ODAとは? ODA評価

ODA評価研究会報告書
「我が国のODA評価体制の拡充に向けて」の提出について

 20世紀後半、国際社会は全体として目覚しい発展を遂げたが、開発途上国は依然として貧困や劣悪な保健・医療制度、紛争や統治の欠如といった様々な課題に直面している。また、感染症や地球温暖化等の環境問題、麻薬などの地球規模で取り組むべき課題が存在している。従って、国際社会は引き続きこうした問題に一致して取り組んでいく必要があり、政府開発援助(ODA)の果たすべき役割は引き続き大きい。その一方で、今後ODA総額が劇的に増加することは期待し得ず、その効果的・効率的な活用が不可欠となっている。特に我が国においては、昨今の厳しい財政状況をも背景として、ODA事業の量的拡大から質的向上への転換による効率性の向上と透明性の確保が強く求められている。

 このような背景の下、ODA評価の役割はますます重要となっている。これは、評価結果を効果的にフィードバックしていくことが、政策の策定から案件形成、事業実施、その後のフォローアップに至る一連のODA実施体制の改善につながる確実なアプローチであることに加え、評価結果をより適切に公開することによって高い透明性を確保し、国民への説明責任を遂行していくことが期待されているためである。また、2001年の省庁再編に伴い、中央省庁に政策評価制度が導入されたこととの関係で、評価についてすでに長年の実績を有するODA評価には各方面から注目が集まっており、評価実施の経験で得られた教訓やノウハウを各方面に提示することが求められている。こうした点を踏まえ、外務省はこれまでの実績に安住せず、ODA事業について、よりよい評価の実施を求める声に真摯に対応していくことが必要であろう。

 外務省の経済協力局長の私的諮問機関として「援助評価検討部会」が1986年に設立されて以来、我が国のODA評価の改善のため、総合的かつ継続的な検討が行われてきた。この部会のもとに1998年末、作業委員会を設置して、ODA評価体制の現状、問題点、課題、改善案等について集中的な議論を行い、2000年3月、「『ODA評価体制』の改善に関する報告書」を取りまとめて外務大臣に提出した。その報告書は、これまでのODA評価の問題点や課題を整理し、改善策を提言しているが、その中の提言の一つとして、後述するいくつかの課題に関して、より具体的・集中的な検討を行うために新たな研究会を設置することを提言した。

 その後準備を進め、2000年7月、援助評価検討部会の下に「ODA評価研究会」を新たに設置した。同研究会は、8回にわたる会合を重ね、(a)政策レベルの評価の導入とプログラム・レベルの評価の拡充、(b)評価のフィードバック体制の強化、(c)評価の人材育成と有効活用、(d)評価の一貫性の確保(事前から中間・事後に至る一貫した評価システムの確立)、(e)ODA関係省庁間の連携の推進、の5つの課題について、外部有職者の専門知識や経験を積極的に取り入れて、専門的、学術的、及び国際的な見地から議論を行った。本報告書は、これらの議論を取りまとめ、我が国ODA評価体制の更なる改善のための提言を提示したものである。なお、同研究会は、学識経験者、経済団体、NGO、国際機関の関係者等が委員として参加したほか、ODA関係17省庁及び会計検査院がオブザーバーとして積極的に議論に参加するという画期的なものとなった。

 この報告書が我が国ODA評価体制の改善、さらにはODAの更なる向上に資することを期待する。

平成13年2月

援助評価検討部会

部 会 長 河合 三良 (国際開発センター会長)
中村 清 (前田建設工業名誉会長)
中根 千枝 (東京大学名誉教授)
廣野 良吉 (成蹊大学名誉教授)
小浜 裕久 (静岡県立大学教授)
ODA評価研究会委員長 牟田 博光 (東京工業大学大学院教授)
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