重点政策・分野別政策 分野別開発政策

人間の安全保障シンポジウム
「人間の安全保障:力強い個人と明るい未来を築く」
(概要と評価)

平成25年6月3日
外務省地球規模課題総括課


 6月2日,TICAD Vの機会に「人間の安全保障シンポジウム」が開催されたところ,その概要及び評価は以下のとおり。安倍総理,岸田外務大臣,ハイレマリアムAU議長,サーリーフ・リベリア大統領,クラークUNDP総裁,チャンWHO事務局長,レークUNICEF事務局長,緒方外務省顧問,高須国連事務次長,ラマムラAU平和安全委員などのハイレベルを始め,約250名が参加した。

 なお,TICAD Vを通じ人間の安全保障は重要なテーマとして位置付けられ,成果文書である横浜宣言においても,人間の安全保障の推進がTICAD Vを支える包括的指針とされるとともに,人間の安全保障に基づく効果的なポスト2015年開発目標の策定を目指すことが確認された。また,TICADの全体会合及びテーマ別セッション並びに本シンポジウムのほかにも,ソマリア特別会合,世銀・UNDP共催防災セッションなど,様々な機会に人間の安全保障の重要性が強調された。

  1. 評価

    • (1)人間の安全保障について,理念の形成過程やアフリカ開発の現場における実践などを含め,幅広く充実した議論が行われ,人間の安全保障に関する理解の促進が図られた。開発の正念場であるアフリカや国際機関の関係者を含めて議論を行うことにより,2012年9月にコンセンサス採択された人間の安全保障に関する国連総会決議(人間の安全保障の共通理解に合意したもの)の実施に寄与した。
    • (2)保健を切り口に人間の安全保障の有用性について議論が行われ,人間の安全保障が,様々な課題に各組織の垣根を越えて包括的に対処することを促す実践的な理念であるとの認識が深まった。
    • (3)将来の国際協力を形づくることとなるミレニアム開発目標の後継枠組み(ポストMDGs)について,人間の安全保障に基づく効果的な枠組みとすべきとのメッセージを発出し,ポストMDGsの策定に向けた努力に寄与した。
  2. 概要

    • (1)開会挨拶(安倍総理及びハイレマリアムAU議長)

      • 安倍総理が冒頭挨拶を行い,人づくりが国づくりの基本となるとの観点から,関係者が協力して,アフリカにおける人間の安全保障の推進とアフリカ全体の発展の実現を目指すことを呼びかけた。また,日本として国際保健外交戦略を策定し,国際保健を安倍外交の重要課題と位置付け,全ての人が基礎的保健医療サービスを受けられるよう,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進していく旨述べた。(全文(日本語(PDF:68KB)),(英語(PDF:49KB)))
      • 続いて,ハイレマリアムAU議長が,国や領土の安全保障だけではなく,社会面,経済面,環境面等あらゆる面で一人ひとりの安全が保障されることこそが重要であり,人間の安全保障がAUの行動及び政策の指針となり,多くのパートナーと共に取り組んでいくことで,アフリカにおいて人間の安全保障が進展していくと信じる旨述べた。
    • (2)人間の安全保障の推進に関する議論

       続いて,岸田外務大臣の議長の下,パネル討論が行われた。

      • サーリーフ・リベリア大統領から,国連事務総長が設置したポスト2015年開発目標に関するハイレベル・パネルの共同議長の立場から,人間の安全保障のアプローチが,貧困撲滅,全ての基礎的サービスへのアクセスを保証するために有効であると述べ,また人間の安全保障が能力強化を重視する点に触れ,安倍総理が6月1日のTICAD V開会式で発表した人材育成のための「安倍イニシアチブ」に対する賛辞を述べた。(全文(英語(PDF:29KB)))
      • クラークUNDP総裁から,国連開発グループの議長の立場から,人間の安全保障の概念は,UNDPの活動と密接に関連しており,日本も拠出する人間の安全保障基金のプロジェクトの実施の経験から,人間の安全保障のアプローチがコミュニティの強化,格差是正等に実際に効果的である旨述べた。(全文(英語他のサイトヘ))
      • 緒方外務省顧問から,国連難民高等弁務官の経験から人間の安全保障が実践的な概念であることを認識した旨述べつつ,5月8日に国連で開催された人間の安全保障に関するハイレベル・イベントや国連人間の安全保障基金の活動など,人間の安全保障の取組は進展しているが,人間の安全保障を推進していくために一層の取組が必要である旨述べた。(全文(日本語(PDF:81KB)),(英語(PDF:70KB)))
      • ラマムラAU平和安全保障委員から,国連人間の安全保障諮問委員の立場から,人間の安全保障基金プロジェクトが最も多く実施されている地域はアフリカであるが,これらプロジェクトの一層の推進には資金の動員が必要である旨述べ,国際社会からの拠出を呼びかけた。
    • (3)人間の安全保障の実践に関する議論(保健を切り口に議論)

      • チャンWHO事務局長から,保健は人間の安全保障の実現に不可欠な分野であるとしつつ,現在のMDGsでは言及されていない新たな疾病等への対応のためにもユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進が重要であり,またUHCは人間の安全保障の実現にとって重要な手段である旨述べた。
      • NGOを代表し,ダレCHESTRAD・CEOから,保健システムの脆弱性や人材の不足などの保健分野の課題を指摘しながら,UHCの実現のためにはポスト2015年開発目標の中に人間の安全保障の理念を盛り込み,取り組んでいく必要がある旨述べた。(全文(英語(PDF:119KB)))
      • レークUNICEF事務局長から,一人ひとりの安全が確保されてこそ,真の安全保障であると述べ,ニジェールでの保健分野の実例を挙げながら,特に貧しい子供たちに対する投資が最も効果的であり,人間の安全保障のアプローチによって救っていく必要がある旨述べた。(全文(英語(PDF:157KB)))
    • (4)オープン・ディスカッション

      • 続いて,高須国連事務次長の議事進行により,フロアとの間でオープン・ディスカッションが行われ,チュニジア外相,UNFPA事務局長,UNODC事務局長,国連難民高等弁務官等から発言があるなど,活発な議論が行われた。
    • (5)閉会挨拶(岸田外務大臣)

      • 岸田外務大臣が閉会挨拶を行い,今回のシンポジウムで保健を切り口に具体的な議論を行ったことを通じ,人間の安全保障が実践的な理念であることについて理解が深まったこと,人間の安全保障を通じ様々な関係者の連携や効果的な開発が可能となることを述べるとともに,人間の安全保障に基づくポストMDGsの策定に向け取り組むことを呼びかけた。(全文(日本語(PDF:58KB)),(英語(PDF:44KB)))

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