10月18日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1、議題別添2)。
1.報告事項(外務省)
(国際協力局長)
無償資金協力実施適正化会議は、平成14年7月に発表された外務省改革に関する「変える会」の報告を受け、無償資金協力の適正な実施と透明性の向上を図ることを目的として発足した。各委員の方のご専門の観点や納税者としての立場から、これまで様々な貴重なご議論を頂いてきた。
外務省としては、本年8月には外務省の機構改革による国際協力局の発足、国会での審議が予定されるJICA法の改正などの大きな改革の流れの中で、皆様から率直なご意見を頂き、無償資金協力の適正な実施や制度の改善に努めていきたいと考えているところ、引き続きご協力を頂きたい。
(1) |
無償資金・技術協力課の発足について
(外務省) |
(イ)昨年来ODA改革が、1)官邸における「海外経済協力会議」の設置、2)外務省の企画立案能力強化、3)3スキームの一元的な実施へ向けたJICAの組織改革、という3層レベルで進められてきている。
(ロ)2)の外務省レベルの改革については、国際協力企画立案本部を立ち上げるとともに、主にバイの経済協力を行っていた旧経済協力局とマルチの開発を担っていた旧国際社会協力部を統合し国際協力局がつくられた。この流れの中で、無償資金協力と技術協力の連携をより進めるため無償資金・技術協力課が発足した。
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(委員) |
無償・技協課において一人の地域担当官が無償と技協双方のスキームをみることになるのか。国別課との関係はどのように変わるのか。 |
(外務省) |
国別課とスキーム課の関係について、何がベストか現在局内で議論しているところ。機構改革をより良いものにするため、議論を深めたい。
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(2) |
平成19年度無償資金協力予算の概算要求について
(外務省) |
(イ)ODA予算をとりまく環境は厳しい状況が続いている。概算要求シーリングは対前年度比▲3%とされ、「骨太の方針2006」においてもODA予算は対前年度比▲4%~▲2%とされた。
(ロ)平成19年度外務省全体のODA予算の概算要求は5305億円であり、前年度比12.1%増。無償については1820億円(8.2%増)、JICA交付金は1733億円(10%増)、国際機関への分担金・拠出金は795億円(42.6%増)。
(ハ)無償資金協力については、以下の基本的な考え方に基づいて、メリハリの効いた概算要求を行っている。1)アジア大洋州における戦略的な日本外交の展開、2)アフリカ開発への協力の強化、3)テロ対策、防災といった国際社会の支援ニーズへ対応及び紛争後の復興開発支援や平和構築・定着への積極的な貢献、4)無償事業におけるPDCAサイクルの確立、事業コスト縮減や効率化に向けた取組の強化。例えば、アフリカにおける貧困削減計画の実施・達成へ向けたものとして、貧困削減戦略支援無償のスキームを新たに立ち上げるべく財務省に要求中。また、ODAを効率的に実施するため、平成18年度より導入したコミュニティ開発支援無償は25%増要求を行っている。
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(3) |
会計検査院の指摘事項について
(外務省) |
(イ)コンサルタント会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)の現地再委託契約に関する不正な行為について、参議院決算委における「H15年度決算審査措置要求決議」を受け、会計検査院が追加調査の上、今年9月の決算委に報告書が提出された。
(ロ)追加調査の結果、JICA・JBIC関連案件12ヵ国15案件で経理処理や精算手続が不適切な案件が判明し、返還請求も検討中。JICA・JBICは再発防止策を着実に実施することとしている。
(ハ)草の根・人間の安全保障無償について、調査が行われた10公館52事業のうち、4事業について未完了または本来の目的で施設等が利用されていないとの指摘を受けた。反省すべき点は反省しつつ、今後も説明が足りない部分は補っていきたい。
(ニ)スマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について、特にインドネシアで資金の41.6%が契約締結されず、79.5%の資金が調達口座に残されている旨の指摘があった。しかし、口座に残されている資金は使途が特定されており、工事の進捗状況に応じて支払われる過程でのやむを得ない事情がある。計画は順次進められており、口座で遊ばせているわけではない。
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(4) |
新たな無償の制度設計について
(外務省) |
(イ)現在JICA法の改正作業が進められている。ポイントとしては以下の4点。1)新JICAがJBICより円借款業務を承継する。2)新JICAが外務省より無償資金協力(外交政策上の必要から外務省が引き続き実施するものを除く)の実施を承継する。3)新JICA全体の主務大臣は外務大臣、ただし、円借款の財務・会計事項は外務大臣と財務大臣の共管とする。4)施行日は「別に法律で定める日」(新政策金融機関の発足日を想定。)とする。
(ロ)無償の新しい制度設計については、以下を考えている。閣議までのプロセスは原則としてこれまでと同様。その後、新JICAへ資金を一括拠出し、交換公文(E/N)締結、新JICAによる贈与契約(G/A)署名、新JICAによる実施のために必要な業務の実施、というプロセスを踏むことになる。資金については、新JICAが交付金とは別に区分して資金管理をし、供与限度額と実際の支出額との差額は国庫返納が基本であるが、翌年度の事業費に充てることも可能な制度設計となっている。資金管理をし、供与限度額と実際の支出額との差額は国庫返納が基本であるが、新JICAが翌年度の事業費に充てることも可能な制度設計となっている。
(ハ)新制度によって、無償資金協力実施の柔軟性が高まり、コストの削減にもつながることが期待される。新制度の下では、政府からの支出はJICAへ一括拠出した時点で完了するので、予算単年度主義の制約が大幅に小さくなる。また不要となった額を、国庫への返納を原則としつつも翌年度事業に回すことが可能となり、限られたODA予算の有効活用にも資する。
(ニ)制度設計の詳細については、これから詰めていく予定。
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(委員) |
3年以上など長期に渡る案件について、一つの案件として承認することは可能なのか。期分けするのは非効率ではないか。 |
(外務省) |
今後検討の必要があるが、現在も行っている期分け方式を残さざるを得ないかもしれない。円借款ほど事業規模が大きくないものの、年度の予算は限られていることから、数年先の予算まで一度に拠出できるとは限らない。予め数年かかることが予想される案件についてどういう方式で資金を拠出するかについてはさらに検討する必要がある。 |
(委員) |
役員の数について、理事が2名、監事1名の増員とのことだが、公務員の再就職先を増やすことにならないか。プロパーの人がなることが望ましい。 |
(外務省) |
役員の数についてはいろいろな議論があったが、政府の簡素化という行政改革の流れを踏まえて、この数となった。現行JBICの役員の数を考えるとむしろ数は減っている。組織の在り方について、JICA・JBICが協議を始めている。 |
(委員) |
円借款の財務・会計事項に外務大臣と財務大臣の共管が残り、結局新JICAの中に二つの組織ができるだけにならないか。 |
(外務省) |
円借業務事業は従来から外務省が主務大臣だった。財務・会計事項については現行JBIC法の設計を踏まえた設計となっており、別勘定になっている。無償についても、独立行政法人の運営費交付金から区分して資金管理する必要がある。他方、一部の調査や案件形成、評価などスキームにより区分が必要ない部分は大きい。組織全体としては、地域を中心とした体制の構築が進められると承知している。組織全体の融合へ向けてJICA・JBICも協議を始めており、引き続き組織の一体化へ努力を続けていく。 |
(委員) |
無償は贈与である一方で有償は融資であり、組織的な問題とは別に、審査など機能的な違いが残る点には配慮する必要がある。新たな無償の制度設計について、残余金を翌年度へ充当するとはどういうことか。 |
(外務省) |
残余金を新JICAが自由に使えるわけではないが、限られたODA予算を有効活用していくという観点から、一定の予算手当を加えて翌年度に実施する案件の数を増加させるなどの方法を考えている。 |
(委員) |
今回のODA改革は有償資金協力事業にとってはどのようなメリットがあるのか。 |
(外務省) |
各スキームを有機的に連携させることによって、より効果的な援助が実現することについては、広範なコンセンサスがある。また、各スキームをまたいで調査を一本化することにより、有機的な連携が進むことが期待される。 |
(委員) |
2008年以降、無償資金協力事業の6割の実施が新JICAに移るのであれば、進められているJICAの定員削減とは矛盾しているように思える。 |
(委員) |
組織改編にあたっては、互いの能力を結びつける必要がある。国際機関との連携は進めるべき。さらに拡大して民間も連携先に含めて良いのではないか。 |
(外務省) |
寄付の受け付けなどについて議論はある。独立行政法人の制度の枠内で、工夫していきたい。 |
(委員) |
JICAは政府と同視できる部分もあり、E/Nとは別に先方政府とG/Aを結ぶことには違和感がある。 |
(外務省) |
例えば、有償資金協力においてもJBICは先方政府とL/Aを締結している。具体的にどのような文言にするかなど、今後検討していく。
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2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
(JICA) |
(イ)今般の制度改革に向けて、JICAの中でも無償も含めた9つのタスクフォースを作って準備を進めている。
(ロ)3スキーム連携をすすめ、国別実施計画のローリングプランを実のあるものにしていかなければならない。企画立案レベルのみならず、実施レベルにおいても質を保ったままスキーム連携を進められるよう、制度設計を行う必要がある。
(ハ)入札の不調が原因になって遅れている案件、現地の治安状況などが原因で遅れている案件がある。
(ニ)落札率については、高い質を確保しながら公正な競争性を高めることが重要。
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3.10月閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)
(外務省) |
(イ)10月の取りまとめ閣議に請議する案件は、総計54件、総額約125億円となっている。以下、特徴的な案件について御説明したい。
(ロ)セネガルの「中部地域小学校教室建設計画」は、コミュニティ開発支援無償の第一号の案件である。現地の業者を活用することで、大幅なコスト削減に成功している。
(ハ)ラオスの「ヒンフープ橋架け替え計画」は、交通の要所に位置するラオスのみならず、メコン地域全体への裨益も視野に入れた案件。
(ニ)エルサルバドルとホンジュラス両国間に国境橋をかける「日本・中米友好橋建設計画」も、広域的な視野を取り入れ中米統合を支援する案件。
(ホ)中央アフリカの「中央アフリカにおける小型武器回収及びコミュニティ開発計画」は、平和構築分野で小型武器の回収への協力を行う案件である。
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(委員) |
エルサルバドルとホンジュラス国境橋の案件については、両国への供与額が同額となっているが、どのように分けているのか。 |
(外務省) |
中米での類似案件(グアサウレ国境橋建設計画)の整理にならい、便宜上、供与額を等分しているもの。コンサルタント契約及び業務契約は、それぞれ一本でエルサルバドルとホンジュラスがコンソーシアムを作って施主となる。 |
(JICA) |
E/Nは国家間の国際約束なので二国間で結ばざるを得ず、2つ締結する。コンサルタント等の契約は一つで問題は発生していない。 |
(委員) |
「日本・中米友好橋建設計画」は有償の「ラ・ウニオン港湾活性化計画」とも連携しており、有償・無償の連携がうまくいった例として高く評価したい。ガーナの「アッパーウエスト州基礎医療器材整備計画」は、技術協力と連携して形成された良い案件と承知しているが、説明では本無償案件と技術協力との連携については明確に意識されていなかったように理解。無償資金・技術協力課となったので、よりスキーム間の連携に留意していただければ幸い。こうした取組みは積極的に広報しては如何か。 |
(委員) |
最後になったが、PCIの処分についてもう処分が終わったというのは、国民の目から見て解せない。厳しく処分を考えるべき。 |
(外務省) |
現在調査中の案件については、返還請求も含めて対応を検討している。
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別添1
出席者
- I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
- 1.大野 泉 政策研究大学院大学教授
2.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
3.杉下 恒夫 茨城大学人文学部教授
4.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
5.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- II.外務省
- 6.和田 充広 国際協力局無償資金・技術協力課長
7.新井 和久 国際協力局無償資金・技術協力課審査役
8.小畑 正孝 広報文化交流部文化交流課文化無償班長
9.板垣 克巳 国際協力局無償資金・技術協力課アジア第一班長
10. 竹山 健一 国際協力局無償資金・技術協力課アジア第二班長
11.近藤 茂 国際協力局無償資金・技術協力課ノンプロ・KR等班長
12.倉冨 健治 国際協力局無償資金・技術協力課業務班長
- II.国際協力機構
- 13.中川 和夫 無償資金協力部長
14.正木 寿一 無償資金協力部管理・調整グループ 管理チーム長
別添2
無償資金協力実施適正会議(平成18年度第4回会合)
時間:10月18日12:00~14:00
場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)2階287号室
- 報告事項(外務省)
(1)無償・技協課の発足について
(2)概算要求の考え方
(3)会計検査院の指摘事項
(4)新たな無償の制度設計
- コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)
- 10月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)
以上