ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成17年度第2回会合)議事録

 5月17日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1議題別添2)。

1.報告事項(外務省)

(1) コロンビアにおける草の根・人間の安全保障無償資金協力について以下のとおり、報告があった。
(外務省)
(イ) コロンビアに対して実施した草の根・人間の安全保障無償資金協力について、よいエピソードが届いたので、この場を借りてご報告したい。
(ロ) コロンビアでは長引く紛争と厳しい財政状況から初等教育の整備が不十分であり、未就学児童、非識字者が多く、大きな社会問題となっていた。そこでコロンビア政府の「非識字率低減のための全国図書館整備計画」と連携して、草の根・人間の安全保障無償資金協力により児童図書館建設計画を実施し、平成11年度以降、27件の児童図書館を建設した。
(ハ) これらの図書館を利用した児童数は11万5千人に上り、成人の非識字者も図書館を積極的に活用しているという。
(二) 今般、我が国の協力を記念して、コロンビア政府の教育省が本を作成し、在コロンビア日本大使館を通じて届けられた。その内容は、スペイン語と日本語で記載されており、図書館を利用する様々な世代の人の感想なども掲載されている。本の裏表紙にはウリベ・コロンビア大統領からのメッセージも添えられている。
(委員) 草の根・人間の安全保障無償の案件については、本会議に諮っているのか。
(外務省) 草の根・人間の安全保障無償の個々の案件については、本会議に諮っていない。年間1000件以上実施しており、在外公館が主体となって案件形成を行い、本省で承認するという形をとっている。

(2) スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害について、以下のとおり報告がなされた。
(外務省)
(イ) 昨年末発生したスマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対しては、我が国は5億ドルの支援を表明し、二国間及び国際機関経由の支援ともに、全額拠出済みである。国際社会からは我が国の迅速な支援に高い評価が寄せられたが、最近様々な週刊誌で、日本からの支援が使われていないのではないか、現地に届いていないのではないか、といった記事が散見される。本会議で、現在の進捗状況をご報告しておきたい。
(ロ) まず、今回の津波に関する二国間支援では、ノン・プロジェクト無償スキームを活用しているが、迅速な支援を実施するために3つの点で柔軟に対応している。
(i) ノン・プロ無償は通常は外貨不足の途上国に対し、物資の輸入を助けるための外貨支援の側面が強いが、今回の災害に当たっては現地調達を認めている。まさに、役務の調達なども、外から人を連れてくるのではなく、現地で対応するということ。
(ii) すでに触れたが、今回のノン・プロ無償では、役務の調達を認めている。実際のところ、現地から要請があったものの中では役務の調達が多く、すでにスリランカに日本から輸送したバキュームカーについても、車体は横浜市から無償で提供され、輸送費を今回の援助資金から拠出した形となっている。
(iii) 通常は被援助国政府が物資を購入し、それを国内で販売し、その代金を積み立て経済社会開発に活用するが(見返り資金制度)、今次災害に対する支援においては、援助資金で購入される物資の販売ということを想定していない。このため、見返り資金の積み立て義務を免除している。
(ハ) 今回の災害は、被害が甚大であったことから、国際社会の関心も高く義援金や食糧、医薬品等の物資が多く集まった。国際機関経由の支援もある。そのため、被災国政府の関心は中期的な施設の緊急復旧という方向に移行してきている。これは我が国だけではなく、アメリカ等他のドナーにも言えることである。具体的にはスリランカにおける学校の修復などは、平屋建ての校舎の修復であり、迅速に対処している。
(ニ) 予備費を使わずに、補正予算を要求し、国会でも議論すべきだったのでは、といった意見もあるが、そのような手順を踏んでいれば、今のような迅速な支援はできなかった。
(ホ) 支援のフローチャートをご覧頂きたい。まず、被災国政府が必要としている物資、役務を特定する必要がある。スリランカでは財務省の統括のもとに、政府としての意思決定を迅速に行っている。インドネシアでは、様々な復興援助の組織が存在し、意思決定に若干遅れが見られる。それでも我が国からの支援146億円のうち90%についてはほぼ使途が決定している。ユドヨノ大統領が、資金の透明性等を確保していくと説明していることもあり、先方政府の手続きに時間がかかっている。
(へ) 入札手続き等にも一定の時間がかかるが、告示の期間を短縮するなどして、日本サイドで手続きに要する時間の短縮に努めている。すべて随意契約ですぐに実施ということを主張するむきもあるようだが、国民への説明責任に耐えうるものではない。
(委員) ノン・プロ無償をこのように柔軟に適用した例は過去にもあるのか。
(外務省) 今回と全く同じ形で対応した例は過去にはない。
(委員) ノン・プロ無償のスキームの原則というものは、無償課で決められるのか。同様の事態が生じた場合には、ノン・プロ無償で対応するこということもあり得るのか。
(外務省) スキームの運用については、法律や政令で定められていることではないので、外務省で判断して決めている。今後も予期せぬ事態が発生した場合、迅速な支援を行うためにどのスキームを活用するかは、その都度検討することになる。

2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)

 JICAより閣議請議案件のE/N署名後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。次いで、近日行われたJICAの在外事務所長会議について報告があった。

(1) 在外公館事務所長会議が6つの地域で開催された。その後、東京でTV会議を行った。JICA無償部からは以下の2点について、無償部の考えを発信した。

(イ) 1点目は無償と技協との連携が不可欠であるということ。両スキームの連携には、案件形成の段階が大事なので、無償案件の要請書に技協との連携の可能性をしっかりと記載するよう、現地事務所に伝えている。
(ロ) 2点目はJICAでも現地実施体制の強化に力を入れていること。津波被害への支援はノン・プロ無償ではあるが、支援の迅速化に資するように現地で協力している。


3.5月取りまとめ閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)

(1) 外務省より5月に取りまとめ閣議請議を行う案件について、以下のとおり説明があった。

(イ) 5月閣議は例年一番案件数が多い。特に、5月は工期の観点から施設型案件が多い。4月にインドネシアで開かれたバンドン会議において、小泉総理から対アフリカODAを3年間で倍増すると表明した。会議の以前からも今年は「アフリカの年」と言われているが、無償資金協力においてもアフリカ支援に力を入れている。
(ロ) 実際に、この5月閣議においては60件中25件がアフリカ向けであり、案件数、金額ともに全体の約4割を占めている。これを前年、前々年の5月閣議と比べると、この2~3年で徐々に増加してきていることがわかる。アフリカの国々においては、基礎生活分野(BHN)の案件が多いため、個々の案件の供与額はそれほど大きくない場合もある。
(ハ) 学校案件等のコスト問題については、コスト削減に努めてきており、引き続き努力していく。コスト問題では、日本製の丈夫で快適な施設を望む国と、質は日本ほど高くなくてもよいから、比較的低コストで施設をたくさん作りたい国とがあり、それぞれの国の特徴にもよる。ネパールの学校案件などは、日本から資機材を調達し、施工監理は日本のコンサルが行うものの、建設工事自体は現地の父兄が行う。この地域は伝統的に父兄が学校を建設しているためだ。本件はすべての国には当てはまらないが、コスト削減につながった好例といえる。ニカラグアやブルキナファソでは、鉄筋コンクリートではなく、ブロックを使うなど、様々なコスト削減の努力を行っている。学校建設も、長年支援を続けていると、徐々にアクセスの悪い山奥の地域にも建設する段階となり、輸送料が多くかかるなど、コスト削減に向けて客観的に不利な状況にあるが、工法等を見直して努力していく。
(ニ) 以下、特徴的な案件について。インドネシアに対する支援は、警察組織の能力を強化するための支援。科学的な捜査を可能とする通信・鑑識用資機材や交番の設置のための資機材を供与するもの。
(ホ) モンゴルにおける学校建設案件は、2003年度の案件が入札不調に終わったため、詳細設計等のみ行って一度国庫返納し、2005年度にコストを削減して再度事業化した案件である。
(ヘ) 次いで、防災分野の典型的な案件をいくつか紹介したい。小泉総理はバンドン会議において、今後防災・災害復興の分野にも力をいれていくことを表明した。パキスタンの案件は、例年の集中豪雨により、しばしば洪水被害が発生し、甚大な損害が生じていることを考慮して、雨量、水位の観測、警報伝達網等を整備するもの。バングラデシュの案件は、過去に我が国の支援で整備した2州における気象レーダー及びデーター送受信システムが、整備後16年以上経過し、修復不可能な状況となったことを受け要請されたもの。レーダーの予知の範囲を拡大し、監視能力を高め、住民の迅速な避難を促す情報提供が可能になると期待される。
(ト) アフガニスタンでは、これまで我が国が紛争予防・平和構築無償により3回に亘って武装解除、動員解除、社会復帰(DDR)の支援を実施してきたことから、DDRで武装解除された元兵士、インドやパキスタンからの帰還民等が増加している。これらの人々が兵士や難民に逆戻りすることを防ぐには、地元に定着させることが重要。そのための地域総合開発として、マスタープランの作成や、地域行政官の能力向上、農業指導や小規模インフラの整備を支援し、雇用創出も見込む。実施主体は国連開発計画(UNDP)が統括を務め、国連食糧農業機関(FAO)やアフガニスタン地雷対策センター(UNMACA)等の複数の国際機関が関与する。

(2) これを受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。

(委員) 中国への無償資金協力について。円借款は2008年を目処に終了するということになっているが、無償資金協力については、終了時期の目処が立っているのか。
(外務省) 中国の一人当たり国民総所得(GNI)は、現在1200ドル程度。このまま経済成長を続ければ、2008年には一般プロジェクト無償資金協力の供与基準である1465ドルを超え、自然に卒業することになる。他方、一般プロジェクト無償を卒業しても、全く支援を行わなくなるということではなく、草の根に裨益する支援は一部継続していくことになると思う。
(委員) アジアの国では大分卒業している国もおおいので中国もそのようになるということか。
(委員) 学校建設案件に関して、1教室当りの生徒数を減らして教育を行うことを目的としているが、1教室当りの生徒数を減らしても、これに伴い充分な教師数がなければ授業ができない。教師数は充分確保されているのか。
(外務省) 教師は手当てできると確認している。教員養成のための無償資金協力も実施している。
(委員) 水分野の案件では、技術移転、機材、給水施設の建設等様々なパターンがありうるが。
(外務省) 自助努力の観点からは建機等を供与して、自ら建設させることが望ましいが、特にアフリカでは十分な技術や能力がない場合も多い。先方政府の管理能力等も求められる。給水分野の支援は実績も多く、技術移転も進んでいる。
(外務省) エクアドルの案件では、レベル2の給水施設を建設。計14の施設のうち、5つは先方政府が建設する。
(委員) モンゴルの案件は入札不調により仕切り直して閣議にかけるということだが、過去にも例はあるのか。
(外務省) 入札不調に終わった場合、当該年度に実施することを取りやめ、その旨閣議にも報告している。過去にも例はある。

4.今後のアフリカ支援方針について(外務省)

 外務省より今後のアフリカ支援方針について以下のとおり、説明し、質疑応答を行った。

(外務省)
(イ) 2005年は国際政治、援助の世界で「アフリカの年」と言われている。我が国は年初から国連安保理の非常任理事国を務めているが、安保理での議論の6~7割がアフリカの議論。4月にはアジア・アフリカ首脳会議(バンドン会議)で小泉総理から今後3年間で対アフリカODAを倍増する旨表明した。これは贈与(グラント)が中心となる。
(ロ) 7月にはイギリスでG8サミットが開催され、アフリカと気候変動が主要議題になる予定。議長国のイギリスが対アフリカ支援重視の姿勢を早くから表明している。9月には国連においてミレニアム宣言に関する首脳会合が予定されており、MDGsの達成状況について中間レビューを行う。
(ハ) 対アフリカODAをどのように増額していくのかが問われてくるが、重点分野を絞って支援を実施していく方針。3つの重点分野がある。一つ目は農業・農村開発である。二つ目は貿易・投資の促進である。サプライサイドを強化することにより、貧困の削減を目指す。先般開かれたTICAD貿易・投資促進会議のフォローアップの観点からも、我が国のアジアでの経験をアフリカにも生かしていく。三つ目は平和の定着支援。我が国は本年3月にアフリカの14カ国に対して平和の定着のために約6千万ドルの支援を実施。
(ニ) 上記の大きな方針の下、我が国はこれまでプロジェクト型の援助を中心にアフリカ支援に貢献してきた。一方、ヨーロッパ諸国は、被援助国の一般会計予算に直接資金を投入する財政
(ホ) 支援を増やすなど、援助モダリティを多様化させてきている。

(委員) プロジェクト型に対して上記のような支援は何と呼ばれるのか。
(外務省) プロジェクト型に対して、プログラム型と呼ばれる。ある時点から数年間、どのような開発分野に力点を置いて支援するかという問題。被援助国はこれを受けてどのような準備が必要か。単年度予算の制約もあり、課題をどう乗り越えていくか検討中。
(外務省)
(イ) この他に援助の予測性の向上、現地体制の強化等、現地機能強化を通じた効率的・効果的援助の実施の上で、主要な課題については本省でも十分認識している。アフリカの公館は規模が小さいため、経済協力担当が一人ということも稀ではない。また援助の新しい潮流に対応出来る専門性を備えた人材が十分でないことも事実。公務員全体の定数の制約もあり、本官を大幅に増やすことは難しい。如何に人員を配分するかが課題。
(ロ) 今後の取り組みとしては、他ドナーと情報・経験を共有していくことが重要。近く経済協力局長と英国国際開発省(DFID)の次官がタンザニアに共同訪問し、協議を行う。サミットに向けて英国とのコミュニケーションを高めておくことは重要。英国は新しい援助潮流の旗頭。タンザニアにおける財政支援はドナー間協調の好例と言える。
(ハ) 上述の課題は、中期政策のフォローアップやパリ援助効果向上ハイレベルフォーラムのフォローアップの観点から、外務省内で対応の必要性を認識している課題と重なるところが多い。局内で引き続き議論していきたい。
(委員) ODA予算の全体が増加するのであれば別だが、単純に対アフリカODAが倍増されたら、どの地域を削るのか。また、貿易・投資の促進及び平和の定着支援の具体例としてどのようなものがあるか。
(外務省)
(イ) 対サブサハラ・アフリカODAは2003年度実績で5.3億ドル(ODA全体の8.8%)程度。対アフリカODAの増加により、自動的に他地域向けODAが削減されるとは考えておらず、現時点ではポジティブ志向で、ODA予算全体の増額を目指している。
(ロ) 貿易・投資の促進の例としてはTICADプロセスの一環として、アジア・アフリカ官民交流ネットワークを立ち上げた。アフリカのネックは情報が不足していること。貿易・投資の仕組みについての情報や官民のカウンターパートの情報を共有することが目的。また、クレジット・カルチャーを醸成し、中小企業支援を行うことも一案。
(ハ) 平和の定着についてはアフリカには、現在紛争が一段落した国々がある。紛争中~紛争後から、本格的な復興開発支援までの継ぎ目のない支援を行う必要がある。アンゴラ・ブルンジ・スーダンにおいては難民・避難民の帰還が始まっており、帰還後の人道支援が必要。また、元兵士・児童兵等を武装解除・動員解除し、職業訓練や基礎教育等、社会復帰を支援すること(DDR)も重要。(イ) (ハ) この他にも、民主的な選挙の実施を支援するなどの例がある。
(委員) 御説明頂いた対アフリカ支援の3つの課題に、どのように取り組んで行くのか。財務省との間でも協議していくのか。
(外務省) 随時議論していきたい。


別添1


出席者


I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
1.大野 泉   政策研究大学院大学教授
2.小川 英治  一橋大学大学院商学研究科教授
3.敷田 稔   財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.西川 和行  財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長

II.外務省
6.鈴木 秀生   経済協力局無償資金協力課長
7.三浦 和紀   経済協力局無償援助審査官
8.品田 光彦   経済協力局国別開発計協力第二課首席事務官
9.武田 朗     経済協力局無償資金協力課地域第一班長
10.内藤 康司  経済協力局無償資金協力課ノンプロ・KR等班長
11.竹村 光司  経済協力局無償資金協力課課長補佐

II.国際協力機構
9.青木 眞    無償資金協力部次長
10.上垣 素行  無償資金協力部 管理・調整グループ 管理チーム長


別添2


無償資金協力実施適正会議(5月17日12:00~14:00)議題(案)


場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)5階582号室

  1. 報告事項(外務省)
    ・コロンビア共和国に対する草の根・人間の安全保障無償資金協力について
    ・スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対する二国間無償資金協力~進捗状況報告

  2. コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)

  3. 5月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)

  4. 今後のアフリカ支援方針について(外務省)

以上
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