グローカル外交ネット
神戸とリオデジャネイロをコーヒーでつなぐ
神戸市市長室国際部国際課
1 はじめに
本年5月、神戸市とブラジルのリオデジャネイロ市が姉妹都市を提携してから55周年を迎えました。神戸とブラジルってどのような関係があるのかと思われるかもしれませんが、実は歴史的に深い繋がりがあるのです。
2 神戸とブラジルの歴史

明治以来、当時の日本政府は人口問題などの解決のために積極的に日本人の海外への移住政策をとりました。この政策によって多くの日本人が中南米へ渡りましたが、1908年、日本からブラジルへの最初の移民船である笠戸丸の出航した地が神戸港でした。また、神戸市には、1928年に移住者のための出国手続きや健康診断のほか、移住地の言語、宗教、地理、風俗、農業事情などの必要な知識を身につけることを目的とした「国立神戸移民収容所」が設立され、神戸から約20万人がブラジルへ移住していきました。
この歴史は神戸市とブラジルの深い関係性を特徴づけるものであり、この建物は現在、「海外移住と文化の交流センター」として一般に公開され、移住ミュージアムとして移住の歴史を伝える施設となっています。このセンターには、多くの日系移民や、その子孫の方々が彼らのルーツを辿るため来訪し、その当時の写真を見て涙を流す方もおられます。
3 リオデジャネイロ市との姉妹都市提携
このような神戸とブラジルの歴史的な繋がりもあって、リオデジャネイロ市(当時グアナバラ州)から神戸市に姉妹都市提携の申し入れがあり、神戸市として、両市市民のみならず広く日本・ブラジル両国民の友好の促進に大きく貢献するものとの考えから、1969年、この申し入れを受諾することとなりました。
これ以降、市長や市幹部の相互訪問のほか、リオデジャネイロのサンバチームや少年サッカーチームが神戸を訪れ公演や親善試合をするなど交流してきました。
しかしながら、実は双方の往来は近年少なくなっており、さらにコロナ禍などの影響もあって、残念ながら最近の神戸市とリオデジャネイロ市との交流はあまり活発とは言えない状況でした。そこで、姉妹都市提携55周年を迎えるに当たって、神戸とリオデジャネイロやブラジルのつながりを知ってもらうために、どのような事業を計画すべきかアイデア出しをしました。
4 姉妹都市提携55周年記念キャンペーン

姉妹都市交流や移住の歴史は、市民目線からは何か難しそうという印象を持たれがちです。そこで、市民も親しみやすい「コーヒー」を切り口に取り組みを進めることにしました。ブラジルと言えばコーヒー、さらに神戸は喫茶店も多く、コーヒーの街としても知られています。また、最初の移民船「笠戸丸」の代表者、水野龍氏が、サンパウロ州政府からコーヒー豆の無償提供を受けて、日本でコーヒーを広めたことが、ブラジルコーヒーが日本に普及するきっかけになったとも言われており、歴史的にも神戸とコーヒーは深い関わりがありました。
本年10月に実施したイベントは、市内のカフェでブラジルコーヒーを飲むとオリジナル記念ステッカーが進呈され、このステッカーを「海外移住と文化の交流センター」に持参するとプレゼント抽選に参加できるもので、「神戸のカフェに55(Go Go!!)キャンペーン」と名付けました。ほかにも、コーヒーに関するワークショップや音楽会などの実施、神戸市公式noteでの連載など、コーヒーという身近なモノをきっかけとして姉妹都市や移住の歴史などを知ってもらうことを意図したキャンペーンでしたが、期間中の移住ミュージアム来訪者数は前年同月比2倍となるなど一定の目的を達成できたと考えております。
5 リオデジャネイロ市での記念イベント
神戸だけでなく、リオデジャネイロにおいても現地の日本総領事館の皆様のお力添えもあり、リオデジャネイロ市議会で55周年を記念した特別セッションを開催いただいたり、州議会においても神戸を紹介するパネル展示を開催いただき、神戸を紹介する機会をいただきました。改めましてご協力に感謝したします。
6 U20(Urban20) 国際会議への招待

本年、リオデジャネイロはG20サミットの開催地でした。55周年を機に両市で再び交流が始まったこともあり、G20に関連して世界中の都市が参加するU20国際会議に、リオデジャネイロ市よりゲストシティとして神戸市を招待いただきました。U20出席を通じて、神戸市の政策を世界にPRする機会を得たほか、実に数十年ぶりに、リオデジャネイロ市長との対面での交流も実現しました。
7 終わりに
姉妹都市交流事業というと、市長が訪問団を組織し、交流を深め、様々な分野の協力深化に繋げていくという方法がよく採られる方法かもしれません。こうしたトップによる交流も重要ですが、同時に市民レベルでの交流も進んでいます。毎年神戸で開催される「神戸まつり」では、サンバチームのパレードが目玉として盛り上がるなど、ブラジルの文化が広く親しまれてきました。外国人住民が増え続ける現代日本においては、姉妹都市交流においても、市民レベルに広がりを持つ事業の展開を通じて、多文化交流や、市民の国際意識向上に繋げていくこともますます求められていくのではないでしょうか。