グローカル外交ネット
名古屋観光デジタルマップについて
回復するインバウンド需要に対する受入環境の整備を目指して
名古屋観光コンベンションビューロー
総務部コンテンツ戦略グループ
1 デジタルマップの概要と特徴

本マップは専用アプリを必要とせず、WEBブラウザ上で使用可能な観光に特化した地図で、2023年10月10日から運用を開始しました。名古屋市公式観光サイト「名古屋コンシェルジュ」に掲載の観光、宿泊、グルメ、土産、市内主要イベント情報を400スポット以上掲載しているほか、スポット情報の追加や修正が柔軟に対応可能です。日本語以外の多言語対応では、6言語(英語、中文繁体、中文簡体、韓国語、タイ語、ベトナム語)に対応しています。基本機能として、観光、グルメ、宿泊、土産、イベントの5カテゴリからのスポット絞り込みや検索ができる他、最大の特徴として、AIによるレコメンド(提案)機能を搭載しており、ユーザー属性や興味、関心、空き時間などから、AIがお勧めの観光スポットやモデルコースを提案してくれます。このAIレコメンドにより滞在時間の延長と市内周遊性を高め、観光消費額の増を狙いとしています。AIレコメンド機能を使用しなくても、名古屋市公式観光情報「名古屋コンシェルジュ」に掲載しているモデルコース(日本語25コース、多言語8コース)を実装し、地図上にルート表示出来るようにしていますので、定番のコースを効率よく回りたい方の需要にも応えられるようになっています。
デジタルマップのメリットは、ユーザーに対してだけに留まりません。位置情報をオンにしているデジタルマップ利用者の滞在中行動データを収集することが可能で、具体的に「デモグラフィックデータ」(性別、年代、居住地)、「ジオグラフィックデータ」(位置、物理的行動ログ)、AIカード利用による「サイコグラフィックデータ」(心理・興味関心)の3つのデータを取得できるため、アンケート調査に比べてリアルタイムで精緻かつ大量の情報取得が可能となり、これら得られたデータを活用して、名古屋市内の観光客の周遊状況を分析することにより、新たな観光施策の立案に役立てる事も可能です。
2 デジタルマップ制作に至った経緯

名古屋市では過去30年にわたり、名古屋を来訪する観光客やMICE参加者への本格的な案内ツールとして、紙の観光マップを作成、配布してきました。しかしながら近年は、コロナ禍を経た接触感染リスクへの意識の高まりや、SDGs達成に向けた紙資源削減による環境負荷低減、スマートフォンの普及による情報取得方法の多様化への対応、そして観光分野におけるDX化(デジタルを活用した行動データ収集や分析によるマーケティングなど)推進の観点から、マップのデジタル化の必要性と機運が高まっていました。また、旅行者の行動分析による今後の観光施策へのフィードバックやターゲット別プロモーション戦略への活用など、これまでの紙マップでは実現できなかった戦略的データを取得できるメリットも生まれることから、公募式プロポーザルを経てデジタルマップの制作に至りました。
3 インバウンド対応について(多言語対応など)

2022年10月から訪日外国人観光客の受入れが再開されましたが、インバウンド消費の早期回復、コロナ禍前を上回るインバウンド消費の拡大のためには「旅ナカ」と言われる「滞在中の観光客に対する情報提供」が重要であり、時代に合わせた効率的、効果的な情報を提供する必要があります。中部国際空港を発着する国際線の路線拡大や、今後も増加が見込まれる大型クルーズ船の寄港、2026年にはアジア・アジアパラ競技大会が愛知県及び名古屋市で開催を控えるなど、当地を取り巻くインバウンドの受入環境を整備していくことは観光分野における喫緊の課題です。デジタルマップを導入することで、インバウンドに対しての観光情報提供の充実や、観光公式サイトとの連動による情報発信力の強化が可能となり、観光客の滞在時間延長や消費額拡大などが見込まれます。
尚、来訪される方の中には紙マップを必要とされる方もおり、今後も一定数の需要に対応できるよう、簡易版紙マップを5言語(日本語、英語、中文簡体、中文繁体、韓国語)で作成しております。
4 現在の運用と来訪者の反応について
現在、名古屋観光デジタルマップは名古屋市公式観光情報「名古屋コンシェルジュ」のトップページに掲載しているほか、多言語版サイトでも同様にトップに配置し海外の方も簡単に見つけられるようにしています。また、市内3ヵ所の観光案内所で、案内用のチラシを配布し案内しています。運用開始後に行った利用者対象のアンケートによると、「たまたまバス停で知りました。」「検索するより一目で楽。」「とても便利。」「情報量が多くて分かり易い表示で良かった。」「写真やかかる金額とかもわかるともっと便利で有難いと思いました。」「分かり易かったです。」「参考になりました。」など、概ね好評でした。
5 今後について
今年度で名古屋観光デジタルマップの運用は2年目となりますが、名古屋観光デジタルマップの利用者数を更に伸ばしていくこと、またそれにより得られたデータを活用して、より効果的な誘客施策を展開していくことを課題として認識しています。また、外国人観光客への更なる認知度向上のために、本年度は多言語版のデジタルマップのPRに注力し、名古屋を訪れた外国人観光客への利便性向上につなげる予定です。
今後も機能強化によるイベント開催等を含め、継続的な利用促進に取り組むとともに、名古屋観光デジタルマップを通じた観光DXの実現を図ってまいります。