グローカル外交ネット

令和6年5月14日

駐モンゴル日本国特命全権大使
井川原 賢

1 風力発電機から始まった交流

 駐モンゴル日本国特命全権大使の井川原賢(いがわはら まさる)です。
 宮崎県都城市とモンゴルの首都ウランバートル市との交流の始まりは、モンゴルが民主化した直後の1992年に遡ります。きっかけは、民主化、市場経済化の変革の中で物資不足、電力不足に陥っていたモンゴルに対して国立都城工業高等専門学校が風力発電機を寄贈する活動を開始したことでした。これが、都城工業高専とモンゴル国立科学技術大学の学術交流に発展し、1999年には、双方の学校が所在する都城市とウランバートル市の友好交流都市提携に繋がりました。
 その後も、両市の中学・高校生の相互訪問等が継続的に行われ、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の際には、ホストタウンとしてレスリング交流も行われました。
 また、ウランバートルのUBSテレビ局とBTV都城ケーブルテレビは友好交流関係を築いており、UBSには、BTVのモンゴル支局があってBTVでは「モンゴルは今」という情報番組等、モンゴルについての番組を日本語にて作成し、主に都城市中心に近隣の利用者の方が視聴可能となっています。
 30年以上にわたって交流が継続し、発展していることは、日本とモンゴルの自治体間交流の中でもモデルの一つであり、こうした大事な交流を更に発展させていきたい思いで、2024年3月に、一時帰国の機会を捉え、都城市を訪問いたしました。

2 都城市への訪問

池田市長及び都城市関係者との意見交換

 今回の訪問にあたっては、都城市農政部畜産課の方々に大変お世話になり、温かな歓迎をいただきました。池田市長及び市関係者とは、自治体交流の現状、課題等について、意見交換しました。池田市長をはじめ、都城市の関係者の皆様のモンゴルとの関係を更に発展させていきたいという大変前向きな気持ちに触れることができ、大変心強い思いがしました。

霧島酒造の視察

 また、都城市訪問時には、宮崎県農業振興公社理事長との農産品等の輸出拡大についての意見交換を行った他、焼酎製造会社の霧島酒造での視察を行いました。モンゴルにおいては、日本酒や日本のウイスキー、ビール、梅酒等の酒類が販売されており、大変人気を博しているので、今後は焼酎のおいしさと魅力についても発信していければと思っています。

ミヤチク社訪問

 さらに、宮崎牛の生産と輸出を行っているミヤチク社を訪問する機会を得ました。宮崎牛は、5年に1度開催され、「和牛のオリンピック」とも称される全国和牛能力共進会で、4大会連続で「内閣総理大臣賞」を受賞した、国内でも非常に評価の高い和牛です。
 実は、都城市からはモンゴルで都城産宮崎牛を広く知っていただき、味わってもらいたいという思いから、2015年以降、当館がモンゴルで主催する、天皇誕生日祝賀レセプションにおいてモンゴルのお客様に対して振る舞うためにご提供をいただいており、今年もその宮崎牛を用いた寿司やステーキは参加者から大変好評を博しました。こうしたご尽力もあって、モンゴル国内で宮崎牛の素晴らしさは浸透してきており、モンゴル要人から、次回訪日した際には是非都城市を訪問して宮崎牛を食したいというありがたいお言葉も伺っています。
 今回の訪問では、都城市の豊かさに改めて感銘を受けるとともに、長い歴史の中で培われた知恵が世代を超えて脈々と伝えられる中、自然の恵みを活かした農畜産物が作られていること、専門家や若い方々の意見を取り入れて地域の活性化に取り組んでいること、伝統的な文化を大切にしながら国際的な関係構築に挑戦していることなど、学ぶべき点がたくさんありました。そして、ウランバートル市の多くの方々に都城市を訪問いただき、この魅力を実際に体験していただきたいという気持ちを新たにしました。

3 全ての関係の基盤は「人」

 2022年の日モンゴル首脳会談において両国首脳が署名した共同声明において、あらゆる分野における関係・協力強化を目指すにあたって、基盤となるのは「人」であり、今後、両国国民の交流や相互理解を促進し、次世代を担う両国の若者の交流の深化を図っていくことを確認しました。
 都城市とウランバートル市の交流を語る上でも、都城市において国際交流員が勤務し、モンゴルの紹介事業を行っており、ウランバートル市においても、かつて国際交流員として勤務した人々が引き続き両市の交流のために貢献しており、人と人の関係が、両市の関係を深く、強く発展させています。身近なところでは、当館職員の中には私(えびの市出身)を含め、宮崎県出身者は3人もおり、そのほかにも、モンゴル人スタッフの中には都城市で国際交流員として勤務していた者もいます。彼は都城について知り尽くしているだけでなく、コテコテの「みやこんじょ」弁をも習得し、モンゴルで都城の魅力を広めるために一役買っています。
 冒頭にも書いたとおり、こうした両市の関係は、日モンゴル関係の中でもモデルとなるものであり、宮崎県出身である私としても、本当にありがたく、また誇らしく思います。日本大使として、こうした両市の関係が更に発展していくよう微力ながらご協力させていただきたいと思っており、また、強い絆で結ばれた両市の皆様にも、日モンゴル関係を更に発展させていく上で、引き続きご協力を賜りたいと願っております。

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