2月15日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下とおり(
出席者別添1、
議題別添2)。
1.報告事項(外務省)
(1) |
スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対する我が国の支援につき、外務省から報告があった。
(イ) |
スマトラ沖大地震とそれに伴う津波災害は昨年12月26日に発生し、広範な地域に甚大な被害をもたらした。我が国は、国際緊急援助隊の医療チームの派遣をすぐさま決定し、諸外国のなかでも迅速な支援であると高い評価を得た。また、日本の顔の見える援助であったといえる。昨日、緊急援助隊のメンバーの報告会が催され、当省の町村大臣から隊員の方々に感謝状を進呈した。
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(ロ) |
地震・津波への我が国の対応はまさに迅速だった。地震発生後、直ちに当面の緊急支援措置として3000万ドルの支援を表明し、更に1月6日にジャカルタで開催された緊急首脳会議において、小泉首相より約5億ドルを無償で供与することを決定した。このうち、国際機関を通じて2.5億ドル、二国間で2.5億ドルの支援を実施する。 |
(ハ) |
今次の災害に関して実施するノン・プロ無償は、通常のノン・プロ無償とは若干性格が異なる。第一に通常のノン・プロ無償は物資の調達を支援するスキームだが、今回は必要ならば復旧・復興活動における役務の調達も可能とした。第二に通常は物資の輸入のための外貨を支援するものだが、現地のニーズに迅速に応じられるよう現地調達も可能とした。第三に通常は被援助国政府が物資を購入し、それを国内で売却し、その代金を積み立て社会経済開発に活用するが(見返り資金制度)、今次災害に対する支援に当たっては、援助資金で購入される物資は被災した方々に無償配布されるため、見返り資金の積み立て義務を免除している。 |
(ニ) |
また、物資の調達には調達代理機関が係わることで、援助資金が適正に管理される。現在、具体的なニーズとしてはバキュームカー、建機のスペアパーツ、道路修復、医薬品等があがってきている。 |
(ホ) |
支援の実施にあたっては、JICA、国際機関及びNGO等のさまざまな知見や経験を活用していきたい。また、官民の協力も進んでいる。1月4日には官房副長官のもと、関係省庁の連絡会議が開かれ、各府省どのような対応が可能かを話し合った。民間の企業からは多くの物資が無償で提供され、民間航空会社等による輸送支援も行われた。緊急援助隊を始め人的貢献も盛んで、NGO等を通じた支援としてはジャパン・プラットホームに対して先に10億円を拠出したところであるが、この資金を活用して、被災地で活動する日本のNGOを支援している。 |
(ヘ) |
1月18日から22日にかけて、神戸で国連世界防災会議が開かれた。日本は国際防災協力イニシアティブを発表し、津波の経験を生かした協力を実施していく。
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(2) |
続いて、以下のとおり質疑応答がなされた。
(委員) |
神戸の国連世界防災会議に関して、法務省は関係省庁に含まれているのか。自然災害後の混乱した状況における犯罪等の二次被害に対し、如何なる手段が執れるか、または執るべきであったかを検討することが重要。現在、アジア地域で自然災害後の二次被害防止のためのワークショップを企画し、現地ですでに取組が始まっているが、世界防災会議のような場でも、法務省も関係省庁として役割を果たすことができると考えている。 |
(外務省) |
実際に、同会議において法務省の方が関係省庁として係わっておられたかは承知していないが、今回の地震・津波の後、一時大きく報道されたものとして人身売買の問題があった。現在、草の根・人間の安全保障無償のスキームで孤児院の修復等ができないか、検討しているところである。 |
(委員) |
そもそもノン・プロ無償は、国際収支支援という性格から外貨支援に近い。今回は現地での調達も認めているということなので、内貨で政府が購入する場合にも使われる。通常のノン・プロから一方踏み込んだ、財政支援に近い内容といえるのか。 |
(外務省) |
財政支援とは異なるが、通常のノン・プロのスキームよりも津波被害支援のために柔軟な運用が可能な新しい型のノン・プロと言える。 |
(委員) |
財政支援でないことはわかった。被災国のニーズにあった対応が可能なスキームの運用がなされていることを評価。
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2.委員の現地視察報告
(委員)
(イ) |
去る1月28日から2月3日の7日間、バングラデシュを現地視察した。7案件につき案件完了後の維持・管理状況を視察するとともに、バングラデシュ側の援助受け入れ窓口機関である大蔵省経済関係局との意見交換や現地ODAタスクフォースの会合に参加する機会があった。 |
(ロ) |
視察の全体を通して感じたことは、日本からの支援の成果は着実にあがっている。ということ。また、現地ODAタスクフォースの活動ぶりは、民間企業、NGO関係者等も含めた拡大ODAタスクフォースとして勉強会を開催するなど、バングラデシュモデルと称され、非常に頑張っている。 |
(ハ) |
視察期間中のバングラデシュの状況をお伝えしたい。出発日前日、バングラデシュ国内で2大政党の抗争による爆発事件が発生。現政権と対立する野党の要人が殺害され、翌日から3日間、野党勢力が現政権を批判してバングラデシュ全土がハルタル(ゼネスト)に突入した。一時は視察の日程を大幅に変更しなければならないかと心配したが、現地警察の警護のもと、予定通り視察を行うことができた。 |
(ニ) |
大使館員を始め、ODAに係わる人々の熱き思い、責任感を非常に強く感じた。バングラデシュ側による案件実施後の維持管理についても、10年以上を経過していても、その国、地域の人々の役に立っており、現地で受け継がれているということが印象的であった。 |
(ホ) |
バングラデシュ政府における我が国からのODAの受け入れ窓口である大蔵省経済関係局(ERD)の日本担当局長と意見交換を行った。我が国の支援に対する感謝の意が表明されたほか、1)プロジェクトの実施までにかかる時間の短縮、2)案件のモニタリングを重視しており、日本と協力して効率的にモニタリングを実施していきたい等の要望もあった。大使館の職員とERD職員の関係は、真のパートナーという感じで、お互いの立場、考えを率直に意見交換していた。 |
(ヘ) |
現地で活動する我が国NGO関係者から現地での活動内容の紹介を受けるとともに、日本のODAに対する意見を聴取した。その中では、1)道路・橋梁等のインフラ整備で、国ベースで行う無償資金協力も、バングラデシュの社会・経済開発には重要であること、2)国ベースのODAでも、成功したもの、そうでなかったものがあって当然であり、後者の評価をきちんとすることが重要である、との意見があった。また、草の根・人間の安全保障無償では現地大使館に申請するが、支援の採否を早く通知するシステムにして欲しい、との要望も寄せられた。 |
(ト) |
現地ODAタスクフォースの活動に関してはバングラデシュ開発援助勉強会を傍聴した。勉強会は民間企業、NGO、国際機関邦人職員等を含む拡大ODAタスクフォースの形で開かれ、開発援助に関して様々な角度から意見が出され、議論が行われた。我が国の支援の在り方等について活発な意見交換が行われていることを実際に見聞することができ、非常に有意義な経験ができた。
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3.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
JICAより閣議請議案件のE/N署名後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。
4.2月取りまとめ閣議請議案件の説明及び質疑応答(外務省)
(1) |
外務省より2月に取りまとめ閣議請議を行う案件について、以下のとおり説明があった。
(イ) |
年度末も近づき、2月の取りまとめ閣議請議案件は一般プロジェクト無償が6件、水産無償が2件、食糧援助が6件、食糧増産援助が15件、ノン・プロジェクト無償が5件の計34件である。 |
(ロ) |
一般プロジェクト無償ではUNICEF経由の案件が2件ある。アンゴラにおけるマラリア対策の事業は、長年実施してきており、現地での評判も非常によい。昨今、MDGsに関するサックス教授の報告書が出され、蚊帳の供与について、即効性があるとして注目している。我が国としては、これまでも多くの蚊帳を供与してきたが、今後も力を入れていく。去る2月10日にはミレニアム報告書の会議が開催され、我が国は2007年までに1000万帳の蚊帳を供与することを表明した。 |
(ハ) |
ノン・プロジェクト無償は3件が農業、教育、保健、公衆衛生等のセクターに支援するセクター・プログラム無償である。残りの2件は紛争予防・平和構築無償。10数年来内戦が続いていたリベリアでは2003年に政府側と反政府勢力等との間で包括的和平合意が締結され、周辺の4ヶ国に避難していた難民の帰還が始まっている。無償資金協力では平成15年度に児童兵の武装解除(DDR)に対する支援を実施している。プロジェクトの内容は以下の3点。一点目は難民の再定住支援事業としてシェルターの建設等を行うもの。二点目は緊急地域リハビリ事業として、教育、医療、水、衛生分野に対する支援。三点目はコミュニティー強化のための支援。いずれも今後コミュニティーが自立していくための支援である。アフガニスタンに対する支援は、これまで日本がリードしてきたアフガニスタンにおけるDDRの急速な進展(2005年1月現在36,000人が武装解除)に伴う除隊兵士に対する社会復帰事業の支援。社会復帰支援はDDRの中でも我が国が力を入れている分野である。
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(2) |
これを受けて、以下のとおり質疑応答がなされた。
(委員) |
放送大学への支援について。放送大学というと高等教育機関にあたると考えられるが、同大学の教育設備が現在どのようなもので、本件支援によってどのように整備されるのか、詳しく説明して欲しい。 |
(外務省) |
放送大学の通信教育用の番組作成用機材、視聴覚用機材等が整備される。効果としては、放送大学の教育内容の向上が図られることはもとより、教員養成過程受講者(同大学の受講者の約40%を占める)が教員となることにより、将来にわたり初等教育の改善が図られる。 |
(委員) |
機材設備等を供与する前提として電気や維持管理体制を調査しているか。 |
(外務省) |
受け入れ側の実施体制については、JICAの調査で適切な維持管理が行われることを確認している。 |
(委員) |
国際機関の支援はどのように決まるのか。外務省内の複数部局が関連していると理解しているが、支援内容を含めた役割分担があるのか。 |
(外務省) |
国際機関にはまず、国際社会協力部が所管しているコア・ファンドへの拠出金がある。 |
(委員) |
人間の安全保障基金等も国際社会協力部の所掌か。 |
(外務省) |
そうである。特定のプロジェクトへの支援を実施する場合は、国際社会協力部と経済協力局の間で協議して決定している。 |
(委員) |
水産無償で漁船を建造するということだが、受け入れ側が公的機関とはいっても企業体であるので(公営企業)、無償資金協力で支援することが適当なのか疑問。公営企業の稼働率がなぜ悪いのか、経営上の問題等をまず検討したのか。 |
(外務省) |
経営上の問題は、漁船の老朽化による整備費用の高騰や稼働率の低下にある。
漁業が主要な産業である国では、同産業を主要な外貨収入の手段としており、雇用にも影響する。国民経済へのてこ入れという意味でも、支援の意味はある。漁業の振興、漁業を通じた2国間関係の強化といった水産無償の沿革もあり、一般プロジェクト無償とは確かに若干異なると言える。 |
(外務省) |
完全に公営の企業である。漁船の老朽化で低下した漁獲能力の向上、維持管理 コストの低減をはかることで、公営企業の経営体質が改善することは、長期的な同国の外貨獲得、雇用の確保等にも繋がる。 |
(委員) |
企業に支援するよりも、その分蚊帳をたくさん供与したほうがよいのではないかと考えてしまう。 |
(外務省) |
限られた予算の資源配分という観点でのお考えであろう。何を優先分野と位置づけるかは難しい問題。 |
(外務省) |
水産無償には経緯もあり、政府全体のODAを実施していく中で、いわゆる基礎生活分野とは若干違うところでも支援を実施していくことは必要。 |
(JICA) |
本件支援に関してはJICAの基礎設計調査の際に、JICAの水産担当者と水産専門家を現地に派遣して調査を行い、実施主体の経営状況、同国経済へ与える効果等を確認している。 |
(委員) |
食糧増産援助で供与する機械にはどんなものがあるのか。 |
(外務省) |
トラクターやコンバイン等、その国の農業形態や地形等によって、どのような機械を供与するか見極めている。対象国からの要請を受けて、事前調査団による調査・検討の過程で供与資機材の内容を見直すこともある。 |
(委員) |
肥料等の配布まで被援助国政府が管理しているのか。被援助国政府が販売したりする場合もあるのか。 |
(外務省) |
日本が供与した資金により調達された肥料や農機は配布を含め、被援助国政府が管理している。農機の場合には公社が管理して農民にリースするという形態もあるが、政府が購入して農民に販売する形が大半である。その売り上げを見返り資金として積み立て、大使館を通じた日本政府との使途協議を経て、貧農対策等の経済・社会開発事業に活用している。 |
(委員) |
肥料を用ない農業は難しいことはわかっている。他方、肥料がなくてはやっていけない農業になってしまうことにも懸念がある。肥料を支援すると申し出れば、途上国では喜んで支援を受けたいと言うだろうが、中には肥料付けになってしまうことをおそれ、肥料に頼らない農業を続けていこうとしている人たちもいる。難しいところである。
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5.今後の会議の内容ついて(委員・外務省)
今後の無償資金協力実施適正会議で扱う内容について、意見交換を行った。
(委員) |
個別の閣議案件の説明を聞くなかで、委員の間でも、共通の問題意識というものが出てきたと思う。こうした委員の共通の問題意識の中から、いくつかトピックをまとめ、外務省自身の検討状況等を踏まえて会議の場で議論してはどうか。無償資金協力実施適正会議なので、議論の中心はやはり無償資金協力となるが、これまでの会合を通じて、無償以外の他のスキームが係わっている場合も多く、ODA全体として考えなければ解決できない問題もあるように思う。本会議での議論をトピックごとにまとめて、報告という形で出せれば、それをODA全体の改革議論に生かしてもらうこともできるかもしれない。 |
(委員) |
閣議請議案件の説明・質疑応答以外に毎回、何らかのテーマを設定して議論していくことでいかがか。 |
(委員) |
外務省)それで良い。 |
(委員) |
次回以降は、閣議請議案件の説明、質疑応答に加えて、委員の共通の関心事と外務省内での検討状況等を踏まえ、会合毎にテーマを設けて議論していくこととしたい。 |
別添1
出席者
- I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
- 1.大野 泉 政策研究大学院大学教授
2.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
3.敷田 稔 財団法人アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.脊戸 明子 学校法人日本外国語専門学校副校長
5.西川 和行 財団法人公会計研究協会会長・元会計検査院事務総長
6.星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- II.外務省
-
7.佐藤 重和 経済協力局長
8.鈴木 秀生 経済協力局無償資金協力課長
9.武田 朗 経済協力局無償資金協力課地域第一班長
10.倉冨 健治 経済協力局無償資金協力課業務班長
- II.国際協力機構
-
11.青木 眞 無償資金協力部次長
12.上垣 素行 無償資金協力部 管理・調整グループ 管理チーム長
別添2
無償資金協力実施適正会議(2月15日13:00~15:00)議題(案)
場所:外務省(霞ヶ関、南庁舎)3階396号室
- 報告事項(外務省)
スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対する我が国の支援について
- 現地視察報告(バングラデシュ)
- コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
- 2月閣議請議案件について説明及び質疑応答(外務省)
- 今後の会議の内容について(委員・外務省)
以上