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「札幌・ポートランド姉妹都市提携65周年記念意見交換会」
在ポートランド日本国領事事務所所長 吉岡雄三
札幌市と米国オレゴン州のポートランド市は、1959年の姉妹都市関係締結以降、ビジネス、市民、教育、文化、スポーツ等幅広い分野で交流を行うとともに、5年毎に両市長が相互訪問を行うなど現在でも活発な交流を行ってきており、姉妹都市交流の成功例として挙げられています。2024年は、両市の姉妹都市提携65周年にあたり、ポートランドのローズ・フェスティバルに合わせて6月5日から9日まで秋元札幌市長、飯島市議会議長を始めとする市議会議員12名、岩田札幌商工会議所会頭等札幌商工会議所代表団がポートランドを訪問しました。

今回の札幌市長一行のポートランド訪問は特別な意味がありました。それは、札幌市長のポートランド訪問直前の6月4日、札幌市と北海道は、国内外の投資を呼び込み、GXなど成長分野へ十分な資金が供給される環境を実現する「金融・資産運用特区」の対象地域に選ばれました。北海道は、再生可能エネルギーにおいて日本国内髄一のポテンシャルを有しており、洋上風力や水素等GX分野への多額の投資が見込まれています。また、北海道には次世代半導体製造を行うラピダスの工場建設が急ピッチで進められ、今後北海道が半導体産業の中心になる可能性があります。さらに、札幌市は近年外国人居住者が増加し、これら外国人の生活環境整備も大きな課題となっており、市役所に外国人相談窓口や外国人サポートセンターを設置するなど多文化共生の取組を実施しています。

他方、ポートランド市があるオレゴン州は、豊かな森林資源を有し、環境問題への関心が高く、エネルギー源の約半分を水力及び風力の再生可能エネルギーで賄うとともに、2050年のカーボンゼロの国際目標を10年前倒して2040年に達成することを目標に掲げるなど積極的な環境政策を取っています。また、ポートランド西方のワシントン郡は「シリコン・フォレスト」と呼ばれ、インテルを中心に半導体等ハイテク産業が発達しています。さらに、ポートランドは、都市部と農地や森林などの土地利用を区分する「都市成長境界線」を導入し、開発を認める都市部と認めない郊外を分け、農地や森林を保全すると同時に、都市部では機能がコンパクトに集中した効率的な生活を営めるようにしています。このほか、ポートランドには、人種やジェンダーにとらわれず、多様性を尊重するリベラルな風土があります。
このため、今回の訪問では、ポートランド市との友好親善に加えて、先進的な環境政策及び都市政策、半導体産業の現状、多文化共生等についてオレゴン州及びポートランド市の取組の経験を学ぶことも大きな目的になっていました。かかる観点から、本意見交換会では、オレゴン州の経済・貿易政策を統括するソフォン・チェン・オレゴン州経済開発局長をスピーカーとして招き、同局長からオレゴン州の半導体産業を含む経済政策、環境政策、対日貿易の現状・見通し等について説明を行いました。また、都合により欠席となったホイーラー市長に代わりポートランド市を代表してライアン市政委員(市議会議長)が、両市の姉妹都市提携65周年に祝意を表するとともに、ポートランドの環境、多様性に配慮した都市作りの取組について紹介しました。秋元札幌市長からは、両市の65年の長きにわたる姉妹都市関係の意義に言及しつつ、今後も文化、経済、教育等多岐にわたる分野でポートランド市と協力していく旨表明しました。また、ホアン・ポートランド・メトロ商工会議所CEOは、岩田札幌商工会議所会頭と半導体等のビジネスへの関心について率直な意見交換を行うとともに、ポートランド・メトロ商工会議所として両市の友好関係発展のため、協力する用意がある旨伝達し、岩田会頭からはホアンCEOが札幌を訪問するよう要請しました。このように、本意見交換会では、両市の65年にわたる姉妹都市関係を今後も幅広い分野で一層発展させていくことが再確認され、参加者からは意見交換を通じて姉妹都市交流の重要性を体感出来た等の声が聞かれました。
なお、本意見交換会の会場において、札幌の名産品(粉末スープ、ラーメン、スナック、調味料等)を紹介するブースを設置し、食品小売業関係者を含むポートランド市関係者に北海道産品の魅力をPRする機会となりました。

このほか、過去に札幌市内の高校と交流があったポートランド市内の高校の卒業生を意見交換会後のレセプションに招いて秋元市長と面談し、将来の学校交流再開の可能性について話し合うことができ、両市間の交流の裾野を広げる貴重な機会となりました。9月下旬には、ホイーラー・ポートランド市長がポートランド日本庭園関係者、ポートランド市民等とともに、札幌市を訪問する予定であり、両市の関係は一層強固なものとなることが予想されます。