ等を対象としており、公共建築物の耐震化に関わる種々の支援を行う予定である。日本の防災の知見を生かすと共に、研修の実施等を通じ無償資金協力と技術協力による支援の連携効果を目指すものである。
(ハ) また、コンゴ民主共和国へのコミュニティ開発支援無償としてUNICEFとの協力案件を検討中。小学校の建設、学校給水衛生施設の建設、村落給水衛生施設の建設等のプログラムを通じ、コミュニティの開発を支援する。
(ニ) その他、パレスチナ難民向け食糧援助やFAO経由での貧困農民支援をパレスチナやスーダンにおける案件で実施すべく検討している。また、日本がアフガニスタンに対して行なっているカンダハル=ヘラートのリングロードプロジェクトについても、治安面の問題等により追加資金が必要となったため、3月閣議にてノン・プロジェクト案件を実施する方向で検討中である。
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(3) |
閣議案件に関する質疑応答は以下の通り。
(委員) |
ノン・プロジェクト無償はなぜ年度末の閣議で行なうのか。 |
(外務省) |
年度末に限っている訳ではないが、ノン・プロジェクト無償については一般プロジェクト無償のように工期毎に資金を支払う方式ではないため、年度末の閣議でも決定できるという事情はある。ノン・プロジェクト無償では調達代理機関を通じてきちんと資金管理は行なうが、資金自体は国庫から相手国の口座へ一括拠出される。なお、2008年に誕生する新JICAのもとでは、一般プロジェクト無償についても必要な資金を政府からJICAへ一括で支払うことになるため、将来においては施設案件であっても2月、3月閣議にて請議出来るようになる見込みである。 |
(委員) |
現制度においても、もう少し早い時期に出来ないものか。 |
(外務省) |
食糧援助は7月や10月、12月の閣議においても請議している。相手国の要望を図りながら実施を決定している。 |
(委員) |
ノン・プロジェクト無償については。 |
(外務省) |
2007年はアフリカ支援倍増の目標年であることから、アフリカ地域に対する案件については、2007年である今年の閣議に集中させているという面もある。 |
(委員) |
ノン・プロジェクト無償は会計年度についての考慮も行う必要があるのか。
(外務省)一般財政支援の場合は相手国の会計年度を考慮する必要があるが、ノン・プロジェクト無償は相手国政府の特定口座に資金拠出する形式をとっており、そこまで相手国の会計年度について考慮する必要はないと理解している。 |
(委員) |
JBICへの交付金は何に使われるのか。 |
(外務省) |
JBICの円借款は財政投融資等を原資とするが、債務不履行などがあった際、JBICの資金の補填を行うために必要なものと理解している。 |
(委員) |
有償資金協力事業はどのような企業が実施しているのか。 |
(外務省) |
円借款事業は殆どが一般アンタイドの国際競争入札に拠っている。詳しくはJBICのホームページなどを参照して頂きたい。 |
(委員) |
債務免除はかつて無償資金協力で行っていたものではないか。 |
(外務省) |
かつて債務救済無償として実施していた。これは債務をかかえる途上国に無償資金協力で支援を行い、その上で債務の返済をさせるという形をとっていたからだ。その後、円借款債務の債務免除という手法に変更することとなったものである。
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別添1
出席者
- I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
- 1.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
2.杉下 恒夫 茨城大学人文学部教授
3.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
5.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- II.外務省
- 6.和田 充広 国際協力局無償資金・技術協力課長
7.新井 和久 国際協力局無償資金・技術協力課審査役
8. 河原 一貴 国際協力局無償資金・技術協力課総務班長
9.板垣 克巳 国際協力局無償資金・技術協力課アジア大洋州班長
11.近藤 茂 国際協力局無償資金・技術協力課ノンプロ・KR等班長
12.倉冨 健治 国際協力局無償資金・技術協力課業務班長
13. 北川 裕久 国際協力局国別開発協力第二課アフリカ班長
14. 上本 真紀子 国際協力局国別開発協力第二課アフリカ班
- II.国際協力機構
- 15. 岡本 茂 無償資金協力部次長
16. 吉田 早苗 無償資金協力部管理・調整グループ 管理チーム
別添2
無償資金協力実施適正会議(平成18年度第6回会合)
時間:2月13日12:00~14:00
場所:外務省(中央庁舎669号室)
- 報告事項(外務省)
(1) 平成19年度無償資金協力予算について
(2) 「点検と改善2006」について
(3) 我が国援助方針についての最近の主な動き
- コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)
- 2月閣議請議案件及び3月閣議案件について説明及び質疑応答 (外務省)
以上