3月10日、無償資金協力実施適正会議が開催されたところ、概要以下の通り(
出席者別添1、
議題別添2)。
1.無償資金協力課からの説明と質疑応
(1) |
イラクに対する支援について
無償資金協力課より、補正予算案の国会承認、信託基金への4.5億ドル(国連管理部分3.6億ドル、世銀管理部分0.9億ドル)について説明した。また、2月下旬の山田無償資金協力課長のクウェート・ヨルダン出張については以下のとおり説明した。
(イ) |
クウェートにおいては、サマーワでの案件の調整や輸送事情等の調査を行い、空自の基地も視察した。
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(ロ) |
ヨルダンでは、まず、日独仏総合調整委員会の第一回会合を行った。独がア首連で行おうとしているイラク人警察官の訓練についての協力や、バグダッドに滞在していた独の水分野の専門家との交流等について話し合った。独と仏を比べると、独は比較的積極的で、仏は6月末(政権移譲)までは待つとの感じである。仏との間では文化・スポーツ面の協力があり、例えばアテネオリンピックに向けた協力を模索している。
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(ハ) |
また、ヨルダンでは、JICAの案件形成調査団と具体的な案件の進捗状況につき報告を受け、議論・指示を行った。JICA調査団のローカルコンサルタントの調査、CPA、イラク各省との協議等を通じて、具体的な案件の詳細について相当わかってきている。ヨルダンでは、CPAサウスとCPAバグダッドとも有意義な協議を行った。CPAサウスは、各分野の専門家がバスラからこの協議のためにアンマンを訪れてくれた。例えば、電力分野ではハルサ発電所やイラク南部の電力事情について情報を得た。各分野において、JICAの調査団と具体的な情報交換、意見交換が行われ、今後も引き続き緊密に連絡していくこととなったことはイラク域内における調査が容易でない中で、大きな成果であった。この他、CPAバグダッドと電力分野について、また、バグダッド副市長と簡易浄水設備(コンパクトユニット)やゴミ収集車、バキュームカーについて協議を行った。
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(ニ) |
これと平行して、アブダビにてイラク復興信託基金のドナー委員会が開催された。信託基金がいよいよ発足し、イラク計画開発協力大臣よりは、ドナーへの支援を求める約700件の案件リストが提示された。信託基金における、日本の拠出は最大であり、他国の拠出の呼び水になればと考えている。我が国の大木イラク担当大使がドナー委員会の議長になった。
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(ホ) |
補正予算を今年度内に全て執行することは難しいが、できるだけ発表できるよう詳細の詰めをおこなっている。例えば、電力分野については、どの発電所を手当てするかは詰まっているが発電所の具体的スペアパーツは何かやイラク人技師の研修の必要性・そのための費用をいかに見積もるか等の詳細の詰めがあって、イラク電力省が高い優先度を付している移動式変電車両についても設置場所等の具体的な事項を詰めている。
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(ヘ) |
サマーワでの自衛隊の活動は、未だ本格化したとはいえないが、医官が病院で助言を行っている。浄水活動については試験期間中であるが、まもなく開始されるであろう。ODAによる支援として、給水車12台の供与を決定した他、日本NGOのサマーワ母子病院への保育器等の供与を支援した。また、UNハビタットを通じて学校修復や住宅建設を決定しており、現地で事業開始のための詰めを行っているところである。サマーワにおいては、日本の援助に対する関心が高いが、とにかく、日本が来てくれてよかった、と思われる支援を実施していきたい。また、自衛隊がサマーワを去った後も、サマーワの人々が自らの手で復興開発に努められるよう、中長期的な視点も重視していきたい。
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(委員) |
イラク復興支援に関しては、マスコミにより自衛隊のみがクローズアップされている。復興信託基金のドナー委員会で日本がリーダーシップをとるなど、果している役割が大きく今後の支援に向けてますます期待したい。新聞などマスコミ報道も自衛隊一色ではなく、こうしたODAによる貢献に関して広報に努めるようにお願いしたい。
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2.JICAからの説明
JICAより、閣議請議案件のE/N後進捗状況、コンサルタント選定状況、JICAの組織改編について説明があった。
3.3月閣議請議予定案件に係る説明と質疑応答
(1) |
無償資金協力課より、3月閣議請議予定案件(特に以下の点)につき説明した。
(イ) |
食糧援助
食糧援助には二国間支援及び国際機関(WFP)経由があるが、端的に言えば、基本的に、国際機関経由では、国際機関により食糧が無償で配布されるのに対し、二国間支援では、被援助国政府が食糧を売却し、売却により得られた資金を見返り資金として積み立て、開発のために使用するとの差異がある。また、政府米には、国産米とミニマム・アクセス米(MA米)があるが、政府米を援助米として使用する場合には、国際価格との差額を食糧庁の食糧管理特別会計予算にて補填している。なお、供与決定にあたっては、被援助国の嗜好を調査して拠出している。また、アフリカ等では長期にわたって食糧が不足しており、もっと食糧援助を行うべきであるとの意見が欧米ドナーの間では強い。食糧援助の人道的側面は重要であるが、他の支援とのバランスや被援助国自身の農業生産能力の向上も考慮しなければならない。
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(ロ) |
ノンプロジェクト無償(財政支援)
タンザニアに関して、ノンプロジェクト無償を活用して財政支援を実施する予定である。決定にあたっては財政支援のメリット、デメリットについて議論を重ねた。財政支援は、多くのドナーが援助に取り入れており、PRSPの策定と関連し、新しい援助の潮流となっている。この潮流に乗り遅れずに、日本からも人を出して、積極的に途上国の全体的な開発に口を出していくべきだとする議論がある一方で、財政支援では日本の援助資金の使途が明確にならず、適正使用の確保及び「日本の顔」を見せる観点から問題であり、また、現実問題として本当にドナー委員会等の場で我が国の立場を反映させるだけの人材が豊富に存在するのか等の議論があった。これらメリット・デメリットを総合的に勘案してタンザニアには供与することとしたが、今後財政支援を次々に多くの国で行うことを考えているわけではない。タンザニアの例では、実施後にレビューをして、財政支援の有効性について検証を行う必要があろう。
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(ハ) |
アフガニスタン新生計画(ANBP)に対する支援
アフガニスタンにおいて、元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰を目指すDDRプロセスを支援するものである。アフガニスタンのDDRについては、日本はリーディングカントリーとして積極的に取り組んでおり、日本国内でもJICAの専門家として伊勢崎氏がテレビでも二度取り上げられている。DDRは、政治的に非常に重要であるが、まだはじまったばかりで先の長い話である。アフガニスタン復興支援には巨額の資金が投じられ様々な援助案件が実施されているが、治安の状況は依然厳しく、援助の最前線というにふさわしい。非常に困難ではあるが、我が国ODAを鍛える意味合いもあり、アフガニスタン支援に引き続き積極的に取り組みたい。
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(2) |
その後以下のやりとりがあった。
(委員) |
2点申し上げたい。
(イ) |
アフガニスタンのカブール市内大学機材整備計画については、実習・実験用機材を供与することにより人材育成に資するもので、先方の要請に基づくものと理解するが、IT教育の観点からコンピュータの供与を検討してみてはどうか。日本の大学でもIT教育が議論されており、またITの南北格差の問題も盛んに議論されている。このような状況の中で、一般論として無償資金協力によるコンピューターの供与について如何に考えるか。
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(ロ) |
タンザニアへの財政支援については、基金についてモニタリングに加え、タンザニアの財政全体についても口を出すべく、また、被援助国のオーナーシップを育成するためにも、財政支援と技術協力をセットで行うのがよいのではないか。 |
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(委員) |
タンザニアの財政支援への日本人の積極的関与に関連して、1986年のアフリカにおける干ばつの際に、エチオピアにおいて、各国大使館や国連関係者を集めて開催されたRRCという会議について申し上げたい。自分も数回参加したが、このような場所で「日本の顔」を見せ、同じ志をもつ他のドナーと積極的に協力するという努力が足りないと感じた。日本の援助は立派であるが日本のみ努力しても認められない。財政支援によりドナー社会へ参画し「日本の顔」を見せることに大賛成である。日本人は、良いことをしているときに静かにしていることが多く、日本の支援や主張をPRできる人材を得るのは難しいかもしれないが、いい意味で上手にプレゼンテーションするべきである。
なお、エチオピアのケースでは、地方のニーズについては、エチオピアのNGOから情報収集し、同時に、モニタリングの義務も課していた。また、RRCの事務局長の給料は、英NGOのオックスファームから出ており、オックスファームは人事にも影響力を持っていた。
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(無償資金協力課) |
(ア) |
コンピューターの供与に関しては、大学のみならず多くの要望が寄せられており、実際は悩みの種である。というのはIT技術は日進月歩であり、コンピューターは3年もすれば陳腐化する。一旦供与するのはいいが、更新は誰が行うのか。更新の際にも援助することは援助依存体質を生んでしまうし、援助し続けることはできない。プロジェクトの一部としてコンピューターを供与することはこれまでも行ってきているが、何十台、何百台の供与となると、陳腐化が早いという問題がある。
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(イ) |
財政支援に関連して、日本の顔をみせる、つまり政策を見せるということは重要であるが、ドナー会議でどんどん注文をつけていくには、大使館、JICA等にまだまだ人が足りないとの感じをもっている。タンザニアでは、他のドナーは既に様々な注文をつけており、日本もこれまで意見を出してきたが、今般の支援の実施に当たって、人を追加的に手当てすることも検討している。 |
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(JICA) |
財政支援に関しては、5年ほど前からドナー間で議論が盛んになった。我が国からもJICAの専門家をタンザニアに送り、他のドナーと農業セクターのガイドラインを作成している。日本が財政支援に参加せずプロジェクトしか支援しないとなると、他ドナーから日本は何をやっているのかということになりかねない。また、例えば日本が学校を建設し、他ドナーが教員の給料等経常経費を手当てする場合、日本が目立つところばかりを援助していると現地のドナー間で不協和音が起こりかねない。なお、保健や教育のコモンファンドは各セクターの開発計画を実施するためのファンドであり、タンザニアの財政支援基金は国家全体の計画に関係するものである。
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4.無償資金協力実施適正会議の活動報告
無償資金協力実施適正会議の活動報告書案について委員より若干のコメントがなされた。
最後に、第11回会合は平成16年4月6日(火)に霞ヶ関庁舎にて行うこととした。
別添1
出席者
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I.無償資金協力実施適正会議委員
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1.小川 英治 一橋大学大学院商学研究科教授
2.敷田 稔 アジア刑政財団理事長・元名古屋高検検事長
3.西川 和行 財団法人 公会計研究会会長・元会計検査院事務総長
4.星野 昌子 日本NPOセンター代表理事
5.脊戸 明子 日本外国語専門学校
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II.外務省
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6.山田 彰 経済協力局無償資金協力課長
7.松井 正人 経済協力局無償資金協力課地域第一班長
8.田村 良作 経済協力局無償資金協力課業務班長
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III.国際協力機構
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9.松浦 正三 無償資金協力部長
10.武 徹 無償資金協力部計画課代理
別添2
無償資金協力実施適正会議(3月10日9:30~11:00)議題
場所:霞ヶ関(南庁舎)3階396号室
- 報告事項(外務省)
(1)イラクに対する支援について
→最新状況
→「イラク復興支援のための無償資金協力案件形成促進調査団」の派遣(2月22日~3月1日)
(2)無償資金協力における財政支援について
- コンサルタント契約状況、入札実施状況(JICA)
- 一般プロジェクト無償実施予定案件の説明及び質疑応答(外務省)
- 無償協力実施適正会議の活動報告について(外務省)
以上