グローカル外交ネット

令和4年6月22日

在シドニー日本国総領事館
総領事 紀谷 昌彦

 皆さん、オーストラリアを訪れたことはありますか?広大な国土と自然、動植物に恵まれ、スポーツが大好きな英語圏の国で、日本語学習者の対人口比が世界一高く(2018年度調査時点)、日本との時差がほとんどないので、日本と姉妹都市交流や学校交流をするのに最適な国です。日本とオーストラリアの間には100以上の姉妹都市があります。私が2年半前にシドニーに赴任してからも、担当しているニュー・サウス・ウェールズ州・北部準州内で姉妹都市の周年祝賀行事が相次いで開催され、日本から代表団の方々が来訪しました。

 しかし、2020年に入り、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、姉妹都市交流も大きな影響を受けました。いくつかの姉妹都市はオンラインで交流を継続しましたが、相互訪問は一切途絶えてしまいました。そのような中で、総領事としてできることは、日本からの代表団の代わりに各地を訪問して市長をはじめ関係者とお会いし、コロナ後の交流再開に向けてモメンタムを維持することです。それを踏まえ私が訪問した、3つの姉妹都市・学校交流先の取組をご紹介します。

1 クインビヤン・パレラン市と山梨県南アルプス市

(写真1)左上:ゲートの前で握手をする二人、左下:記念植樹、右上と右下:銘板 クインビヤン姉妹都市公園の記念植樹や銘板

 本年4月下旬、シドニーから南に車で約半日かけて移動し、豪州最大のスキーリゾートとして有名なスノーウィ・マウンテンズ地域にある日本との姉妹都市を訪問してきました。

 最初の訪問先は、豪州の首都キャンベラ市の郊外にあるクインビヤン・パレラン市です。今から30年前の1992年に、クインビヤン市は山梨県八田村と姉妹都市連携を結びました。2003年に八田村を含む6町村が合併して南アルプス市になった翌年には、クインビヤン市と南アルプス市で姉妹都市の再調印を行い、2012年の20周年行事には南アルプス市長がクインビヤン市を訪問しています。姉妹都市公園には記念植樹や銘板が数多くありました。

 しかし、2016年にクインビヤン市がパレラン市と合併した後、再提携・再調印を検討する中でコロナ禍が拡大し、往来ができなくなってしまいました。今回、クインビヤン・パレラン市議会議員の代表とお会いしたところ、日本側が合併を乗り越えて再調印を実現したので、自分たちも同様に合併を乗り越えてコロナ後に再調印を実現したい、との力強いことばをいただきました。議場入口の陳列棚には、八田村・南アルプス市との姉妹都市確認文書や贈呈品が展示されていました。

2 スノーウィ・モナロ市と熊本県山鹿市

(写真2)鳥居前で集合写真 クーマ・ライオンズ公園の姉妹都市鳥居前で

 次の訪問先は、スノーウィ・モナロ市です。2016年の合併で誕生した市ですが、合併前の旧クーマ市は1975年から熊本県山鹿市と姉妹都市提携を結び、2001年からは毎年交互に市民・学生代表団を派遣して交流を継続してきました。

 2019年には旧クーマ市から山鹿市に代表団が派遣されましたが、2020年以降はコロナ禍で交流が見合されています。今回訪問したところ、本年は8月を目途にオンライン交流を行い、来年からは実際の往来を再開予定と伺って嬉しく思いました。また、市長や市議会議員、そして交流を後押しするライオンズクラブ会員など多くの方々の歓迎を受け、私からは長年の姉妹都市交流に対する心からの感謝の気持ちを伝えました。

3 日豪学校間オンライン交流からの発展

(写真3)建物の前で集合写真 ノックス・グラマースクール校長訪問

 昨年の東京オリンピックに際しては、豪オリンピック委員会の主催で日豪学校間オンライン交流事業「コネクト友達2021」が開催されました。日豪双方を合わせて約600クラスがオンラインでつながり、日本語や英語でお互いに学校や生活の紹介や動画の交換を行いました。

 本年はこれを基盤に「コネクト友達」ネットワークが今般立ち上がり、実際に相互訪問やスポーツ交流に発展する予定です。これを後押しするために、本年5月にシドニー北部のノックス・グラマースクール校長を訪問しました。同校は昨年のオンライン交流に日本語クラスが参加したのみならず、コロナ前の2019年にはラグビー部員約40名を2週間日本に派遣して各地で交流試合を行いました。校長からは、本年中にも日本を自ら視察して交流の幅を広げたいとのお話をいただきました。

 コロナ禍で姉妹都市交流や学校交流は大きな制約を受けましたが、だからこそ在外公館の果たし得る役割があると感じています。日本の地方自治体や学校の皆さんと一緒に、コロナ後の交流再開に向けて取り組んでいければ幸いです。

グローカル外交ネットへ戻る