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2.1 政策レベルの評価の導入及びプログラム・レベルの評価の拡充
委員の報告と外務省委託調査「政策レベル及びプログラム・レベルの評価に関する手法研究調査」の北米・欧州地域における調査結果、バングラデシュにおける試験的適用に関する調査報告を受けて議論・検討した。議論の主要なポイントと今後の課題は、以下のとおりである。
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1) 政策・プログラムレベル評価の早期導入・拡充の必要性について、研究会参加者の認識が一致
2) 政策・プログラムレベル評価については、国際的に統一された具体的手法は未確立。我が国ODAに適した評価手法と体制の確立が重要
3) 援助政策、国別援助計画、プログラム、プロジェクト等の体系図が、事前段階から設定されていることの必要性。指標設定やモニタリング方法の明確化も大切
4) 評価に一貫性を持たせるため評価手法・手順に関する標準的なガイドライン、マニュアル、雛型等の整備
5) 他のドナーや国際機関との協力による合同評価の利用と拡充
6) 上位レベルの評価を効果的に行うための、援助国・被援助国双方の評価能力の向上
7) 上位レベルの評価における十分な準備・予算的手当の必要性
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2.2 評価のフィードバック体制の強化
委員の報告及びOECD・DAC東京ワークショップ(2000年9月末開催)での議論の報告等を踏まえて、我が国のODA評価フィードバック体制の改善について議論・検討した。議論の主要なポイントと今後の課題は、以下のとおりである。
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1) 評価を効率的かつ効果的にフィードバックするメカニズムの構築。例えば、援助機関内に、意思決定者(組織の長又は同委任を受けた者、以下同じ)を長とし、企画部門、事業部門及び評価部門のメンバーから構成される常設の「評価フィードバック委員会」(仮称)等、適切なフィードバックができるしくみの整備が有効
2) 評価部門だけでなく意思決定者や企画部門及び事業部門における更なる意識改革の必要性。評価によって得られた教訓・提言等に基づいて、政策、事業計画等を改善するという評価の目的を明らかにし、評価の重要性の再確認
3) 事業の様々な段階、特に事業開始からの早期の段階でのフィードバックの強化
4) 評価結果の情報を共有するシステムとして、外務省、JICA、JBIC、ODA関係省庁が連携して「評価データベース」を整備することの有益性。第一歩として、関係省庁間における既存データベースの相互活用による連携強化
5) 個々の援助機関単体の枠を超え、組織横断的で効率的・効果的なフィードバックの推進を図ることが重要。そのため、援助機関による連絡会議の設置
6) 評価結果の公開を一層推進して我が国国民に対する説明責任(アカウンタビリティ)の確保。解りやすく迅速な評価結果の公表を実現するため、インターネット等の活用
7) 被援助国側への評価結果に関するフィードバックの徹底
8) フィードバックの質的向上及び透明性確保のため、民間(有識者、シンクタンク、NGO、企業等)及び被援助国側からの評価活動への参加推進
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2.3 評価人材の育成と有効活用
委員の報告、外務省委託調査「評価人材の育成及び有効活用に関する調査研究」の調査結果を踏まえて議論・検討した。議論の主要なポイントと今後の課題は、以下のとおりである。
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1) 評価人材育成を通じ、援助機関における評価体制の改善と能力向上を図ることの重要性
2) 高等教育・研究機関との連携推進、研修プログラムの拡充。さらに、国際機関及び他国援助機関における先進的評価手法・事例を学ぶため、評価人材の派遣交流の推進
3) 日本評価学会(2000年9月設立)等の専門学術機関を通じた評価に関する知識・技術の向上、及び各専門分野の知識を有する人材の確保と育成の必要性
4) 援助機関等が評価の重要性を認識し、評価市場(参加機会)の拡大を目指すとともに、十分な評価予算の確保
5) 援助機関内部だけでなく外部の評価人材育成にも注力し、アウトソーシング推進により効率的な評価活動を実現するとともに、透明性も確保
6) 評価人材のデータベースを開発することによる人材の有効活用
7) 国家公務員や一般企業に所属する評価人材をより有効に活用するために、インセンティブの拡大が必要
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2.4 評価の一貫性の確保
(事前から中間・事後に至る一貫した評価システムの確立)
JICA、JBICの報告を踏まえて議論・検討した。議論の主要なポイントと今後の課題は、以下のとおりである。
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1) 事前段階において、目的、指標、達成目標、評価計画、フィードバックのあり方を網羅した「事前評価表」を作成することの有効性
2) JICA、JBICで行われている試みの問題点をレビューし、それを踏まえて具体的かつ標準的なガイドラインを作成することの意義の確認
3) 評価における定量的かつ定性的な手法の相互補完とバランスの重要性
4) 外務省、JICA、JBIC及びODA関係省庁の異なる組織間における一貫性確保の必要性
5) 事前から中間・事後に至る指標・達成目標設定のあり方や評価計画策定、フィードバックの活用状況等に関し、適切なクォリティ・コントロールを行うことが重要
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2.5 ODA関係省庁間の連携推進
本研究会のオブザーバーであるODA関係17省庁と会計検査院によるODA関連事業及び評価活動の概要、評価活動を実施する場合の懸案事項等を取りまとめ、議論・検討した。議論の主要なポイントと今後の課題は、以下のとおりである。
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1) ODA関係省庁間の関連事業、評価活動に係る現況把握及び懸案事項の確認
2) ODA関係省庁の評価体制・能力の向上のためには一層の連携強化が必要
3) 今後の連携強化に当たっては、引き続きODA関係省庁間の意見交換・議論の場を設置し、定期的に会合を開催していくことの重要性
4) ODA関係省庁間における評価活動・成果についての情報共有・情報交換の体制づくり
5) 関係省庁による合同評価の実施、評価セミナーの合同開催、各省が活用できる標準的なガイドライン、マニュアル、雛型の作成等、具体的な連携活動の実施
6) 各種重要課題の検討。これらについての議論・検討を継続する必要性(以下、例示)
- 政策・プログラムレベル評価の導入に向けた体制整備、手法研究等
- 援助国側の国益等援助方針・計画等に必ずしも盛り込まれない事項に対する評価方法、評価の観点等についての検討
- 専門家派遣、研修生受け入れ事業等の評価手法の検討
- フィードバック活用のしくみ