2月23日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(
出席者別添1、
議題別添2)。
1.報告事項(外務省)
(1) |
新委員の紹介
(外務省) |
本年1月より脊戸委員が退任され、その後任として茨城大学の杉下恒夫教授に本会議の委員をお引き受け頂いた。杉下教授は、読売新聞に長く務められたのち、大学において国際関係等につき教鞭を執られている。またJICAの客員国際協力専門員、日本評価学会の理事も勤められており、本会議にとっても非常に有益なご意見を頂けるのではと期待している。 |
(委員) |
ジャーナリスト、大学教授、JICAの国際協力専門員の3本柱でやってきた。これまでずいぶん長い間、経済協力の分野で活動してきたので、その経験を元に少しでも本会議に貢献できればと思う。
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(2) |
我が国の経済協力の実施体制について
(外務省)
(イ) |
昨今の政府系金融機関の改革の一環として、現在JBICが実施している円借款業務を今後どうするのかということが昨年末から官房長官の下に組織された「海外経済協力に関する検討会」において議論されてきた。これを発端に、我が国の経済協力の実施体制の在り方全体についても議論されるようになり、同検討会、自民党にて様々な議論がなされている。まさに、今議論が進行中であり、明24日には自民党の合同部会が開かれる。また、同じく24日に同検討会の最後の会合が開かれる予定であり、官房長官に対する報告の内容について議論される。本件は、もともと政府系金融機関の改革の問題として、経済財政諮問会議から始まったことであるので、3月上旬の経済財政諮問会議に諮られることとなる。同諮問会議では、行政改革に関するプログラム法を今国会に提出する準備を進めており、大きな方向性はここで決まることになる。 |
(ロ) |
新しい実施機関の体制については、現在JICA法の改正ということが考えられているが、この法改正をどう行うかが鍵となる。組織の統合には実務的な問題が多々あるため、現在事務的に検討しているところである。 |
(ハ) |
官邸に戦略会議を置くことが検討されている。今までも対外経済関係閣僚会議はあったが、今後は政治主導で、より頻度を増やし開催していくことが考えられている。 |
(委員) |
無償資金協力も新実施機関に移行、という報道がなされているが本当なのか。主務官庁はどこになるのか。 |
(外務省) |
これまでもJICAに実施促進をお願いしてきているが、法律上はあくまでも技術協力の一環ということでやってきている。JICA法で無償資金協力にも真正面から規定を設けることを考えている。JICAについては、これまで通り外務省が主務官庁になると考える。 |
(委員) |
戦略会議は、だいぶ合理化されるとしても内閣府、外務省、財務省、経産省の4府省で構成される。外務省から見て、この戦略会議は機能するか、機動性は確保出来ると考えるか。 |
(外務省) |
まさに本戦略会議が機動的に、且つ踏み込んだ議論を行える場として機能出来るよう、会議の在り方、取り扱う内容等について検討しているところである。 |
(委員) |
既存のODA戦略会議等はどうなるのか。 |
(外務省) |
省内の体制もこれに対応できるよう大きく変えなければならないと思っている。現在は省内で議論されているところである。 |
(委員) |
政府系金融機関の再編問題を発端として、経済協力実施体制をどうするかについての大方針が近々決まるということなので、より具体的な話題についてもインプットしてもらいたい。
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(3) |
平成18年度無償資金協力予算について
(外務省) |
平成18年度無償資金協力予算については、コミュニティ開発支援無償、テロ対策等治安無償、防災・災害復興支援無償の新3スキームの導入が認められた。予算全体が削減されたため、メリハリというより、前年比同規模を維持するスキームと大きく減額するスキームに分かれた形となった。昨年は無償資金協力プロジェクト・レベルの事後評価を実施し、また12月にはコスト縮減目標を設定するなど、無償資金協力予算の一層の効果的、効率的な執行に向けた努力を続けていく。 |
(委員) |
新しいテロ対策等治安無償、防災・災害復興支援無償と緊急無償との違いは何か。これまでも災害後の支援などは緊急無償で対応してきているはずだが。 |
(外務省) |
緊急無償は、事態が起きた後、差し迫った状況で支援を実施するものであり、このために閣議の手続きも一般の無償資金協力案件と比べて簡略化されている。他方、新たに導入したスキームは、こうした被害、被災が起こる前の予防的な取組を支援する、または災害後の中長期的な復興を支援するというものであり、通常の閣議手続きを経て実施されることになる。 |
(委員) |
世界で防災などの国際会議を開催する際に、日本としても会議に出席して存在感を示すことが重要。こうした会議への参加費など、政府としてもっと支援できないものか。 |
(委員) |
会議の場に日本人が出席して、日本が実施してきたODAについて宣伝することは日本の貢献を知ってもらう上で、とても効果的である。こうした方法を実践しないことはもったいない。 |
(委員) |
会議への出席者への支援は、官公庁では公平性ということを考えて積極的に支援できないという要因があると承知している。他方、自分の経験でも、積極的に活動しているNPOなどに注目して、その団体の活動を後押ししていくといったことをしなければ、なかなか活動は盛んにならない。また、こうした選択的な支援を平等でないとして行わなければ、結局何もできない。分野を特定するなどして、積極的に後押しすることも考えてみてはどうか。
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(4) |
アフリカの平和の定着支援について
(外務省) |
2005年7月のグレンイーグルズ・サミットにおいてアフリカに対するODAを倍増することが発表されたが、今回のアフリカに対する支援は、そのフォローアップの一環である。去る2月16日、17日には、我が国が主導するTICADプロセスの一環として、我が国の対アフリカ支援の3本柱の一つである「平和の定着」を進めるため、日本、世銀等が主催して、エチオピアのアジスアベバでTICAD平和の定着会議を開催した。日本からは塩崎外務副大臣(全体議長)の他、明石康元国連事務次長、駒野前アフガニスタン大使が出席し、アフリカの20以上の国から閣僚級が出席した。国際機関や市民団体なども併せると、総計73カ国、38機関等から400人以上の参加を得た。
会議の場では、日本のこれまでの平和の定着支援の取組みを紹介するとともに、スーダン、大湖地域、西アフリカを中心に、DDRや小型武器対策、政治ガバナンス強化、国民和解、難民・国内避難民等の帰還、再統合促進、人間の安全保障を重視したコミュニティ開発等の協力を積極的に行うことを表明し、この一環として本年3月までに6000万ドルを目処とする支援の実施を表明した。6000万ドルの内訳は具体的には緊急無償資金協力による水・衛生等の紛争後のコミュニティ支援や地雷除去、元児童兵の社会復帰等の支援8件が中心。この他には、前回12月の適正会議でご議論いただいたリベリアの案件や本日の会議の対象案件である紛争予防・平和構築無償によるDDR支援2件も含まれている。最近は、案件を個別に発表するよりも、まとめてパッケージとして発表することでインパクトを強めるなどの工夫をしてきている。 |
(委員) |
パッケージとして発表することで、どこに重点を置いた支援なのかなどがわかりやすくなった。財務省とのやりとりの段階では、すでにパッケージとしての枠組で議論がされているのか。 |
(外務省) |
本来の形式上の議論では、まだ閣議にかかっていない案件について、対外的に発表すべきではないということなるが、財政当局も政策意図の理解しやすい援助にする必要性を理解していると感じている。もちろんそこには一定の限界があり、対アフガニスタン支援で議論となった多年度のプレッジとなるとその中身について予め決めることは困難である。 |
(委員) |
今回のパッケージは、平和の定着会議を見据えて用意したものと思われるが、外圧があったから、こういったパッケージの支援にしたのか。 |
(外務省) |
そうではない。過去にもバンドン会議や東アジアサミットなど、様々な国際会議の場でパッケージ支援が発表され、実施されてきている。 |
(委員) |
復興支援と開発支援のデマケはどうなっているのか。紛争後何年といった基準はあるのか。元兵士がいつから失業者になるかなど疑問に思っている。 |
(外務省) |
結論としては、統一基準はないと思われる。現実問題としてどこまでが復興支援といえるのか、その国の状況等も考慮しつつ、柔軟に整理されている。最終的には政策判断である。 |
(委員) |
復興支援は原則国際機関経由という理解でよいのか。 |
(外務省) |
とりあえずそこにある問題にどう対処するかという場合には、これまでの現場での経験の蓄積がある国際機関経由がJICAや大使館と比べて効果的であるのは事実である。ただし、いつまで経っても国際機関経由というのではなく、現在スーダンは比較的国内が安定してきたこともあり、二国間の支援再開のための調査が開始されているし、その国の国内状況を見極めつつ、次々と二国間に移行していくのだと思われる。
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2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
JICAより閣議請議案件のE/N後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。
3.2月、3月閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)
(1) |
外務省より2月及び3月に取りまとめ閣議請議を行う案件につき、以下のとおり説明を行った。
(イ) |
2月閣議、3月閣議は一般プロジェクト無償、水産無償が数件と、文化無償1件の他は、ノン・プロ無償、食糧援助(KR)、貧困農民支援(2KR)の件数が多くなっている。2月閣議にかける案件について主要なものについて説明する。 |
(ロ) |
先ずカンボジアの地雷案件は、カンボジアで使用する地雷除去機・探知機の開発に必要な現地試験に係る費用を支援するものである。地雷機材は現地の植生や土壌が性能や効率的運用に大きく影響することから現地試験が必要となる。なお、同様の支援をアフガニスタンにおいて既に実施しており、現地試験を終えている。現在実際の使用に際して必要となる現地国連機関の承認を待っている状況である。本件についても、現地試験実施機関の承認後実用化される予定である。 |
(ハ) |
次にニカラグアの貧困農民支援であるが、ニカラグアの貧困農民支援では原則として耕作地が5ha以下の小農に対する支援を行っている。支援の結果、小農の収穫が倍増したとの報告も受けており、順調に成果を挙げている。見返り資金も農道の改修などに有効に使用されている。また、本件は技協との連携もうまくいっている。モルドバに対する貧困農民支援で供与されている機材は現地で使われている旧ソ連製のものよりも高性能で収穫の向上に役立っているとのことである。また、本件支援ではリース販売方式という3年間に分けて農民に購入させる販売方式をとっている。この方式はEUやUSAIDから注目されており、EUについては、自らのプログラムへの導入を検討しているようである。 |
(ニ) |
次はノン・プロであるが、パキスタンのノン・プロは昨年の地震被害に対する災害復興のためのノン・プロである。スマトラ島沖地震の際のノン・プロと同様の緊急性の高いものであり、来年度からは災害復興支援無償のスキームに分類されるものである。目下壊滅的な打撃を受けた小学校の再建や医療施設の再建が主な対象となる。 |
(ホ) |
紛争予防・平和構築無償であるが、インドネシアの案件は、DDRのうち元戦闘員の社会復帰に当たるRの部分に対する支援に重きを置いた案件となっている。IOMを通じて、職業訓練等が行われる。 |
(ヘ) |
3月閣議案件については、まだ若干先のことであり、財務省との間でまだ協議されていない案件ばかりであるので、今後いくつかの変更があると考えられるとの前提で資料をご覧いただきたい。まず、アフガニスタンのノン・プロは、昨今ロンドンで開催された対アフガニスタン・プレッジ会合で日本が表明した4.5億ドルの追加支援の一環として行われるものである。ちなみに同会合におけるプレッジ額において日本は4位で、1位がアメリカの40億ドル、それにイギリス、ドイツと続く。また、紛争予防・平和構築無償2件は、2月の平和の定着会議において日本が表明した6000万ドルに含まれる案件である。
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(2) |
これを受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。
(委員) |
エリトリアに対する貧困農民支援の農薬処理事業について、過去にもこういった案件はあったのか。 |
(外務省) |
モザンビークにおいて前例がある。ただし、エリトリアで処理対象となる農薬は日本が供与した農薬でということではなく、現実問題として使用期限の過ぎた農薬が大量にあるので、その処理に対して支援を行うものである。 |
(外務省) |
途上国にとり自国の食糧生産を向上させるためには、肥料や農機を通じた生産向上努力への支援に加え、農業生産の障害となる劣化農薬を廃棄するとともに農薬に関する知識を伝えることが重要である。何ならばドナーが農薬を供与しなくなっても、例えばバッタが大量発生した場合などどうしても自ら購入して使用せざるを得ないような事態も想定されるからである。本件は、農薬の処理に加えて農薬に頼らない農法の普及や、農薬の適切な維持管理体制に関する指導も含めて支援を行うものである。こうしたFAOの専門的な知見を活用したオブソリート農薬処理・訓練事業への支援はアフリカ等途上国の農業生産努力を真に持続的なものとする支援の一環として重要な意味があると考える。 |
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別添1
出席者
- I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
- 1.大野 泉 政策研究大学院大学教授
2.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
3.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.杉下 恒夫 茨城大学人文学部教授
5.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
6.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- II.外務省
- 7.鈴木 秀生 経済協力局無償資金協力課長
8.武田 朗 経済協力局無償資金協力課地域第一班長
9.板垣 克巳 経済協力局無償資金協力課地域第二班長
10.内藤 康司 経済協力局無償資金協力課ノンプロ・KR等班長
11.倉冨 健治 経済協力局無償資金協力課業務班長
12.服部 孝典 経済協力局無償資金協力課事務官
- II.国際協力機構
- 13.中川 和夫 無償資金協力部長
14.正木 寿一 無償資金協力部管理・調整グループ 管理チーム長
別添2
無償資金協力実施適正会議(2月23日12:00~14:00)議題(案)
場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)3階396号室
- 報告事項(外務省)
・ 新委員のご紹介
・我が国の経済協力の実施体制について
・平成18年度無償資金協力予算について
・ アフリカの平和の定着支援について
- コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)
・入札競争性の確保について
- 2月及び3月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)
以上