グローカル外交ネット

令和4年4月26日

在イスラエル大使館 中林 英晃

 2022年2月23日、天皇陛下の62歳の誕生日をお祝いするため、在イスラエル日本大使公邸において、天皇誕生日祝賀レセプションを開催しました。

 今年のレセプションの実施につきましては、新型コロナウイルスの変異種が年末から年始にかけて流行する状況の下、館内で慎重に検討を重ね、一時は中止又は延期も視野に入れていましたが、イスラエルでは確かな流行改善傾向にあったこと、当地感染防止措置が緩和されたこと等を踏まえて、規模を縮小した上で最終的に2年ぶりに開催することとしました。

 例年は、400人程度が参加する祝賀レセプションですが、本年は、パートナーの同伴をご遠慮いただき、一組織一名を基本として、約180名の来客を得て開催しました。2022年は、日本・イスラエル外交関係樹立70周年の記念すべき年となります。ヘルツォグ大統領夫妻を始めとし、国会議員4名、多数の著名な経済関係者や文化人にご出席いただきました。

(写真1)ヘルツォグ大統領(右)と着物姿の水嶋大使(中央) 水嶋大使とヘルツォグ大統領の乾杯

 式典オープニングでは、外交関係樹立70周年を記念すべく当館が編集した動画を放映し、会場を盛り上げました。水嶋大使に続きヘルツォグ大統領から、式典挨拶をいただきました。大統領は、日本・イスラエル外交関係樹立70周年の記念すべき年に、天皇陛下誕生日を祝福できることの重要性について言及し祝意を述べられました。また、日本がアジア諸国で初めてイスラエルを承認した国であること、日本の元外交官である杉原千畝氏が発給した査証によって救われたユダヤ人の一人が、後にイスラエルで閣僚を務めたこと等を取り上げて、イスラエルにとって、日本はいかに重要な国であるか述べるとともに、近年の両国の経済関係の深化はもちろん、文化、芸術、学術分野における交流が広がりを見せていることを歓迎すると挨拶されました。

 式典では、杉原千畝氏が発給した査証により救われた親族を持ち、同氏の偉業を音楽を通じて世界中に発信する「Sugihara Symphony」に取り組んでいるクリスティーナ・クーパー女史が奏でる美しいチェロの音色による両国国家演奏が行われるなど、両国の友好関係を表現する演出に、来場者からは賞賛の声がわき上がりました。

 今回のレセプションで特筆すべき点の一つとして、例年のレセプションでは、食事を提供する場所として使用していた大食堂を、日本観光・自治体を紹介する場として大々的に活用したことがあります。

(写真2)資料が並べられているテーブルを見る人たち 地方連携ブースの状況

 複数の地方自治体からご協力いただいた背景としましては、以前より当館SNSを活用して実施していた地方紹介の取組がベースとなっています。地方自治体にて作成いただいた観光動画に、当館でヘブライ語の字幕を付す等の工夫を行い、イスラエル人に紹介しました。長引く新型コロナウイルスの流行によって、多くの地方自治体は、海外におけるPR活動のあり方について悩んでいたと思います。当館から幅広く地方自治体の観光担当者に声をかけさせていただき、既存の観光PR素材の活用を申し入れて、イスラエルではあまり知られていなかった、日本各地の魅力を力強く発信しました。投稿された動画に対するイスラエル人のコメント等の反応等を、ご協力いただいた自治体と共有することにより、さらなる信頼関係の構築に努め、その結果として、本レセプションにおける大規模な地方連携ブースへの協力に結実させることができたと思います。

(写真3)パンフレットを読む大統領(左)と説明する水嶋大使(中央) パンフレットを読む大統領と説明する水嶋大使

 ヘルツォグ大統領夫妻は、華やかに飾り付けられた地方連携ブースに関心を寄せられ、当初の予定にはなかったものの、お立ち寄りいただきました。ブースでは、杉原千畝ルートを紹介したパンフレットをお手に取ってご覧になられ、水嶋大使がこれらの地域について説明しました。この様子は、杉原千畝ルートがある岐阜県の地方紙に取り上げていただき、両者の結びつきを広く紹介いただく結果となりました。

 奈良県には、世界的に有名なイスラエル人彫刻家ダニ・カラヴァン氏によってデザインされた素晴らしい公園(室生山上公園芸術の森)があり、奈良県とイスラエルの結び付きについて皆様にご認識いただくことができました。また、イスラエルで唯一の日本専門美術館であるティコティン美術館では、奇しくも「ダニ・カラヴァン展」を実施しており、同美術館でも奈良を紹介したブックレット等を配布するPRを行うこととなりました。この連携がきっかけとなり、結びついた良いケースになったと思います。

 引いては寄せる新型コロナウイルスの波ではありますが、世界では、外国人観光客の受入れを再開する動きを見せ始めた国や地域もあります。近い将来の日本観光再開を信じて頑張っている地域の方々を少しでもサポートできるように、そしてこの取り組みによって、イスラエル観光客がメジャーな日本の観光地のみならず、より広く日本各地を訪れてくれることを願いつつ、今後とも地域連携に取り組んで参ります。

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