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姉妹城提携 姫路市とオーストリアを繋ぐ音楽の架け橋
兵庫県姫路市文化国際課
1 はじめに


姫路市は兵庫県南西部に位置し、世界遺産である姫路城や西の比叡山とも称される
2025年5月、オーストリア共和国のシェーンブルン宮殿と姫路城との間で姉妹城提携が締結されました。姫路城の姉妹城提携としては、フランスのシャンティイ城、イギリス・ウェールズのコンウィ城、ポーランドのヴァヴェル城に続き4例目となります。本稿では、このたびの締結式の様子や、本市の国際戦略についてご紹介します。
2 提携の経緯
2024年春、オーストリア政府関係者から姉妹城提携について本市へ提案があり、同年11月、姫路市長をはじめとする訪問団がシェーンブルン宮殿を訪問し、姉妹城提携について基本合意を交わしました。その後、正式提携について協議を進め、2025年5月24日、姉妹城提携締結式を開催するに至りました。
3 締結式と歓迎レセプションの概要

締結式は、姫路城西の丸庭園に設置した特設会場にて開催し、シェーンブルン宮殿管弦楽団のメンバーによる演奏とともに開会しました。大阪・関西万博で来日されたアレクサンダー・ファン・デア・ベレン・オーストリア共和国連邦大統領ご臨席のもと、シェーンブルン宮殿を所管するヴォルフガング・ハットマンスドルファー経済・エネルギー・観光大臣と清元秀泰姫路市長が、姉妹城提携に関する共同声明に署名。姫路市とオーストリア政府が相互理解を深め、末永く交流することを確認しました。
締結式の後に開催したレセプションでは、「音楽の都」ウィーンにあるシェーンブルン宮殿と姉妹城提携を結んだことを契機として、2027年に「姫路国際ヴァイオリンコンクール」を創設することを発表。レセプションには、大統領をはじめ、多くの政府関係者や播磨圏域の首長等が参加。和やかな雰囲気の中で両国の親睦を深めました。
4 大阪・関西万博をチャンスと捉えて
2025年は万博開催年ということもあり、海外から多くのゲストが日本を訪れます。シェーンブルン宮殿との姉妹城提携締結式に、オーストリアの大統領をお招きすることができたのは、大阪・関西万博の開催期間であったこと、姫路城が類まれな美しさを有する世界遺産であったこと、という好条件が揃っていたからにほかなりません。
地方都市にとって、国家元首をお迎えするということは、そうそう経験できる機会ではありません。姉妹城提携そのものや、姉妹城提携から派生する芸術・文化・スポーツ・観光など多様な分野で交流が拡がっていくことが、提携の本来の狙いですが、大統領が自ら本市を訪れたいと思われ、足を運んでいただいたこと自体が「国際会議観光都市ひめじ」の価値を高め、認知度を向上させることに繋がるため、本市にとって大変意義のある訪日であったと感じています。
今後とも本市から、より多くの情報発信ができるよう、万博開催をチャンスと捉え、できるだけ多くの国の方々を姫路にお迎えしたいと考えています。
5 提携の先を見据えた国際戦略 提携に意味を持たせる
先に紹介した「姫路国際ヴァイオリンコンクール」の創設は、本市の歴史的・文化的背景があってのものです。
本市では、播磨ゆかりの世界的ヴァイオリニスト・樫本大進さんが音楽監督を務める「ル・ポン国際音楽祭 赤穂・姫路」を毎年開催しているほか、市内に新たに誕生した文化コンベンションセンター・アクリエひめじへの「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の公演誘致」といった実績がありました。
このことは、シェーンブルン宮殿と姉妹城提携を結ぶことの意義にも通じるほか、例えば、姫路国際ヴァイオリンコンクールの優勝者にシェーンブルン宮殿での演奏権を与えることも検討できるようになるなど、姉妹城提携が本市に新たな魅力を生み出すことへも連鎖していきます。
姉妹城提携を結ぶこと自体が目的ではなく、提携を結んだその先に、どのような強い施策や、メッセージ性を持たせることができるか、その視点を持つことが、都市としての魅力や認知度の向上に繋がると考えています。
6 姫路市が国際交流に懸ける思い バックキャスティング的思考
私たちは、少子高齢化や人口減少が加速し、国内市場が縮小していく中で、自治体が持続可能な発展を遂げていくためには、自らの認知度や価値を向上させ、地域の活力を維持・拡大していくことが求められるとの考えに立っています。
本市は、世界文化遺産・国宝姫路城を擁することで、現在、国内外より多くの観光客の皆さまにお越しいただいておりますが、これが未来永劫続くとは限りません。30年、50年先を見据えた時の本市の存在価値から逆算して、今から持続可能なまちづくりに取り組んでおくことが重要です。
50年先の未来で、本市が世界から選ばれて、国際的な発展を遂げられるよう、今後とも戦略的な国際交流に力を注いでいきたいと考えています。