グローカル外交ネット
世界に広がる「最も美しい村」運動
特定非営利活動法人
「日本で最も美しい村」連合
「日本で最も美しい村連合」の起こり
「日本で最も美しい村」連合は、1982年から活動を開始していた「フランスの最も美しい村」の活動に範をとり、失ったら二度と取り戻せない日本の農山漁村の景観・文化を守りつつ、最も美しい村としての自立を目指す運動を2005年にはじめました。それは、「平成の大合併」で市町村合併が促進され、小さくても素晴らしい地域資源や美しい景観を持つ村の存続が難しくなってきた時期でした。
立役者の一人である故・松尾雅彦氏(カルビー株式会社元社長)はカルビー株式会社の倉庫が北海道美瑛町にあったことから、現地を訪れるたびに、作業の効率化のために耕地となっている畑が均平(農地を削り、平らにすること)され、美瑛町の美しい丘の風景が壊れていくことに心を痛めていました。美瑛町は、なだらかな丘陵地帯で営まれている畑作の景観が「パッチワークの丘」と呼ばれるほど有名です。松尾氏は、当時美瑛町長であった浜田哲氏から「美しい風景を生かしたまちづくりができないか」という相談を受けていました。
1998年のサッカー・ワールドカップの視察に出かけた松尾氏は、現地の日本人からの紹介で「フランスの最も美しい村協会」の存在を知り、美瑛町の美しい丘を守るためにはこの「最も美しい村運動」が必要であると直感し、調査研究を進め、日本への導入を決意、実現のために動き始めたのです。松尾氏から「フランスの最も美しい村」を訪れるよう勧められ、浜田氏は2003年に現地を視察、当時のフランスの最も美しい村協会会長と話し合い、日本独自のルール作りと、共感する仲間を募るようアドバイスを受けました。帰国後、早速行動を起こし、7つの町村が活動理念に共感し、設立メンバーになることを決断しました。こうして2005年10月、北海道美瑛町において設立総会を行い、「日本で最も美しい村」連合の活動はスタートしたのです。
2003年には「世界の最も美しい村連合会」“Les Plus Beaux Villages de la Terre”(以降「世界連合会」)が設立され、日本も2010年に世界連合会に正式加盟しました。現在はフランス・ワロン(ベルギー)・イタリア・日本・スペインの4か国・1地域が正式に加盟する他、正式加盟に向けて活動を進めている国々が複数あります。世界連合会では持ち回りで議長国を務め、毎年総会を開催し、各国での活動の共有や優良事例の学び合いや交流をしています。
世界の最も美しい村連合総会2023が開催されました
2022年度にイタリアで開催された総会において、日本が2022年度~2023年度議長国となることが決定し、「日本で最も美しい村」連合会長である京都府伊根町の吉本秀樹町長が世界連合会会長に選出されました。
2023年5月23日~26日、伊根町を会場に日本での二度目の世界連合会総会が開催されました(第1回は2008年北海道美瑛町で開催)。
海外6か国・1地域から、「最も美しい村」の活動をする協会のメンバー(フランス・ワロン(ベルギー)・イタリア・スペイン・スイス・ドイツ・中国)が29名集い、日本国内の加盟町村地域からも59名の参加があり、学びと交流の機会を持ちました。
総会では、世界連合会の昨年度の活動の振り返りや今年度の活動等について話し合った他、各国から活動報告や加盟する村における景観保全や観光促進等の取り組みに関するプレゼンテーションを行いました。
また、伊根町では、湾沿いに立ち並ぶ舟屋(一階部分が舟置き場、二階部分が住居スペースになっている建造物)の景観を視察し、その歴史や保全の様子について学びました。同じく京都府にある和束町では、茶畑景観を視察し、茶摘みの体験やお茶の淹れ方体験を行い、「茶源郷」と称される地で盛んな茶文化を学びました。
海外参加者は漁村と茶畑、生活の営みの中で守られている多様な美しい景観を楽しみ、学びを得ていました。
今後の展望
今回の世界連合会総会を通じ、国は異なっても、「最も美しい村」を目指し、景観や文化・歴史を保全、継承していくという同じ目標を持ち、交流し、学び合えることの意義深さを改めて実感しました。
現在は会合やオンラインでの情報交換が主となっていますが、今後はこの国を超えたネットワークを活用して人やモノの行き来が活発に行われ、美しい村の魅力を世界に発信することができたらと考えます。
注:写真の著作権は全て其田有輝也氏に帰属します。