ODAとは? ODA評価

ODA評価研究会報告書
「我が国のODA評価体制の拡充に向けて」
1.ODA評価研究会の設置と活動概要

1.1 背景と研究会の設置
(1)背景

 我が国の政府開発援助(ODA)は、被援助国側のニーズへの対応を一層重視し、貧困・人口・地球環境等の課題について他ドナーとの連携を強化する等の多様化が求められており、一方、国内では昨今の厳しい財政状況を背景として、顔の見える援助、ODA事業の量的拡大から質的向上への転換と透明性の確保が強く求められている。また、2001年1月から政府関係省庁による政策評価を導入するための準備も進んでいる。

 このような背景の下、ODA評価の役割はますます重要となってきている。これは、評価のフィードバックを活用して、政策決定から、計画作成、審査、事業実施に至るODA実施体制の強化を図ることが、ODA事業全体の改善につながる確実なアプローチであり、さらに評価結果をより適切に公開することによって説明責任及び透明性の確保に資するものと期待されているためである。

 外務大臣の懇談会として1997年4月に発足した「21世紀に向けてのODA改革懇談会」は、1998年1月に発表した最終報告書において、より効率的・効果的なODA実施体制を構築するためには「ODA評価システムの確立」が重要な課題であるとして、第三者による評価の一層の拡充、評価手法の開発、政策決定部門と援助実施部門の評価に係わる役割分担の明確化、フィードバックの強化等について改善の余地があることを指摘した。

 これを受けて、外務省経済協力局長の私的諮問機関である「援助評価検討部会」(部会長:河合三良国際開発センター会長、1986年設置)は、同部会の下に「評価研究作業委員会」(委員長:牟田博光東京工業大学教授)を設置した。同委員会は、ODA評価体制の現状、問題点、課題、改善案等について検討を行い(1998年11月~1999年12月)、2000年3月には「『ODA評価体制』の改善に関する報告書」を取りまとめ、河野洋平外務大臣に提出した。

 この報告書は、現行のODA評価の問題点と課題を体系的・包括的に議論し、改善策について提言を行っているが、その中の提言の一つとして、評価手法の更なる改善、政策・プログラムレベルの評価導入等の課題に関してより具体的・集中的な検討を行うために新たな「ODA評価研究会」(仮称)の設置が提言された。

(2)研究会の設置

 「『ODA評価体制』の改善に関する報告書」の提言を受けて外務省を中心に準備が進められ、2000年7月17日に援助評価検討部会の下に、「ODA評価研究会」(委員長:牟田博光東京工業大学教授)が設置され、第1回会合が開催された。

 本研究会は、「評価研究作業委員会」の成果に基づいて提示されたODA評価改善に関する課題のうち、以下の5つの課題について、特に外部有職者・専門家の専門知識・経験を積極的に取り入れ、専門的、学術的、及び国際的な見地から議論・検討を行い、ODA評価改善のための提言を行うことを目的としている。

(a) 政策レベルの評価の導入とプログラム・レベルの評価の拡充
(b) 評価のフィードバック体制の強化
(c) 評価の人材育成と有効活用
(d) 評価の一貫性の確保(事前から中間・事後に至る一貫した評価システムの確立)
(e) ODA関係省庁間の連携の推進

 なお、研究会には、評価分野の専門家、国際機関、学識経験者、経済団体、非政府組織(NGO)の関係者の他に、援助機関からは外務省、国際協力事業団(JICA)、国際協力銀行(JBIC)の関係者が委員として、さらにODA関係省庁と会計検査院の関係者がオブザーバーとして参加している。

 本研究会の委員及びオブザーバーを表1に示す。


表1 ODA評価研究会委員及びオブザーバー 一覧

委員長 牟田博光 東京工業大学教授
委員 高千穂安長  玉川大学教授
荒木光彌 国際開発ジャーナル社編集長
山谷清志 岩手県立大学教授
森 茂子 日本大学教授
野田由美子  プライスウォーターハウスクーパースパートナー(共同経営者)
工藤高史 経済団体連合会国際協力本部副本部長
神田浩史 関西NGO協議会提言専門委員
長谷川祐弘  UNDP東京事務所駐日代表
中村修三 世界銀行東京事務所長
三好皓一 JICA企画評価部評価監理室長
佐藤活朗 JBICプロジェクト開発部開発事業評価室長
村田 修 JBIC開発業務部業務課長
白川光徳 外務省経済協力局評価室長
オブザーバー  伊藤茂男 警察庁国際部国際第一課長
若生俊彦 総務庁行政監察局政策評価等推進準備室長
宮崎修二 経済企画庁経済協力第二課長
能見利彦 科学技術庁科学技術振興局国際交流推進室長
田口博之 環境庁地球環境部環境協力室長
堀嗣亜貴 法務省大臣官房秘書課企画室長
木原隆司 大蔵省国際局開発政策課開発企画官
小山内優 文部省学術国際局教育文化交流室長
遠藤弘良 厚生省大臣官房国際課国際協力室長
田原高文 農林水産省経済局国際協力計画課長
通商産業省経済協力部経済協力課長
鶴谷祐二 特許庁総務部国際課地域政策室長
尾澤克之 運輸省運輸政策局国際業務第二課長
田中謙治 郵政省大臣官房国際部国際協力課長
恒川謙司 労働省労働大臣官房国際労働課長
木下誠也 建設省建設経済局国際課長
佐々木 淳  自治省大臣官房国際室長
田代政司 会計検査院第一局外務検査課長
事務局 石田洋子 (株)コーエイ総合研究所次長
岡田卓也 (株)コーエイ総合研究所主任研究員
山寺雅博 (株)コーエイ総合研究所研究員
省庁名及び部署名等は、平成12年12月時点のもの。

1.2.活動概要
 本研究会の会合は、第1回を2000年7月17日に開催し、以降ほぼ毎月1回、合計8回にわたって開催された。

 第1回から第8回までの開催スケジュールと主要議事は、表2のとおりである。


表2 ODA評価研究会会合実施状況

  開催日時(場所) 主要議事
第1回 2000年7月17日(月)
午後3時~5時
(外務省会議室)
・ 本研究会の活動方針・スケジュール等
・「政策レベル及びプロジェクト・レベル評価の手法等に関する調査研究」概要・進捗状況(調査団報告)
第2回 2000年7月31日(月)
午後3時~5時
(外務省会議室)
・政策レベル、プログラム・レベルの評価に関する問題点と対応策(山谷委員)
・政策レベル及びプログラム・レベルの評価手法の提案(調査団報告)
・フィードバック体制の現状と改善案(高千穂委員)
第3回 2000年8月22日(火)
午後3時~5時
(外務省会議室)
・政策レベル及びプログラム・レベルの評価に対する考え方
・フィードバック体制強化に関する提言(牟田委員長、高千穂委員)
・「評価人材の育成と有効活用に関する調査」の概要・進捗状況(調査団報告)
・国際機関における評価人材の育成について(森委員)
第4回 2000年9月7日(木)
午後3時~5時
(外務省会議室)
・DAC東京ワークショップの概要
・本研究会における議論の中間整理
・本研究会の今後の進め方について
第5回 2000年10月13日(金)
午前10時~12時
(霞ヶ関ビル会議室)
・DAC東京ワークショップの結果報告
・ODA関係省庁によるODA活動及び評価活動に関する説明(各省庁担当者による発表)
第6回 2000年11月14日(火)
午後3時~5時
(霞ヶ関ビル会議室)
・ODA関係省庁のODA評価活動状況取りまとめと連携の方向性
・評価の一貫性(JICA三好委員、JBIC佐藤委員)
・評価人材の育成と有効活用について(森委員)
第7回 2000年12月5日(火)
午後3時~5時
(外務省会議室)
・「政策レベル及びプログラム・レベルの評価の手法等に関する調査研究」調査概要報告(調査団)
・「評価人材の育成及び有効活用に関する調査研究」調査概要報告(調査団)
・ODA評価研究会報告書項目(案)検討
第8回 2000年12月19日(火)
午後3時~5時
(外務省会議室)
・「ODA評価研究会報告書」(案)の検討
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