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外交実務研修員研修(駐日メキシコ大使館)
令和4年4月22日
外務省地方連携推進室
令和4年3月22日、「令和3年度第3回外交実務研修員研修」として、12名の外交実務研修員が駐日メキシコ大使館を訪問し、プリーア大使(H.E. Ms. Melba PRÍA)から、メキシコの概要及び日本との二国間関係等についての講義を受けました。概要は以下のとおりです。
メキシコの概要について

冒頭、菱山地方連携推進室長による挨拶の後、プリーア大使から、歓迎の意が示され、スクリーンに投影されたスライドに沿って研修員に語りかける形で熱のこもった講義が始まりました。
まず初めに国の概要について様々な観点からご説明いただきました。面積が日本の約5倍で、人口規模が日本とほぼ同じの約1億2,600万人であるが、人口構造が日本とは対照的で、およそ半数が30歳以下という若い国であるとの説明がありました。公用語はスペイン語で、全世界のスペイン語話者のうち4人に1人がメキシコ人ということでした。2021年にはスペインからの独立200周年を迎えています。経済面では、GDPが約1.1兆米ドルで世界15位に位置し、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)をはじめ、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定を46か国と締結している状況にあります。メキシコは地理的に北米と南米、太平洋と大西洋に挟まれ、地域間の蝶番のような役割を果たしており、日本と同様にAPEC、G20、TPP11に参加している等の説明がありました。文化面では、有名なテオティワカン遺跡やチチェンイッツァ遺跡に示されるように古代文明が栄えた歴史を大切に残しています。こうした遺跡も含めて国内に35のUNESCO世界遺産、加えて11のUNESCO無形文化遺産が登録されています。また約1,200もの博物館・美術館を国内に有し、まさに文化立国であるという説明がありました。こうした文化的魅力も多くの観光客を惹きつける要因となっており、コロナ禍以前の2019年には年間約4,500万人(世界7位)の観光客が訪れました。このうち約15万人は日本人観光客ということでした。
また、プリーア大使から、世界経済フォーラムによれば、ジェンダー・ギャップ指数がメキシコは26位、日本は120位であることに触れつつ、両国の男女格差についての説明がありました。
二国間関係について

日本・メキシコ関係の歴史についても詳しく説明いただきました。両国関係の発端は1609年にサン・フランシスコ号が千葉県沖で難破し、日本人がスペイン人、メキシコ人を救助したことに遡るということでした。1613年に支倉常長がスペイン国王とローマ法王に謁見するために渡欧した際にも、メキシコを経由したとのことでした。その後、1874年にはメキシコ人科学者一団(金星観測隊)が来日したことをきっかけとして1888年に日墨修好通商条約が締結され、このことが日本にとって欧米諸国との初めての平等条約締結となり、他の欧米諸国との不平等条約を是正する足掛かりとなったということでした。こうした歴史的背景もあり、両国関係は深化し続け、経済関係では、2004年に締結された日墨EPA(2005年発効)や2018年に発効したTPP11もあり、日本から約1,300の企業がメキシコに進出し、日本はメキシコの貿易相手国として5番目、対メキシコ投資国として4番目となっています。また、2021年には茂木外務大臣(当時)がメキシコを訪問するなどハイレベルでの往来及び対話が行われています。
地方連携等について
両国の自治体間で12の姉妹都市提携があり、プリーア大使から、姉妹都市関係が人的交流に不可欠であり、市民間交流の強化が両国間の相互理解につながるという言葉が述べられました。例えば、平和や核兵器保有について共通の価値観を有する広島県と広島市との関係が強化されてきており、東京2020大会のホストタウン交流として選手と市民間でオンライン等も活用しながら親交が深まったことが紹介されました。研修員からの質問に答える形で、メキシコとの間で姉妹都市関係にない都市で新たに関係を築こうとする際においては、両都市が抱える課題や強みに着眼し、お互いを補強・補完するような関係が構築できれば理想的ではないかという考えも示されました。また、学術・文化交流も活発で、50の学術協定・交流協定が締結されています。ロボット工学や宇宙利用の分野で共同プロジェクトが実施されているほか、芸術家の岡本太郎氏がメキシコ訪問で太陽の塔の着想を得ているとの話があり、文化面でも日本との関わりが深いことを改めて認識しました。
最後に

プリーア大使から、アフターコロナで観光が再開し、往来が盛んになることへの期待が込められつつ、日本についてメキシコ人があまり知らないこととして、人の手が加わっていない森林があること、紅葉の秋やウィンタースポーツが楽しめる冬についてPRすることで更に日本へ訪れたいと思ってもらえるのではないかというアドバイスもいただきました。
今回、プリーア大使が両国の歴史的関係も深く理解されていることから、在外公館へ赴任を控える外交実務研修員にとって日本と赴任国の歴史的関係を理解することの大切さや、相違点から見える課題や補完・補強し合える互いの強みなども認識しておく重要性に気付くことができました。今回の講義によって、メキシコ、日本とメキシコの二国間関係や駐日メキシコ大使館の様々な取組について理解を深めるとともに、地方連携の重要性について改めて認識を強くしました。この度の大変有意義な研修を行っていただいたプリーア駐日メキシコ大使、諸事調整いただいた駐日メキシコ大使館員の皆様に厚く御礼申し上げます。