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モンゴル・ドルノゴビ県との地方自治体交流
令和5年5月26日
在モンゴル日本国大使館
二等書記官 伊藤 頼子
二等書記官 伊藤 頼子
モンゴルと言えば、広大な草原で草を食む羊の群れを思い浮かべる方も多いと思いますが、今回私がご紹介するドルノゴビ県は、首都ウランバートルから南東に約450キロメートル離れており、「ゴビ」と呼ばれる草の少ない乾燥地帯にあります。羊よりもらくだが多く飼育されており、世界有数の恐竜化石発掘地でもあります。
1.新潟県による緑化推進技術協力事業(JICA草の根:地域活性化特別枠)
3月末に私が訪問した際には、冷たい強風で砂嵐が吹き荒れていました。ドルノゴビ県副知事も、「ここは、夏は暑すぎて、冬は寒すぎる。快適な気候は秋だけです。」とおっしゃっていました。そのような厳しい自然環境の中で、どうすれば植物が育ち、砂漠化を食い止めることができるのでしょうか。新潟県は2009年からドルノゴビ県において緑化プロジェクトを実施しています。今回は県庁所在地サインシャンドにある緑化試験サイトを視察しましたが、そこでは、その土地に自生している植物を選び、早く深く根を伸ばすために細長い育苗ポットを使い、苗を育成しています。また、この苗を土に移植する際には、先端部分に複数の穴を開けた長いパイプを地中に縦に設置し、パイプの中に入れた水が土の表面ではなく地中の深いところに直接届くようにしているとのことでした。このように乾燥寒冷地で日本の植樹技術が生かされている現場を見ることができました。また、持続可能な緑化のためには、次世代への教育が欠かせません。ドルノゴビ県自然環境観光局やプロジェクトスタッフの他、当地の学校の先生方も新潟県での研修を受け、子どもたちへの緑化教育に取り組んでいます。
2.静岡県との友好協定
また、ドルノゴビ県は静岡県と2011年に友好協定を交わし、10年以上に渡り、活発な交流を継続しています。2年前にはコロナ禍ではありましたが、友好協定を交わしてから10周年の記念式典を、オンラインで実施しました。現時点ではドルノゴビ県在住の日本人はいないそうですが、静岡県との交流によって、技術研修、日本の歌コンテスト、ランドセル寄贈事業等が行われており、県民のみなさんが日本を身近に感じている様子が伺えました。サインシャンド第5番学校を訪問した際には、ひとりの男子高校生が熱心に日本留学について質問してきました。先生によると、この生徒は静岡県との交流で日本人の友人ができ、日本に留学してその友人と再会することを目指して熱心に勉強しているそうです。このような出会いが子どもたちの未来の可能性を広げていくことを目の当たりにし、嬉しく思いました。今夏は静岡県の高校生による訪問交流が復活する予定です。若い世代の交流が、相互理解、世界平和に広がっていくことを願っています。
コロナ禍を経て、交流再開の意欲にあふれるこのタイミングで今回の視察を実施することができたことは大変有意義でした。当館としても、これまでの交流を総括し、新たな一歩を踏み出そうとする皆さんのお手伝いができれば幸いです。