グローカル外交ネット
モルックで広がる国際交流
一般社団法人日本モルック協会広報部
函館市企画部国際・地域交流課
函館市教育委員会生涯学習部スポーツ振興課
1 モルックとは

モルックはフィンランド発祥のスポーツであり、年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、誰もが一緒に楽しめるスポーツです。モルックは数字の1から12までが描かれたスキットルと呼ばれる木製のピンに、モルック棒(木製の棒)を当てて得点を競います。スキットルが複数本倒れたら、倒れた本数が得点となり、1本倒れた場合はスキットルに描かれた数字が得点となります。先に50点ちょうどに達したチームが勝利となります。ルールはシンプルですが、どのスキットルを狙えばいいのか戦略を考え、狙い通りに得点を重ねていけるかがゲームの面白いところです。
モルックの関心は全国的に広がりを見せ、各地で大会や体験会が開催され、日本モルック協会が主催する公式大会やイベントも、毎回多くの方に楽しんでいただいています。また、モルックが地域住民の交流や健康促進に役立つことから、自治体のイベントや学校、福祉施設にも取り入れられる機会が増えています。当協会がおこなった2023年の調査によると、モルックを体験したことがある国内の人口はおよそ165万人とされています。2022年の同調査では100万人であり、競技人気が急速に高まっていることがわかります。また、2004年より、国際モルック連盟加盟国で開催されるモルック世界大会が、欧州各地で開催されてきました。
2 函館市とモルックの関わり
北海道函館市では、以前から一部の市民の間でモルックが取り入れられて盛んに競技が行われてきました。また、モルックの世界大会は8月に行われますが、日本で屋外のスポーツ大会をするには涼しい地域を選ばなければならなかったこと、国内外の多くの方が集い楽しめる観光都市であることなどから、函館市でモルックの世界大会を開催したいとの考えが市民に広まりました。また、18世紀末にアダム・ラクスマン(フィンランド人でロシア帝国の軍人)が来航した函館で、フィンランド発祥のスポーツの大会を開催するのはロマンがあったのではないかとも思っています。こうした背景の下、市民がモルックの世界大会を函館に誘致したいという活動が行われ、その結果、2022年にフランスのサモエンヌにて開催された国際モルック連盟の会議において、2024年の世界大会は日本の函館で開催されることが決定しました。函館でのモルック世界大会の開催が決定してからは、体験会や大会が多数開催され、市内の公園や空き地、キャンプ場などでもモルックを楽しむ人が見られ、空前のモルックブームが巻き起こりました。また、こうした市民の熱気を受けて、函館市教育委員会では、2023年3月に「函館市スポーツ推進計画」を改訂し、市民の誰もが運動やスポーツにアクセスしやすく、自分に適した運動やスポーツに出会うことができる環境を整えるため、モルックをはじめとするニュースポーツの普及・振興に取り組むことを明記しました。
日本モルック協会と函館市は、世界大会開催決定前から協議を重ね、世界大会が滞りなく開催できるよう、関係部局が連携し、大会開催補助金の支給や会場周辺の駐車場確保の支援、ポスター・チラシの配布、市公式SNSでの周知、大会当日のおもてなしブースの設置など、可能な限りの支援を行いました。
3 モルック世界大会in函館

2024年8月23日から25日に函館市で、ヨーロッパ外では初のモルック世界大会が開催されました。本大会で19回目です。大会には643チーム、3211名の選手にご参加いただきました。日本以外からも、ヨーロッパやアジアなど14の国や地域からおよそ200名の選手にご参加いただき、過去最大規模の開催となりました。大会当日は前夜までの雨もやみ、快晴のなかで迎えることができました。日本で初めての開催であったため、当初は会場全体に緊張感と不安もありましたが、海外選手の陽気な歓声や、「日本モルック協会オフィシャル・モルックアンバサダー」の選手宣誓に場が和んでいったことを覚えています。
この世界大会はひとつのスポーツ大会であるだけでなく、開催された地域の国際交流を育む貴重な機会になったと感じています。海外選手から、「初めて日本に来たけれど、東京や京都への旅行だけでなく、地方の良さを知り、日本人とじっくり交流できて、とても楽しかった」という言葉をもらいました。事実、日本人選手が海外選手と身振り手振りを交えながらコミュニケーションをとり、お互いの国や地域、モルック事情などについて話し交流する場面が多く見られました。試合中は真剣な表情の選手たちも、試合が終われば一緒に記念撮影をし、お互いの健闘を称え合っていました。こうした場面で選手の笑顔を見たときは、モルックが国籍や世代を超えて人々を繋ぎ、スポーツ本来の意義を感じられる瞬間でした。
4 大会におけるフィンランドブースの様子やその他フィンランド文化の紹介

会場ではモルック発祥の地であるフィンランドへの関心を高めてもらうために、フィンランド大使館やフィンエアーなどの協力の下、フィンランド文化を紹介するパネルやお菓子、雑貨を販売するブースを設置しました。北欧のシンプルで温かみのあるテキスタイルやムーミンのぬいぐるみで彩られたブースに興味をもった来場者がぞくぞくと訪れ、出展者と楽しそうに会話をしていました。来場者はオーロラの写真パネルに惹かれ撮影したり、観光パンフレットを手にしながら、出展者へ積極的に質問を投げかけたり、それぞれに楽しんでいたようです。出展者からもフィンランドでのSDGsの取り組みや食生活や文化について説明があり、皆熱心に耳を傾けていました。ブース内にはフィンランド式ダーツの体験やトナカイの角を使ったアクセサリ―作りも行われて、家族連れで賑わいをみせていました。珍しいお菓子や愛らしい雑貨を手にとり、和やかな表情で買い物を楽しんでいる様子も見られました。モルックを入り口に、函館では普段接することのないフィンランド文化に触れ、理解を深める機会となりました。
5 函館市民に広がるモルック
「モルック世界大会in函館」の期間中、函館市の地域住民がモルックを観戦する姿も見られました。初めて目にするモルックの大会に興味津々の様子で、写真を撮りながら、選手たちのプレイに見入っていました。特に家族連れやシニア世代から「ニュースで知って見に来ました。今度自分たちもプレイしてみたい」といった声も聞かれ、モルックが多くの世代に親しみやすいスポーツとして認知されていることを実感しました。また会場内に設置した物販ブースやキッチンカーにも立ち寄り会話をしながら、ゆったりと買い物を楽しんでいました。
大会では、函館市の交通機関や飲食店、地元ボランティアの方々のご協力もいただきました。空港や市電、フェリーターミナルには大会ポスターが掲示され、地元の飲食店のなかには「モルック割」や「モルック応援フェア」というキャンペーンを実施する店舗もあり、街をあげて出場選手を歓迎していただきました。また、大会期間中には、地元のボランティアの方々にも総勢100名にご協力いただき、受付やイベントの運営、交通案内などで大会を支えていただきました。ボランティアの方からは「一生の思い出に残る経験ができました。参加してよかったです」といった声をいただき、胸が熱くなりました。さらにこの世界大会をきっかけに、函館市を中心にモルックに興味をもつ人が増え、地域団体の練習会に参加する人も増えていると聞いています。
大会が終わった後も、地元住民の間でモルックが定着し、その輪が広がり続けていることに大変嬉しく思います。今後も、モルックを通じて函館のみならず、日本の地方自治体の国際交流を盛り上げて行ければと考えています。また、今大会では、フィンランド大使館商務部代表のスヴィ・スンドクィスト氏も函館を訪問し、フィンランドと北海道、そして函館市を繋いでいきたいと話してくださいました。同じ北の地域として、さらに交流を深めて行けたらと願っております。