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長崎県・クアンナム省友好交流関係5周年学術シンポジウム
日越交流のこれまでとこれから の開催
長崎県文化観光国際部国際課
1 長崎県とベトナムの交流の歴史
長崎県とベトナムとのゆかりは古く、今から約400年前の朱印船貿易の時代にまでさかのぼります。
当時、朱印船の多くが長崎から出港し、ベトナムの特産品であった生糸・絹製品、陶磁器などのほか、香辛料、香木、鹿皮、鮫皮などを載せて長崎に帰港していました。長崎の貿易商であった荒木宗太郎は、当時のベトナム中部の国王の厚い信頼を得て、貿易を行い、その国王の娘を妻として迎えて、ともに長崎へ帰ってきました。王女は、長崎の人々に「アニオー姫」と呼ばれ親しまれており、当時の長崎では、かわいい女性のことを「アニオーさんのようだ」、また豪華絢爛な様子を「アニオー行列のようだ」と表現していました。このように長崎の人々に愛されていた「アニオー姫」ですが、鎖国政策が始まったことにより、残念ながらニ度とベトナムへ帰ることはできず、荒木宗太郎は1636年に、「アニオー姫」は1645年に亡くなりました。二人が死去した日は奇しくも同じ11月7日でした。二人がベトナムから長崎に入港する様子は、長崎伝統の大祭「長崎くんち」の演し物「御朱印船」として披露されており、今も長崎の人々に受け継がれています。
こうした歴史的なゆかりをきっかけとして、長崎県とクアンナム省は、2017年に友好交流関係を樹立し、本県はクアンナム省・ホイアン市に、両県省ゆかりの「御朱印船」のレプリカを寄贈しました。
そして2022年(令和4年)、この友好交流関係樹立5周年を記念し、近年増加傾向にあるベトナムからの技能実習生や留学生をはじめ、多くの県民の皆様に広く本県とベトナムとの関係を周知することを目的に、シンポジウムを開催することになりました。長崎県は、令和5年2月5日に、「長崎県・クアンナム省友好交流関係5周年学術シンポジウム~日越交流のこれまでとこれから~」をオンライン方式で開催しました。
2 学術シンポジウムについて
シンポジウム開催にあたり、日本のベトナムに関する研究学会である日本ベトナム研究者会議にご協力いただき、本県とベトナム・クアンナム省、また、日本と中部ベトナムとの交流の歴史や、現代において確認できる双方の交流の痕跡(資料・文化)について、実際の発掘風景の写真や資料等を交えながら、ベトナム研究の専門家の方々に講演いただきました。
パネルディスカッションでは、郷土史家の先生を迎え、「長崎くんち」等長崎の文化の中で見られる、県民にとってより身近なベトナムについてお話しいただくとともに、今後本県とベトナムとの交流の進め方について、「荒木宗太郎とアニオー姫の物語を長崎県にとってのベトナムとの交流の核とし、それを基に様々な交流を深化させていくのがよい」や、「単に技能実習生を受け入れるという一方的な交流ではなく、ベトナムで長崎をもっとアピールして互いの文化をより良く理解していくような交流が必要」などの貴重なご意見をいただきました。
プログラム:
- (1)基調講演「日本とベトナム、とりわけクアンナム省との関係史概論」
早稲田大学名誉教授/日本ベトナム研究者会議会長 白石 昌也 先生 - (2)報告1「ベトナムの日本町 考古学的視点からの研究」
昭和女子大学名誉教授/日本ベトナム研究者会議会員 菊池 誠一 先生 - (3)報告2「事例から見た日越交流史」
ベトナム国家大学ハノイ校東洋学部准教授 ファン・ハイ・リン 先生 - (4)パネルディスカッション
- ファシリテーター
東京大学大学院教授/日本ベトナム研究者会議事務局長 岩月 純一 先生 - パネリスト
白石 昌也 先生
菊池 誠一 先生
ファン・ハイ・リン 先生
土肥原 弘久 先生(元長崎市長崎学研究所長)
- ファシリテーター
3 今後の長崎とベトナムの交流に向けて
2017年に寄贈した「御朱印船」のレプリカは、現在、ベトナムの世界遺産「ホイアンの古い町並み」内にあるグェン・ティ・ミン・カイ通りに展示されています。また、2022年8月には、日本文化を発信する拠点として、ホイアン市が「日本文化展示の家」を整備しました。この施設の1階では日本語教室や茶道教室など日本文化に触れることができるイベントが行われており、内装装飾の一部に長崎県の三川内焼や波佐見焼、島原ろうそく、バラモン凧等の伝統工芸品が使われております。また2階には、長崎県のPRブースが設置されており、長崎県の観光や世界遺産、ベトナムとの交流の歴史、県産品などを紹介しています。
また、令和5年3月27日には、山田駐ベトナム日本国大使にもご来県いただき、長崎とベトナムの交流に関する知事との意見交換や、荒木宗太郎とアニオー姫が眠る墓地等を訪問いただきました。本県としましては、今後とも、「御朱印船」をはじめとした長きにわたるベトナムとのゆかりを大切にし、より一層の友好交流促進に努めてまいります。