グローカル外交ネット
岐阜県における日本とコートジボワールの交流
駐コートジボワール日本国
特命全権大使 一方井 克哉
1 日本とコートジボワールの国民同士の交流拡大を目指して

駐コートジボワール日本大使の一方井(いっかたい)克哉です。昨年、岩手県の西和賀町訪問を終えて本欄に寄稿した際、「自治体・市民レベルの交流を進めていきたい」と記しました。それは、2022年1月にコートジボワールに着任して以来変わらぬ思いであり、これまで、オリンピック等を目指す柔道家たちの参加する柔道日本大使杯、現地で日本語を学ぶ学生らによる日本語弁論大会、日本人漫画家をお招きしてのマンガ・アトリエの開催などを通じて、日本との交流の裾野を拡大してまいりました。
関係者の方々と交流を重ねていく中で、私の着任前のはるか昔から二国間の交流発展に積極的に取り組んでいる方々が数多くいらっしゃることに深い感銘を受けています。こうした関係者の方々の積年の活動には、ただただ頭の下がる思いです。
本年8月下旬には一時帰国の機会をとらえ、岐阜県の関市、次いで岐阜市を訪問しました。10年以上にわたりコートジボワールと関係を有する団体の拠点である岐阜市及び関市は、この団体の活動をきっかけに、2020年東京オリンピック・パラリンピックにおけるコートジボワールのホストタウンにもなりました。
2 岐阜県岐阜市及び関市の訪問
関市では同市の尾関健司市長を表敬訪問したほか、関市の刀鍛冶をはじめとする地域の伝統産業等を視察しました。尾関市長からは、新型コロナウィルスの影響により、東京大会を前に予定していたコートジボワールからの事前キャンプ受け入れが残念ながら中止になったものの、駐日コートジボワール大使館の協力を得て、料理交流会、市内小学生による寄せ書き・メッセージフラッグの寄贈、関市での各種イベントにおける同国の音楽・ダンスの披露等、同国の紹介を熱心に進めてきた取り組みを説明いただきました。
岐阜市では、柴橋正直市長を表敬訪問しました。同市長からは、岐阜市の取り組みのほか、四半世紀にわたり岐阜市に在住するコートジボワール人実業家であるカク・ブルさんの積極的な活動のおかげで、岐阜におけるコートジボワールの知名度が高まり、コートジボワール人学生等の増加につながっていること、こうした人とのつながりを通じてコートジボワールとの交流を継続・強化していきたいとの意欲を示していただきました。

また、今回の訪問では、2009年の設立以来コートジボワールと交流を続けている「NPOぎふ・コートジボワール」の理事長でもある杉山利夫岐阜市議会議員に大変お世話になりました。杉山理事長は、岐阜市を中心として県内の各学校からの協力で寄贈された運動靴等をコートジボワールに送り、同国の子供たちに有効活用してもらう活動を設立当初より継続されておられます。
このほか、岐阜市近辺に在住するコートジボワール人と懇談する機会も持ちました。懇談では、岐阜市の国際交流・外国人共生を担当する幹部も交え熱心な意見交換が行われました。
3 国民の1人1人が交流に参加できる機会を
この訪問を通じて、学生同士による交流、両国の企業ネットワーキングの構築、日本での研修・職業訓練の機会等を求めて前向きに取り組むコートジボワールの人々の姿が強く印象に残りました。こうした取り組みが、日本とコートジボワールそれぞれの市民のイニシアティブによって続けられ、多くの実を結びつつあることが強く印象に残りました。

現代は、国と国との関係構築につながる形で国民のみなさま一人一人がこのような交流に参加することができる時代です。私は、岐阜市・関市の訪問を通じて、それぞれの分野で主役となって日本とコートジボワールとの友好関係の増進に寄与している人々の姿を目の当たりにしました。このような機会をさらに多くの方に活用していただけるよう、私の立場から少しでもお力になれればと願っています。
2025年には次のアフリカ開発会議(TICAD9)が横浜で開催される見通しです。また、同年の4月から10月にかけて大阪で2025年日本国際博覧会も開催され、コートジボワールからの出展も予定されています。こうした近い将来の大きなイベントを契機として、そして、その後の未来に向けて、日本人とコートジボワール人の間の交流の輪がさらに広がることを期待しています。