グローカル外交ネット
ガーナと猪苗代町を結ぶ絆に寄せて
在ガーナ日本大使館特命全権大使 義本博司
1 野口英世博士が結ぶ日本とガーナ

チョコレートのブランド名から「ガーナ」というアフリカの国を知らない日本人はほとんどいないでしょう。同様に野口英世博士ほどガーナ人に敬愛されよく知られている日本人はほとんどいないと言っても過言ではありません。
1927年に黄熱病の研究のためにガーナを訪れ、翌年不幸にして黄熱病に感染し亡くなった野口英世博士です。日本の援助で設立された「野口記念医学研究センター」は、ガーナのみならず、西アフリカの感染症の研究や専門家の育成、感染症対策の拠点となっています。エボラ出血熱の感染対策で実績を上げたほか、最近では新型コロナウイルスの検査に関し、拡大初期にガーナ国内の8割を担ったことでも知られています。大統領はガーナと日本との長期にわたる友好親善の関係を語るとき必ず、野口英世博士に言及します。
野口英世博士の生誕の地である福島県猪苗代町も、ガーナに親近感を感じていただいています。東京オリンピック(2021年)の際には、ガーナ選手団のホストタウンとして受け入れを行うとともに、ガーナから農業実習生を受け入れました。また、ガーナの高校生の交流事業に関し猪苗代町が受け入れ先の一つになっています。ガーナでも、野口博士の生誕の地の猪苗代町に特別な想いを寄せており、歴代大統領が訪日の際に猪苗代町を訪問したり、駐日ガーナ大使も度々猪苗代町を訪問されたりしています。
2 赴任前の猪苗代町訪問

私は、猪苗代町でのガーナとの結びつきを肌で感じようと思い、ガーナに赴任する直前の令和6年11月17日、18日に猪苗代町を訪問し、町長をはじめ町幹部と意見交換を行い、野口英世博士ゆかりの記念館を訪問しました。
(猪苗代町役場訪問)
二瓶盛一町長、渡辺昭副町長、宇南山忠明教育長らと懇談させていただきました。私の赴任前の訪問を歓迎いただくとともに、野口英世記念医学賞表彰、青少年作文コンクールなど故郷の英雄である野口博士に因む町の様々な活動の紹介がありました。
更に、猪苗代町では、駐日ガーナ大使館を通じて、ガーナの自治体との間で姉妹都市を結ぶことを検討しており、現在ガーナ側でカウンターパートとなる町を選定中であることを伺いました。2026年には野口博士生誕150周年を迎えるので、記念イベントを考えていること、その中核的な事業として青少年交流などを検討しているが、企業等の支援があればありがたいなどの要望がありました。また、姉妹都市の提携ができれば、町長自らがガーナを訪問したい旨のお話を頂きました。
私からは、猪苗代町の意欲的な取組や構想を歓迎するとともに、記念イベントの実施や姉妹都市との連携に関し、さまざまなチャンネルを通じてサポートを検討していきたい旨の話をしました。

(野口英世記念館)
次に、野口英世記念館に伺い、野口博士の幼なじみで親友(八子弥壽平氏)の孫に当たる八子弥寿男館長に案内頂きました。ここには、博士が火傷を負った囲炉裏がある生家が保存されているとともに、博士の生涯や研究の軌跡、母シカの手紙、素顔の野口博士の生活が、大変わかりやすく展示されていました。
ここは、教育博物館として、県内、東北各地の学校から多くの生徒が訪れる場所になっています。ガーナでも野口英世博士記念館がありますが、その活動の充実のためにも、猪苗代町の記念館は大変参考になり、ガーナの記念館との連携や交流を図ることができればと感じました。
(猪苗代町の魅力)
猪苗代町には、まさに日本の魅力そのままを伝える、豊かな自然や歴史、魅力的な産物があり、こうしたものもガーナに伝えることができればと感じました。紅葉で彩られた雄大な磐梯山とそれを湖面に移す猪苗代湖、徳川の文治政治を確立した保科正之公を祀る土津(はにつ)神社、新種品評会金賞の銘酒「七重郎」など、何度も足を向けたくなる魅力が満載です。
3 日本とガーナの交流の更なる発展に向けて
2027年は日本とガーナにとって3つの記念年を迎えます。野口英世博士ガーナ訪問100周年、日本ガーナ国交70周年、海外協力隊ガーナ活動開始50周年です。
野口博士生誕150年(2026年)と合わせて、記念年2027年に向けて、猪苗代町との連携協力はもちろん、様々な方々の御支援や御協力を仰ぎながら、日本とガーナの交流の絆が更に深まるような活動や事業を検討していきたいと思います。