グローカル外交ネット

令和元年9月27日

外交実務研修員 菅原 樹
(札幌市から派遣)

1 はじめに

(写真1)外務省と桜 外務省と桜

 私は平成30年11月に札幌市から外務省へ外交実務研修員として赴任いたしました。これまで従事してきた仕事とは全く異なる国際関係の仕事に大きな期待と同じくらい大きな不安(特に英語に関して)を抱き上京しました。
 配属は外務報道官・広報文化組織である大臣官房広報文化外交戦略課(人物交流室併任)です。今回は私の外務省での経験について御紹介させていただきます。

2 担当業務について

 私の所属は「戦後平和国家としての歩みや,今後の国際貢献等,我が国の正しい姿を含む政策・取組の発信及び積極的な広報・文化交流の展開を通じた我が国の多様な魅力の更なる発信。文化・スポーツ交流・観光,日本語教育の促進等を通じた親日派・知日派の育成」を目的に広報文化外交(パブリック・ディプロマシー)を行う組織の総括的な役割を担う課です。 そのうち,私が担当する業務は大きく分けて2つです。

(1)講師派遣事業

 日本人有識者を海外に派遣し,政府からではなく,第三者の声を海外に届けるための講演会(現地の政府・経済・大学関係,広く一般など対象は様々)を実施し,現地メディア等を通して日本への理解を深めるための事業。この背景には,世界中で有識者の議論が政策形成に大きな影響を持つこと,SNSなどの普及により国民レベルの影響力も拡大していることがあり,日本の正確な情報を発信することの重要性が増しています。

(2)2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の広報

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて各国在外公館等を通じて機運醸成のためにPRツールなどを活用し積極的に広報を行う事業。世界中が注目するオリンピック・パラリンピックですが,日本がどのように大会を盛り上げていくか,コンセプトは何かに加え,ホストタウンの取り組み紹介等の情報発信をしていくことは大会成功には欠かせない広報であり,開催まで1年を切った今,さらに世界中の関心を高めていく必要があります。

 これらの事業を実施していく上で,ただ漠然と業務をこなすのではなく,テーマや地域そしてタイミングや訴求対象などを検討・調整し,広報効果の最大化を図ることが重要です。令和元年度はG20,TICAD7,ラグビーワールドカップ,即位の礼,令和2年度にはオリンピック・パラリンピックと日本が世界中で注目されるイベントが続きますので,それぞれを好機と捉え,的確なタイミングで広報していくことで,高い広報効果が得られると学びました。逆に機を逸するとどんなに素晴らしい内容で広報しても受け手に響かないという状況を招きます。
 担当業務を通じて,日本の良いイメージを世界中に発信する重要性を理解し,より良い発信に向け何ができるかについて常に考える習慣を養いました。このことは地方自治体にも共通するものであり,札幌市がパブリック・ディプロマシーの主体となり,世界にSAPPOROを発信するヒントとなるものだと感じております。

3 通常業務以外の経験

(写真2)TICAD7本会議場 TICAD7本会議場

 先ほども触れたように2019年は非常に多くの大型行事があり,普段は別の課室で勤務している省員が応援という形で大型行事に携わる機会があります。私はTICAD7の取材協力として日本や海外のメディアにより良い報道をしてもらうことを目的に取材位置の調整や規制などの業務に従事する機会をいただきました。本番直前期に着任し,現地の下見や当日の動きなどの説明を受け,会場となるパシフィコ横浜で当日を迎えました。会場の内外でそれぞれの役割を完璧にこなし様々な状況に対応するためのケーススタディには感動しました。
 また,地方連携推進室での短期研修もあり,ここでは各自治体と外務省を円滑につなぐための業務や地方自治体を海外に広報するための業務などを学びました。
 このような機会がある外務省では,通常業務に加え,様々な知識や経験を得るチャンスがあります。自治体職員においても限られた人材での多岐に渡る業務を行う必要があることから,人材育成の観点からも取り入れるべき仕組みであると実感しました。

4 おわりに

 外務省での研修の機会をくださった,外務省及び札幌市の関係者に感謝申し上げます。外務省で外交に関する知識や考え方を学ぶことはもちろん,その上で効率的な働き方,コミュニケーション能力を含む素晴らしい人間力の形成,省員それぞれが外交のプロとして自覚を有し原理原則と共に状況に合わせた柔軟な考え方を併せ持ち刻一刻と変化する状況に素早く判断・対応していく姿勢を間近で見ることができ,学ばせていただきました。
 札幌市に戻った際には,外務省での経験を広く共有し,広報マインドを持ち続け札幌市を世界中に発信していくよう努力いたします。最後に体験記をお読みいただきありがとうございました。

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