10月21日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(
出席者別添1、
議題別添2)。
1.報告事項(外務省)
(1) |
パキスタンにおける大規模地震災害に対する支援の概要について、外務省より説明を行ったところ、概要以下のとおり。
(外務省)
(イ) |
10月8日、パキスタンを震源とする大規模地震が発生し、被害状況は死者5万人以上、被災者も約400万人に上っている。日本としては、同日中に、国際緊急援助隊の派遣を決定し、9日に49名の救助チーム、10日には21名の医療チームを派遣した。9日には約2500万円相当の緊急援助物資の供与を決定し、11日に現地にてパキスタン政府に引き渡している。これらに加え、11日には、最大2000万ドルの無償支援の実施を決定し、14日、このうち12億8400万円(1200万ドル)をパキスタン政府に対する二国間の緊急無償資金協力として実施することを決定し、18日、残りの800万ドルを国際機関経由の緊急無償資金協力として実施することを決定した。 |
(ロ) |
現地で活動している日本の医療チームは、バタグラムの小学校の校庭に仮設テントを設営し、すでに千人近くの診療を行っている。 |
(ハ) |
二国間の緊急無償資金協力については、すでに物資の調達を進めており、第1段階の物資として貯水用のポリタンクが26日にも現地イスラマバードに到着する予定。その他にもテント、プラスチックシート、スリーピングマット、毛布などを早急に現地に届ける予定である。 |
(二) |
これらの緊急支援の他にも、JICAが今後の復旧・復興支援の方向性を探るための調査団を22日から現地に派遣し、23日からはJBICも調査団を派遣して、世銀等との合同ニーズアセスメントを行うこととなっている。
|
|
(2) |
次いで、平成18年度無償資金協力予算の概算要求について、外務省より説明を行い、質疑応答を行ったところ、概要以下のとおり。
(外務省) |
平成18年度の無償資金協力予算の概算要求では、コミュニティ開発支援無償という新スキームの導入を検討している。これまでの一般プロジェクト無償資金協力は、点的な支援であり、1案件の規模も大きかった。コミュニティ開発支援無償では、小規模の案件を束ねて、分野横断的にコミュニティの底上げを図ることを目的としている。また同スキームではコスト縮減も目的としている。施設の建設などでは、現地仕様を用いることを想定している。また、資金を一括拠出することによって、迅速な支援を実現することを考えている。しかし、総合病院の建設等特に日本の高度な技術の活用、移転が求められる場合或いは現地に十分な能力のある業者がいない場合には、引き続き一般プロジェクト無償で支援していくことになるだろう。 |
(委員) |
対アフリカ支援を3年間で倍増させる目標の達成に向けての取り組みはどんな状況なのか。本会議の場以外でも、ODA増額に向けた声は高まっていると感じている。 |
(委員) |
予算要求の表で、来年度新たに要求する費目の分け方が従来のそれと変わっている。さらにそもそも無償資金協力の予算は、新しいニーズが生じるたびに予算費目を細分化し、サブ項目が細分化され、数が肥大してきた感がある。このように細分化していくことでわかりにくくならないか。政策目標や機能ごとに整理することなく、ずっとこのようにし続けることが本当によいのか。 |
(外務省) |
個人的には予算は「これで何をしようとしているのか」ということが国民に分かるように、当該年度の政策目標に応じて分類すべきと考えている。
|
|
2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
(1) |
JICAより閣議請議案件のE/N後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。
|
(2) |
ついで、JICAから以下の点について報告があった。
(JICA) |
学校建設案件で世銀やNGO等からコスト高を指摘されているが、これまでにもコスト縮減の努力をしてきた。スマトラ沖大地震に関するスリランカに対する支援で行っている学校建設については、現地仕様を用いることで大幅にコストを削減し、施工管理はしっかり行う。こうした取り組みがアフリカにおける学校建設にも応用できないか、研究を進めているところである。
|
(委員) |
ノン・プロジェクト無償で学校建設を行うのは初めてか。 |
(外務省) |
アフガニスタンに対するノン・プロ無償で道路の建設をした例はあるが、例外的である。津波被害に際してのノン・プロ無償では、当初からコスト縮減ということが念頭にあったというわけではないが、迅速な支援を実現するために現地の業者を活用した結果、コスト縮減が実現できた。
|
|
3.10月閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)
(1) |
外務省より10月に取りまとめ閣議請議を行う案件につき、以下のとおり説明を行った。
(イ) |
10月の取りまとめ閣議にかける案件は、総計33件、総額約123億円の支援である。一般プロジェクト無償においては、詳細設計が3件、UNICEF経由の医療・保健分野の案件が4件、その他の3件となっている。以下、特徴的な案件について御説明したい。
|
(ロ) |
スリランカに対する支援は、LTTEとの紛争により開発が遅れている北部州の中心的な医療機関である病院の機能改善を目指すもの。内戦の影響で、下位の医療機関が被害をうけ、機能不全となっていることから、第三次医療機関である同病院に患者が集中している。また、施設が老朽化する中、内戦中で設備投資がなされていなかったため、第三次病院としての機能を発揮出来ていない状況にある。また、同病院はスリランカ北東部地域の医療従事者養成施設としても機能しているが、機材・設備の不足から十分その機能を果たせていない。本件支援の実施により、これまで病院の機能不足により年に800人を首都のコロンボに移送していたが、移送をしなくても適切な診断・治療が可能になり、北東部州での医療状況の改善が期待できる。
|
(ハ) |
パキスタンにおいては、全旅客輸送の約95%、全貨物輸送の90%が道路による輸送であることから、道路の整備が積極的に進められているが、中でもアフガニスタンで建設中のカブール、カンダハール、ヘラートを結ぶ道路とパキスタンを結ぶ同ルートはパキスタンの発展にとって重要であるだけでなく、アフガニスタン復興の観点からも極めて重要なルートである。今回の支援の対象区間は、交通量が多く、急勾配で事故も多発している。舗装、拡幅を行うことで、同区間の通過に要する時間が123分から78分へと約36%短縮できると見込まれている。パキスタンの物流が円滑化するとともに、アフガニスタン復興の加速も期待できる。
|
(ニ) |
マダガスカルに対する支援は、日仏援助協力の案件である。マダガスカルではフランス語が公用語であるという言葉の問題があるため、フランスが技術協力を行い、日本が施設等の設備を支援するという形でこれまでも日仏協力を行ってきた。日本からも2000~2004年には専門家を派遣した。今回の支援は、これまでの支援により、同国における新生児死亡率が低下し、妊産婦が増加していることを受け、産婦人科等の体制を拡充するもの。
|
(ホ) |
マラウイに対する支援は、一昨年会計検査院から効果が十分に発現していないので然るべき措置をとるべきとの指摘をうけた案件のフォローアップである。我が国の無償資金協力で灌漑施設を整備したが、その後200年に一度と言われる大洪水が起き、その後も洪水が相次いだことから、施設が被害を受け、当初計画していた灌漑面積は実現できなかったもの。灌漑施設の復旧と、抜本的な防災対策が急務となっている。今回の支援では、幹線水路を移設し、住民の水管理能力、洪水被害の軽減や補修能力の向上させるための支援も行う。
|
(ヘ) |
スーダンについては、本年1月の南北の包括和平合意の締結後、平和にむけた機運が高まっている。我が国も4月にオスロにおける支援国会合で当面1億ドルの支援を表明しているが、すでに約6000万ドルの支援を実施・決定した。今回の閣議では、スーダン国内のダルフール難民、隣国チャド領内の避難民に対する食糧援助及び児童兵、女性兵、傷害を負った兵士などの武装解除、動員解除、社会復帰を支援する3案件。これらを合計するとすでに約7000万ドルの支援を決定することになる。これまでは主に国際機関を通じて支援を実施してきたが、今後二国間支援を再開することを考えている。まずは過去に支援した案件のフォローアップから着手することを考えており、近くその具体化のための調査団を派遣する予定である。 |
(ト) |
なお、アフリカにおける深刻な食糧不足に対応し、11件25.3億円の食糧援助を実施する。スーダンやチャドのダルフール難民、干ばつ等による西部・南部アフリカの食糧危機、リベリアやコートジボワールといった平和に向かう移行期における食糧不足への支援である。いずれの国の深刻さも国連の場や内外メディアでも指摘されているものばかりであり、意義ある支援になると考える。
|
|
4.国際機関経由の支援について
(1) |
我が国の国際機関経由の支援につき外務省より説明を行った。これに関し、質疑応答を行ったところ、概要以下のとおり。
(委員) |
国際機関に対する拠出を減らそうという主張があるが、その見通し如何。 |
(外務省) |
国際機関への財政的貢献に関しては、これまで日本が国際社会に多大な貢献をしてきており、注文付けるだけでなく協力もしっかり行ってきたからこそ、高い評価を得てきた。直ちに拠出を行わないということではなく、今後も必要な協力は実施していきたいと考えている。 |
(委員) |
国際機関の意思決定に日本としてどのように関与してきているのか。 |
(外務省) |
国連は191ヶ国が参加する総会が意思決定機関であり、国連全体としての意思決定に我が国は常に関わってきているほか、国連の予算を審議する第5委員会のメンバー国として、国連のマンデートに適した予算となっているか、審議に参加し、意見を述べてきている。国連の専門機関についても、執行理事会や計画予算委員会などに参加している。日本の国連に対する拠出は、国民一人当たり、年間13ドルの貢献をしていることになる。 |
(外務省) |
国際機関の意思決定への関わり方の他の形態としては、国際機関との年次協議がある。我が国としては、国際機関への拠出金について、我が国が重視する分野に対してうまく活用していきたい。また、バイの支援を補完するような形で拠出金を活用したいと考えており、そうしたアプローチを通じて国際機関の活動に我が国の考え方や援助哲学を反映している。 |
(委員) |
マルチは国民の目から見えにくいので、説明責任の観点からもバイとの連携が非常に重要と考えている。 |
(委員) |
昨今、国連機関と世銀グループで、開発に関して打ち出す方向性が似通ってきている。国連機関と世銀グループの両方を通じて、日本として進めたい政策を打ち出していくことは考えているか。 |
(外務省) |
委員ご指摘の通り、国連機関と世銀グループの打ち出す方向性は 似通ってきている。この関連で、本年のG8サミットではアフリカに焦点が当てられたが、日本はこの準備プロセスにおいて、アフリカにおける農業・農村開発の重要性を強調してきた。こうした我が国の主張を受けて、最終成果物にはきちんと農業が取り上げられた。このG8の取り組みが9月の国連サミットの成果文書にも反映された。また、9月末の世銀IMF合同開発委員会で世銀より提出された「アフリカ・アクション・プラン」でも、農業・農村開発の重要性ということがしっかり盛りこまれた。このように、我が国の主張が援助の国際潮流に着実に影響を与えることができたと自負しており、引き続きリーダーシップを発揮していきたい。
|
|
別添1
出席者
- I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
- 1.大野 泉 政策研究大学院大学教授
2.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
3.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.脊戸 明子 学校法人日本外国語専門学校副校長
5.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
6.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- II.外務省
- 7.鈴木 秀生 経済協力局無償資金協力課長
8.三浦 和紀 経済協力局無償援助審査官
9.森安 克美 国際社会協力部国連行政課首席事務官
10. 横地 晃 経済協力局開発計画課首席事務官
11.武田 朗 経済協力局無償資金協力課地域第一班長
12.内藤 康司 経済協力局無償資金協力課ノンプロ・KR等班長
13.倉冨 健治 経済協力局無償資金協力課業務班長
- II.国際協力機構
- 14.中川 和夫 無償資金協力部長
15.正木 寿一 無償資金協力部管理・調整グループ 管理チーム長
別添2
無償資金協力実施適正会議(10月21日12:00~14:00)議題(案)
場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)2階285号室
- 報告事項(外務省)
・パキスタンにおける大地震被害に関する無償支援について
・平成18年度無償資金協力予算 概算要求について
- コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)
- 10月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)
- 国際機関経由の支援について(外務省)
以上