7月17日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(
出席者別添1、
議題別添2)。
1.報告事項(外務省)
(1) |
無償資金協力の事後評価の導入について、外務省より説明し、質疑応答を行ったところ、概要以下のとおり。
(外務省) |
年明けより新聞や国会等で無償資金協力案件の事後評価の必要性についてたびたび取り上げられている。これまで外務省は政策レベルの評価を、実施機関がプロジェクト・レベルの評価を実施してきた。今後、外務省としても、過去の教訓を将来に生かしていくプロジェクト・サイクルを自ら確立すべく、必要な予算要求を行い、平成18年度より外部専門家等の第三者の視点を活用した事後評価を逐次実施していきたい。来年度の予算は確実に獲得すべく要求していく一方で、「骨太の方針」に事業量の増加、援助の効率化が盛り込まれていることも踏まえ、今年度においても来年度の予算要求まで何もしないということではなく、限られた予算、人員ではあるが、できるだけ事後評価を実施してきたい。 |
(委員) |
体制を拡充し、予算もつけるということであれば、無償資金協力と技術協力の連携案件の評価を行うような仕組みを広げる可能性も考えるべきではないか。何が制度として一番よいのか、ということも考えつつ実施していくことが重要。 |
(外務省) |
今年度は限られたリソースで実施するということもあり、すべての案件の評価を行うことは難しい。また、案件の評価は実施後一定の期間を経て効果が発現していることが必要なので、完成後3~5年が経過している案件で、平成11年度から平成13年度に実施した10億円以上の案件をリストアップし、各在外公館1~2件の評価を実施する。 |
(委員) |
サンプリングを戦略的に実施して評価を行わなければならない。50件全部が同じセクターの案件ということはないだろうが、偏りがあるよりは幅広いセクターの案件を評価できることがよい。 |
(外務省) |
リストアップした案件のうち、予算上の制約で見に行けないサイト等もあるかもしれないが、なるべくセクター間の偏りがなくなるよう注意していきたい。 |
(委員) |
本格的にシステマティックに無償案件の事後評価を導入するということになると、JICAのフォローアップ調査との整理如何。 |
(外務省) |
JICAのフォローアップ調査は、案件の状況を把握し、問題が発見されれば、必要且つ可能な対処を行うための仕組みである。新たに導入する事後評価は、評価結果を次の同種の案件に生かすことが目的である。同じ国に同種の案件を続けて実施することは多くはないが、異なる国に対しても、同種の案件で得られた教訓を生かすことが可能と考えている。
|
|
2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
(1) |
JICAより閣議請議案件のE/N後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。
|
(2) |
ついで、JICAから以下の点について報告があった。
(JICA無償部) |
パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナル(以下、PCI)は日本工営と双璧をなす大きなコンサルタント会社であるが、開発調査案件で適正さを欠くことが判明した。来年の3月まで、総計18ヶ月の指名停止処分に付した。無償資金協力に関しては、PCIが基本設計調査を担当した9案件について、本件指名停止によってJICAからはPCIを推薦できない。上記の基本設計のうち、3件がPCIと他のコンサルタントのジョイント・ベンチャーが基本設計を行っていたことから、同他のコンサルタントを推薦できる。残りの6件はPCIが単独で基本設計を行っていることから、新たにプロポーザルを提示して、コンサルタントを募る必要がある。新たにコンサルタントを選定するため、手続きに時間を要することになる。 |
|
3.7月閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)
(1) |
外務省より7月に取りまとめ閣議請議を行う案件につき、以下のとおり説明を行った。
(イ) |
はじめに一般文化無償について今年度より制度変更があったのでご説明させていただきたい。文化無償はもともと機材供与が中心であったが、途中から文化遺産の保護のために施設の建設・改修等が可能な文化遺産無償というスキームを創設した。その後、施設の建設、改修等は文化遺産の保護目的に限られる理由はないのではないかということで、今年度から一般文化無償に新スキーム改変を行い、同スキームで実施する案件のすべてを閣議決定する運びとなった。そのために本会議で取り上げる案件数が以前と比べると多くなっている。 |
(ロ) |
ノン・プロジェクト無償、食糧援助、貧困農民支援は従来、年度末に実施することが多かったが、被援助国の状況を勘案し、年度の前半から実施を検討し、7月の閣議請議にも付議している。 |
(ハ) |
多数ある案件のうち、9月の国連総会でMDGsの中間レビューが行われることもあり、WFPを通じた被災民向けの食糧援助をはじめとして、MDGs関連案件の色彩が強くなっている。これは4月のバンドン会議、7月のAUサミットで表明したわが国の方針を着実に実行していくものである。 |
(ニ) |
スーダンに対する3案件は、1月の和平合意を受けて、4月に当面1億ドルの支援を行うことを表明し、そのフォローアップとして行うもの。6月末に政府調査団を派遣し、本格的な二国間支援の再開に向けて準備を進めているが、緊急人道支援としてできるものから実施していく。 |
(ホ) |
ラオスに対する支援は、同国にとって最も重要な道路を建設するもの。本件道路は物流の要として効果が期待されている。 |
(ヘ) |
イラクに対する支援について。イラクにおいては治安の問題が復興の要であることから国際社会が様々な方法で警察官の訓練等の治安協力を実施してきている。わが国としてもこれまで機材の面で協力してきているが、よりきめ細かな支援を実施するために、警察訓練に関して支援する。日本人がイラク国内に入国できない状況で、隣国のヨルダンで訓練を実施するとなると非常に費用がかさみ非効率ということもあり、すでに経験のある第三国のコンサルタントを活用してムサンナー県の現場で実地訓練を行うこととし、我が国がこれに要する経費を支援するものである。
|
|
4.円借款との連携及び新調査スキームについて
委員より無償資金協力と円借款の連携及び新調査スキームに関する提案につき説明があり、これを受けて以下の通り意見交換を行った。
(委員)
(1) |
円借款との連携
(イ) |
「無償資金協力と円借款の連携について」は、NGO関係者だけでなく、ボランティアや民間企業経験者なども含めたゆるやかな会議の中で出てきたものである。 |
(ロ) |
昨年、ベトナムのODA案件の視察に参加したが、そこでハノイの廃棄物処理場を視察した。だからといって廃棄物についての関心は特定の国の話というわけではなく、一般的な問題としての廃棄物への関心である。今後世界の都市部の廃棄物は益々増えていくと考えられ、廃棄物の問題は多くの国が抱えるものとなるだろう。 |
(ハ) |
無償資金協力と円借款の連携に関する提案は、1.廃棄物処理分野、2.下水・し尿等廃水処理分野、3.上水道整備、水利用分野について検討したもの。有償で支援することのできない部分(環境協力やパイロットプロジェクトなど)を無償資金協力を活用した技術協力によって支援することで、持続可能なプロジェクトを実現できないか、という提案である。
|
|
(2) |
新調査スキームについて
(イ) |
現地の事情に一番詳しいのはやはりコンサルタントやNGOである。大きいところは円借款でやり、細かいところをコンサルタントや、NGOでやってもらうという形がいいのではないか。また、ADB関係者の話では、相手政府とドナー側が直接ディスカッションを行い、要望を十分把握した上でドナーが直接プロポーザルを出し、それに基づいて両者間で支援が決定される形もあると聞いた。相手政府からの要請という建前であったとしても、こういった形の案件形成も必要なのではないか。ドナー側が積極的に案件を発掘していく発掘型の案件形成ができないものだろうか。 |
(ロ) |
こういった案件形成には予算の問題も出てくるであろうが、現在のODAの置かれた状況から推察するに、もうこれ以上の減少はないであろうし、逆に増加を見込めそうな印象を受けている。また、拠出金を引き上げて、直接のODA予算として活用している国もあり、こうした動きも参考にできると考える。
|
|
(JICA無償部) |
円借款と無償の連携については、円借款と技術協力の連携とも捉えられる。この件に関しては、JBICが行う円借款の案件においてJICAの専門家を活用するといった連携の例がある。過去に、理数科の学校についての案件があったが、どのレベルの教材を使用するかなどをJBICの専門家に来ていただいて考察したことがあった。 |
(委員) |
どのように円借款と無償資金協力を組み合わせていくかはケース・バイ・ケースではないだろうか。たとえば、マスタープランの作成や調査をJICAが事前に行うという形も部分的にはあると思われる。大きな枠の中で、部分、部分で適したスキームを使うというのがよいのではないか。 |
(委員) |
現地が一番現地に関する知識を有しているので、地域を知っている人から、有償なら有償に案件が提案されるような仕組みが必要ではないのか。 |
(委員) |
現地タスクフォースが強化されれば、現地が有償で支援する、無償で支援するといった選択を行うことも可能なのではないか。過去に、円借款と青年海外協力隊の細やかな連携で成功した案件があるが、成功の大きな要因は現場でしっかりと議論が行われたことだと思われる。援助についての大きな議論をするよりも、現場でしっかりとした議論がなされ、そこから要請が出てくる方が自然な流れができる。現場、現場で話し合うメカニズムの構築が必要である。しかし、現状は現地に事務所をもっている組織は限られる。NGOからでも提案を挙げていけるシステムができれば、現地での議論が活性化するのではないか。 |
(JICA無償部) |
JICAが実施している技術協力スキームに、現地の提案を大きく汲み取るものがある。それは、課題を公示し、その課題の解決に必要なプロジェクトを一般に公募して、提案されたプロジェクトの中から、承認するものをそのまま提案してきた団体に委託するというものである。そういったものも是非参考にしていただきたい。 |
(外務省) |
無償と技術協力の連携は永遠の課題である。いろいろなスキームを活用してやっていきたいという考えはあるので、新しいやり方というものを探っていきたい。案件のドナー側からの積極的な発掘についても、例えばこの国はこの分野の援助に力を入れるといったように、被援助国によって分野に関し、もう少しカラーを持たせてもいいのではないかとは思っている。今回の会議で頂いた提案などを活かしていきたい。 |
(委員) |
拠出金を直接のODA予算に切り替える、という例についてもう少し詳しく伺いたい。 |
(委員) |
国際的な金融機関への拠出という形で、無償資金が出ているが、そのお金が適切に使われているのかはほとんど知られていない。拠出割合など国の面子も理解できないわけではないが、有効に使われているかといえば、使われていない印象が強い。オランダはそういった資金を引き揚げて、直接のODAとして使うようにした。このようなODA資金もあるということである。
|
別添1
出席者
- I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
- 1.大野 泉 政策研究大学院大学教授
2.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
3.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
5.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- II.外務省
- 6.鈴木 秀生 経済協力局無償資金協力課長
7.三浦 和紀 経済協力局無償援助審査官
8.武田 朗 経済協力局無償資金協力課地域第一班長
9.内藤 康司 経済協力局無償資金協力課ノンプロ・KR等班長
10.倉冨 健治 経済協力局無償資金協力課業務班長
11.久保田 一成 経済協力局無償資金協力課事務官
- II.国際協力機構
- 12.中川 和夫 無償資金協力部長
13.上垣 素行 無償資金協力部管理・調整グループ 管理チーム長
別添2
無償資金協力実施適正会議(7月21日12:00~14:00)議題(案)
場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)6階669号室
- 報告事項(外務省)
・無償資金協力個別案件の事後評価について
- コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)
- 5月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)
・一般文化無償の導入について
- 円借款との連携及び新調査スキームについて
以上