3月11日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下とおり(
出席者別添1、
議題別添2)。
1.報告事項(外務省)
(委員)
(1) |
平成16年度補正予算による対パレスチナ支援について
(イ) |
昨年11月のアラファト議長の死去後、中東和平はダイナミックなプロセスを迎えている。この期を逃さずに我が国としても中東和平の進展に貢献すべく、財務当局に諮り、補正予算66億円を認めて頂いた。我が国の対パレスチナ支援は、かつては年間8000~9000万ドルの実績を有していたが、昨今の厳しい予算状況を受けて2001年度以降3000万ドル前後となっていた。今回の補正予算による支援により、近年大幅に減額していた対パレスチナ支援実績をこのタイミングに過去の水準に高めることによって、我が国の積極姿勢を打ち出せると考えている。
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(ロ) |
補正予算の66億円の内訳は、33億円の緊急無償と残り半分は世銀を通じた財政支援の33億円。緊急無償では、国連パレスチナ難民救済事業機構(UNRWA)及び国連開発計画(UNDP)を通じた支援。UNRWAはパレスチナ難民を支援の対象とし、UNDPはいわゆるパレスチナ難民ではなく従来からパレスチナ地域に住んでいて、生活が困窮している人々を支援の対象とすることで、役割を分担している。
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(ハ) |
具体的には紛争で破壊された基礎的インフラの整備を通じて、雇用創出効果も期待できるプロジェクトの実施を支援する。
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(2) |
アフリカ及びアフガニスタンに対する「平和の定着」のための支援について
(イ) |
我が国は、本日、アフリカの7カ国及びアフガニスタンに対して、「平和の定着」のための支援として、総額約3850万ドルの緊急無償資金協力を行うことを決定した。 |
(ロ) |
具体的には、アフリカにおける民主化支援のための選挙支援、難民及び国内避難民の帰還・定住等のための支援、地雷対策事業への支援などである。アフガニスタンに対する支援はカブール、カンダハルに続き我が国のアフガニスタン支援の第3の拠点となる北部のマザリ・シャリフ警察に対する支援。車両や無線設備の供与を目的としている。同地ではJICAの技術協力が既に行われていると聞いている。無償資金協力も今後、同地に重点をおいて実施していく。本件支援により、アフガニスタンの治安の改善にも資する。
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(3) |
これを受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。
(委員) |
1月に町村大臣がイスラエル・パレスチナを訪問したとのことだが、イスラエル、パレスチナ双方の首脳にお会いになるということは、やはり外交上の配慮なのか。 |
(外務省) |
今回の緊急無償による支援は対パレスチナだけであるが、中東和平に貢献するとの外交上の目的からは、やはり双方の首脳と会談するということだろう。 |
(委員) |
今回は国際機関のコア部分に拠出するということではなく、個々のプロジェクトに拠出するということか。 |
(外務省) |
そうである。国際機関に対しては国庫から一括拠出するが、その後資金はプロジェクトの実施状況に応じて使われる。 |
(委員) |
やはり、これらの紛争後のアフリカの国に対してはマルチの支援なのか。今後バイで支援していくことは考えていないのか。 |
(外務省) |
ルワンダなどは今後バイの支援も実施していこうと検討しているところ。スーダンに対しては、現在はバイの支援は実施していないが、今後カンボジアのようにバイで地雷除去等の支援を実施していくこともあり得るかもしれない。 |
(委員) |
来年度は相当アフリカ支援に力をいれていくのか。 |
(外務省) |
そのつもりである。 |
(JICA) |
補足させて頂くと、ルワンダでは今後のバイの支援の可能性を探りつつ、基本設計調査団を派遣している。また、案件実施後の維持管理のために、青年海外協力隊員を配属することや、具体的には地下水の開発で、地元住民の維持管理能力を高めるための技術協力等を行うこと等を考えている。また、アフリカの国々では、感染症対策のプログラムアプローチに力を入れている。今後無償・技協で連携して実施していく方法を模索したい。
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2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
JICAより閣議請議案件のE/N署名後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。
3.3月取りまとめ閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)
(1) |
外務省より3月に取りまとめ閣議請議を行う案件について、以下のとおり説明があった。
(イ) |
3月の取りまとめ閣議請議案件は一般ロジェクト無償が3件、食糧援助が22件、食糧増産援助が1件、ノン・プロジェクト無償が5件の31件である。 |
(ロ) |
中でもノン・プロジェクト無償と食糧援助が中心である。タンザニアに対する支援はノン・プロジェクト無償で直接財政支援をしている日本としても珍しい例。債務救済無償が廃止された後、ノン・プロ無償のスキームを試行的に用いて財政支援を行っている。また、一般財政支援枠組には、その周辺にさまざまなファンドがある。日本は貧困モニタリングコモンファンドに見返り資金を活用して支援しており、農業セクターのコモンファンド、公共財政管理に係るファンドについて見返り資金活用の可能性を検討している。今回初めて貧困モニタリングコモンファンドにノン・プロ無償の本体資金から支援する。
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(ハ) |
平和構築無償の案件は、シエラレオネとパレスチナに対する支援。シエラレオネに関しては、小火器の回収を広範囲に展開するとともに、武器の登録・トラッキングシステムを構築するもので、UNDPを通じて支援する。パレスチナに対する支援は、上記1.でご報告した国際機関を通じた社会インフラの復旧、雇用創出のための支援と同様、補正予算で支援するもの。世銀の基金を通じてパレスチナ自治政府の財政改革を支援する。具体的には世銀の基金に日本を含め各ドナーが拠出したのち、直ぐにパレスチナ自治政府に資金がわたるということではなく、世銀とドナーの間で設定する改革のベンチマークをパレスチナ政府が達成した場合に拠出される。支援の規模については、2005年のパレスチナ政府の財政ギャップが5.5億ドルと言われており、そのうち半分は他ドナーが直接支援し、残りの半分を世銀の基金経由で支援する。基金への拠出状況はECの合計額が大きいが、単一の国としては日本の貢献額も最も高い。
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(ニ) |
食糧援助は2国間で12カ国に対し、国際機関経由で10の事案に対して支援する。特に国際機関経由の支援は、二国間では支援することができない難民・被災民等に食糧を供給する。
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(ホ) |
食糧増産援助はFAO経由でフィリピン・ミンダナオの貧困農民や国内難民に対し、食糧自給のための基礎的な農業生産資材を供与し、持続的な農法の指導を行う。
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(2) |
これを受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。
(委員) |
タンザニアへの直接財政支援は、パイロット的位置づけのようだが、タンザニアでの経験を評価し、他のアフリカの国に財政支援を行っていくことは考えているのか。 |
(外務省) |
英国など財政支援に積極的な国が、ドナー会合等の場でも強いようである。我が国の現地大使館員も、こうしたドナー会合に積極的に参加して、情報収集等に努めている。タンザニアへの財政支援の評価は、現在やっと中間評価が出たところであり、直接二国間の支援よりも日本の顔が見えにくいことから、我が国としては対象の拡大には慎重である。タンザニア政府の貧困削減への取組の状況、複数のドナーの間で、評価・モニタリングの仕組みがある。 |
(委員) |
貧困モニタリングに対する仕組みは、コモンファンドというものか。 |
(外務省) |
そうである。 |
(委員) |
アフガニスタンへの支援で、説明のなかに先方政府の実施能力が高い、という説明があったが、どのように実施能力を確認したのか。 |
(外務省) |
ノン・プロ無償のスキームを良く理解しており、特に見返り資金の積み立て状況が極めて良いという意味であり、アフガニスタン政府の一般的な実施能力に関する評価ではない。 |
(委員) |
パレスチナに対する財政改革支援はパレスチナ自治政府の人件費等にも充てられるのか、また制限などはあるのか。 |
(外務省) |
人件費にも充てられる。例えば、パレスチナ政府の保健セクターの公務員の人件費など。また、嗜好品、軍事目的には使用できない等の制限がある。 |
(委員) |
財政支援というのは、いつまで続けるのかということも問題だろう。慎重派の間ではそういった意見もあるのでは。 |
(外務省) |
タンザニアに関しては、5年間を実施機関として一般財政支援の枠組みがタンザニア政府によって設置されているので、今後の支援継続如何は今回の評価等を踏まえて、改めて検討することになると思う。 |
(委員) |
以前の会合でも、財政支援に関しては省内でも意見がまとまっていないと聞いた。やはり日本の顔が見えない援助ということも理由であろうか。 |
(外務省) |
タンザニアへの財政支援が効果を上げているかどうかといえば、答はイエスであろう。しかし、日本のODAの基本理念は国造りへの途上国自身の自助努力を支援することにあり、そのような考え方からしても日本としては依然として財政支援には慎重派である。顔の見える見えない以前の援助哲学の違いによるところが大きい。 |
(委員) |
今後も日本の支援が財政支援を中心としたものへと大きくシフトすることはないのだろう。それだけに、プロジェクト事業の有効性を高めることが重要だろう。 |
(委員) |
食糧援助に関しては、支援額の決定の仕方、対象の選定の仕方はどのようなものなのか。 |
(外務省) |
当該国の食糧の不足状況、経済情勢、二国間関係等を総合的に勘案し、限られた予算の中で対象国、供与額を決定している。 |
(委員) |
穀物の量は供与限度額と必ずしも比例的ではないようだが。 |
(外務省) |
食糧援助においては、穀物の購入額だけでなく、輸送費や保険料等の費用も含まれる。よって供給国や配給地によって輸送に係る経費が異なるので、購入できる食糧の量は異なる。 |
(委員) |
ネパールに関しては、供与した資金で購入した米を、ネパールの市場価格よりも安価な価格で販売するということか。 |
(外務省) |
二国間の食糧援助においては、被災者に無償で食糧を配布する場合もあるが、基本的には援助資金により調達した食糧を国内で販売し、内貨を見返り資金で積み立て、相手国の社会経済開発事業に活用している。ネパールの場合には、政府は山地の貧困農民が自ら購入できる食糧を持続的に供給するために、市場価格よりも安い価格で販売している。
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4.無償資金協力に関する案件別評価について(外務省)
(1) |
無償資金協力の案件別評価について、2004年度版評価報告書を配布しつつ、外務省から説明を行った。
(イ) |
以前にも、本会議の場で評価を議題として取り上げた。評価には事前の評価と事後の評価がある。事前評価については、平成15年4月より無償資金協力においては一般プロジェクト無償・水産無償の10億円以上の案件につき、政策評価法に基づく事前評価を行っている。それ以外の案件については、JICAが事業事前計画表を作成している。事後評価については、外務省は政策レベル及びプログラムレベルの評価、実施機関がプロジェクトレベルの評価を行うこととなっている。 |
(ロ) |
先に出た新聞記事によると、こうした外務書と援助実施機関の役割分担の結果、有償資金協力はJBICが、技術協力はJICAが実施機関であり、個々の案件の評価を行っているが、無償資金協力は外務省が事業を行っているため、個々の案件の評価が抜け落ちてしまっていると指摘している。無償資金協力に関しても、実際には基本設計調査の事後評価という位置づけでJICAが事後評価を行っており、本年度は現在のところ6件につき実施した。 |
(ハ) |
個々の案件の評価をどこまで行うかについては、国民の関心は評価を行うこと自体というよりは、援助が遣りっ放しになっていないか、ということにあると考える。厳密な意味での事後評価ではないが、JICAが終了後概ね2年目及び6年目の全ての案件につき事後の状況を調査しており、調査結果によっては、フォローアップ協力が行われる。御参考までに外務省の評価予算は年間約3.7億円、JICAは約9億円、JBICは約7億円である。
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(2) |
これを受けて、以下の通り質疑応答がなされた。
(委員) |
このような新聞記事に対して、外務省は何らかの行動をとったのか。記事を読んだ人は、そう思ってしまう。今後、評価を充実させていくためにはどうしたらよいか、ということも考えなければならない。評価を充実させれば、その分コストもマン・パワーもかかる。簡単に全ての案件についてやるべしとは言えない。 |
(委員) |
この記事が出てから、NGOの関係者から適正会議がありながらこのような記事が出るとはどういうことか、とのメールが2、3通あった。 |
(外務省) |
JICAの行う事後状況調査は、現地コンサルタントやJICA現地事務所職員が現地を調査している。実際はODA民間モニター事業等もあり、個人の資格でたくさんの方が現地で案件を視察している。いろいろなレベルの評価がある。また、効率性の観点からは全案件評価を行うのが必ずしもよいかどうか。 |
(委員) |
DACのピア・レビューは現在でも行われているのか。 |
(外務省) |
行われている。数年に一度、日本も対象となる。日本が他のドナーを評価することもある。日本は2003年にピア・レビューを受け、結果は公開されている。 |
(委員) |
DACのピア・レビュー報告までアクセスして見る人はあまりいないのかもしれない。 |
(委員) |
本記事を書いたのは霞クラブの記者だと思われるが、事前に経済協力局と評価の件について話し合う場はあったのか。 |
(外務省) |
公式な話し合いはなかった。経済協力局長が週に1度、霞クラブの記者と懇談の場を設けているが、評価について公式に話したことはないと思う。 |
(委員) |
記者に外務省が行っている評価のしくみを良く理解してもらう努力もしてもらいたい。 |
(外務省) |
技術協力は人が現地に行って、実施しているので、プロジェクトの評価も行いやすい。他方、無償資金協力は施設建設、機材供与等、一度完了すると相手国政府の所有になってしまう。どこまでが援助する側の責任なのか、常々考えている。無償資金協力の案件でも技術協力と連携する、ソフト・コンポーネントをつける等している。評価について難しい点は、民間では事業に成功も失敗もあるという前提で仕事をしているが、政府の事業となるとほんの些細なことであって順調にいっていない部分があると、それをもって全体が失敗とみなされてしまうのが辛いところ。 |
(委員) |
外務省としては、全ての案件を評価する必要はないと思う。外務省は政策レベル及びプログラムレベルの評価を行っている、ということをもっときちんと対外的に説明する必要があるのでは。 |
(委員) |
記者に対しても、ODAの評価について説明するべきではないか。評価活動に関する広報を行ってはどうか。 |
(委員) |
外交フォーラムの1テーマとして取り上げることなども考えられる。評価の仕組みをわかりやすく、図式を示して説明するなど、広報の面で努力してほしい。 |
(委員) |
本会議の委員の現地視察も一種の評価ではないのか。現地に行って、案件実施後の維持管理状況等を視察し、きちんと行われていることを見てきた。 |
(委員) |
記事に否定的なことがかかれている場合に、本会議がどう関与していけるか。何らかの形で、案件別評価はなされているということを言えるのではないか。 |
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別添1
出席者
- I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
- 1.大野 泉 政策研究大学院大学教授
2.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
3.脊戸 明子 学校法人日本外国語専門学校副校長
4.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
5.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- II.外務省
- 6.鈴木 秀生 経済協力局無償資金協力課長
7.三浦 和紀 経済協力局無償援助審査官
8.武田 朗 経済協力局無償資金協力課地域第一班長
- II.国際協力機構
- 9.青木 眞 無償資金協力部次長
10.上垣 素行 無償資金協力部 管理・調整グループ 管理チーム長
別添2
無償資金協力実施適正会議(3月11日15:00~17:00)議題(案)
場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)3階396号室
- 報告事項(外務省)
平成16年度補正予算による対パレスチナ支援について
アフリカ及びアフガニスタンに対する「平和の定着」支援について
- コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
- 3月閣議請議案件について説明及び質疑応答(外務省)
- 無償資金協力に関する案件別評価について
以上