グローカル外交ネット

令和5年10月20日

在カメルーン日本国大使館
特命全権大使 髙岡 望

 

 令和5年8月3日、一時帰国中にカメルーンと縁の深い大分の佐藤県知事と足立大分市長を表敬訪問し、お二人からカメルーンとの良好な関係を強化したい旨のお言葉をいただきました。今回は、カメルーンと大分のつながりについてご紹介したいと思います。

1 きっかけとなった2002年FIFAワールドカップ日韓大会

カメルーン代表を応援する中津江村の皆さま

 大分とカメルーンの出会いは、2002年のFIFAワールドカップ日韓大会に出場したカメルーン代表チームが旧中津江村(現日田市中津江村)をキャンプ地に選んだことに遡ります。代表チームの日本着が数日遅れたにもかかわらず、中津江村の皆さんが深夜暖かく出迎えた映像が記憶に残っている方も多いかもしれません。当時主将だったソング選手は現在同代表の監督を務めており、当時チームのエースだったエトー選手はその後スペインやイングランドの強豪クラブを経て、現在はカメルーンサッカー連盟会長を務めています。
 ちょうど20年後、2022年のFIFAワールドカップカタール大会の際には、日田市中津江村の住民の皆さんが集まってテレビ越しにカメルーン代表を応援しました。その声援が届いたのか、グループステージの第3戦では強豪ブラジルを破り、ワールドカップ本大会でブラジル代表から勝利を挙げた初めてのアフリカのチームとなりました。
 旧中津江村の元村長である坂本休(やすむ)氏は、両国の交流への貢献がカメルーン政府により評価され、2003年に当時のンベラ・ンベラ・カメルーン駐日大使(現外相)からシュバリエ勲章を授与されました。また、ピエール・ゼンゲ現駐日カメルーン大使は、2018年と19年に大分県を訪れるなど、20年が経った今もなお交流は盛んです。

2 ビジネスを通じたつながり

カメルーン産のコーヒー豆を焙煎する様子

 サッカーがきっかけとなった大分とカメルーンの縁は、ビジネスにも広がっています。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、カメルーンは良質なコーヒー豆の産地として知られており、大分市の地元企業がカメルーンのコーヒー豆を輸入し、佐伯市の喫茶店が焙煎を行っています。
 また、日本の円借款で支援したカメルーンのドゥアラ港において大分の企業が港湾クレーンをメンテナンスしています。その他の分野でもビジネス関係のさらなる発展に期待がかかります。

3 最後に:カメルーンの重要性

カメルーン柔道連盟柔道場引渡式の様子(令和2年度草の根文化無償資金協力):日本とカメルーンは柔道を通じてもつながっています。

 カメルーンは中部アフリカ地域経済の中心的存在で、そのGDPは中部アフリカ経済通貨共同体(CEMAC)加盟6か国の中で最大、約4割を占めており、農産品を輸出等しています。チャドや中央アフリカなど隣国の内陸国の海外物流に、カメルーンのドゥアラ港が大きく貢献しています。最近のアフリカ情勢を踏まえ、地域の安定勢力としてのカメルーンの重要性はますます増大しています。
 カメルーンの道路を走る車の大部分は日本車である等、日本のイメージは良好です。政治面でも二国間関係は順調で、私も多くの政府の要人と様々な課題に関し、緊密な意思疎通をしています。ちなみに、カメルーンはカナダ同様、仏語と英語の2カ国語が公用語という珍しい国です。読者の皆さまにもカメルーンにもっと感心を持っていただければ幸いです。

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