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南相馬市とジブチ共和国 震災が結んだ絆
駐ジブチ日本国特命全権大使
原 圭一
1 南相馬市とジブチ共和国の交流関係


日本の四国ほどの国土に約100万人が暮らす東アフリカの小さな国、ジブチ共和国において、「東京広場(Place de Tokyo)」と呼ばれる場所があることをご存じでしょうか。東京広場は、90年代後半に日本の援助により整備された幹線道路の起点に位置するのですが、2011年の東日本大震災の発生を受け、ゲレ・ジブチ大統領がこの広場で約800人が参加する追悼式典を開催してくれました。そして、震災直後からジブチ政府・国民から約1千万円の寄付金が集まり、2012年に福島県南相馬市に対して友好と連帯の証として寄付されました。
こうした縁をきっかけに、東京オリンピック・パラリンピックに向けて日本政府が実施した「復興『ありがとう』ホストタウン」事業の下で南相馬市はジブチのホストタウンとして選ばれ、様々な交流・協力が行われてきました。2018年2月に南相馬市幹部及び空手指導者2名がジブチを訪問し、同年7月にはジブチから10名(中学生及び引率)が南相馬市に招待され、相馬野馬追の観覧やスポーツ交流が実施されました。2019年11月にジブチで豪雨災害が発生した際には、南相馬市、市議会、市民からの義援金が駐日ジブチ大使館に寄付されました。
東京オリンピック・パラリンピック後も、両者の交流は継続しています。毎年3月11日には「東京広場」において東日本大震災の追悼行事が開催され、多くのジブチの方々が地震・津波の犠牲者に対して追悼と連帯の気持ちを表してくれています。
2 南相馬市への訪問

2024年6月、大使着任後初めて南相馬市を訪問し、門馬和夫市長と意見交換を行いました。東京オリンピック・パラリンピックの際の「復興『ありがとう』ホストタウン」事業をはじめ、東日本大震災以降、ジブチとの間で交流が継続していることを高く評価しており、今後も交流が続くことを期待する旨述べたところ、市長より、ジブチをはじめとする世界中からの支援のおかげで南相馬市の復興が進んでいることに感謝しており、今後もジブチとの交流を継続していきたいとのお考えを直接伺うことができました。
また、この機会に、整備費用の一部にジブチからの義援金が活用された子どものための室内遊び場であるNIKOパークや、福島県浜通りのイノベーションを通じた産業振興のため、福島県が南相馬市に設立した福島ロボットテストフィールド等も視察させていただきました。南相馬市の門馬市長はじめ関係者の皆様のご協力・ご支援のおかげで、非常に充実した訪問となりました。
3 今後の交流への期待
震災をきっかけとする南相馬市とジブチ共和国の間の絆をもとに、両者の交流が今後も継続・深化していくことを期待しています。今回の南相馬市訪問を通じて、門馬市長はじめ同市関係者とこの思いが共有されていることを確認でき、大変嬉しく思います。
ジブチは南相馬市から約1万キロ離れていますが、両者の間には、国境を超えた特別な縁が存在します。“A friend in need is a friend indeed.” 両者の絆が今後も継続し、交流がより深まっていくよう、大使館としても、2025年に日本で開催され、ジブチも参加を予定する大阪・関西万博や第9回アフリカ開発会議(TICAD9)等の機会も捉えつつ、可能な限りお力になりたいと考えています。