グローカル外交ネット
ラグビー・トンガ王国代表チーム「イカレ・タヒ」の応援から 「高知家」のトンガ支援
在トンガ大使館
大使 稲垣 久生
1 トンガのラグビーチームの支援を通じた高知の交流

トンガ王国ではラグビーが国技として盛んで、日本でラグビー選手として活躍するのが夢というトンガ人が多くいます。トンガ王国の代表チームは「イカレ・タヒ(‘Ikare Tahi)」(Sea Eagle, 海鷲)との愛称で親しまれており、日本とトンガとの関係で非常に大きな影響力があります。ラグビーワールドカップ2019の際のトンガ代表チームの事前キャンプ地には、前年2018年に高知県及び高知市が選ばれました。
この決定に至るまで、高知県と高知市は、2014年からトンガとの交流を開始し、県知事がトンガを訪問するなど、トンガ応援プロジェクトを展開しました。高知県は、同県人の家族のような温かさに焦点を当て「高知県は、ひとつの大家族やき。」として「高知家」キャンペーンを実施してきています。そこで、「高知家」とのコラボシャツを販売したり、利益でラグビーボール等の用品をトンガへ寄贈したりといった活動や、さらには高知市からトンガへゴミ収集車を寄贈し、あるいはサイクロン「GITA」の被害に対する義援金を寄付するなど、トンガへの支援と交流を継続しました。
事前キャンプ地としての受入準備委員会、その後に受入委員会を設立しながら、トンガ料理教室を文化交流として実施したり、トンガ代表の一部選手やスタッフらがラグビー教室をしたりと様々な交流イベントを開催しながら、事前キャンプを迎えました。その後も、パブリックビューイングでのラグビーワールドカップ2019の試合観戦を行い、さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の際のトンガのホストタウンともなりました。
現在に至るまで、高知中央高校にトンガからの留学生を受け入れたり、「『トンガ』×『高知家』ラグビーがつなぐ夢の応援プロジェクト」と題したふるさと納税型クラウドファンディングを通じて寄付を募り、トンガの子供達にラグビーボールやグッズを届けたりと様々な交流が続いています。
2 高知県黒潮町とトンガとの交流

2016年11月高知県黒潮町で、「『世界津波の日』高校生津波サミット」が開催されました。「高校生津波サミット」では、日本と世界各国から参加の高校生に防災の知見と地震津波の脅威を学び自然災害を知り備えるとともに、復興の取り組みなどについて国土強靱化を担う将来のリーダーを育てることを目的に開催され、大方あかつき館において記念植樹や若き津波防災大使記念碑の除幕式が行われました。記念碑には、黒潮宣言が刻印され、宣言は「自然の恵みを享受し、時に災害をもたらす自然の二面性を理解しながら、その脅威に臆することなく、自然を愛し、自然と共に生きていきます。」と結んでおり、自然は津波といった敵対するものではなく共存するものとの点を強調しているとの黒潮町からの話も伺いました。

この「高校生津波サミット」をきっかけに、黒潮町は国際交流の取り組みのひとつとして、同町婦人連合会及び同町小・中学校PTA連合会を中心に、使用済みのランドセルをトンガ王国に贈る「ランドセルプロジェクト」が始まりました。2017年に50個のランドセルを寄贈し、以降、2019年まで毎年50個のランドセルを寄贈しました。そして、2018年からは同町にあるNPO砂浜美術館が、トンガにてTシャツアート展やTシャツに様々なプリントを参加者が行うTシャツワークショップ交流を実施し、日本の広報活動を展開しました。翌2019年にも同様のランドセル寄贈とTシャツ交流を実施しましたが、2020年、パンデミックのためにトンガの訪問は叶いませんでした。しかし船便発送によるランドセル寄贈活動が続きました(総計250個を寄贈)。2021年も同様に100個の梱包を行い、2022年送付を計画していたところ、1月にフンガトンガ・フンガハアパイ火山爆発に伴う地震・津波・火山灰などによる災害が発生し、寄贈は中断しました。
黒潮町ではトンガに対する義援金の募金活動を実施し寄付を行うなど、トンガへの支援活動は継続してきています。ただ、火山爆発に伴う被害の状況はひどく、復興に向けての作業は徐々に進められていますが、被害にあったトンガタプ島北西リゾート地には今も宿泊施設がありません。黒潮町婦人連合会からは、現在も引き続き、日本国内各地からランドセルが集まっており、在トンガ日本大使館と連絡を密にしながら、トンガへのランドセルの寄贈活動を行っていきたいとの話もなされ、今後の寄贈活動の展開に向けて調整していくこととしています。
3 トンガへの支援と交流(災害対策)
黒潮町では、津波からの避難困難区域の解消を目的として町内の6地区で津波避難タワーを建設し、完成しています。特に佐賀地区津波避難タワーは地盤から避難フロアまでの高さが22メートルあり、最大想定浸水18メートルを超える高さで230人を収容し、25メートルの屋上にはヘリポートも用意されています。費用は6億円近くかかっていますので、トンガに直ぐに設置しましょうということにはなりませんが、津波に対する避難として、(トンガ国内にある高いビルは大使館の入る5階建てのみで、他には、ほとんどありませんが)ビルの屋上の活用といった方策を広めていくことが重要と考えられます。
トンガでは、日本からの国際協力により長年にわたって護岸の強化を実施してきていますが、それとともに、「高校生津波サミット」で参加したトンガハイスクールの生徒が「自然の怒りとの闘い」と発表した中で「自然災害に備える訓練」をアクションプランに記し、「安全確保のしかたや避難ルート、どこに避難するのかについて学んだ」とコメントしている様に、トンガ国内での啓発を行うことの重要性を再認識しました。
4 トンガへの支援と交流(ラグピー)
高知県はトンガ火山爆発に伴う災害に対する義援金を募ってトンガ政府に届けた他、救援・復興支援として、ジャパンラグビーチャリティーマッチ2022を開催し、トンガ代表チームの高知県事前合宿を実施しました。
濵田高知県知事や桑名高知市長を含む交流関係者との面談や意見交換を通じ、また、高知県の酔鯨酒造株式会社やインフラ整備を行っている福留開発株式会社は、ラグビーワールドカップ2019事前キャンプ地の際も、チャリティーマッチの際も有力なスポンサーとなったことから、深く感謝の気持ちをお伝えしつつ、今後のトンガとの交流に向けて、特に今年からは、日本で隔年ごとにパシフィックネーションズカップが開催され、トンガ代表チームがやってくることもあり、トンガ代表チームを応援して頂けるよう、引き続きの支援をお願いしました。
トンガの代表チーム「イカレ・タヒ」は資金不足により、ラグビーワールドカップの日本大会やフランス大会時のチームマネージャも今では不在となりました。また、先般2月に開催されたU20代表選手団のニュージーランド遠征の際も、理事、スタッフ、代表選手自らが通りに立って募金活動を行うほど、運営費が逼迫していますので、日本から今後もしっかりとサポートしていけるように橋渡しをしていきたいと思っています。