グローカル外交ネット

令和元年10月16日

在イタリア日本国大使館

 この度,イタリア共和国サンタルフィオ(SANT’ALFIO)市から,日本の地方自治体と交流活動を希望する旨の要望がありました。以下,サンタルフィオ市の概要を紹介いたします。

1 市の概要

(1)所在地・地勢

 イタリア南部シチリア州カターニャ県サンタルフィオ市。エトナ火山の東斜面,ボーヴェ渓谷の北側に位置し(海抜531メートル),カターニャ・メッシーナ間を結ぶ高速道路A18のジャッレ(Giarre)インターチェンジから約4キロメートルに位置しています(カターニア市から約30キロメートル)。

  • (画像)イタリア・サンタルフィオ市地図

 ドゥオーモ広場の展望台からは,イオニア海に面したタオルミーナ市からカターニア市に至るまで,雄大で魅惑ある景色が一望できます。

  • (写真1)ドゥオーモ広場の展望台

(2)面積

 23.62平方キロメートル

(3)人口

 1,674人

(4)日本との時差

 夏-7時間,冬-8時間

2 サンタルフィオ市の歴史

 サンタルフィオ市の歴史は,17世紀末に遡り,細い道に主要な建物が立ち並ぶ旧市街の町並みが今日まで受け継がれてきています。サンタルフィオという地名は,古来の宗教上の伝説に由来しています。スペイン貴族であったアルフィオ,フィラデルフォ,チリーノという三人兄弟が紀元後253年頃にシチリアに流刑され,そこでキリスト教殉教者となりました。伝説によれば,聖三人兄弟がタオルミーナ市からトレカスターニ市に渡ろうと,現在サンタルフィオ市が位置する場所を通った時,突如として猛烈な風が吹き,三人兄弟の歩みを困難なものとするために背負わせられた巨大な梁が吹き飛ばされたと言い伝えられています(「梁の奇跡」)。

3 サンタルフィオ市の特産品

 様々な名物料理の中でも,ヘーゼルナッツ,アーモンド,ピスタチオやクルミの菓子が当地の名産品です。上質なワインの生産により,当市はエトナ火山周辺に所在する重要な生産拠点の一つになっています。現地のレストランやアグリトゥーリズモでは,手打ちパスタ,キノコ,上質のチーズ,とても美味しい網焼きの盛り合わせなど,エトナ火山地区の名物が楽しめます。
 サンタルフィオ市は,周辺の様々な市町村やワイン製造会社などを繋ぐ景観ルートである伝統的な「エトナワイン」街道に含まれています。もう一つの名産品が蜂蜜であり,現地の様々な企業の活気あふれる活動により,食品から化粧品に至るまで幅広く活用されています。

4 サンタルフィオ市内の観光名所

(1)葡萄・ワイン博物館

 90年代に設立され,2階建ての施設は町の中心部にあるドゥオーモ広場のコヴィエッロ通りに所在し,一階(日本式二階)には20世紀初頭におけるブドウ収穫をテーマとした常設展,二階(日本式三階)に個人寄贈によるワイン製造や農産のために使用されていた古道具が展示されています。来館者は,土やワイン貯蔵の匂いが混在する,昔ながらの雰囲気にひたることができます。詳細まで再現された製造環境を通じて,来館者はブドウの栽培からワイン製造や瓶詰めまでをつぶさに見学することができます。また,当時の農民の日常生活やその生活用品から,地主の豊かな生活とは異なる彼らの慎ましい暮らしぶりを想像することができます。

(2)粉砕所

 麦やライ麦を挽くことが必要となった19世紀に遡り,三世代続くカセッラ家が管理しています。エトナ・イオニア海地区において唯一の現役の粉砕所で,かつてはボールミルでしたが,現在はローラーミルです。麦が小麦粉になるプロセスを見学できるガイドツアーが設けられています。

(3)百匹馬の栗の木

 2000年の歴史と約52メートルの円周を誇り,過去に数多くの旅人が絵や写本などに記しており,サンタルフィオ市の象徴となりました。2008年5月18日にユネスコにより「平和の文化」シンボルとして位置づけられた正真正銘の天然遺跡です。欧州で最大・最古の木であるとみられています。「百匹馬の栗の木」という名前は,アラゴン王国ジョヴァンナ女王と騎手100人一行が嵐の中,巨大な木陰の下に避難したとの伝説に由来します。18世紀から19世紀にかけて,数多くの旅人や作家が歌や本の中でこの木について語っています。サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館が所蔵する画家ジャン・ピエール・ウーエルの作品にも描かれています。数多くの人々がこの木を訪れ,この木を研究対象とする植物学者もいます。現在は文化・自然財保護計画の対象となっています。

(4)宗教的建造物

マードレ教会(Chiesa Madre)

 17世紀に遡り,溶岩でできたファサードと鐘楼を有するマードレ教会は最も興味深い建造物です。教会は,アルフィオ,フィラデルフォ,チリーノの三人兄弟に捧げられており,内部には,大理石の祭壇,守護聖人である三人兄弟などを描写する貴重な祭壇画や,芸術的価値のある壮大なオルガンがあります。

カルヴァリオ教会(Chiesa del Calvario)

 19世紀に遡るカルヴァリオ教会は,雄大な景観を観賞できる丘の上に所在しています。溶岩でできた荘厳な階段が訪問者を出迎え,内部にある木造の祭壇は当時の職人の洗練された技を物語っています。

マガッゼーニ小教会(Chiesetta Magazzeni)

 サンタルフィオ市や周辺の市民が1928年11月3日のエトナ山の激しい噴火を逃れた象徴として建設された教会です。

ヌチフォーリ教会(Chiesa di Nucifori)

 ティーンダリの聖母マリアへの愛情と献身から,ヌチフォーリ地区の市民が建てた教会です。

5 文化交流の展望

(写真2)サンタルフィオの田園

 数多くの古い椿,キドニア ,サクラ属Prunus,マルメロやオリーブの木などを特徴とするサンタルフィオの田園は,日本との間に驚くほどの類似点を有しています。サンタルフィオ市の生態系は,日本庭園の特徴である紅葉の成長に相応しいものです。また,大量の玄武岩や溶岩の存在は,枯山水のように庭園に石を使用する日本との接点でもあります。当地の石を特徴づけるのは,「ドライストーンの壁」と呼ばれる壁やドゥオーモの溶岩でできた並外れたファサードなどです。装飾分野で特筆すべきは,サクランボ祭りの際に開催される,伝統ある名高いインフィオラータにおける花の使用です。これをテーマとして,日本の伝統芸術である生け花との比較や対話を行うことができるでしょう。
 伝統あるシチリア料理の昔ながらのレシピは食に対する高い関心を示しており,ミートボール料理などではレモンの葉が使用されます。和食でも木の葉が特定の料理に使われることがあります。
 また,2016年1月に当市で開館予定の現代美術館も,日本の現代美術との実験的な比較の場を提供することができるでしょう。シチリアの人形演劇プーピと歌舞伎との交流も候補の一つとなるでしょう。
 そして,日本人が富士山に対して抱くのと同じように,当地の人々はエトナ山との強い絆を感じています。これに関連し,2013年6月にエトナ山と富士山の双方がユネスコの文化遺産に登録されています。

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