ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成18年度第2回会合)議事録

 5月26日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1議題別添2)。

1.報告事項(外務省)


(1) クントロ・アチェ復興庁長官の来日
(外務省) 現在クントロ・アチェ・ニアス復興庁(BRR)長官が来日しており、津波支援に関する実務的協議、各方面へのアチェの状況説明を行っている。今週末は兵庫県知事、神戸市長を表敬、アジア防災センターの視察を行った。
 クントロ長官からは、日本の支援は円滑に実施されており御礼を申し上げたい、津波を超えてアチェの将来を念頭において対応しているとの話があった。クントロ長官は我が国が昨年度実施した国際移住機関(IOM)を通じての元GAM兵士の武装解除・動員解除及び社会復帰(DDR)支援10億円を高く評価しており、元GAM兵士との対話についても自分が精力的に取組むと述べていた。
 また、クントロ長官からは沿岸部は比較的支援の手が届いているが、山間部が見捨てられた状況になっており、今後職業訓練、教育、インフラ(海へのアクセスの確保)分野の整備が必要になるので、引き続き日本の支援をお願いしたいとの要望があった。
 クントロ長官は津波を契機にインドネシアのガバナンス全体を自分がリーダーシップをとってしっかりとしたものにしていきたいと述べており、非常に意欲的に仕事を進めているとの印象を受けた。
(委員) 中央政府がよく思わないことはないか。
(外務省) クントロ長官のインドネシア大統領からの信任は厚く、BRRは組織としての一貫性も高い。少なくともアチェ復興活動においては信頼を得ている。BRRの件を一年でうまくまとめた実績が評価された。
(委員) DDRについて、従来の失業対策との違い、特色は何か。
(外務省) 従来、失業対策は個人に職業訓練を行うが、後は自助努力に任せるものであった。これに対しDDRはコミュニティとしての活動を含めた二つのアプローチを組合わせた。失業者に受け皿を用意し、平和で良くなったと感じてもらう目的があり、よりゴールが遠くにある。インフラ整備もコミュニティの力でやる。より中期的なプログラムである。
(委員) 一般的に戦争終了後2年でDDRは終わりだが、期間はどうなっているのか。
(外務省) DDまでは2年くらいかもしれないが、どこまでとはっきり分かれる訳ではない。社会復帰(R)部分についてはより長期的なフォローアップが考えられている。比較的対象を絞ったものになるが、失業対策にとどまるものではない。

(2) 草の根・人間の安全保障無償外部委嘱制度説明会

(外務省) 5月19日に執り行われた草の根・人間の安全保障無償外部委嘱制度説明会では68名の参加をいただき、活発な質問が出た。調査員の件数・金額面での実績も増えた。日本の大学院生の参加も多数あり、外部委嘱員の方は現場で大変な活躍をしている。最初は首都の周りだけだったが、段々現地の遠隔地でのニーズも増えており、大きな力となっている。委員の皆様からも関心のありそうな方々にご紹介していただけたらありがたい。次の説明会は秋に実施される予定である。説明会に出席しなくても応募は可能である。本省は応募者の履歴書を在外に送り、在外で書類審査を行うので、説明会に出席したから必ず採用されるというわけではないことは御承知おき願いたい。
(委員) 外部委嘱員は直接草の根に関連する案件でないと現地の視察に行けないのか。技術協力との連携や他のスキームに関連するサイトを視察しながらなど、もう少し柔軟に出来ないか。
(外務省) それぞれの大使館の判断になるが、本人と同意の上、草の根というベースの上で他の経協スキームに関する業務を傍らで行ってもらうことは可能である。


2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)

(JICA) 平成16年度、17年度案件共にそれぞれ進んでいる。但し入札で落ちない、用地取得などで先方の政府が対応できない、PNGの水産案件は、住民の反対運動による遅れは一部あげられる。PNGの橋梁案件については案件実施の上での安全が確保されず中止したが、状況が好転したら事業化調査をかけて再度案件として検討可能である。
 落札率は機材の場合86.03%となっているが、どのような数値が適正と判断するのかは難しい問題である。機材についてはロット分け等することにより、商社・メーカーによる競争がかなり活発になっている。
 施設物の落札率は98%となっており、機材案件の様に競争性を向上することが課題となっている。そのためには、1)無償の案件を応札可能性のある会社にできるだけ多く知ってもらうための広報、2)いかに応札者数を増やすか、について考える必要がある。
1) についてはJICAの職員が地方に出向いて説明会を実施する、ということが考えられる。昨年京都の商工会議所からのリクエストがあった。また、入札の公示は業界紙に英文で掲載されているが、中規模企業も含め地方の人の目にも触れやすいように一般新聞に和文で載せることが考えられる。
2) 応札者を増やすための一方策として、事前資格審査基準の緩和については財務状況、実績、技術者保有数の面から考える必要がある。この中で特に実績について、ハードルを高くすると応札可能者が減り、競争性の面で問題が生じる。一方、低くすると応札可能者は増えるが質の問題が懸念される。
 1)はJICA内部で実施が可能であり、本年度の閣議案件から実施する予定。2)については外務省と議論したい。
 制度上の問題として、工期の柔軟性をどう確保し、コストを削減していくかについて財務省と協議するとともに、またBDの調査精度、予備費をどう考えるか、といった問題については外務省と協議していく必要がある。
(委員) 中規模業者もJICAの公示の存在を知ってはいるが、業界内で地域別、分野別にすみ分けができており、実態として応札していないのではないか。従って提案を聞いても効果があるとは思われない。
(JICA) 広報だけではなく、2)の方策も併せて落札率が高い状況に対して外務省、JICAが取り組んで行くことが重要であり、そうした努力を続けることにより参加者が出てくると考える。現実に中規模企業が参入する入札については、落札率が80%台になっている。1案件で1社でも新規参入があれば落札率に大きく影響する。継続的にやっていくことが大事である。
(委員) 2)の条件について、結局類似事業の実績のない企業は落札出来ないのではないか。JICAだけの判断で落札出来るのか、これまでに実績はあるのか。
(JICA) ODAに関する実績だけでなく、類似事業実績を見て判断し、参入を果たした実例も少ないがある。
(外務省) コミュニティ開発支援無償は基本は現地企業が受注するというもので抜本的に変えた。今年からアフリカ数カ国で実施される。どういう結果になるか注目している。


3.5月閣議請議案件について説明及び質疑応答(外務省)

(外務省) 5月閣議案件は、単年度案件としては一番長い工期が確保できるため、施設ものが主流になる。62件で360億円の規模になる。このうち、特徴的な案件をいくつか紹介したい。
 中国の第二次黄河中流域保全林造成計画は、5期あるフェーズの最後の段階に来ている。日本は植林による黄砂防止の支援をずっと行ってきた。中国のODAは円借款については2008年の北京オリンピック前までに円満に終了予定であり、無償資金協力は環境・感染症といった日中双方の課題を解決するもの、及び日中の相互理解交流を深めるものに絞って実施していくこととしている。後者は、具体的には草の根・人間の安全保障無償、文化無償、留学生支援無償といったまさに人・文化の交流に資するものである。総合的に国益をふまえて判断していく必要がある。将来の案件として、現在酸性雨・黄砂のモニタリング案件も準備中である。
 医療施設を対象とする案件については、先般、20年前に実施されたザイールの案件では維持管理がなっていないという批判の報道があった。今般のウガンダの東部ウガンダ医療施設改善計画においては全面的に相手国にあずけるのは難しいと考えられる中、ソフト・コンポーネントを付けるとともに、2006年から2009年まで技術協力との連携による医療機材の維持管理指導を行う予定である。無償・技協の連携によって実現可能な協力の一つの典型と言える。
 ケニアのアフリカ理数科・技術教育センター拡充計画は、理科や数学の先生のトレーニングを内容とする我が国の技術協力プロジェクトとの連携案件である。同プロジェクトは息の長い協力となっており、他の国からも研修に来る広域的な技術協力トレーニングとなっている。他のアフリカ地域からより多くの先生が来るので手狭になった施設を拡充するものである。バンドン会議で謳われた南南協力の促進が結実したようなもので、ケニアの先生が他のアフリカの先生を指導するという南南協力ステージへの手伝いを行う段階である。
 昨年のプロジェクトレベルの事後評価では給水案件についてどうやってきちんと料金徴収をベースとする維持管理が出来るかが問題となった。今般のタンザニアのザンジバル市街地給水計画においては、これまで水道料金を取っていなかったが、水道料金を回収する法律をつくるよう先方に要求した。当然住民には人気のない法案ではあったが、なんとか政府は法案を国会に提出した。まだ発効はしていないが、本案件の実施に伴って2008年度から料金徴収が始まる。その頃には給水計画が完成する予定である。事前準備は重要である。相手国側もしっかり準備をし、税金を無駄にしない努力が必要である。
 今回の施設案件では小中学校の建設案件が多く、特に小学校案件については従来よりコストダウンが期待されている。コストダウンの方策としては、競争性を高める、スペックの見直し、同じスペックでもなるべく資機材を現地調達する等のやり方がある。具体的な事例に沿って説明すると、工法上、鉄筋コンクリートをブロック造りという壁工法にすることが、資材の削減、工期の短縮につながることから、ニカラグアやブルキナファソで採用された。屋根のみを作って天井を張らないというスリム化を行うこともあるが、これは暑い、雨天の時うるさいといった教育環境とのトレード・オフの関係にある為、一律に採用しているわけではないが、ギニア、ブルキナファソ、マリで採用された。また、コストダウンの為には仕上げを簡素にする、間仕切りの壁、床の材質を変えるといったことが考えられる。さらに、教室の間取りを長方形から正方形へ変えることによってのべ床、壁面積を減少させる、あるいは、教室の四隅の他に中間に柱を立てることにより、梁に要する資材量を削減する等の工夫も行っている。特殊な事例ではあるが、モンゴルでは冬の寒さが厳しいため、凍土から建物を守るために地下室をもうけざるを得ないが、クローク等を地下へもって行くことによりデッドスペースを減らすとの工夫を行っている。これらの工夫により同じ国の過去の例と比べ、場合によっては15-30%のコストダウンにつながった。勿論、同じ国の学校でも、場所・地形・水事情等のバリエーションがあり、コストダウンの一部はこうした外部的要因によるものかもしれない。ODAはこのように色々なファクターがあるため画一的評価は難しい。コスト削減を促進し、より安くする努力は行っている。しかしコストダウンできる幅は必然的に段々頭打ちにならざるを得ない。これをどう考えれば良いのか。日本の技術・質はネームバリューとして生かすべき、そうでないと顔の見えない援助となってしまう。これらをどのようにバランスを取るか。また、簡単にひび割れするような建物であれば、ライフサイクル・コストで考えると必ずしもコスト低減とは言えない
(委員) 同意見である。あまり貧弱なものは作るべきではない、ただし趣味的に凝るのは良くない。勉強しやすい環境は勉強意欲を高める。ベトナム、カンボジアでは学校にトイレを作った。実際には恥ずかしがってなかなか行かないが、行かせる訓練も大事である。国際スタンダードの人間にするためには、どうせ使わないから作らない、ではいけない。但し、あまりにも綺麗であると子供が学校から帰りたがらなくなり、親が困ることにもなる。
(委員) 本当に賛成である。教育ODAは経済万能で考えるべきではない。
(委員) 国によると思われる。まず数(学校、教室)のニーズに応えるのが先の国もある。立派なものを作ることも重要だが、維持・管理は大変で、電気代もかかる。2008年には拡大JICAが発足する。その時に、少なくとも一般プロジェクト無償はJICAに移管すると聞いているが本当か。有償資金協力もJBICから拡大JICAに移るが、アフリカ諸国等への0.01%という低金利で円借款を行えるようになっている。円借款は多年度、アンタイドで供与されるので、無償資金協力との整合性は考えるべきではないか。こうした状況を踏まえつつ、無償資金協力において単年度主義の制約にどう対応するか、アンタイド比をどこまで進めるか、教育分野の支援(特に施設案件)で日本タイドでなければならないノウハウはどの程度あるのか、などを考える必要がある。
(委員) 暑い地域では壁を作っても電気や扇風機がなければ耐え難い状況になる。やはり現地の実情に即した仕様とすることが重要だ。
(委員) 案件の要求は大きめに出てくる。そのプロセスで品質を落として数を増やすことも考えられる。ある国では数、ある国では品質を重視する。それでは出てくる数字はどうなっているか。
(外務省) 予備調査を通じてニーズの確認や協力対象の絞り込みを行って、先方の要望をこっちの予算にどう押し込むかを工夫している。これまでは一般プロジェクト無償スキームの中で苦労しても限界があった。今回、コミュニティ開発支援無償によって選択肢は増えた。
(JICA) いかに無償資金協力を適正に行うかということに行き着く。できる限りアンタイド化を広げることは大切であるが、さらに重要なことは施工管理段階での品質の維持である。ベトナム、バングラデシュで災害時にシェルターとして機能した校舎の教訓も生かし、現地のニーズに応じた使い分けを行うことが必要になる。
(委員) 「協力対象校選定基準」とあるのはこれまでの議論と関係するのか。選定基準は国によって異なるのか。
(JICA) 用地取得がまだであるとか、住居がまばらで本当に生徒が集まるのか疑問である、というところは協力対象としていない。例えば200校ほどのリストがある場合、調査団が先方政府と話し合って絞り込みを行うが、国によって選定基準は多少異なる。だいたいの過去の趨勢からどう絞り込むのかの基準を決めている。
(委員) 一般プロジェクト無償を用いる前提で検討するのか、それとも要請の前で草の根・人間の安全保障無償、またはノンプロジェクト無償で行くのか、といった議論はしているのか。
(外務省) ODAタスク・フォースでふるいにかけている。一般プロジェクト無償か草の根かは、それぞれのタスクフォースで一定の判断基準がある。
(JICA) 拡大JICAにおいては現地機能の強化、及び技協、円借、無償のシナジーの拡大が求められることになろう。学校建設で円借款と一般プロジェクト無償を組み合わせて用いる、例えば一般プロジェクト無償をモデル事業段階的に、円借款を面的拡大段階に、といったことが考えられ、大きな課題である。
(委員) 学校の多機能化を行い、夜間は他の用途に使えるということになればコストは多少高くても説明可能であろう。
(外務省) 顔が見える援助をすることも考えなければならない。住民自身が作りあげていくという視点で、計画段階、またその後いかにコミュニティの能力向上に結びつけるかを相手国にも良く考えてもらうことが大事である。建設した学校等の施設を最大限に利用してどのようにコミュニティ全体の能力を強化していくかについて対話集会を開催し、ここに大使館員やJICAの専門家が参加し、日本としての考え方を伝えていく、これは顔の見える援助をつくり上げる上で重要と考える。
(委員) ミャンマーの植林事業においては以前農民が土地を取り上げられたことがあり、また、カレン族に対する軍部の侵攻があると承知するが、今次ODAがこうした圧政の道具にされないか。
(外務省) カレン族は主にタイとの国境に住んでおり、今次案件のサイト(中央部)には該当しないのではないか。
(委員) 国境に追いやられたが、全国に散らばって住んでいる。
(外務省) ミャンマーではこれまで住民を排除する形で植林をして来たため、住民が戻ってきて植林した木を切ったりして事業の効果が上がらなかった。今次協力案件は、このような失敗の反省に立って、住民参加型の植林事業を行うものであり、ミャンマー政府側も所管大臣が現場視察を行うなどの形で関心を示し、こうした事業形態の普及を図りつつある。したがって、案件の意義はむしろ大きいと考えられる。



別添1


出席者


I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
1.大野 泉   政策研究大学院大学教授
2.小川 英治  一橋大学大学院商学研究科教授
3.杉下 恒夫  茨城大学人文学部教授
4.西川 和行  財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
5.星野 昌子  日本国際ボランティアセンター特別顧問

II.外務省
6.鈴木 秀生  経済協力局無償資金協力課長
7.三浦 和紀  経済協力局無償資金協力課無償援助審査官
8.小畑 正孝  広報文化交流部文化交流課文化無償班長
9.武田 朗    経済協力局無償資金協力課地域第一班長
10.板垣 克巳  経済協力局無償資金協力課地域第二班長
11.内藤 康司  経済協力局無償資金協力課ノンプロ・KR等班長
12.倉冨 健治  経済協力局無償資金協力課業務班長 

II.国際協力機構
13.中川 和夫  無償資金協力部長
14.正木 寿一  無償資金協力部管理・調整グループ 管理チーム長


別添2


無償資金協力実施適正会議(5月22日12:00~14:00)議題


場所:外務省(霞ヶ関、中央庁舎)8階857号室

  1. 報告事項(外務省)
    (1)クントロ・アチェ復興庁長官の来日
    (2)草の根・人間の安全保障無償外部委嘱制度説明会

  2. コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)

  3. 5月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)

以上
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