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古くて新しい長崎とポルトガルとの交流:日ポルトガル480年友好年に寄せて
駐ポルトガル日本国特命全権大使 太田誠
1 はじめに
日本とポルトガルの友好関係の歴史は長く、1543年に種子島にポルトガル人が上陸して昨年でちょうど480年目に当たり、なかでも長崎は、1550年に平戸にポルトガル人が来航して以来、南蛮貿易を通じてポルトガルとの交流の歴史があります。パンやボタンといったポルトガル語は日本語となり現在も使われています。またポルトガルから受けた食文化も今なお残っており、長崎名物のカステラもポルトガルの伝統菓子が由来です。
2 長崎県とポルトガルとの間の姉妹都市協定
長崎県には、長崎市とポルト市、大村市とシントラ市という日本とポルトガルを結ぶ二つの姉妹都市協定が存在します。
戦国時代の1582年にローマに派遣された、4人の少年たちを中心とする使節団「天正遣欧少年使節」は、本年にポルトガル到着から440周年を迎えます。大村市とシントラ市の間には、大村の領主であった大村純忠ら3人のキリシタン大名が天正遣欧少年使節団を派遣し、1584年8月に同使節団がシントラ宮殿を訪ねたという歴史的な結びつきがあります。両市の間では今日でもホームステイ事業などの姉妹都市交流が行われています。
また、長崎市と姉妹都市協定を結ぶポルトは、ポルトガルの北部に位置する同国第2の都市で、海上貿易におけるヨーロッパの主要な拠点として発達してきました。かつての南蛮貿易時代には、このポルトを母港としてポルトガル船が長崎市の出島に向かったという歴史があり、昨年は長崎県の大石知事が6月にポルト市を訪問、10月にポルト市長が長崎市に来訪し、姉妹都市提携の確認書を取り交わすという人的交流が行われました。
3 長崎県大村市及び長崎市の訪問
今回、12月6日から7日の2日間という日程で、長崎県大村市と長崎市を訪問しました。長崎空港に降り立ち、まず大村市の市街地に向かう途中に目にした、天正遣欧使節団の4人の少年の像が印象的でした。また、訪問した大村市歴史資料館ではキリシタンに関する充実した展示資料・シアター映像・アズレージョ・タイル装飾に加えて、広場のベレンの塔を模したからくり時計にも4人の少年が現れるなど、随所でポルトガルとの歴史的なつながりを感じずにはいられませんでした。大村市では、大村市長と同市の姉妹都市であるシントラ市との交流について意見交換をしたほか、大村市歴史資料館を訪問しました。
また、長崎市においては鈴木長崎市長、そして大石長崎県知事を表敬し、日本とポルトガルとの間の交流の更なる活性化に向けた意見交換を行いました。さらに、長崎日本ポルトガル協会や名誉領事といった、ポルトガルとの橋渡しを行っている方々とも意見交換を行う機会があり、これまでの活動の御紹介をいただいたほか、今後の取組についても御説明いただきました。また、長崎歴史文化博物館も訪問しましたが、歴史文化展示ゾーンで南蛮貿易やキリスト教の展示を拝見し、長崎の歴史におけるポルトガルのインパクトの大きさを感じました。
4 今後の姉妹都市交流への期待


私は、大村市・長崎市の訪問を通じて、今もなお息づくポルトガルとの歴史的な絆を感じました。また、この絆を未来に向けた交流に活かすべく尽力されている関係者と意見交換をすることができました。2つの姉妹都市交流協定がさらに促進されるよう、私や在ポルトガル日本国大使館が少しでもお力になれればと願っています。
昨年の日ポルトガル友好480周年では様々な文化行事を通じて2国間の結びつきが再確認され、強化されたと感じています。この高まった日ポルトガル友好の機運が、国レベルのみならず姉妹都市の間でも活かされることを期待しています。
