ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成17年度第5回会合)議事録

 11月24日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1議題別添2)。

1.報告事項(外務省)

(1) ODAの点検と改善について、外務省より報告を行ったところ、概要以下のとおり。

(外務省)
(イ) 本24日の第25回ODA総合戦略会議において、「ODAの点検と改善」について、報告を行った。総合戦略会議での議論を経たのち、対外的に公表することとしている。報告書にまとめられている10の新たな改善措置について要点を御説明したい。
(ロ) まず、戦略性を強化するために以下の5措置に取り組む。
1)現在19ヶ国について策定済み、策定中の国も含めると24ヶ国が対象となっている国別援助計画を、30ヶ国程度にまで拡充する。30ヶ国の国別援助計画が完成すると、実に我が国が実施しているODA実績総額の約7割を受け取る国について国別援助計画が策定されることになる。2)また、この国別援助計画と実際に個々のプロジェクトの実施との間には大きなギャップがある。ついては、計画と実施の間をつなぐ国別援助計画実行指針というものを導入する。3)有償、無償、技術協力等のスキーム間の連携を強化し、ある開発目標の達成にむけて複数のスキームを組み合わせて取り組む「プログラム化」を推進する。4)ある国に対し我が国がこれまで実施してきたODAについて、現地ODAタスクフォースによるレビューを行う。現地機能の強化、現地への権限委譲に加えて、現地にさらに労力を強いることにもなるが、まさに戦略的にODAを実施するという観点からは、その国に対する我が国のODAがどういった効果を達成してきたのか、投入の規模、分野は適切だったかなどを不断に見直し、次に生かしていく。5)官民連携を一層推進していく。
(ハ) 次に効率性の向上(コストの縮減)について。6)有償資金協力では、調査から案件の実施までにかかる時間を短縮すべきとの強い指摘があり、これを受けて調査から入札までの期間を短縮することを目標とした。7)無償資金協力では学校建設案件や地下水開発案件などで、他ドナーと比較してコスト高が指摘されてきたが、これまでに相当のコスト縮減努力を行ってきており、一定の成果は出ている。本報告書にコスト縮減数値に向けた目標の設定を盛りこんでいるが、対象地域、分野、協力内容も非常に多岐に亘る無償資金協力のすべての案件について一律何%削減といった数値目標を設定しても意味がない。そこで、対象地域、分野等を特定した形で、数値目標を設定することとした。現在、アフリカの学校建設案件でどの程度コスト縮減が見込めるか、調査を実施しているところである。8)コスト縮減にも関わるが、コミュニティ開発支援無償という新スキームを導入することで、現地仕様の設計・現地施工業者を積極的に活用することを目指す。
(二) 最後にチェック機能の強化について。9)無償資金協力の個別案件の事後評価を今年度から導入した。来年度以降は評価を行う体制も拡充すべく予算要求及び定員要求を行っている。10)体制の拡充にも関わるが、評価を行う人材の育成も重要であり、大学や研究機関の幅広い参加を得ていく方針である。
(ホ) 上記の改善措置に関しては、ODA総合戦略会議の委員から、評価の費用対効果も考えるべきとの意見や、評価には手間も時間がかかるので評価を行う体制を整備することが重要との意見が出された。評価に携わる人員を拡充すべく、定員要求を行っているが、公務員一律5%削減という政府の大方針もあり、大幅増は難しいかもしれないが、予算、体制を拡充し、評価の内容も充実させていく。また、委員からは「点検と改善」はコスト縮減だけが目的ではないはずであり、コスト縮減が質の低下を伴わないように、如何に効果的な援助を行うかという観点から取り組むべきとの指摘もあった。
(ヘ) 本日、当会議の委員から新スキームでは現地業者の活用のみならず、NGOも参画できる仕組みとすべき、とのご意見を頂いた。現地で活動するNGOに施設の施工等を委託することになる場合、日本のODAであるからにはNGOの責任能力、施工能力等を確認しつつ実施しなければならない。

(2) 次いで、以下のとおり質疑応答がなされた。

(委員) 今回のODAの点検と改善の報告書は政府全体として出されたものか。
(外務省) 今回の報告書は「変える会」以降の外務省のODA改革の取り組みを点検し、新たに取り組むべき課題について、外務省の責任でまとめたもの。今後改善措置に実際に取り組んでいく段階で、関係省庁とも調整して政府として取り組んでいきたい。
(委員) 国別援助計画実行指針とは、具体的にどのようなものか。
(外務省) 国別援助計画と実際の案件の実施の間には大きな差がある。実行指針では計画を実施の段階に落とし込み、具体的には特定分野のある開発目標の達成のために対象地域、用いるスキームの組み合わせ方などを盛りこむことなどを想定している。
(委員) 数値目標の設定について詳細を伺いたい。
(外務省) 我が国の援助として胸を張れる質を確保しつつ、現地仕様の設計や現地施工業者を活用することで学校案件、地下水開発案件のコストを現在の水準からどの程度縮減できるか、という目標を設定するもの。
(委員) 国によっては学校などについて標準仕様を決めている国もある。標準仕様がある国はその仕様を基準にしてはどうか。
(外務省) 標準仕様が非常に低い国もあるので、標準仕様に耐久性、設備の程度に問題があれば、それを補強しつつ建設することになるだろう。
(委員) 被援助国政府に対しては標準仕様を底上げする方向で働きかけつつ、標準仕様がある国は当該仕様の学校を補強するアプローチ、標準仕様がない国は日本の援助の質を確保しつつ、現地の仕様、業者を活用してコストを押さえるアプローチと、2つのアプローチが必要ではないか。
(JICA) スマトラ沖地震津波被害に関するスリランカへの支援では、学校の建設に現地仕様の設計、業者を活用した結果、競争性が高まりコストが低く抑えられた。現地仕様を導入する際にも透明性、品質、工程・安全管理が重要。実際にスリランカでの経験をアフリカに応用出来ないか、基本設計調査を先行的に行い、基礎研究も行っている。
(委員) 国別援助計画は経済協力局内でも国別開発協力第一課、第二課が中心となって作成しており、実際の案件は各スキーム課が担当している。案件選定に国別課の関与が高まれば、実施の段階に計画をより反映できるのではないか。局内の体制についても考えて欲しい。
(委員) ODAを始めて30年も経つのに、このようなことを大々的に対外的に宣伝しなければならないのか。これまでも十分取り組んできているはず。
(委員) スリランカにおけるコスト縮減の例は非常に好例。
(外務省) 上記のスリランカにおける学校建設の1校目の完工式が最近執り行われた。
(JICA) 他ドナーと比べて非常に早く完工したということで、現地で高く評価されている。


2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)

(1) JICAより閣議請議案件のE/N後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。

(2) ついで、JICAから以下の点について報告があった。
(JICA) JICAではODAに関して契約を結ぶ相手となるコンサルタント約90社、メーカー・商社等約110社、計200社程度を対象に、説明会を開催することを企画している。昨年度も同種の説明会を開催し、制度変更や問題点を説明するなどしていた。今年度はサブセクターに分け、意見交換も行う予定である。

3.12月閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)

(1) 外務省より12月に取りまとめ閣議請議を行う案件につき、以下のとおり説明を行った。

(イ) 12月閣議は全体で36件、機材供与の案件が多くなっている。年度の後半でもあり食糧援助、貧困農民支援が中心となっている。
(ロ) パキスタンについては、10月の閣議でパキスタンとアフガニスタンを繋ぐ道路の建設案件の実施を決定した。すべての道路を日本が支援するわけにはいかず、パキスタンの自立発展を促すことも必要。パキスタンにおける建設機械の技術訓練所は1984年に我が国の無償資金協力によって建設し、訓練用の機材を供与した。その後、技術協力も行っており、無償と技術協力の連携の好例である。技術者の養成数も年々増大しており、近年は入校希望者を断らざるを得ない状況となっている。今回の支援では訓練用の機材を供与することで、建設機械技術者の養成を加速することが可能となる。
(ハ) エクアドルにおける上水道の整備は、現在も給水制限がなされている南部2都市を対象とするもの。導・送水管の整備や浄水場の整備等を行い、給水量の増加、衛生的な水の供給が期待される。実施機関である地方上水道公社の維持管理経費は黒字となっており、今後の実施能力は十分あると判断した。
(ニ) 貧困農民支援では、平成14年12月以降、基本的に農薬を供与しないこととしたが、貧困農民を対象に支援できる内容を増やしてきている。例えばケニアでは、調達肥料の一部を現地NGOと連携しつつ小分けに袋詰めの上、優良種子とともに貧困農民に配布することとしている。モンゴルでは支援の対象作物として小麦に加え、より貧しい農民が栽培するじゃがいも、野菜にも拡大している。ガーナでは、貧困農民が農業組合を通じて農機を共同購入することも可能とした。ザンビアではすでにザンビア政府が実施している肥料と優良種子をパッケージとして販売する事業に、我が国の支援により調達した肥料を活用するものであり、同国に派遣されたJICA専門家が支援の実施と管理について、同国政府に助言を行う予定となっている。スワジランドは、以前から農機の供与に加え技術指導を行っているが、今回の支援でも単に機材を供与するだけでなく、機材の使用、保守に関する初期指導を行う計画である。また、見返り資金でマイクロ・ファイナンスを支援するなど、貧困農民支援は名称を変更しただけでなく、支援の内容を拡充させている。
(委員) 貧困農民支援については、様々な工夫がなされていてとてもよい。資金で調達した肥料や農機等の配布はどのように決まるのか、我が国の専門家等がアドバイスしているのか。
(外務省) 貧困農民支援では、供与に先立って必ず調査団を送り、先方政府の実施体制や先方政府が立てた配布計画の内容等について調査し、不安な点等があれば、指導したり、計画を見直させたりしている。技術協力でJICAの農業専門家が派遣されている国では、当該専門家からの助言等も得て指導しているが、専門家が派遣されていない国でも、貧困農民支援の中でソフトコンポーネントとして技術指導等を行うなどの工夫によって、きめの細かい支援が行えるよう心がけている。
(委員) リトアニアに対する文化無償の案件は、他の無償案件が貧困で大変な国である一方で、リトアニアはそれ程困っているようには感じられない。
(外務省) 文化無償は他の無償資金協力とは経緯も異なり、文化財保護、文化交流の観点から行われているものが多い。ただ、最近では文化無償を行うにあたっても、日本文化の発信、日本語教育の普及等に重点を置くべきではないかとの指摘もあり、広報文化交流部において文化無償の在り方を議論している。
(委員) 戦略が見えてこない。なぜリトアニアが大事なのかということがあれば別だが、機材を供与することが我が国との文化交流に繋がるのかも不明。
(外務省) 文化無償を供与する際の判断として、一般プロジェクト無償と同様の要件である実施機関の受け入れ態勢や被供与国のニーズといった要素に加え、日本との関連性に着目し実施するよう留意しており、また、日本語教育や武道といった日本文化と直接関連した内容の案件を実施することにより、対日理解の促進、ひいては外交上の広報効果が期待出来ることが特色となっている。
(委員) やはりリトアニアの文化無償案件は、日本が同国の楽団の機材を支援することの意義が薄いのではと感じてしまう。
(委員) 国際交流基金などでも文化交流事業を行っており、無償資金協力として行うことの意義はよく説明する必要がある。
(委員) ノン・プロジェクト無償とセクター・プログラム無償の違いは何か。
(外務省) ブルキナファソ及びホンジュラスについてはセクター・プログラム無償である。セクター・プログラム無償とは、ノン・プロジェクト無償の一形態であり、貧困削減等の経済構造に資する原材料を輸入するための資金(外貨)を供与するプログラム型援助であることに変わりはないが、見返り資金の活用を同国の重点開発課題である特定のセクターに限定する場合に「セクター・プログラム無償」と呼んでいる。

4.無償資金協力個別案件の事後評価について

(1) 無償資金協力の個別案件の事後評価の結果について、外務省より報告を行った。

(イ) 本省より各在外公館に訓令を発出し、8月から9月にかけて52件の無償資金協力案件について評価を行った。本評価報告書は各在外公館から提出された報告書が、公館において各自評価を行っていたため、一旦提出された後に各評価のバランス等を考慮してなるべく均質なものとするとの観点から、また更なる分析やデータを求めるなどの指示を在外公館に送り返し、再提出されたものをまとめたものである。報告書の概要においては、今回の評価全体を俯瞰できるように、項目毎にまとめ、今回の評価で何を得たか、今後評価を毎年継続して行っていく上での改善点などをまとめた。
(ロ) 今回の報告書に記載された問題は、真新しい問題ではなく、これまでも問題と認識されてきたものが多い。他方、今回の評価によって、実際の事例を通じこれらの問題点を明確に且つ具体的に把握することができた。
(ハ) ペルーやスリランカのように、援助の効果をわかりやすく紹介しようと良く工夫している報告書もあれば、逆にモザンビークやジンバブエのように、うまく実施されていない案件について率直に報告してきたものもある。この点は、評価が「手前みそ」ではないかとの批判にも応えられるものになっているのではないか。まだまだ改善の余地はあるものの、評価に対する注目にある程度耐えられる報告書になった。

(2) 次いで、以下のとおり質疑応答を行った。

(委員) 今回の評価は初めての試みであり、自分は学術的視点からではなく、今後改善されながらも本件評価が続いていくとの観点から、対外的に発表することに対して問題がないか及び発表した際の外部からの反応についてコメントしたい。
1)案件を「妥当ではない」と表現してしまうことの是非。妥当性があると評価したから案件を採択したのであり、その評価を自ら否定すべきではない。
2)評価に関して6つの項目(妥当性、効率性、効果の発現状況、インパクト、自立発展性、広報効果等)があるが、どのような事態がどの評価項目に該当するかを報告書の読者が納得できるよう、今後明確にしていく必要があるのではないか。
3)被援助国に非があることを強い語調で指摘している箇所があるが、その表現は正確であるのか。
(委員) コスト評価については、安ければいいというものではないと自分も考えているが、コストについては一般の関心も高いので、触れるのが妥当。評価の今後の進め方については、一つ一つの無償案件について評価することも重要なのかもしれないが、その国に対する支援プログラムの中での無償という、より大きな視点での評価というものも重要ではないか。
(外務省) コスト評価については、何と何を比較すればいいのかといった点について、在外公館においては、コストに対する知識を含め比較材料が十分ではないので、今後はプロフェッショナルな外部機関に委託したいと考えている。各国の援助プログラムに関する評価については、開発計画課が行っているので、今後調整を含め相談する必要がある。
(委員) 今回の評価は、基本設計調査における事前調査の事後評価をするという理解でよいのか。これまでJICAがやってきた事後評価と何が異なるのか。
(外務省) 基本設計調査が適切であったかの評価だけでなく、今回の評価はさらに我が国援助の被援助国内への波及効果、我が国外交政策への波及効果及びコストの削減状況についても探求する評価である。
(外務省) JICAは終了時評価と事後評価を行ってきた。終了時評価というのは、案件の終了時に事業が適切に実施されたかを評価するもので、事後評価というのは、案件が実施された数年後に案件の状況をチェックするものである。これらについては、全ての案件に対して実施されたわけではなく、対象案件は年に10~20件だった。また、独法化以降、これらの評価は実施されていない。独法化以後は基本設計調査の事後評価が行われるようになったが、件数は今年10件、昨年6件、一昨年2件である。さらに、案件がもたらしたインパクトや外交的な効果についての評価はJICAの評価には含まれないので、その点は、今回の無償の事後評価のみが包括的に実施している。
(委員) それでも、JICAの評価と無償の評価の大部分が重なるのでは。
(外務省) いくつかの報告書の中には、技術協力があったことが無償案件の成功につながったといった言及もある。無償評価は、JICAの評価よりもより大きな視点から評価を行うといったような相互の評価の整理も今後考えていきたい。
(委員) 納税者の視点を考えると、マスコミによって無償の事後評価が悪く報道されれば、その点だけが強調され、大きく印象を損ねてしまう。この点には注意すべき。今回のように全世界の案件を評価するのもよいが、2カ国くらいで、案件善し悪し関係なく、徹底的に評価し公表することができれば、国民側としては納得のいく評価になるのだが。
(委員) 今回の試みは、外務省が事後評価に対して積極的に取り組んでいるという姿     勢を外部に示すことにもなり、よいことと思う。他方、そうであればこそ、当然に、外部の人に読んでもらう以上、文章表現は正確にするよう心掛けるべき。
(外務省) 本評価報告書及び評価の概要を、明25日に開かれるODA評価有識者会議に諮った上で、同会議委員からの意見や本日皆様からいただいた意見を十分に踏まえ検討した上で12月2日に外部に発表することを予定している。


別添1


出席者


I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
1.大野 泉   政策研究大学院大学教授
2.小川 英治  一橋大学大学院商学研究科教授
3.敷田 稔   財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.脊戸 明子  学校法人日本外国語専門学校副校長
5.西川 和行  財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
6.星野 昌子  日本国際ボランティアセンター特別顧問

II.外務省
7.鈴木 秀生  経済協力局無償資金協力課長
8.三浦 和紀  経済協力局無償援助審査官
9.武田 朗   経済協力局無償資金協力課地域第一班長
10.板垣 克美  経済協力局無償資金協力課地域第二班長
11.内藤 康司  経済協力局無償資金協力課ノンプロ・KR等班長
12.倉冨 健治  経済協力局無償資金協力課業務班長
13..山尾 まゆ 経済協力局無償資金協力課事務官

II.国際協力機構
14.中川 和夫   無償資金協力部長
15.正木 寿一   無償資金協力部管理・調整グループ 管理チーム長


別添2


無償資金協力実施適正会議(11月24日12:00~14:00)議題(案)


場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)5階584号室

  1. 報告事項(外務省)
    ・ODAの点検と改善について

  2. コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)

  3. 12月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)

  4. 無償資金協力個別案件の事後評価について(外務省)

以上
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