ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成17年度第1回会合)議事録

 4月11日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下のとおり(出席者別添1議題別添2)。

1.報告事項(外務省)

(1) 無償資金協力に関する契約認証業務の外部監査について、外務省より報告を行った。
(イ) ODA監査の強化の一環として、無償資金協力事業にかかる契約認証業務について外部監査を実施した。
(ロ) 本件監査は、平成16年4月1日から同年10月31日までに実施した無償資金協力事業の契約認証における事務手続きが、「無償資金協力に係る契約認証審査基準」に準拠しているかを検証することを目的としている。これに先立ち平成15年度に本件監査の前提となる「無償資金協力に係る契約認証審査基準」を改定し、その上で監査を実施した。契約認証業務とは、被援助国政府と事業を請け負う本邦契約企業との間の契約が交換公文で合意されている内容に適合するか否かを日本政府が審査・確認すること。契約認証は交換公文上では贈与の適格要件として位置づけられる。
(ハ) 監査人はプロポーザル方式により選定した。国際保証業務基準に基づき、監査人が監査対象444件から無作為に約100件を抽出し監査を行った結果、契約認証業務は、すべての重要な点において、無償資金協力における契約認証審査基準に準拠していると認められた。
(ニ) 監査結果の報告と併せ、監査人から契約認証業務における事務手続きに関する改善策が提案され、以下のとおり改善を行った。一つは、これまで契約内容に不備があり是正を求める案件については認証簿に記載がなかったが、今後は是正を求める案件についても認証簿に記載することとした。二つ目は、認証決裁書に関し、関係省庁との間の手続きの要否、実際に取った手続きの日付等がよりわかりやすいよう、その書式を改訂した。これらの他は、些細な点ではあるが、認証決裁書や認証簿における修正液の使用禁止、チェックリストにおけるチェックマークの統一、認証番号の再利用の禁止などの改善を行った。
(ホ) 本会議での報告に次いで、外務省のODAホームページにも本件外部監査の報告を掲載する予定である。


(2) 上記を受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。

(委員) 契約認証業務の外部監査を行うのは今回が初めてなのか。
(外務省) そうである。H15年度に外部監査を行う前提としての、契約認証審査基準の改定を行い、H16年度の契約認証業務が当該契約認証審査基準に合致して行われているか、監査を行った。
(委員) 外務省によって認証されないと、契約は無効となるのか。
(外務省) 平成15年度までは、認証をもって契約が発効するとしていた。平成16年度からは、被援助国政府と本邦法人との間で契約すれば、契約は成立し、(契約認証)基準に合致していない契約について是正を求めることとした。
(委員) 認証されない契約はどれくらいあるのか。
(外務省) 半年の間に約半分の契約が契約認証基準に合致していない点があり、是正を求めた。かなりの数あると考えて良い。
(委員) 判定のしかた如何。JICAとは関わりがあるのか。
(外務省) JICAが実施促進の一環として、調査を行い、その情報をもとに外務省で契約認証基準に合致しているか、契約の内容をチェックする。
(委員) 監査法人の選定の方法はプロポーザル方式ということだが、同方式の内容如何。
(外務省) 業務の内容、報酬を公示して、関心表明があった法人に対して説明会を行う。金額だけでなく、当方が期待する業務を行いうる法人であるかという点も含めて判断。
(委員) 契約自体がE/Nの内容に合致しているということだけなのか。その後の支払等がE/Nに合致しているか、ということも見ているのか。
(外務省) 前者である。実際の支払等がE/Nに合致しているか、という点は見ていない。
(委員) 無償資金協力に係る契約認証審査基準と国際保証業務基準と2つの基準があるが、この違い如何。
(外務省) 前者は、外務省が契約認証を行う際の基準。後者は監査人が今回の監査を行う際に採用した保証基準。

2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)

 JICAより閣議請議案件のE/N後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。

3.4月閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)

(1) 4月閣議請議にかける案件につき、外務省から説明を行った。

(イ) 4月の取りまとめ閣議にかける案件は例年、国庫債務負担行為案件(以下、国債案件)。一般プロジェクト無償の15件と、留学生支援無償の20件、合計35件である。
(ロ) 我が国の財政制度上は単年度主義が原則だが、無償資金協力の案件には単年度で事業が完了しないものもあり、これらについては数年にわたって支援を行う必要がある。財務省も国庫債務負担行為はあくまで例外的に認められるものであるとしている。
(ハ) 国庫債務負担行為以外には複数期に分けて実施する期分けというものもあるが、期分けの場合、それぞれの期で案件の成果があがり、1つのプロジェクトとして完了する。具体的には小学校建設で、全部で20校建設する場合に10校ずつ、2期に亘るプロジェクトを実施するとする。この場合、最初の10校が建設されれば、プロジェクトの成果は発現する。残る10校は次年度の案件として採択するかどうか、別途考えることになる。他方国債案件は道路などで、一定の距離を整備しないと効果が発現しない場合、まとまった距離を日本が支援する必要がある。道路案件のすべてが国債案件というわけではなく、一部の距離だけ整備しても効果が発言する場合もある。
(ニ) 一般プロジェクト無償の15件は、昨年度から詳細設計等を行っていた案件で今回実際の建設等を始める案件がほとんどで、新規の案件は4件である。
(ホ) インドネシアに対する支援は、インドネシアの東部、ティモール島に位置する東ヌサラトゥンガ州において橋梁を建設するもの。大型車の通行規制や雨期の土砂災害時の通行止めにより、円滑な交通・物流が行えず地域住民の日常生活に支障をきたしている状況。2橋梁の建設により、乾期・雨期に拘わらず円滑な渡河が可能になり、地域住民の日常生活が改善される。
(ヘ) カンボジアにおいては、灌漑施設を改修することにより、灌漑用水の安定的供給が確保され、単位収量の増加、早稲の二期作が可能となる。
(ト) 東ティモールにおいては、老朽化し、紛争での被害を受けた上水道施設を改修するプロジェクトを支援する。
(チ) ネパールでは主要農業産地と首都を結ぶ現在の主要ルートが、大きな回り道であること、雨期には地滑り等で度々閉鎖され、物流の面を阻害していることから、同農業産地と首都を結ぶ道路を建設するもの。本道路の建設により、走行距離は約200km短縮される他、農業生産地と市場の間のアクセスが改善し、地域経済の促進が期待される。
(リ) 留学生育成奨学計画は、平成176年度から支援の仕方を変更した。年度毎の支援を選考、日本での滞在の全体を一つのパッケージとする国債案件とした。今年度の案件は平成17年度に留学生の選考を行い、18年度以降3年間の日本での生活費、授業料等を手当てするもの。

(2) 上記を受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。

(委員) 予算の関係で、国庫債務負担行為ということは多年度の案件であるが、被援助国
政府にはこの複数年に亘る支援額が伝わっているということか。
(外務省) そうである。
(委員) 施設案件だと国債案件になるのか。
(外務省) そうとも限らない。財務省としてはあくまで単年度主義が原則。国庫債務負担行為は例外的に認められるという立場。施設案件でも期分けで建設する場合もある。他方で機材案件では国庫債務負担行為ということはありえない。
(委員) 単債というのはどういう意味か。
(外務省) これまでに留学生の受け入れを決めたもので、各年度毎にコミットするもの。
平成16年度から国債案件として実施することとなった。
(委員) 留学生が受講するレベルは、大学か大学院か。
(外務省) 大学院レベルである。
(委員) ガーナの案件は、現地視察で視察した案件でもある。維持管理コストをどう確保するかが課題であると感じたが、資金の本体から維持管理コストをみることはできるのか。
(外務省) 無償資金からは案件実施中にかかる経費しか手当てすることはできない。被援助国政府の自助努力も必要であり、これらを求めている。。

4.パリ援助効果向上ハイレベルフォーラムについて

(1) 経済協力局開発計画課より配布資料(「概要と評価」)に基づきパリ援助効果向上ハイレベルフォーラム(パリHLF)の概要及び「援助効果向上のための我が国の行動計画」について説明した。

(2) これを受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。

(委員) DAC「LDCアンタイド化勧告」の概要如何。また、「パリ宣言」による我が国の無償資金協力への影響如何。
(開発計画課) 「パリ宣言」を受けての今後の我が国の対応としては、パリHLFで発表した「援助効果向上のための我が国の行動計画」を実行すべく、今後、「内なる改革」に取り組んでいくことが重要である。
(開発計画課) 「LDCアンタイド化勧告」(DAC Recommendation on Untying Official Development Assistance to the LDCs)は、2001年にDACで採択されたもので、日本政府も採択に参加した。具体的には以下の内容が盛り込まれている。
(イ) 一般論として、アンタイド化は援助のコストを引き下げることによって援助効果に貢献しうる。
(ロ) 今後、DAC諸国のLDC向けODAのアンタイド化率の推移を見ていく。また、アンタイド化の質的側面を見ていくために、「事前通報」(ex ante notification system)及び「契約者情報」(contract awards)を行う。
(ハ) 年に1回の頻度で、DAC事務局が「進捗報告書」(progress report)を取り纏め、DAC事務局のウェブサイト上で公開する。2002年以降、「進捗報告書」が作成されており、最新版は2004年版で、ウェブサイト上で参照可能。
(注) 「事前通報」とは、DAC事務局指定のウェブサイト上で一定金額以上の調達情報を公開することにより、LDC向けODAの透明性を向上させる仕組み。また、「契約者情報」とは、実際のどこの国の企業が落札したのかという情報を取り纏める仕組み。

(3) 援助効果向上と無償資金協力の関係につき、無償資金協力課より説明がなされた。

(無償資金協力課) 「パリ宣言」が我が国無償資金協力に関連する論点は多様であるが、特に「国家開発戦略への整合性(アラインメント)向上」と「援助の予測性向上」との関係について説明する。前者については、今後、国別援助計画を策定するにあたって、被援助国の国家開発戦略やセクター開発戦略の開発重点分野や優先順位を反映していく必要がある。また、次年度案件の要望調査を実施するにあたって、相手国政府のニーズを十分に反映させていくことが重要である。援助予測性向上については、長所短所を見極めた上で、今後、我が国としての対応ぶりを検討していく必要がある。例えば、先方政府にとって、今後の複数年にわたるドナーからの援助受け取り資金のフローが把握できることによって、将来の事業計画を策定しやすいとのメリットがあるが、そのことは裏を返せば、今後の援助資金のフローについて、ある種の安心感を与えかねないなど、モラルハザードの問題が潜んでいる。また、ドナーにおいても、将来の援助予算額が不確かな中で、被援助国に実施を約束しても、結果として約束を履行出来ない場合があるリスクがある。従来、我が国は約束したことを着実に実行するドナーとして、被援助国政府の信頼を得ていたが、援助予測性向上の努力は、かえってその信頼を損ないかねないリスクがあることにも留意すべき。
(委員) 「パリ宣言」及びそれに伴う「内なる改革」の議論は、今後、我が国の無償資金協力の在り方を検討する上でも、重要なイシューであり、引き続き議論していくことが有益である。


別添1


出席者


I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
1.大野 泉   政策研究大学院大学教授
2.敷田 稔   財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
3.脊戸 明子  学校法人日本外国語専門学校副校長
4.西川 和行  財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
5.星野 昌子  日本国際ボランティアセンター特別顧問

II.外務省
6. 鈴木 秀生  経済協力局無償資金協力課長
7. 横地 晃   経済協力局開発計画課首席事務官
8. 倉冨 健治  経済協力局無償資金協力課業務班長
9. 竹村 光司  経済協力局無償資金協力課課長補佐
10.天津 邦明  経済協力局開発計画課事務官
11.間瀬 博幸  経済協力局無償資金協力課事務官

III.国際協力機構
12.中川 和夫   無償資金協力部長
13.深澤 晋作   無償資金協力部管理・調整グループ管理チーム
 


別添2


無償資金協力実施適正会議(4月11日12:00~14:00)議題(案)


場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)5階584号室

  1. 報告事項(外務省)
     ・無償資金協力事業における契約認証業務の監査について

  2. コンサルタント契約状況、入札実施状況 (JICA)

  3. 4月閣議請議案件について説明及び質疑応答 (外務省)

  4. パリ援助効果向上ハイレベルフォーラムについて (外務省)
    ・概要と評価
    ・援助効果向上と無償資金協力-主要な論点と今後の課題について

以上
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