グローカル外交ネット

令和7年1月7日

赤磐市教育委員会 社会教育課(スポーツ振興班)

写真1 小学校でのホッケー教室

 岡山県赤磐市とカナダフィールドホッケー連盟との交流はコロナ禍で行われた東京五輪事前キャンプ受入れを機に始まりました。元々は、カナダ以外のホッケーチームの事前キャンプを受け入れる準備をしていましたが、そのチームは直接東京入りすることを決め、当市での事前キャンプは叶いませんでした。同じころ、事前キャンプの受け入れ先を失ったカナダ男子代表チームがキャンプ先を探しているという連絡が入りました。コロナ禍における厳しい行動制限などがある中でのギリギリの決定でしたが、オリンピック開幕4週間前にカナダ男子チームの事前キャンプ受入れが決まりました。

 それからのご縁で東京五輪の翌年2022年から毎年、マスターズ代表選手や元女子代表選手を招き、交流してきました。2023年には男子代表チームが再来市。東京五輪事前キャンプでは厳しい行動制限のため、地域の人たちや子どもたちと交流する機会はもてませんでしたが、ようやく直接交流が叶ったうれしい出来事でした。その際、カナダフィールドホッケー連盟は選手たちが地域住民と交流することの意義をよく理解してくださいました。
 翌年の2024年に女子チームが来市した際には、競技強化プログラムと同じように市民との交流を重視してくれ、7泊8日の強化キャンプでは毎日、市民と交流しました。10月中旬に実施しましたが、30℃を超える日もあり、試合や練習の後、さらに交流するとなると体力的に大変かな、と心配しました。しかし選手たちは、交流タイムになるとパワーアップ。チームマネージャーは「選手たちは地元の人たちとふれあうと元気になるみたい」と驚いた様子で、選手たちも「海外遠征にきて地元の子どもたちと交流できたのが一番の思い出」と言ってくれました。

 市内の幼稚園や小学校でのホッケー教室では、選手たちが事前に調べた簡単な日本語(「いいね!」「やってみよう」など)を使って積極的に子どもたちに話しかけたり、ハイタッチや拍手などで共に喜んだり、笑顔あふれる時間となりました。小学6年生の児童から、「くじけそうになることはある?その時はどうするの?」という質問に、選手たちは「そんな時はチームメイト、家族、友だち、支えてくれている人がたくさんいること、ひとりではないことを思い返します。」「自分の気持ちや状況を人に伝えることはとても大事です。」「皆さんが私たちとの交流をこんなに喜んでくれたことは、これからの支えになります。」と答えてくれました。

写真2 親善試合後の市民交流

 キャンプ期間中、カナダの選手たちは、市民交流のほか、来日中のニュージーランドU21女子代表チームとの親善試合も実施しました。試合は岡山県ホッケー協会の協力のもと、県内の中高生選手がボールパトロールなどの競技補助をしました。地元の子どもたちにとっては、いつも練習で使用している競技場に、国の代表が来て練習や試合をしているという、夢のような光景です。試合後には短時間でしたが、中高生選手はカナダやニュージーランドの代表選手たちを相手にミニゲームを実施し直接対決して、代表選手の技とスピード、自分たちとの差を感じることができました。

 親善試合後には幅広い年齢層の地域住民との交流ができました。未就学児を連れて観戦にきた親子、平日に学校で交流をして「また選手に会いたい」と来場した小中学生、カナダが好きで選手に会いにきたという一般市民、80歳以上の岡山マスターズチームで活動する選手、カナダとニュージーランドから娘の活躍を観に来ていた家族など、大勢が青い人工芝の上で体を動かし、会話をしながら交流しました。

写真3 歓迎式で園児からメダルのプレゼント

 代表選手と交流する市民は、ホッケーという競技の難しさや楽しさを体験すると同時に、代表選手の技やスピードを目の前で観て感じることができます。かけっこや遊びを通して体を動かしながら交流することで、言葉の壁を越えてコミュニケーションを楽しむことができます。また、競技のことだけでなく、トップアスリートや指導者の考え方や生き方に触れ刺激を受けることもできます。東京五輪をきっかけに継続しているホストタウン交流は、ホッケーという競技を通じて、異文化に接する機会とその楽しさを感じるだけでなく、ひたむきに努力を続けるアスリートの姿や、彼らの優れた技術や人間性に憧れを抱き、新たな目標を見つけるきっかけにもなっているように感じます。

 また代表選手にとっては、練習場と宿舎の往復だけでなく、地元の人たちと触れ合うことで、代表チームで活動する意味を再認識したり、大変な練習から少しほっとする時間を持てたりするようです。赤磐市民を通じて、「日本」を感じ、「日本って想像していた以上に素敵なところ」「今度は家族を連れてきたい」と言って母国に帰っていきます。赤磐市民は「日本大使」となり、選手やチームスタッフは「カナダ大使」として、お互いの国を知り、さらにお互いを好きになって、スポーツを通じての国際理解や友好関係が構築されています。

 ホストタウン交流を通じて、赤磐市ではカナダファンが年を追うごとに増えています。カナダフィールドホッケー連盟では、男女やシニア、ジュニアの枠を超えて海外遠征の拠点のひとつとして赤磐市が候補に挙がっており、日本で頼るなら赤磐市にまずはコンタクトを取ろうという関係を築けているのは大変喜ばしいことです。今後もカナダのホッケーの選手たちと友好関係を継続し交流を続けていきたいと心から願っています。

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