ODAとは? ODA改革

無償資金協力実施適正会議(平成16年度第1回会合)議事録

 4月6日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下の通り(出席者別添1議題別添2)。

1.無償資金協力課からの説明と質疑応

(1) イラクに対する支援について(最新状況)
 無償資金協力課より、3月26日付の記事資料をもとに、対イラク支援の最新状況について以下のとおり説明を行った。

(イ) 3月26日の閣議で、外務大臣より発言を行い、対イラク支援5案件について正式に決定した。5案件のうち、4案件は、イラクに対する直接支援であり、具体的には、移動式変電設備、消防車、浄水設備、病院案件となっている。これら4案件と、内容の細部について調整中の案件をあわせると、補正予算のうちイラクに対する直接支援として予定されていた559億円が全てカバーされるということになる。上記4案件については、これから、イラク側の関係者との間で書簡の交換を行うなど、所定の手続きを行った上で、実際に入札や工事が始まる運びとなる。

(ロ) 一部には、「日本のODAによるイラク支援は遅すぎるのではないか」との批判がある。これに対し、我が国のODAの仕組みを良く知る人たちからは、よくこれだけ迅速に実施に漕ぎ着けたものだとの好意的な意見が出されるとともに、こんなに急いで大丈夫なのかと危惧する声もある。無償課としては、現在のイラク情勢の下、可能なあらゆる手段を駆使して支援を行っているというのが現状である。例えば、1月から3月にかけてアンマンにJICA調査団を派遣し、関係者との協議を行い案件の選定・形成を行った。また、電子メールや電話会議を活用し、東京にいる無償課の各案件の担当官が現地関係者と緊密に情報収集・意見交換を行っている。

(ハ) 以前の適正会議でも既に説明したところではあるが、我が国の対イラク支援には4つのチャンネルがある。一つは、先に述べたイラクに対する直接支援である。その他には、国連により管理される信託基金、及び、世銀管理の信託基金を経由する支援がある。これら基金を経由する支援については、基金の仕組みそのものがどこまで成熟したものとなっているのか、また、基金の下で実施される各案件の内容をどうやって詰めていくのか、といった点について、我が国としても他のドナーや国連・世銀側とともに十分議論を尽くしていく必要がある。
4つめのチャンネルは、基金を通じることなく国際機関を経由して行う支援形態である。この例としては、昨年5月に決定した、国連開発計画(UNDP)経由の案件であるイラク復興雇用計画(IREP)が挙げられる。また、3月26日には、このIREPの第二フェーズの実施を決定したところである(5案件の一つ)。イラクの雇用問題は深刻であり、一つの案件を実施しただけで、魔法のようにたちどころに解決するというわけにはいかないが、IREPIIの実施により、一日当たり数百人単位の雇用が確保されることが想定されている。

(ニ) 我が国の対イラク支援を考える上で、サマーワに派遣されている我が国自衛隊の存在は重要な位置を占めている。外務省としては防衛庁・自衛隊と緊密な協力関係を築いて対イラク支援をオールジャパンとして推進する考えである。大切なのは、「日本がイラクに来てよかった」とムサンナー県の住民に思ってもらえるような支援を我が国が実現できるということである。もちろん、自衛隊の存在をもって、我が国ODAの決まりを変えることは出来ないが、自衛隊が発掘する現地のニーズについては積極的に対応したいと考えている。

(2) アフガニスタンに対する支援について
 続いて、3月末に開催されたベルリンでの会合等、我が国の対アフガニスタン支援の現状について説明がなされた。

(イ) 3月31日から4月1日にかけてベルリンで開催されたアフガニスタン国際会議では、復興支援について、今後1年間で44億ドル、3年間で82億ドルの支援が表明された。当初、アフガニスタン側は、ドナーによる今後の支援表明について不安を持っていたようである。しかし、結果としては、相当な額の支援が表明された。

(ロ) 我が国は、ベルリン会合において、これまでの支援の成果について言及するとともに、今後2年間で4億ドルの支援を実施することを表明し、会合の成功に貢献した。

(ハ) 対アフガニスタン支援の今後の課題としては、選挙及びそれに対する支援が挙げられる。カルザイ大統領が9月の実施を表明し、関係者はそれに向けて最大限努力をしているが、不安定な治安など、先行きは予断を許さない。

(ニ) 日本が積極的に取り組んでいる課題の一つに、各地に割拠する軍閥のDDR(武装解除、動員解除、社会復帰)がある。日本は、DDRをどう進めていくかについて、お金(資金協力)だけでなく、アイデア(専門家の派遣、現地の大使館の積極的な関与)も出しているが、DDR自体がそもそも難しい課題であるだけに、簡単に物事が進むものではなく、日本をはじめ国際社会全体の支援により、少しずつ進展が見られるようになるものである。

(ホ) 米国は、イラクと同様、対アフガニスタン支援にも力を入れている。これは、国際社会における対アフガニスタン支援の重要性もさることながら、米国の国内事情によるところが大きいものと思われる。

(3) 質疑応答
 以上のやり取りを踏まえて、以下のとおり質疑応答が行われた。

(イ) 対アフガニスタン支援について
(委員)  DDRの内容の一つとして司令官プログラムというのが挙げられているが、これはどういった内容のものか。

(外務省)  DDRは、軍閥の兵士の武装・動員を解除することはもちろん、それにプラスして社会復帰(reintegration)の内容を含むものである。司令官プログラムは、司令官クラスの社会復帰を支援するプログラムの一つである。
そもそも、アフガニスタン国内では、軍閥が割拠し一種の勢力均衡が形成されており、いざ武装・動員解除をするといっても、全ての軍閥に対して一括して均等に実施されなければ、他の軍閥との比較で勢力が殺がれることへの警戒感を引き起こす結果になるというのが難しいところである。また、DDRを推し進めるに当たっては、同じく軍事組織である国防省についても改革が必要であるとして、国防省改革とDDRは一体のものとして考えられている。
ある意味で、DDRはアフガニスタン国内の権力闘争に国際社会が直接的に介入するような施策である。先に述べたとおり、日本からはアイデアも金も出しているが、簡単に期待通りには進まない。現在のアフガニスタンはいわば明治維新の状態にあり、DDRプロセスを通じた軍閥の解体という「廃藩置県」を実施して中央政府に権力を集中させ、平和で安定した社会を作る必要がある。

(ロ) 対イラク支援について
(委員)  対イラク支援において、自衛隊が活動しているサマーワとそれ以外とでは何らかの違いがあるのか。

(外務省)  支援を推し進めるに当たっては、自衛隊の活動はもちろん考慮に入れている。一般的に言って、案件を選定・形成するに当たっては、これまでの我が国のイラクにおけるネットワークを活用し、イラクに対する直接支援ないしは国際機関経由の支援を実施しているが、その際、サマーワやムサンナー県に配慮している。また、大使館が主導で行うべき草の根・人間の安全保障無償による案件の実施は、治安の関係もあり、特に我が国外交官殺害事件以降は、事実上、バグダッドかサマーワに限定されている。サマーワに派遣されている陸上自衛隊とは、どういった案件を実施すべきかについて緊密な協議を行っている。望まれるのは、将来、イラクの治安情勢が改善し、NGOを含め我が国の援助関係者がイラクに入って支援を実施できるようになることである。

(外務省)  対イラク支援について、現在の治安情勢では邦人が現地に入ることは難しく、ODA案件を進めていくには間接的なやり方をとらなければならない。昨年11月には我が国外交官が殺害されるという不幸な事件もあった。そうした中で、自衛隊が派遣されてイラクの復興支援を行っているのは、文民が行けないので自己完結型の活動を行える自衛隊がイラクに行く、という考えに基づくものである。小泉総理もアル・ジャジーラとのインタビューで、「自衛隊はイラクの人道復興支援のために行く」と明確に述べておられる。
 現在、イラクに対してODA案件をもっと積極的に実施すべきだという議論がある。しかしこれは、文民が行けないところに自衛隊が行くという議論の出発点と対立するものである。もちろん、治安に改善が見られれば文民も現地に入ることは出来る。こうした状況の中で、案件の選び方、実施のタイミングといったことは非常に難しい問題を孕んでいるといえる。

2.コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)

 JICAより、閣議請議案件のE/N後進捗状況、コンサルタント選定状況について説明があった。

3.一般プロジェクト無償実施予定案件の説明/無償資金協力の予算執行の制度(外務省)

(1) まず無償資金協力課より、4月閣議請議予定の案件につき以下のとおり説明した。

(イ) 4月閣議では国債案件について閣議決定を行うことが慣行となっている。案件数が多く、分野も水、保健衛生、道路・橋梁、教育、環境、農業、電力と多岐にわたっている。

(ロ) 例えば、過去に円借款により我が国が支援した発電所について、リハビリを無償資金協力により行うという案件については、ODA大綱に定められた、ODAの様々なやり方(スキーム)の間で連携をするという意味で有意義である一方、円借款で実施した案件についてはそのリハビリも円借款でやはりやるべきであるという意見もある。どちらにするかは案件次第であると考えられる。

(ハ) また、生物多様性の確保を目的としたセンターの整備という案件の場合、生物多様性という目的自体は重要なものであるが、実際に持続的な施設の運営をどう確保していくかとなると非常に難しいものがあり、援助が有効なものとなるには、無償資金協力だけでなく、専門家派遣など技術協力との連携も必要不可欠なものとなってくる。

(ニ) 給水案件についてもいくつかの国において実施する予定である。給水案件では、給水施設というハードの部分を建設するだけでは不十分であり、案件の対象地域の住民自らがその施設を維持管理出来るようになるにはどうすればよいかについても目を向けなければならない。我々としても、そうした維持管理が確保されるよう、地域住民による維持管理委員会の運営、料金徴収制度の確立といった点に留意しつつ案件の形成・選定を行っているところである。

(ホ) 保健医療分野については、規模としてはやや小さいが住民により近いレベルに位置する保健センターの整備を行う案件もある。こうした保健センターは、大都市にある大病院による医療を補完するものとして重要であり、住民にとって非常に有益なものとなることが期待される。なお、大規模な病院案件や高度な医療機材の案件については、その費用対効果について厳しく見ていく必要があると考えている。

(2) 続いて、無償資金協力課より、無償資金協力の予算執行の制度について、別添3の配付資料をもとに以下のとおり説明した。

(イ) 無償資金協力については年に7回とりまとめ閣議が開催され、そこで案件の実施について決定される。毎年、4月の閣議では、慣例上、国庫債務負担行為による無償資金協力案件のみが対象となっている。

(ロ) 複数年に亘る案件については、国庫債務負担行為以外に、一つの案件をいくつかの期に分けて実施する期分けというやり方がある。また、単年度債務案件についても、やむを得ない事由により繰越をして翌年度に予算の執行を行うという明許繰越という制度がある。

(ハ) こうした制度があるにもかかわらず、実際には無償案件の実施において工期に時間的な余裕はほとんどないといってよい。というのも援助というのは非常に時間のかかるものだからである。相手国政府との交換公文締結に始まり、入札図書の作成、入札期間、相手国の気候による工期の制限(例えば雨期)など、様々な要因がある。

(ニ) 日本は原則として単年度主義に基づいているため、支払いが翌年度にずれ込む繰越という制度はそもそもけしからんという議論が国内にある。もちろん、工期が遵守されるよう最大限の努力は払われている。一般プロジェクト無償で主契約者が日本の自然人・法人に限定されているのは、工期の遵守という観点によるところが大きい。しかしながら、こうした努力にもかかわらず、相手国の事情、自然災害、クーデタなど、様々な事態が生じ得るわけで、その中で工期を守ることは容易ではない。

(ホ) 工期の遵守という意味では、当初から支払いが複数年度に亘ることが想定されている国庫債務負担行為は望ましいと言える。しかしながら、これにより国の義務的経費が増加するため予算の柔軟性が失われるとして、国庫債務負担行為を多用するのは好ましくないというのが財政当局の見方である。

(ヘ) 交換公文の署名や、繰越のための口上書交換など、様々な手続きが迅速になされるよう、政府は大使館を通じて相手方である被援助国を督促しているが、被援助国政府はもちろんのこと、我が方大使館でさえ、「なぜそんなに日本政府は急き立ててばかりなのか」という見方をすることがある。こうした働きかけは全て、既存の単年度主義の枠内において案件を適切に執行するためであるが、途上国の実態に沿わない面があるだけでなく、関係者の理解を得ることは容易ではない。「外務省を変える会」からは明許繰越を積極的に活用すべしとの提言がなされたが、明許繰越については従来より積極的に活用している。いずれにせよ、我々としては、いかに確実にかつ迅速に案件を実施していくかに腐心しているところである。

(3) 続いて、以下のとおり質疑応答が行われた。

(イ) 明許繰越・事故繰越
(委員)  明許繰越とはどのような制度か。

(外務省)  やむを得ない事由がある場合に翌年度に予算の執行を繰り越すことであり、無償資金協力に関する予算については予算書上明許繰越を行うことが可能である旨記載されている。
先にも述べたとおり、我が国の財政当局は、繰越はできる限り避けるべきという考えをもっているため、それに従えば出来る限り年度の早い段階(4月ないし5月閣議)に全ての案件を閣議決定すべきということになるのだが、ところがそうなると財政当局は「早い段階で予算を使い切ってしまうと年度末までに何かあったときにどうするんだ」と言って、4月や5月閣議で一般プロジェクト無償に関する全ての予算を執行することについて後ろ向きになる。こうした議論は、「年度末の出張が集中してしまい、批判の対象となる」というようなことと単年度主義による予算執行上の制約の関係に相通ずるものがある。
(外務省)  繰越については、明許繰越の他、その後にさらに繰越を行う事故繰越という制度がある。これが認められるためには、1)避けがたい事故、及び2)繰越をして期限を一年間延長すれば事業を完了できる見込みがある、という2つの条件がクリアされなければならない。自然災害や治安情勢の悪化といった事態が少しでも生じると、事故繰越を行わなければ事業が完了しない虞があるというのが実際のところである。

(ロ) ノンプロジェクト無償・財政支援と単年度主義の関係
(委員)  ノンプロジェクト無償についてはどうか。

(外務省)  ノンプロ無償については、一種の出来高払い制を採用している一般プロジェクト無償とは異なり、一括で支払いがなされた段階で予算の執行としては完了するため、単年度主義からくる制約は少ない。
(委員)  最近、財政支援を巡る議論が盛んになっており、日本も先頃ノンプロ無償を活用してタンザニアに対する財政支援の実施を決定したところである。財政支援を行うにあたっては、供与・執行のタイミングにおいて相手国の予算制度・サイクルを考慮に入れることが重要であるとともに、政策面で他ドナーとの協調も必要であると考えるがどうか。
(外務省)  我が国の支援において財政支援はごく一部を占めているに過ぎず、まだ始まったばかりである。被援助国が自国の予算制度を考慮にいれて支援をしてくれとドナー国に対して主張するのは、財政支援についてよりも、むしろ、プロジェクト型案件について、相手国自身が維持管理のための予算を手当てする必要がある場合だと思われる。いずれにせよ、財政支援については、相手国の依存度を高める虞もあることから、いつまで続けるのか慎重に検討する必要がある。他ドナーとの協調は、特に財政支援の際に極めて重要であることはその通りである。

(ハ) 予算制度と閣議決定のタイミングの関係
(委員)  国庫債務負担行為案件については4月ということは、その他の案件についてはその後の閣議で決定されるということか。単年度の債務案件についての閣議決定を前倒しすることは出来ないのか。

(外務省)  本年度の一般プロジェクト無償については、現時点で既に大半の案件を実施できる状態にある。4月は国庫債務負担行為案件であるが、その後は工期を考慮して、5月及び7月の閣議では施設案件が対象とされ、10月閣議では施設案件が若干数及び機材案件が対象となり、12月以降は機材案件しか対象とならないのが通例である。先ほど言及があったように、不測の事態に備え予算執行は一年を通じてバランスよく行われるべきで、早いうちから予算の多くが執行されることは好ましくないという考え方があるため、このような慣行が確立しているのが現状である。
(外務省)  このようなやり方については、予算執行ばかりに重点が置かれており、相手国のニーズに対する配慮が足りないとの批判もある。その点は正直言って苦しいところではある。現状においては、我が国の予算制度を遵守しつつ、その中で相手国のニーズを最大限に尊重するというやり方をとる以外に方法はない。

(ニ) 保健医療分野の案件について
(委員)  大規模な病院案件実施にあたって、より小規模な医療施設のネットワークを構築することにより大病院に患者が過度に集中することを緩和するという課題にも日本は取り組んでいるのか。また、アフリカにおける感染症対策の研究機関への支援について、技術協力との連携などより幅広い視点は取り入れられているのか、どのくらいの期間まで日本は支援を続けるのか。

(外務省)
(i) 大規模な病院案件を実施することについては、先方政府から拠点となる各地方の大病院の医療水準向上に力を入れたいとの意向が示されているのを踏まえたものである。後者については、技術協力と連携しているが、息の長い支援が必要なものであり、中途で終了させることは必ずしも容易ではない。
(ii) 医療機関に関する案件については、大病院への支援を通じて医療水準を改善するトップダウンのやり方と、地域に密着した医療を重視するボトムアップのやり方があり、我々としても支援を行う際、両方が十分に支援されているかどうかに留意している。トップダウン式である本件については、他ドナーによる支援及び我が方の草の根・人間の安全保障無償により、保健センター等ボトムアップの部分についても支援が実施されていることを併せて調査で確認している。いずれにせよドナー間の連携が重要である。
(iii) 感染症対策の研究機関への支援については、同機関が血液検査キットを開発し、国内でのスクリーニング率を2010年までに95%にするという目標が掲げられている。
(iv) 一般論として、アフリカに対する支援は、いつフェーズ・アウトすればよいのかが難しい。これはあらゆるドナー国の悩みであるといえる。ただ、対アフリカ支援を考える上で感染症対策は避けて通れない課題であり、アフリカの中に感染症対策の拠点となる機関がいくつか存在することは必要であると考える。
(v) アフリカの感染症対策については、プロジェクト技術協力を行っている実績や経験を踏まえて無償資金協力を実施しているという側面がある。

(ホ) 生物多様性に関する案件
(委員)  生物多様性の保全に関する案件については、自分自身も研究者という立場から、非常に良い案件であると思う。しかし、他の案件の方が、被援助国の苦労がよりよく見えてくるようにも思われるがどうか。

(外務省)  種類の異なる苦労であると言える。これは、無償資金協力はどこまでの分野を対象とするのか、という問いとも直結する。例えば、かつて、珊瑚礁の保全が日米アジェンダの一項目として取り上げられ、こうした案件は無償資金協力の対象として適当であるかどうか、案件の持続可能性はどうか、といった問題があった。また、環境保全のための援助の必要性という議論が最近盛んに行われているが、環境保全は重要であるとしても、今そこにある貧困や病に苦しむ人たちに手をさしのべることほうがより重要なのではないかという見方もある。

(ヘ) マスタープランについて
(委員)  案件選定の理由の一つに、その国における当該分野のマスタープランをかつて日本の協力により作成したことが挙げられる場合があるが、こうしたマスタープランの内容を見ることは可能なのか。

(外務省)  日本が開発調査で作成したマスタープランは相手国政府に提出されるとともに、その後JICAの図書館でも閲覧可能となっている。

(ト) 南アフリカに対する無償資金協力
(委員)  円借款すら必要ないといっている南アフリカに対して無償資金協力を行うのはなぜか。

(外務省)  南アフリカの一人当たり所得は約2890ドルで、無償資金協力供与の一応の基準である1415ドルを大きく超えているのは事実である。しかし、アパルトヘイトから脱した南アを支えるという政治的な意味合いと、南アフリカにおける巨大な貧富の格差の是正が重要であるということから、これまで支援パッケージを組んで無償資金協力を行ってきた。5月の閣議でも南アフリカに対する一般プロジェクト無償案件が対象となっているが、これで最後になるものと思われる。但し、貧富の格差の是正という意味で同じく重要なツールである草の根・人間の安全保障無償については、先程述べた所得水準に関わりなく実施している。

 最後に、第12回会合は5月25日(火)に外務省(霞ヶ関)にて行うこととし、会合は終了した。


別添1


出席者

I.無償資金協力実施適正会議委員(50音順)
1.大野 泉   政策研究大学院大学教授
2.小川 英治  一橋大学大学院商学研究科教授
3.敷田 稔   アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
4.西川 和行  財団法人 公会計研究会会長・元会計検査院事務総長
5.星野 昌子  日本NPOセンター代表理事


II.外務省
6.古田 肇   経済協力局長
7.山田 彰   経済協力局無償資金協力課長
8.松井 正人  経済協力局無償資金協力課地域第一班長
9.田村 良作  経済協力局無償資金協力課業務班長

III.国際協力機構
10.中川 和夫  無償資金協力部長
11.上垣 素行  無償資金協力部 管理調達グループ 管理チーム長


別添2


無償資金協力実施適正会議(4月6日16:30~18:30)議題(案)


場所:霞ヶ関(南庁舎)2階289号室


  1. 報告事項(外務省)

    (1)イラクに対する支援について(最新状況)
    (2)アフガニスタンに対する支援について(ベルリンでの会合)

  2. コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)

  3. 一般プロジェクト無償実施予定案件の説明及び質疑応答(外務省)

  4. 無償資金協力の予算執行の制度について(外務省)

別添3


無償資金協力(予算執行)


  1. 予算執行の現状
    (1)閣議(年7回実施)
    ・4月閣議 ・・新規国債案件、継続国債案件
    ・5月閣議 ・・新規期分け案件、継続期分け案件、単債(単年度債務)案件
    年間で最も実行協議案件が多い。工期が長い施設案件。(明許繰越)
    ・7月閣議 ・・単債案件
    施設案件 (明許繰越)
    ・10月閣議 ・・単債案件
    工期が短い施設案件。工期の長い機材案件。翌債(翌年度にわたる債務負担行為)開始 (明許繰越)
    ・12月閣議 ・・単債案件
    機材案件のみ。国債の詳細設計案件。翌債。
    ・2月閣議 ・・単債案件
    工期の短い機材案件のみ。翌債。
    ・3月閣議 ・・単債案件
    工期の極めて短い機材案件のみ。翌債。
    <参考>
    翌債(翌年度にわたる債務負担行為)→E/N署名前の時点で、当該会計年度内に全額支払いを完了しないことが明らかなものについては、予め財務省の承認を得ることにより供与期限が一年後の一日前まで供与期限が延長できる。
    例:16年度2月閣議 E/N17年3月10日→18年3月9日
    明許繰越→当該年度内に全額支払いを完了する予定で供与期限を会計の年度末日の3月31日としてE/Nを締結したが,止むを得ぬ事由により年度内に支払いを完了することが出来ず、翌年度に繰り越して支払う。
    例:16年度5月閣議E/N6月10日、供与期限17年3月31日→18年3月31日
    事故繰り越し→ 明許繰越、翌債をもって翌年度に予算を繰り越し、翌年度内に支払いを完了する予定であったが、その過程において避けがたい事故のために翌年度内の支払いを完了しない状況に立ち至った場合に財務大臣の承認を得て翌々年度に予算を繰り越して使用する。事故繰越が認められる条件は厳しく、こうした事態が起きないように努力している。
    例:16年度5月閣議 E/N6月10日、明許繰越後供与期限18年3月31日→事故繰越後供与期限 19年3月31日

  2. 予算執行における問題点
    (1)年間7回の閣議

    (2)単年度主義と国外での援助プロジェクト

    (3)明許繰越が多いことについて

    (4)国債案件の数


(参考)閣議から案件実施に至るまでの流れ(概略)
閣議から案件実施に至るまでの流れ(概略)

以上
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